著者
谷本 陽祐 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.13, pp.1-15, 2023-05-09

オペレーティングシステム(OS)カーネルはシステムの根幹をなし,カーネルの障害はシステム全体に影響が及ぶ.一般的なモノリシックカーネルは単一のカーネル空間を持ち,あらゆるシステムコールは単一のメモリ空間を共有している.この問題点の一つとして,カーネル空間でメモリ破壊が発生した際に,カーネル全体に影響が伝播し,カーネルが未定義の動作を起こす可能性がある.しかしながら,現在も Linux や Windows など広く利用されているモノリシックカーネル OS において脆弱性の報告は跡を絶たず,バグ修正までの期間も要する.そこで本研究では,カーネルのメモリ破壊によるエラーの伝播の影響を小さくする手法を提案する.各システムコールが自身に許可されたメモリオブジェクトのみアクセスできるようアクセス制御を行い,不正なアクセスが生じた場合,ページフォルトを起こしてシステムコールの実行を停止させる.これによりカーネルのバグによる誤ったメモリアクセスが未然に阻止され,未定義の動作を防止することができる.本研究では単一のメモリ空間内の隔離(Isolation)に Intel MPK を用いて,提案手法を xv6 に実装し,そのすべてのシステムコールにアクセス制御を実現した.実験の結果,システムコールによる不正アクセスが生じたとき,ページフォルトが発生し実行を停止できた.また,xv6 のテストプログラムである usertests を実行したところ,全体の実行時間は従来の約 1.55 倍であった.
著者
谷本 裕樹
出版者
公益社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.80, no.12, pp.1100-1112, 2022-12-01 (Released:2022-12-06)
参考文献数
43

Organic azides are well-known for the synthetic organic reactions by their energetic characteristics and the click functionality connecting two components. Especially in click chemistry, the azido groups as 1,3-dipolar play a key role in chemical biology. On the other hand, azido groups can also work as nucleophiles possessing diazonium leaving groups and as electrophiles, but the low reactivity has avoided their use. Herein, we disclose our synthetic achievements in the non-1,3-dipolar use of organic azides. As nucleophiles, the organic azides with allyl/propargyl cations and sulfonium ions gave the appropriate products, including C-C bond migration. We also demonstrated that the intramolecular hydrogen bonding interaction promoted the electrophilicity and suppressed the nucleophilicity of the azides to achieve site-selective conjugation. Furthermore, β-elimination followed by condensation converted the azido groups at the carbonyl α-position to the different click functional groups. This site-selective azido group conversion enabled the undistinguishable triazide molecule to the distinguishable triple-click scaffold compound possessing three different click groups.
著者
寺内 大輔 谷本 由貴美
出版者
初等教育カリキュラム学会
雑誌
初等教育カリキュラム研究 (ISSN:21876800)
巻号頁・発行日
no.5, pp.41-56, 2017-03-31

本論文は,筆者のひとりである寺内が授業者となって行った,小学校における授業実践をとおして,ジョン・ゾーン(John Zorn)の考案した集団即興演奏の方法《コブラ(Cobra)》の教育的意義を検討するものである。寺内は,以前,2013年に広島市立A小学校第5学年児童を対象に,簡易化されたルールによる《コブラ》の実践を行い,多様な表現を引き出す活動としての意義や,児童一人ひとりの〈ストレングス〉を生かすための実践としての可能性を考察した(寺内2015)。本論文では,2015年に同小学校第4学年児童を対象にして行った実践を対象とする。前述した2013年の実践での考察をふまえ,児童の普段の姿をよく知る学級担任である谷本との振り返りをとおして,児童一人ひとりが自らの〈ストレングス〉をどのように生かしているかを検討するとともに,《コブラ》を学習材とした活動にどのような学びが埋め込まれているかを検討した。In this thesis, we examine the educational value of Cobra, one of John Zorn's masterpieces of group improvisation, as learning material through performances in classes at an elementary school where Terauchi, one of the authors, taught. In 2013, Terauchi felt that performances of Cobra could empower and encourage various kinds of expression among fifth-grade students in an elementary school in Hiroshima(Terauchi 2015). We also examined classwork for fourth-grade children in the same school, and on the basis of previous classwork, from 2013, we considered how children might become empowered, using their own strengths. We also consider "situated learning" from the viewpoint of Tanimoto, who as a homeroom teacher, is very familiar with children's usual characteristics.本稿は,寺内の学位論文「ジョン・ゾーン《コブラ》の研究―即興演奏を素材としたコラージュとゲームをめぐる考察―」(2016)付録1「《コブラ》の教育的意義の検討―筆者による2つの授業実践を通して」第2章「小学校音楽科における実践2―2015年実践」の内容を一部修正したものである。本研究は,JSPS科研費15K04501の助成を受けたものである。
著者
谷本 奈穂 渡邉 大輔
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-69, 2016

本稿の目的は,近代家族の理念の出発点ともいえるロマンティック・ラブ・イデオロギーが,現在どうなっているかを検討することである.ロマンティック・ラブ・イデオロギーの概要をふりかえった後,雑誌記事の分析および別れの語彙の分析から仮説を立てた.(1)ロマンティック・ラブ・イデオロギーは90年代以降に衰退し,(2)代わりに「ロマンティック・マリッジ・イデオロギー」と名付けるべきものがせり出してきている,という仮説である.量的データから,仮説(1)(2)とも検証された.またとくに,ロマンティック・マリッジ・イデオロギーは,若い女性や恋愛機会の多い人に支持されていることも分かった.ただし,ロマンティック・マリッジ・イデオロギーは,恋愛を解放しても結婚は解放しなかった.結婚へのハードルは高いものといえる.
著者
谷本 道哉 高田 佑輔 栗原 俊之 村出 真一朗 柳谷 登志雄 形本 静夫
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.63-78, 2010-09

背景: 自転車サイクリング運動はレクリエーションスポーツとして広く行われている. 自転車運動は天候や交通状況の都合などから,実際のロード走行の代わりに室内でエルゴメータ等を用いて行われることも多い. しかし, ロード走行とエルゴメータのペダリング動作の違いは明確にされていない. 目的: 自転車のロード走行とエルゴメータの動作および筋活動の相違点を検証することを目的とした .使用する自転車の形状, 負荷等の条件を統一するため, 本研究ではロード走行とエルゴメータを模したものとして, 前後方向以外の自転車の動きが固定されず動作の自由度の高いフリーローラーと後輪車軸をローラーの土台に固定する固定ローラーを用いて同一の自転車ペダリング動作の比較を行った. 方法: 順天堂大学自転車競技部に所属する選手7名を用いてフリーローラーと固定ローラーでのペダリング運動を60rpm および 90rpmで行い, 下肢の関節角度変位および筋放電量を測定した. 結果: 60rpm, 90rpmともに下肢3関節の関節動作は全般的にフリーローラーにおいて固定ローラーよりも関節稼働量が小さい様子が観察された. 2試技間で有意差が見られたのは60rpmにおける股関節, 膝関節, 90rpmにおける膝関節, 足関節であった. 下肢筋群のべダリング動作中の1サイクル中の筋放電量の平均値およびピーク値は, 60, 90rpmのいずれの回転数, いずれの筋においても2試技間に有意な差は見られなかった. 結論: フリーローラーと固定ローラーではペダリング動作の下肢の関節動作形態は異なる. しかし筋放電量には相違は見られない. (英文) Background: Many people enjoy cycling as a competitive or recreational sport. Sometimes bicycle exercises are performed on bicycle ergometers indoors instead of outdoor road cycling, because of bad weather or traffic. However, the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer is not investigated sufficiently. Purpose: The purpose of this study is to elicit the difference of movement between road cycling and cycling with a bicycle ergometer by researching kinematics and electromyography data during bicycle exercise. We compared the kinematics and muscle activity of bicycle exercise on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller (bicycle trainer with a fixed rear wheel axis) as a comparison of road cycling and cycling with a bicycle ergometer. Method: Seven cyclists affiliated with the cycling club of Juntendo University performed bicycle exercises on a free bicycle roller and on a fixed bicycle roller by 60 and 90 rpm, and lower limb kinematics and electromyography data were measured. Result: Widths of lower limb joint movement were larger on the fixed bicycle roller than on the free bicycle roller both in 60rpm and 90rpm. Widths of hip joint and knee joint movements were significantly larger in 60rpm. Widths of knee joint and ankle joint movements were significantly larger in 90rpm. However, there was no significant difference in the electromyographic amplitude between the two methods in neither of the lower limb muscles and in neither of the rpms. Conclusion: The kinematics of lower limbs in bicycle exercise with a free bicycle roller was different from that with a fixed bicycle roller. However, there were no such differences between the two methods in the electromyography data of lower limbs.
著者
谷本 勲
出版者
一般社団法人 品質工学会
雑誌
品質工学 (ISSN:2189633X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.38-48, 2012-02-01 (Released:2016-10-17)
参考文献数
5

In recent years, quality demands have become increasingly stringent. Demands on the order of ppm and even demands for no defects at all are taken for granted,but means for assuring ppm-order quality have yet to be established. Prior attempts to establish such means have focused on process management and inspection, but when management and inspection are combined they become more intricate and complex, and the independence of quality assurance from process management is lost. These problems then become a major obstacle to productivity improvement. They seem to be rocking the foundation of the Japanese management, which is based on the simultaneous pursuit of quality and improvement (cost reduction). Working from the idea of producing products of uniform quality, this study attempts to establish a ppm-order quality assurance system by inspecting each product to see that it is identical to a known good product, utilizing the MT method of quality engineering. It presents new ideas for ppm-order quality management through ensuring the independence of quality management and quality improvement activities from quality assurance and applying ideas of on-line quality engineering and parameter design.
著者
谷本 智 小嶋 文 久保田 尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1135-I_1146, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
14
被引用文献数
2

生活道路に流入する抜け道交通は交通安全上大きな問題である.既存の取り組みとしてハンプや狭さくなど速度抑制デバイスが用いられてきたが,抜け道交通のみを判別して取り除くことは困難であり根本の解決には至っていない.そこで本研究では欧州で普及しているライジングボラードに着目した.ライジングボラードは,抜け道車両の選択的排除が可能なツールであり,公道では未導入である日本における導入の可能性を検討するため埼玉大学構内において運用実験を行い,基礎研究として研究成果の蓄積を行った.被験者を用いた通行実験から,通行抑制効果が明らかになり抜け道対策としての有効性が示された.また車両との接触時の安全性,悪天候などの状況下での正常な作動が確かめられるなど,導入に向けた有益な知見を得ることができた.
著者
長曽我部 まどか 谷本 圭志 森本 智喜
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.792-798, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
20

本論文では,2016年の鳥取県中部地震を事例として,被災者が災害ボランティアセンター(災害VC)に依頼したニーズを分析し,ニーズが発生する要因と発生するタイミングを明らかにした.被災者のニーズを専門的な作業が必要なニーズと一般のボランティアが対応できるニーズに分類し地区別に集計した上で,それぞれの発生要因について,地区の被害状況,災害VCまでの距離,高齢化率,自主防災組織の活動率を取り上げ,ポアソン障壁モデルを用いて推計を行った.その結果,依頼の有無については,専門ニーズは被害状況や距離が影響を及ぼす可能性が,一般ニーズは被害状況,距離,高齢化率,自主防災組織の活動率が影響を及ぼす可能性が示唆された.依頼のタイミングについては,距離を除く全ての変数が影響を及ぼす可能性が示された.更に,年齢と天候状況に着目した分析を行った結果,専門ニーズは高齢であるほど依頼するタイミングが早く,一般ニーズは,高齢であるほど遅いことが明らかになった.また天候が悪いと依頼をするタイミングが早まることが分かった.
著者
谷本 千恵
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.57-64, 2004-03

セルフヘルプ・グループ(以下,SHG)に関する研究を概観し,SHGの概念・定義,及びその援助機能・効果を検討するため,データベース(MEDLINE,医学中央雑誌,最新看護索引)の検索を中心とする文献研究を行った.SHGの定義として,専門職の関与がないことが重要な点であるが,実際には公的機関や専門職が支援していることが近年明らかになっており,これが混乱を招いている.SHGの援助機能については,メンバーの力づけ(empowerment)がその本質として考えられているが,実証的な研究はほとんどなされていないのが実状であり,今後,SHGの効果を検証するための方法論の確立が課題である.また,SHGがその援助機能を十全に発揮するためにはグループの自律性が重要であり,専門職が関わる場合は介入しすぎないことが大切である
著者
谷本 奈穂
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.51, pp.168-181, 261, 1997-07-31

This paper focuses on the attractiveness of popular Comics. At first, in previous studies and the questionnaires sent to the readers of comics, I suppose readers (high school students) felt uncomfortable. Secondly, I tried to examine the contents of the most popular comics, paid more attention to the readers' interests. And the popular comics show the development of youth, their social relations and provide bracing laughter. Lastly , I concluded that the readers, situation and comic contents have a relationship. Instead of "true satisfaction", the readers seem to be satisfied with the world of comics. The popular comic is instrument of healing for readers.
著者
谷本 亙
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.169-175, 1997-03-15 (Released:2011-09-20)

地域と酒蔵との深い関係が忘れ去られようとしたことがある。ところが, 近年, 各地で「酒蔵 (酒造場)」の存在意味を問い直すような様々な事業活動, 支援運動が行われており, いま正に, 地域の中での酒蔵を再認識すべき時に来ている。そこで, 地域振興活動に詳しい筆者に, 21世紀に向けて酒蔵の維持・発展の方向性及び方策について提示願った。
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.57-67, 2007-07

社会学の領域において,「身体」というパースペクティブが注目されている。そこでまず本論では特にAデiddensによるボディプロジェクト(body projects)概念を検討した.次に,アンケート調査から,一般的な身体加工に関する意識を分析し,次のことを明らかにした.一つは身体加工において準拠されているのは,「自己自身」,「他者の視線」,「社会の視線」であること((1)自己系,(2)他者系(消極)系,(3)他者(積極系),(4)社会系と命名).もう一つは一般的な身体加工は,他者のため((2)(3)),社会への配慮のため((4))だけでなく,自己満足のため,自分らしくあるため((1))に行われることが多いことである.また,そこにはジェンダー差があり,同じ「他者の視線」を意識するのでも((3)他者(積極)系),男性は不特定多数な異性を,女性は自分の好きな特定の人だけを念頭においている.さらに女性は,自己満足や自分らしさといった「自己自身」を準拠することが多い.そして,外見の良し悪しでも差異が見いだせ,外見をほめられる経験の多い人は,(1)自己系,(3)他者(積極系)の理由を挙げ,ほめられる経験が少ない人は,(2)他者(消極系)の理由を挙げる.(1)自己系の理由を多く挙げるのは,女性であり,外見をよくほめられる人であった.このような一般的身体加工に関する意識は,他の身体における現代的現象と関連している.
著者
山本 祥子 高田 和子 別所 京子 谷本 道哉 宮地 元彦 田中 茂穂 戸谷 誠之 田畑 泉
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.195-200, 2008-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

We measured the basal metabolic rate (BMR), fat-free mass (FFM) and physical activity level (PAL) of well-trained bodybuilders as typical athletes with muscular development by resistance training in order to examine the standard BMR and PAL ranges for athletes. The subjects were 14 bodybuilders (mean±SD age: 36.8±9.1y.; height: 171.6±6.2cm; weight: 77.1±7.6kg; FFM: 67.6±6.8kg) who each trained for an average of 7.5h per week. BMR was measured by using a Douglas bag, the oxygen and carbon dioxide concentrations were analyzed by mass spectrometry, and FFM was measured by dual X-ray energy absorptiometry. PAL was measured by the doubly labeled water method for 7 subjects selected from the 14 bodybuilders. BMR/FFM was 25.4±2.1kcal/kg of FFM/day. Total energy expenditure (TEE) was 3, 432±634kcal, and PAL calculated as TEE divided by BMR was 2.00±0.21. The FFM value needs to be considered when evaluating a standard BMR range, and both training and daily physical activity levels should be considered when evaluating a standard PAL range.
著者
谷本 奈穂
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.418-433, 2005-03-31

本稿では複数ある「ものの見方=視覚モード」を整理する.<BR>「言葉」をモデルにして対象に潜む意味や物語やイデオロギーなるものを「読解」するというモードや, 「芸術作品」をモデルにして対象と (論理を媒介にしない) 「直接的交流」をするモードが考えられる.<BR>しかし現代においては, メディア (広告ポスター, テレビ, マンガ, インターネットの動画) をモデルにした視覚モードもある.本稿ではそのモードを〈イメージ〉の生成と名づけた.<BR>このモードは「じっくり鑑賞する」というより「ちらっと・ぼんやり散見する」点, 対象に表層と深層があるとするなら「深層」ではなくて「表層」に焦点を当てる点に特徴がある.<BR>また〈イメージ〉の生成の登場は, 人が魅惑に対してむしろ醒めて麻痺したような態度を取るようになったことを意味している.
著者
原田 眞澄 谷本 満江
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.131-135, 2006-06-16
被引用文献数
1

乳幼児期は基本的な生活習慣を確立していく段階であるが,夜遅くまで起きている習慣がつく子どもが急増してきている。保育所・幼稚園などでも園児の夜ふかしが問題視され,保育者は家族に早寝早起きするよう働きかけてはいるが,期待した成果が得られていないのが実状と思われる。早寝早起きの意義は大きく理想ではあるが,時代的背景を考慮すると限界も感じてしまう。それよりも,家族がおかれている環境の中で実現可能なことから改善していくという柔軟さも必要なのかもしれない。そこで,現代の子育てにおいて,子どもに少しでも良質な睡眠を提供するための手立てとはどのようなものかを検討したいと考えた。岡山県の保育所・幼稚園の5〜6歳児260名を対象に,2週間連続の睡眠リズムと就寝時の過ごし方に焦点をあてて,質問紙によるアンケート調査を実施した。睡眠リズムは週末に崩れやすく,就寝時までの過ごし方はテレビやビデオから光刺激を多く受けている特徴が明らかになった。今後は,こうした点にも着眼した保健指導を行う必要性が示唆された。
著者
吉成 直樹 永瀬 克己 藤井 貞和 橋尾 直和 谷本 晃久 島村 幸一 安江 孝司 本田 優子 佐々木 利和
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、「日本」の両端に配置されているアイヌと沖縄のふたつの社会が、いかにヤマト社会と対峙しながら、そのアイデンティティを形成、維持してきたかという点に最終的な目的がある。ある社会のアイデンティティの核心にあるのは、言語および言語表現である。その素材として、アイヌ口承文学、琉球(首里)王府が16世紀〜17世紀に編纂した古歌謡集『おもろさうし』を主に扱った。特に、それらのテキストから、文字の無かった時代の「歴史」の復元を行う作業に労力を注いだ。たとえば、アイヌ口承文学から復元される「歴史」とは何か、『おもろさうし』から復元できる「歴史」とは何か、という問いである。「歴史」の復元の方法として、言語表現ばかりではなく、絵画や図像から「歴史」の復元を試みた。絵画、図像は、どのような社会や文化(精神世界を含めて)であったかを知るうえで重要な手がかりになるばかりではなく、文字の無かった社会の歴史復元においてはきわめて有効である。また、民俗、言語の立場から、アイヌ、沖縄の双方の社会を視野に入れた成果を得た。これは、現在のアイヌと沖縄の文化、言語を比較しようとするものでなく、それぞれの文化のさらに基層にある民俗、言語を明らかにしようとするものである。本研究を展開していく過程で、琉球社会・文化の形成に関する、大きな研究の転換期を迎えた。奄美諸島社会の古代〜中世並行期にかけての考古学的状況が明らかになるにつれ、琉球社会が従来、考えられていたような内的な発展のみで形成したとは考えられなくなったことである。この問題は、言語にかかわる分野のみならず、さまざまな分野の見直しを迫る可能性があり、また本研究の課題にも深くかかわっていたため、最終年度には、その調査・研究も手がけた。
著者
林 勝悟 谷本 啓 鹿島 久嗣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.B-K33_1-9, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)
参考文献数
26

The recent rapid and significant increase of big data in our society has led to major impacts of machine learningand data mining technologies in various fields ranging from marketing to science. On the other hand, there still existareas where only small-sized data are available for various reasons, for example, high data acquisition costs or therarity of targets events. Machine learning tasks using such small data are usually difficult because of the lack ofinformation available for training accurate prediction models. In particular, for long-term time-series prediction, thedata size tends to be small because of the unavailability of the data between input and output times in training. Suchlimitations on the size of time-series data further make long-term prediction tasks quite difficult; in addition, thedifficulty that the far future is more uncertain than the near future.In this paper, we propose a novel method for long-term prediction of small time-series data designed in theframework of generalized distillation. The key idea of the proposed method is to utilize the middle-time data betweenthe input and output times as “privileged information,” which is available only in the training phase and not in thetest phase. We demonstrate the effectiveness of the proposed method on both synthetic data and real-world data. Theexperimental results show the proposed method performs well, particularly when the task is difficult and has highinput dimensions.
著者
谷本 晃久
巻号頁・発行日
pp.162-167, 2012-03-31

新しいアイヌ史の構築 : 先史編・古代編・中世編 : 「新しいアイヌ史の構築」プロジェクト報告書2012