著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.23-34, 1986-03-20 (Released:2017-10-20)

教育工学の研究領域の1つに,教材開発がある.教材開発の方法は,各教科の独自性に依存しており,教育工学的アプローチによる教材開発の研究は数多くない.本研究では,教科内容の独自性に依存する内容に関する提案と,これを基礎にした教育工学的方法による教材作成の両面について報告する.本研究では,世界各地域に設置されている海外日本人学校の理科の教科における,天体教材を対象としている.すなわち,世界各地域で使用可能な「星座早見盤」の開発における視野の形状や分布について,新しい提案をしている.また,マイコンを用いて各地域ごとに適合できる星座早見盤を作成した.本研究の報告は,現実の問題における解決案の提案であり,その考え方および方法について論じている.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.265-273, 2008-12-20 (Released:2016-08-05)
参考文献数
12

ICTの活用と学力の関連について,諸外国の研究を調査して,総括的に述べている.本総説を述べるには,学力の定義や,ICTの活用に関わる多様な要因について言及する必要があるが,ここでは,小学校から高等学校までの教科の学力,ICTの利用頻度や形態などの要因に限定して述べている.本総説では,OECDのPISA調査,イギリスのBectaの調査,アメリカテキサス州の調査を中心にして考察した結果,ICTの活用は,全体的に教科学力の向上に効果的と言えるが,統計的な有意差は,特定の学年や教科に限定される.ICTの活用の仕方と,教育理念,授業形態,教員の指導力,技術支援体制,教材,ICTの環境などとの関連については,フィンランド,シンガポール,中国への訪問調査によって事例的に述べている.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.141-150, 1994-01-20 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
2

学習メディアとしてのテキストを対象に,箇条型の情報提示が,読み手の内容理解に与える影響を研究した.具体的には,項目型の情報について,(1)各項目を箇条に分けて,リストの形で提示した場合(箇条群)と,(2)各項目を文中に埋没させて提示した場合(埋没群)とで,どのように理解に違いがみられるかを,印刷メディアを材料として実験調査した.実験では,テキスト読解後に内容についての再生を求めた.被験者の再生文を得点化した結果,箇条群の方が埋没群より,内容理解にすぐれていることがわかった.また,項目の再生順序については,埋没群の方が箇条群よりも,テキストの提示順序に近くなることがわかった.この理由として,次のことが示唆された.(1)リスト形式(箇条型)のテキストは,そのレイアウトにより,あらかじめテキスト構造についての情報を読み手に与える.(2)リスト型提示は,情報への自由なアクセスを,視覚的に可能にする.これらの点を,先行研究との関連の中で考察した.
著者
吉野 志保 野嶋 栄一郎 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.29-32, 1997
参考文献数
4
被引用文献数
3

本論文では, 字幕の種類による理解の効果について述べている.英語音声付き映像を用いた英語の聞き取り場面を設定し, 字幕を付加した.その場合の字幕の種類により異なる効果が, 再生にどのような影響をもつのかについての認知的な実験を行った.その結果, 英語字幕が英語の再生に最も有利であった.英語字幕では, 2つのモダリティ(視覚・聴覚)による情報の入力が再生に有効に作用し, 単純に再生された英単語数が最も多いだけでなく, 意味的なまとまりとして理解されていることが示唆された.日本語字幕は, 聴覚からの入力情報(英語)と異なる視覚情報(日本語)を同時に与えるために, 英語の聞き取りや記憶を阻害すると考えられた.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.97-108, 1996
参考文献数
29
被引用文献数
8

本研究では,テキストにおけるレイアウトとしての段落表示が,内容理解に与える影響を調べた.実験では,段落の設定を変えた3種類のテキストを用意し,それぞれの再生成績を比較した.テキストは,1)正しく段落づけしたもの(正段落),2)誤った段落づけをしたもの(誤段落),3)段落のないもの(無段落),の3種類であった.再生成績は,正段落,誤段落,無段落の順であり,正段落と無段落の間に有意差があった.これは,全体の再生だけでなく,要旨の再生についても同じ結果であった.このように,正しい段落設定が内容理解を高めるのは,段落が文章を視覚的に分節化することにより,読み手に次のような読解方略を促すためであると推察された.つまり,1)段落ごとに内容を体制化し,ポイントを把握する;2)段落間の関係をもとに文章構造を理解する,という方略である.このような方略の利用が,読み手の内容理解を促進すると考えられた.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.97-108, 1996-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
29
被引用文献数
3

本研究では,テキストにおけるレイアウトとしての段落表示が,内容理解に与える影響を調べた.実験では,段落の設定を変えた3種類のテキストを用意し,それぞれの再生成績を比較した.テキストは,1)正しく段落づけしたもの(正段落),2)誤った段落づけをしたもの(誤段落),3)段落のないもの(無段落),の3種類であった.再生成績は,正段落,誤段落,無段落の順であり,正段落と無段落の間に有意差があった.これは,全体の再生だけでなく,要旨の再生についても同じ結果であった.このように,正しい段落設定が内容理解を高めるのは,段落が文章を視覚的に分節化することにより,読み手に次のような読解方略を促すためであると推察された.つまり,1)段落ごとに内容を体制化し,ポイントを把握する;2)段落間の関係をもとに文章構造を理解する,という方略である.このような方略の利用が,読み手の内容理解を促進すると考えられた.
著者
中西 晃 赤堀 侃司 野田 一郎 木村 達明 斉藤 耕二 藤原 喜悦
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.帰国子女の文化的アイデンティティの形成に関する調査研究現在は社会人として活躍しているかっての帰国子女が, 自分の青少年時代の異文化体験をどう評価し, それが現在の個人の人格形成にどのような関わりがあるかを調査研究した.(1)研究の手法 青少年時代に海外で生活し, 現在は社会に出ている異文化体験者に対し, 質問紙法及びインタビューによって調査を行った. 質問紙法では同年代の未異文化体験者を統制群とし, 比較検討を行った. (2)研究の成果 (1)職業, (2)余暇, (3)友人, (4)職場, (5)父母, (6)結婚, (7)人生観・人格, (8)異文化体験の影響の8項目にわたっての調査を統計的に分析した結果, 当初想定していた程ではなかったものの, 異文化体験群と統制群とではそれぞれの項目について有意な差が検出された. 面接法によっての調査からも, 個人の人格形成にとっては異文化体験はその成長を促すものであり, プラスの関与があったことが伺えた.2.帰国子女の国際感覚に関する意識の調査研究帰国子女の国際感覚が一般生とどのように異なるかを対比することによって, 帰国子女の国際感覚の特質を明らかにする調査研究を行った.(1)研究の手法 帰国子女のうち, 中・高校生を対象に質問紙法による調査を行った. 同年齢の一般の生徒を統制群として比較検討した.(2)研究の成果 (1)日本の印象, (2)外国語, (3)差別, 偏見, (4)生活習慣, (5)個性, (6)将来・進路の5つの内容について統計分析の結果, 帰国生と一般生の間には各内容に有意差が見られた. 帰国生には外国語・差別偏見に対する意識, 海外での進学・就職志向に顕著な特徴が見られた. また, 帰国前の日本の印象, 生活習慣の変容, 周囲に合わせる傾向から, 帰国生の日本への適応の様子の一端を窺うこともできた.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.139-147, 1989
被引用文献数
3

授業を対象として,これを分析する方法を開発した.授業を教師と学習者のコミュニケーション過程としてとらえ,教師の教授行動と学習者の学習行動の相互作用を,単位時間の授業のなかから抽出する方法である.その方法は,従来の教授行動,学習行動のカテゴリー分析に改良を加えたものであり,カテゴリーの時系列データから,授業の特徴を表すカテゴリーの遷移パターンを抽出する方法である.その遷移パターンは,ネットワーク構造と階層構造の二つの形で表示することができる.授業の事例に適用し,(1)授業のなかで出現する頻度による遷移パターンの差異,(2)授業者(熟練教師と教育実習生)による遷移パターンの差異を検討した.その結果,遷移パターンの分析から,(1)では,出現頻度が小さくなるにしたがって,ネットワーク構造になること,(2)では,教育実習生は,教師主導型であり,単調な応答パターンであることに対して,熟練教師は,教師と学習者の双方コミュニケーショソ型であり,多様な応答パターンであることがわかった.本研究は,その分析方法の提案と適用結果について報告するものである.
著者
伊藤 清美 柳沢 昌義 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.491-500, 2006
被引用文献数
7

eラーニングやコンピュータを使う授業などでは,Web教材を使った学習が使われている.しかし,それらの教材は主に学習者のディスプレイ上に表示されるため,教科書や印刷教材のように自由に書き込みを行うことができない.本研究では,学習者が印刷された教材に書き込むのと同様にWeb教材に書き込めるシステム,WebMemoを実現した.学習者はWeb教材にメモ・蛍光ペン・図などを自由に書き込み・保存・閲覧することができる.Webページに描画されたデータはシステム内のデータベースに保存され,次回参照時にも表示される.大学生を被験者とし,実際の授業で3種類の評価実験を行った.その結果,紙と同様にWeb教材に直接書込むことの有用性が評価され,Webへ書き込んだ内容を見直すことによる学習効果があることが明らかになった.また,紙への書き込みと比較した結果,直線,囲みなどといったインタフェースの改良の必要性が示された.
著者
加藤 由樹 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2005
被引用文献数
6

本研究は, 電子メールのコミュニケーションで生じる感情に及ぼす, メール文の内容の影響に注目した.本論文は, 研究Iと研究IIから構成される.研究Iでは, 62名の被験者に, 実際に電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらい, ここで収集したデータから, 電子メールの内容と, それを読んだ時の感情的な側面との関係を, 重回帰分析を用いて探索的に調べた.結果から, 「顔文字」, 「性別の返答」, 「質問」, 「強調記号」, 「文字数」の影響が示された.続いて, 研究IIでは, これらの要因の影響を仮説として, 23名の被験者に, これらの要因を操作したメール文を提示して, それを読んだときの感情を測定した.結果から, これらの要因の影響は, 概ね支持された.このことから, 電子メールでは, 自己を強く主張するのではなく, 相手との関わり合いを重視し, 顔文字などを上手く用いることで, コミュニケーションが良好になる可能性が示唆された.
著者
赤堀 侃司 中山 実 柳沢 昌義
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

目的:本研究の目的は,アバタ自体が休息,もくしはリラックスすることにより,作業者がそれをみただけで癒されるたり,あるいは休息行為を促されるためのインタフェース作りである.これに必要なアバタの見かけや動作を開発・実装し,効果についてアンケート調査を行う.方法:MSオフィスアシスタント(以下MSアシスタント)と同等のサイズのキャラクター(癒しキャラ)を1個作成した.癒しキャラには背伸びなど全8動作を行わせた.これに対して,10個のMSアシスタント(犬,イルカなど)から各8動作,計88動作を抽出した.これらの癒し効果について,Web上でアンケート調査を行った.アンケートは7段階評価であり,分析的項目(5つ)と包括的項目(3つ)から構成された.手順:Web上のアンケートサイトにて,被験者1人あたりMSアシスタント2個と癒しキャラの計3個を評価させた.なお,MSアシスタントはランダムに割りふった.各キャラクターの被評価人数は約30名であった.結果:癒しを促進するキャラクターと行動を明らかにするために,評価項目ごとに,癒しキャラとMSアシスタントの88種類の行動について一元配置分散分析を行った.その結果,全体的な傾向として,犬とイルカの行動が,他のキャラクターに比べ,より癒しを促進していることが明らかになった.考察:花や貝殻など癒しイメージが感じられるものや,火炎放射器を使うなど意外性・非日常性が感じられる行為に癒し効果が認められた.また,キャラクターの「かわいさ」も重要な要因であることがわかった.今後の癒しキャラ開発では,作業者が日常とっている行動との関連や,キャラクターの影響を考慮する必要がある.また,作業者自身が休息行為を行うことによる癒し効果や,脳科学の知見の検証にも展開させていきたい.<スケジュール>平成19年3月日本教育工学会研究会における成果発表
著者
山田 政寛 松本 佳穂子 赤堀 侃司
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.15-24, 2009
被引用文献数
3

高帯域ネットワークが普及し,テキストチャットなどの同期型CMCツールは日常的なコミュニケーションツールとして利用が増加している.しかし,第二言語コミュニケーション学習の中で実践利用が乏しく,どのように利用するべきか知見が少ない状況にある.本研究では第二言語コミュニケーション教育に特化した同期型CMCを開発し,授業において評価を行った.具体的にはビデオカンファレンスとテキストチャットを使用し,主観的評価として,学習意識,相手への親近感,学習満足度について質問紙で,学習パフォーマンスの点では発言数,定型表現利用数,自分で自分の発言の誤りを修正する自己修正数で実践の事前事後で比較評価を行った.その結果,ビデオカンファレンスは意味伝達を強く意識し,会話の自信がつくなどの情意面に有効であり,また全てのパフォーマンスが向上することが示された.一方,テキストチャットでは文法的な正確性意識を向上させる効果があることが示された.
著者
菊地 秀文 赤堀 侃司
雑誌
日本教育工学会大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.405-406, 2001-11-23
参考文献数
2
被引用文献数
2
著者
加藤 尚吾 古屋 雅康 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-14, 2004
参考文献数
25
被引用文献数
8

不登校児童生徒11名を対象に,電子メールカウンセリングを実施し,実施前と後で不登校状態を比較したところ,ほぼすべての児童生徒に改善がみられた.そこで,電子メールカウンセリングが不登校状態の改善に果たした役割を検討した.児童生徒が送信した電子メール文の内容分析の結果,改善の大きかった児童生徒の電子メール文中の「学校・学習関連」,「友達関連」語が,改善の小さかった児童生徒よりも多かった.また,それらは前半に送信した電子メールに比べ,後半に送信した電子メール文中により多かった.保護者へのアンケート及びカウンセラーヘのインタビューから,電子メールカウンセリングのための家庭へのパソコンの導入が家族の共通の話題を生み,家庭内のコミュニケーションが増加したことが分かった.また,インターネットを使って興味の対象を深く調べたり,パソコンを使って自己表現をしたりと,児童生徒の活動方法が広かったことが分かった.