著者
夏目 誠 村田 弘 杉本 寛治 中村 彰夫 松原 和幸 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.266-279, 1988 (Released:2009-03-26)
参考文献数
14
被引用文献数
10 8

私たちは勤労者のストレス度,特に職場生活のそれを数量化するために,下記のストレス調査表を作成した.Holmesが作成したストレス度を測定する,社会的再適応評価尺度の主要項目に,職場生活ストレッサー18項目,および「私の耐えられるストレス度」,「現在の私のストレス度」の2項目を追加した67項目より構成されている.1,630名の勤労者を対象に結婚によるストレス度を50点とし,それを基準に0~100点の任意数値記入方式により自己評価させた,得られた結果は以下のとおりである.1. 各項目について1,630名と性,年齢,職種,職階,勤続年数(以下,各条件とする)別対象者数から得られた点数の平均値を求めた.私たちは,このようにして得た各項目の平均点数をストレス点数と仮称した.65項目のストレス点数を,高い順にランキングした. 1位は「配偶者の死」82.7で,「収入の増加」が24.7と最下位であった.27項目が50点以上の得点を示した.次に65項目を,個人,家庭,職場,社会生活ストレッサーの4群に分類した.2. 職場適応力をみるために私たちが考案した「私の耐えられるストレス度」は73.7で「現在の私のストレス度」は48.8であった.3. ストレス点数の平均値から,各条件別でt検定により比較検討を行い,差異を求めた.その結果は, 30歳代では20歳代に比べ,課長と班長は部長より,点数が高かった.同様に,上記の4群間でそれを求めたところ職場生活ストレッサー群のみ差が認められた.同群において, 30, 40, 50歳代は20歳代よりも,課長と班長は一般職に比し,高得点であった.勤続年数では, 21年以上の勤務者は, 10年以内の者に比較して点数が高かった.以上の結果や調査表の意義と活用を中心に考案を加えた.
著者
寿田 鳳輔 藤井 久四郎 新井 和夫 丸岡 利市 斎藤 仁隆
出版者
Japan Society of Smooth Muscle Research
雑誌
日本平滑筋学会雑誌 (ISSN:03743527)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-45, 1968

Albino rats of Wistar strain with normal sexual cycle on the basis of their vaginal smears were used and anesthetized with Mintal (pentobarbital) injecting 5 mg/100 g intraperitoneally in acute experiments. Spontaneous electromyographic activity of the rat uterus <I>in vivo</I> was recorded using a concentric electrode (silver wire, 50μ diameter). One electrode was placed in the tubal side and the other electrode in the cervical side of a corpusuteri of the rat. Electromyographic recordings were made with a 2 channel inkwritingapparatus. The spontaneous electrical activity of the rat uterus <I>in situ</I> could be observed through the cycle. The basic electromyographic patterns of the nonpregnant ratuterus at the estrus were the train of spike and the spike burst. From proestrus to estrus, the spontaneous spike discharges increased in amplitude and in frequency and became of a set of their discharges. In some cases the spontaneous spike discharges were observed sporadically at the diestrus of the cycle and the castrated condition.
著者
田中 茂穂 徳山 薫平 藤井 久雄 田中 千晶 緑川 泰史 二見 順
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

エネルギー消費量を評価するヒューマンカロリメーターの分析精度を向上させ、食事によるエネルギー消費量の評価法を提案した。また、エネルギー消費量に対する身体組成の影響や食習慣・運動習慣の影響について明らかにした。さらに、身体活動の種類と強度が評価できる3次元加速度計を用いて、歩数が中高強度の身体活動量をかなり反映するが、歩・走行以外の身体活動も重要であること、1日の身体活動量に対する歩・走行以外の身体活動の相対的な寄与が職業間で異なっていることを明らかにした。
著者
吉本 洋 藤井 久之 中西 一
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1057-1064, 2007-11-15
被引用文献数
3 4

紀伊半島西岸域で採捕された稚アユの耳石により,ふ化時期・初期成長を求め,それらと海水温・プランクトン量との関係について検討した。ふ化時期は 11 月中・下旬が中心で,11 月にふ化した稚アユは,12 月の海水温が低く 1 月のプランクトン量が多いほど成長速度が大きくなった。北部海域は南部海域と比較し,ふ化時期が早く,冬期にプランクトン量が多いため成長速度も大きかった。また,稚アユの漁獲尾数(CPUE)が多い年の初期成長は良好であった。以上のことから,稚アユの資源豊度には,プランクトン量,水温,初期成長が関係していることが示唆された。<br>
著者
長 修司 藤井 久雄 白石 淳
出版者
福岡女子大学
雑誌
福岡女子大学家政学部紀要 (ISSN:02883953)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-69, 1984-12-25

Bacillus natto産生多糖類あるいは酵母のアルコール抽出物がコレステロール食ラットの脂質代謝におよぼす影響について検討した。(1)Bacillus subtilis natto(納豆菌)産生レバンはラットの血清と肝臓の脂質レベルを低下させることはできなかった。一方, レバンと同じフラクタンである市販のイヌリンは血清の総コレステロールとトリグリセリド量を有意に減少させた。(2)イヌリン投与ラットの食餌コレステロールの吸収率は対照ラットに比べて著しく低下した。(3)Sporobolomyces ruberrimus(赤色酵母)あるいはSaccharomyces uvarum(ビール酵母)のアルコール抽出物はコレステロール食ラットの血清の総コレステロールあるいはトリグリセリド量を減少させた。この報告は著者らの実験指導のもとに本学食物学専攻学生の高橋貴美子, 山口羊子, 安部博美ならびに井波忍君らがまとめた卒業論文の一部である。
著者
夏目 誠 太田 義隆 藤本 修 南野 壽重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-15, 1985-01-20
被引用文献数
8

職場不適応症の病態生理学的特徴を明らかにするため,同症の代表的タイプといえる中核タイプ25名および脱落タイプ14名,計39名に眼球運動,脳波や顔面表情筋筋電図などの精神生理学的指標を用いて,ポリグラフの記録を行い,健康成人16名(対照群)のそれと比較検討するとともに,臨床的特徴との関連についても考察を加えた.得られた結果は以下のとおりである.1.職場不適応症の中核および脱落タイプは,対照群に比べ,安静時に低振幅急速眼球運動(r)の出現回数は少なく,シュウ眉筋筋放電振幅も低い値を示した.2.暗算刺激負荷により,中核タイプは安静時よりrの出現回数が増加している例数が,対照群に比べ多かった.シュウ眉筋においても同様の傾向を示した.一方,脱落タイプでは,両指標ともほとんど変化を示さなかった.3.暗算刺激終了後も,中核タイプは安静時より,rの出現回数の増加と両表情筋筋放電の高振幅が持続しているのに対し,脱落タイプでは,これらの特徴が認められなかった.以上の結果と同症両タイプの臨床的特徴との関連について,考察を加えるとともに,両タイプの発症機制解明に精神生理学的検索の有用性を明らかにした.
著者
富山 秀男 金子 賢治 石村 速雄 長谷部 満彦 市川 政憲 岩崎 吉一 岡島 尚志 大場 正敏 藤井 久栄 品田 雄吉 草壁 久四郎 登川 直樹
出版者
東京国立近代美術館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

アメリカやカナダを中心とする北米地域に限定しての本研究では、映画,写真,デザインの3分野でそれぞれ下記の諸施設を実地調査し、大きな成果を挙げることができた。それらはいずれヨ-ロッパと合体した形式により、海外における本課題全般を扱う詳しい調査報告書としてまとめる予定である。(1)映画 カナダではモントリオ-ル国立フィルム局、オタワの国立フィルム・ア-カイヴ、トロントのオンタリオ・シネマテ-ク、ヴァンク-ヴァ-の太平洋シネマテ-ク。アメリカではスタンフォ-ド大学フィルム・ヴィデオ図書館など。カナダの国立フィルム・ア-カイヴの活動は国費によってフィルムの収集、保存、修複、上映などの諸事業を積極的に行っており、それに対応する施設面でも同じ建物内に広い保存庫を持っていて参考になった。またその他の機関も州や民間組織と連携して活発な保存、上映活動が行われているのには感心させられた。(2)写真 カナダ国立美術館、カナダ現代写真美術館(オタワ)、アメリカではシカゴ美術館、ジョ-ジ・イ-ストマン・ハウス国際写真美術館、ニュ-ヨ-ク近代美装館、ニュ-ヨ-ク国際写真センタ-、ニュ-ヨ-ク歴史協会、ニュ-オ-リンズ美術館、サン・アントニオ美術館、サンタフェ美術館、アモン・カ-タ-美術館(フォ-トワ-ス)、ポ-ル・ゲッティ美術館(マリブ)、サンフランシスコ市立美術館の各写真部。このうち写真を展示する場合の照明について、イ-ストマン・ハウスやニュ-ヨ-ク近代美術館を代表とする多くの施設で、歴史的なものと現代作家のものでは大幅に照度を変えていること、及びその科学的根拠などについて大いに学ぶところがあった。収蔵庫については、白黒写真とカラ-写真とで保存に適する温湿度条件が異なるための措置として、どの施設でも別々の保存庫を備えていること、及びそのデ-タを得てきた。またそうした低温保存のカラ-写真を展示場に出す場合の取扱い方法として、守らなければならない配慮とそのための設備も各所で実見し、シカゴ美術館が最もコンパクトで合理的であるとの感想を得た。なお、展示品以外の研究者用閲覧にどう応じるかの制度や方法についても、各館多少の差違を持ちながら一様に門戸を開いており、それを可能ならしめるためのスタディ・ル-ムのあり方を数えられた。収集作品については各館まちまちだが、いずれも性格をもつことが意図されており、国際的な集め方から地域や時代を限定したものまでさまざまであった。最後に収蔵作品の分類や整理に関しては、どの施設もコンピュ-タ-を導入して鋭意その作業を進めている最中であり、時代、テ-マその他いろいろな検索が瞬時にして可能なのには目を見張った。これは写真部だけには限らないが、最も基本的な体制のあり方として、当方の遅れが痛感された事柄である。(3)デザイン オタワに新設されたカナダ文明史博物館、カナダ漫画美術館 ミネアポリスのウォ-カ-・ア-ト・センタ-、シカゴの現代美術館、ニュ-ヨ-クのク-パ-・ヒュイット美術館、アメリカン・クラフト美術館など。新設の文明史博物館は考古から現代美術までを幅広く手がけるなかで、工芸やデザインについての関心が強く、「日本の包装」などの企画展を開催した施設、外国の民族的文化もさかんに紹介している。ウォ-カ-・ア-ト・センタ-は美術のみならず前衛舞踊、音楽、演劇をも重視する新しい芸術活動の推進の場として機能しており、デザインや写真についても市民(成人や子供)向けの教育プログラムに組み入れて実演、制作を行っているのが印象的だった。またク-パ-・ヒュイット美術館はデザイン部門の作品収集で最大施設の一つ。スミソニアン・インスティテュ-ションの運営だが、研究者向けの特別観覧の制度に学ぶベきものが多かった。アメリカン・クラフト美術館の取り上げる各種デザインの幅広さ、それらを包括する視点の独自さが注目された。なお、最後にこれら北米諸機関を実地調査するに当り、映画、写真、デザインのそれぞれに関して我が国では入手困難な多くの資料、カタログ類及び多数の図書を購入することができ、今後の研究に道すじがついたことを感謝の念をもって報告したい。
著者
長友 和彦 森山 新 史 傑 藤井 久美子
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本年度の計画に基づき研究を進め、マルチリンガリズム研究会(http://jsl-server.li.ocha.ac.jp/multilinualism/index.html)(本科研のメンバーで設立)で、研究成果の一部を公表するとともに、主な研究成果をスイス・フリブールで開催の「The Fourth International Conference on Third Language Acquisition and Multilingualism」(http://www.irdp.ch/13/linkse.htm)で発表した。この国際学会では、本科研グループで、個別発表とともに「Multilingualism in Japan」というコロッキアを主宰し、日本社会における多言語習得の実態およびそこにおける課題に関する議論を展開した。研究の主なテーマは以下の通りである。1.中国語・韓国語・日本語話者によるコードスイッチングとターンテイキング2.中国語・韓国語話者による第三言語としての日本語の習得3.One Person-One Language and One environment-One Language仮説検証4.韓国語・日本語・英語話者における言語転移5.マルチリンガル児童のアイデンティティの発達6.多言語話者による言語管理7.環境の違いが多言語能力へ与える影響このような多角的な観点からの研究によって、日本社会における多言語習得の実態の解明に迫った。本研究の成果は報告書にまとめられる予定である。
著者
長友 和彦 森山 新 史 傑 藤井 久美子
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本科研グループが設立した「マルチリンガリズム研究会」などを通して、研究を進め、その成果を雑誌や国際学会で発表するとともに、その成果に基づいた「多言語同時学習支援」の国際シンポジウムや試行プログラムも実施し、「多言語併用環境における日本語の習得、教育、及び支援」に関する全体の研究実績を報告書にまとめた。主な研究実績の概要は以下の通り。1.幼児から成人までを対象に、(1)1人1言語・3.実際に試行的な「多言語(日本語、韓国語、中国語)同時学習支援プログラム」を実施し、多言語併用環境での日本語の教育や支援、そのための日本語教員養成に関する基礎的なデータを得た。環境1言語仮説(2)思考言語と優越言語(3)言語環境の変化(4)品詞(5)言語選択(6)アイデンティティ(7)場所格(8)テンス・アスペクト等の観点から、タガログ語・英語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・中国語等の多言語併用環境における日本語習得の実態が解明された。(これらの主な成果は、スイスでの国際学会「The fourth International Conference on Third Language Acquisition and Multilingualism」のProceedings(CD-ROM版)として出版。)2.国際シンポジウム「多言語(日本語、韓国語、中国語)同時学習支援」をマルチリンガリズム研究会と日本語教員養成機関(大学院>とで共催し、3力国(+台湾)での多言語学習・習得の実態の報告を受け、多言語同時学習支援プログラムと多言語併用環境での日本語の教育や支援のできる日本語教員養成プログラムの研究・開発に着手できた。3.実際に試行的な「多言語(日本語、韓国語、中国語)同時学習支援プログラム」を実施し、多言語併用環境での日本語の教育や支援、そのための日本語教員養成に関する基礎的なデータを得た。
著者
根塚 秀昭 芳炭 哲也 齊藤 光和 藤井 久丈
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.467-470, 2007-08-10
被引用文献数
3 3

症例は90歳女性. 3日前から持続する腹痛と発熱を主訴に当院へ搬送された. 腹部CTにて回盲部から右腸腰筋部におよぶ径5cm大のlow density massを認め, 周囲に少量の腹水を認めたため, 急性虫垂炎および右腸腰筋膿瘍の疑いにて緊急手術を施行した. 回盲部は一塊となり臓器の判別は困難で, 近接する右腸腰筋部を剥離すると内部から透明粘調なゼリー状物質が流出した. 虫垂癌の右腸腰筋浸潤, 穿孔性腹膜炎と術中診断し, 回盲部切除術と腹腔内ドレナージを施行した. 術後の病理組織学的検査では, 細胞内に粘液を豊富に貯留した腫瘍細胞の増殖が認められ, mucinous cystadenocarcinomaと診断された.<br>虫垂癌は術前診断が困難である. 画像所見にて右腸腰筋膿瘍などの後腹膜膿瘍が疑われる場合には, 原発性虫垂癌も念頭におく精査加療の必要があると考えられた.
著者
夏目 誠 太田 義隆 古我 貴史 南野 寿重 浅尾 博一 藤井 久和
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.160-169, 1986-05-20
被引用文献数
7

職場不適応症の対応として,私たちが考案した治療的対応システム(後述)の効果や産業医の役割を知るために,直接関与した96名の職場不適応症者を対象に調査を行った.対象は,最近19年間に精神科外来診療を行っている大阪府立公衆衛生研究所精神衛生部外来(以下,当所診療所)を受診した54名と,私たちが精神衛生面の産業医をしている,社員数15,000名を擁する,ある企業の職場内診療所を過去14年間に受診した42名である.タイプ別内訳は,中核群が34名と最も多く,ついで脱落群26名,その他群15名,一過性反応群は13名で,専門職不適応群は8名に認められた.治療的対応システムの内容を中心にして,代表的な2症例を呈示した.1.私たちは,職場不適応症の治療的対応システムを考案した.その内容は,I.診療と諸検査,II.本人や家族へのカウンセリング,III.復職へのリハビリテーション,IV.職場関係者への治療的助言からなっている.2.治療的対応システムにより,96名中81名の職場不適応症者は,就業するようになった.3. 96名のうち,職場関係者への治療的助言が必要であった者は59名で,そのうち助言が受容された者(受容群)は,49名であった.拒否された10名(拒否群)は,いずれも当所診療所受診者であった.受容群のほうが,拒否群よりも職場によく適応していた.治療的助言として,治療的配置転換が27名と最も多く,ついで職務の軽減,指導が18名で,治療的仮出勤が13名であった.4.上記の治療的対応システムを活用するためには,精神衛生面を担当する産業医の役割が大であると考えた.