著者
熊谷 晋一郎 向谷地 生良 加藤 正晴 石原 孝二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

当事者研究には、他の研究と同様、新しい知識を「発見」するための方法という側面と、生きやすさをもたらす「回復」の側面がある。まず発見については、自閉スペクトラム症のメカニズムに関して当事者研究の中で提案された「情報のまとめあげ困難説」を、他分野の専門家と協力しながら理論的に精緻化した。またその仮説を、発声制御、顔認知、パーソナルスペース、ボディイメージ、聴覚過敏や慢性疼痛などに適用して検証実験を行った。次に回復については、横断調査、追跡調査によって効果検証を行うとともに、当事者研究の方法をプロトコール化し、当事者主導型の臨床研究による介入研究を行った。
著者
谷 晋三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.13-18, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
5

認知行動療法においては、臨床的な症例報告は多くの臨床家に重要な情報を提供する。しかし、雑誌「行動療法研究」に掲載される論文の数は限られている。本研究では二つのガイドライン(Ortega & Rodriguez, 2008; Gagnieretal., 2013)が推奨する臨床的な症例報告の目的とその内容を紹介している。Robey (2004)は臨床研究における五つのフェイズモデルを提案している。臨床的な症例報告はそのフェイズI、IIとIVに含まれている。Robeyの五つのフェイズモデルでの臨床的なケースレポートの目的について最初に紹介する。次に、二つの臨床的なガイドライン、CAREガイドラインとGuidelines for clinical reports in behavioral clinical psychologyを紹介し、最後に本誌「行動療法研究」の編集者の一人として、読者に臨床的な症例研究の投稿することを推奨する。
著者
熊谷 晋一郎
出版者
University of Tokyo(東京大学)
巻号頁・発行日
2014

審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 児玉 龍彦, 東京大学教授 福島 智, 東京大学教授 中邑 賢龍, 東京大学准教授 巖淵 守, 東京大学准教授 金生 由紀子, 東京学芸大学教授 藤野 博
著者
佐藤 潤一 新矢 麻紀子 大谷 晋也 春原 憲一郎
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.69-97, 2012-06

移民の受入れと,それに伴う移民政策が急速に進んできている韓国。そこに,筆者らの研究グループ「日本語教育保障法研究会」は科学研究費補助金によって2009年より3か年にわたって赴き,移民関連施策や移民への生活・教育支援に関する調査を行ってきた。本稿は,2011年9月に実施した第3 回目となる現地実態調査の報告後編であり,2009年度調査の報告書から通算して第6号にあたる。本稿は,本研究全体の概略及び韓国現地実態調査の概要(第1章),「ソル・ドンフン氏」(第2章),「法務部(法務省)」(第3章),「アジア人権文化連帯」(第4章),「富川市労働者の家」(第5章)に関する調査報告によって構成される。なお,2011年度調査報告の前編は本号に報告(5)として掲載されている。
著者
新矢 麻紀子 大谷 晋也 三登 由利子 春原 憲一郎
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.101-127, 2010-10

韓国では近年,移民受入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2009年10-11月に科研費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告後編で,「韓国移住女性人権センター」(第2章),「緊急支援センター」(第3章),「安山市外国人住民センター」(第4章),「安山市多文化家族支援センター」(第5章),「安山市サハリン永住帰国者の家(コヒャンマウル)」(第6章),「平澤大学校多文化家族センター」(第7章),「チョ・ソンギョン氏」(第8章)に関する調査報告によって構成される。本編で2009年度調査の報告は完了し,次号では,2010年度調査について報告が行われる予定である。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 大谷 晋也 三登 由利子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.177-197, 2010-06

韓国では近年,移民受入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2009年10-11月に科学研究費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告(1)である。本稿は,研究全体の概要および韓国調査の位置付け(第1章),韓国調査の概要(第2章),政府関係機関である「韓国女性政策研究院」1)(第3章)と「保健福祉家族部多文化家族課」(第4章)の訪問調査報告によって構成される。調査によって,労働移民や結婚移民にかかわる施策の充実,特に韓国人男性との結婚移住女性およびその子どもたちを含めた多文化家族への支援に特化した法律が制定され,支援施策が進行形で日々拡大されていることがわかった。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 窪 誠 大谷 晋也 三登 由利子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.187-212, 2011-02

韓国では近年,移民受け入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2010年9月に科学研究費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告前編であり,2009年度調査の報告書から通算すると,第3号となる。本稿は,本研究全体の概略(第1章),2010年度韓国現地実態調査の概要(第2章),人権保護の国家機関である「国家人権委員会」(第3章),マイノリティ支援市民団体である「青い市民連帯」(第4章),ハングルの研究や普及促進を行っている「ハングル学会」(第5 章)への訪問調査報告によって構成される。
著者
國分 功一郎 熊谷 晋一郎 千葉 雅也 松本 卓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症の医学的研究は、近年、次々と新しい事実・データを明らかにしており、それらの理論化が必要とされている。また近年の研究により、二十世紀フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの思想の自閉症的側面が明らかにされつつある。本研究は両者を融合させ、人間についての新しい理論を作り出すことを目指している。哲学の研究者二人と、病院勤務の経験のある二人の医学研究者が共同で研究を行う点にこの研究課題の特徴がある。二〇世紀、哲学は精神分析学と強く結びついて発展した。それに対し、医学あるいは一般医療と哲学との交流は稀であったと思われる。本研究課題は、文医融合という研究の可能性を探るものでもある。
著者
岡島 純子 谷 晋二 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.201-211, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

本研究では、通常学級に在籍し、仲間との関係がうまくもてない自閉症スペクトラム障害(ASD)児に対して社会的スキル訓練(SST)を実施し、般化効果、維持効果について検討した。その際、(1)機能的アセスメントの実施、(2)標的とされた社会的スキルに関する概念的理解を深めるために、ASDの特性に合わせた教示の実施、(3)標的とした社会的スキルを行動リハーサルする機会を十分に設定するために保護者とリハーサルをするためのホームワークを行った。機能的アセスメントから特定された標的スキルは、働きかけに反応するスキル、エントリースキル、主張性スキル、感情のコントロールスキル、問題解決スキルであり、10セッションからなる個別SSTが行われた。その結果、社会的スキル得点が向上し、放課後に友達と遊びに行く割合が増え、1ヵ月後も維持していた。
著者
谷 晋二
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士 (心身障害学) 学位論文・平成10年7月24日授与 (乙第1429号)
著者
板谷 晋嗣 清野 聡子 和田 年史 秀野 真理
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1817, (Released:2019-11-08)
参考文献数
21

福岡県津屋崎入江において、カブトガニを対象に航空写真の判読によって、戦後から現在に至るまでの生息地の変遷をたどり、住民からの聞き取り調査結果と繁殖ペアのモニタリング調査結果と照合しながら、カブトガニの減少要因の解明を行った。聞き取り調査では、津屋崎沿岸域には戦後から 1980年代にかけて多くのカブトガニが生息していたが、その数は徐々に減少し 2000年代初めには、ほとんど見られなくなった状況が把握できた。繁殖ペア数は 2005年以降、毎年減少した。この繁殖ペア数の減少は、入江湾口部の累積的改変に伴う産卵基盤の砂州の劣化が一因を担っている可能性が示唆された。本研究の歴史生態学的なアプローチは、カブトガニなどの沿岸域を生息場所とする希少種の保全において、個体数減少と沿岸開発との因果関係をひも解く際の初期解析方法として有効であると考えられる。
著者
仲上 恭子 中鹿 直樹 谷 晋二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.21-025, (Released:2022-11-29)
参考文献数
14

在宅リハビリテーションでは、高齢者特有の心理状態により目標設定が不明確となっていると指摘されている。本研究では、在宅リハビリ患者に対する価値に関する介入が、生活の質と目標設定に及ぼす効果について、単一事例を通して検討した。患者は慢性腰痛を抱える男性であり、腰痛による活動性低下と、運動の拒否が生じていた。介入は、週に2回計12回の介入セッションと、2週間後のブースターセッション1回を実施した。結果、心理的柔軟性と生活の質が向上し、運動の拒否行動が減少した。価値に基づく行動として将棋を行い、痛みがあっても活動できることに気づき、運動が価値に関連づけられたことで拒否行動が低減したと考える。また、本研究では患者本人の心理的問題だけでなく、家族やリハビリ担当者との関係性とその問題を扱うことで、さらに介入の有効性を高めることができたと考えられる。
著者
熊谷 晋一郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.322-334, 2016 (Released:2018-12-20)
参考文献数
66
被引用文献数
1

自閉スペクトラム症の疫学研究や歴史社会学的研究をふまえると,診断基準の中にある社会的コミュニケーション・相互作用という概念が,本来,地域性や時代性に応じて揺れ動くinter-personalな現象を,永続的でintra-personalな現象に誤認させ得ることが示唆される。社会関係以前に存在する個体側の永続的な身体特徴は,自閉スペクトラム症といっても個々人で多様である可能性が高いため,ケースごとに個体の不変項を抽出する必要がある。そうした目的の下,我々は自閉スペクトラム症の診断を持つ綾屋と8年にわたる当事者研究を行ってきた。その結果,1)内臓感覚に由来する長期的目的の下で,行動を制御したり,記憶の取捨選択やsystem consolidationを遂行することの困難や,2)外受容感覚と統合されずに強度を増した内臓感覚によって,自他感情の認知や内発的意図を構築することの困難,感覚過敏や鈍麻,予測誤差への敏感さなどが生じている可能性が示唆された。当事者研究は,多様なimpairmentを記述するディメンジョンの候補を提起するという学術的な意義だけでなく,自分の通状況的な不変項を自ら把握することで本人のウェル・ビーイングに貢献する可能性がある。