著者
袁 軍 世良 耕一郎 高辻 俊宏
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.149-160, 2015 (Released:2015-05-21)
参考文献数
16

Objective: To investigate human health effects of radiation exposure due to possible future nuclear accidents in distant places and other various findings of analysis of the radioactive materials contaminating the atmosphere of Nagasaki due to the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident. Methods: The concentrations of radioactive materials in aerosols in the atmosphere of Nagasaki were measured using a germanium semiconductor detector from March 2011 to March 2013. Internal exposure dose was calculated in accordance with ICRP Publ. 72. Air trajectories were analyzed using NOAA and METEX web-based systems. Results: 134Cs and 137Cs were repeatedly detected. The air trajectory analysis showed that 134Cs and 137Cs flew directly from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant from March to April 2011. However, the direct air trajectories were rarely detected after this period even when 134Cs and 137Cs were detected after this period. The activity ratios (134Cs/137Cs) of almost all the samples converted to those in March 2011 were about unity. This strongly suggests that the 134Cs and 137Cs detected mainly originated from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident in March 2011. Although the 134Cs and 137Cs concentrations per air volume were very low and the human health effects of internal exposure via inhalation is expected to be negligible, the specific activities (concentrations per aerosol mass) were relatively high. Conclusion: It was found that possible future nuclear accidents may cause severe radioactive contaminations, which may require radiation exposure control of farm goods to more than 1000 km from places of nuclear accidents.
著者
星 正治 坂口 綾 山本 政儀 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 川野 徳幸 豊田 新 藤本 成明 井上 顕 野宗 義博 原田 結花 高辻 俊宏 七條 和子 遠藤 暁 佐藤 斉 大谷 敬子 片山 博昭 チャイジュヌソバ ナイラ ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ ズマジーロフ カシム 武市 宣雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

放射線による発がんなどのリスクは、ほぼ広島・長崎の被ばく者の調査により評価されてきた。その結果は国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て、国内法である放射線障害防止法に取り入れられている。しかし原爆は一瞬の被ばくであるが、セミパラチンスクでは長時間かつ微粒子による被ばくである。従ってそのリスクは異なっている可能性がある。本研究は共同研究による被曝線量とリスク評価である。測定や調査は、1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦、歯、染色体異常による被曝線量、3.聞き取り調査による心理的影響、4.データベースの整備とリスク、5.微粒子効果の動物実験などであり、被爆の実態を解明した。
著者
七條 和子 中島 正洋 高辻 俊宏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

原爆被爆者について放射性物質が体内に取り込まれたという証拠はない。放射性物質の経口摂取や吸入は発がんリスクの増加に深く関わっている。1945年死亡した長崎原爆被爆者の保存試料に長崎原子爆弾の原料プルトニウムが存在し、70年経った今もなお被爆者の細胞からアルファ放射線を出し続けている画像を撮影した。原爆被爆者の肺、肝臓、骨等のパラフィン標本からは239、240Pu特有のアルファ飛跡パターンが得られ、内部被曝の放射線量は対照群に比べ高く、被爆時の遮蔽と死亡日に関与していた。我々の結果は原子爆弾による内部被曝の科学的証拠を世界に提示し、被爆者の内部被曝の影響を病理学的に研究するひとつの橋頭保となる。
著者
高辻 俊宏
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.41, 2010

長崎の黒い雨の科学的記録は限られている。その記録によれば、黒い雨は爆発後約20分後に爆心から約3km東にある西山地区で降り出した。爆発時は風速約3m/sの南西の風であったと報告されている。しかし、<SUP>239,240</SUP>Puと、<SUP>137</SUP>Csの有意な汚染は主として爆心から真東の地域に見つかっている。西山地区の<SUP>239,240</SUP>Pu濃度と外部線量率は、広島の黒い雨地域よりはるかに高かった。降雨は爆心近くの多くの地点で報告されている。少し遠いが、爆心から北西約19 km の大村海軍病院では、爆発後約10分で天気雨が報告されている。しかし、雨は黒くなかった。<BR> 黒い灰と微軽量物が爆心から真東の地域で降り、それは、爆心から10 kmにまで届いたと報告されている。畑は微軽量物で薄白くなり、サトイモの葉には指で字が書けたと報告されている。<BR> 原爆被爆者として公式認定されなかった人々は、西山地区を含む広い範囲に爆発直後、強い放射性降下物があったはずだと主張して、日本政府に認定を求める訴訟を起こした。西山地区における爆発1時間後からの人体への最大外部積算線量は、約0 .4 Gyと見積もられた。また、ホールボディカウンタによる測定や染色体の調査では、高線量内部被ばくの兆候はなかった。しかし、外部線量の直接測定は爆発後48日目から始められ、ホールボディカウンタによる測定と染色体の調査は1969年に始まった。当時の西山地区住民の多くは地区で育った野菜を食べ、西山水源池の水を飲んでいたものと思われる。西山水源地の水を毎日飲んでいた当時の一人の住人は、爆発1年後から、のどが腫れ、痛み出したと言っている。爆発後初期の内部被ばくの評価が重要である。
著者
木村 真三 三浦 善憲 高辻 俊宏 三宅 晋司 佐藤 斉 遠藤 暁 中野 正博
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ原発事故発生から30年後の被災地域において、一年間にわたってホールボディカウンタによる住民の内部被ばく調査、陰膳法による食事調査を行い、関連を分析。内部被ばく調査では、予備調査で最大23,788Bq/body, 本調査で最大7,437Bq/bodyの放射能が確認され、冬季は高く、夏季は低い傾向がみられた。食事調査では、年間合計で1,446サンプルを分析。森林由来のキノコ、ベリー類や牛乳で高い放射能が確認され、最大は乾燥キノコで24,257Bq/kgであった。30年経過時点でも食事から放射性物質を取り込んでいる実態が明らかになり、食生活の観点から被ばく予防を行う必要性が確認された。
著者
井手 清志郎 辻 俊宏 小針 健太郎 山中 一司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.147, pp.17-22, 2006-07-05
被引用文献数
1

分域の成長過程をAFMにより直接観察するためには電場の印加方向をAFMの観察面内にする必要がある。そこで10μmの間隙をもつ表面電極対をリラクサー系強誘電体単結晶PMN-PTに作製し、超音波原子間力顕微鏡(UAFM)およびラテラル圧電応答力顕微鏡(LPFM)を用いて電場印加による分域のスイッチング挙動を評価した。UAFMではLPFMで見られた分域境界で接触弾性の低下により共振周波数が低下したが、LPFMで見られない表面下で傾斜した分域境界も観察できた。電界を印加した結果、電界が弱い場合には可逆的な分域スイッチングが、強い場合には分域境界の移動を伴う不可逆的なスイッチングが観察された。移動を伴うスイッチングでは電場の方向に対して相対的に安定な分域が成長する過程が観察された。表面電極対は強誘電体の分域挙動の評価に有用である。
著者
中村 剛 野瀬 善明 高辻 俊宏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の最大の成果は、福岡市医師会との密接な協力関係のもと、「大型回遊魚の摂取⇒有害ミネラルの蓄積⇒乳幼児健康異常」といった仮説を検証し、臨床還元するためのプロジェクトが動き出したことである。九州大学医学部倫理委員会で承認され(代表者:野瀬善明教授)、既に親子約600組のコホート集団が構成されつつあり、毛髪の測定機器の準備も整いつつあるが、本研究の範囲を越えるので詳細は省く。以下において、項目ごとに研究成果のまとめを記す。1.多変量比例ハザード測定誤差モデル用FORTRANプログラムを作成しアップした。2.食習慣調査と遺伝要因調査:タッチパネルとパソコンを連動することにより、液晶画面にタッチして回答を入力するシステムを開発した。質問内容は(1)アトピー性皮膚炎診断のための5項目、(2)肉、野菜、魚の摂食割合、(3)よく食べる寿司ネタ、(4)大型回遊魚の摂食回数に関する3項目、からなる。3.長崎市保健センターにて実施した結果80%という期待通りの受診者が参加した。しかし、質問紙によるアンケートも実施し、回答率、信頼性を比較した結果、大勢を対象とした調査では、質問紙による方が優れていると結論された。4.約600名の分析結果として7%がアトピー、更に7%がアトピー疑い、とされた。5.ロジスティック回帰モデルによる解析の結果、(1)親族にアトピー、ぜんそく、アレルギー体質の方がいるとアトピーのリスクが高い。(2)女のほうが男よりアトピーのリスクが高い。(3)小型魚の割合が高いほどリスクが低い。(4)卵の回数が多いほどリスクが低い。特に0から2までのリスクの減少が大きい。結論:大型回遊魚との関連はみられなかったが、性別、遺伝要因の影響を修正したあとに、小型魚の摂食回数がリスクを減少するという新たな知見を得た。また卵の摂食回数が少ない程リスクが高いのは、家庭での料理の回数が少ないほどリスクが高いことを示唆していると推察される。
著者
辻 俊宏 山中 一司 三原 毅
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

走査プローブ顕微鏡により逆圧電応答を計測する圧電応答顕微鏡(PFM)により、強誘電体メモリ用薄膜の疲労現象やMEMSのアクチュエータ用薄膜の性能向上のメカニズムが明らかにされつつある。しかしデバイスの動作環境、すなわち分極反転過程および逆圧電駆動中の分域をナノスケールの空間分解能で観察する手法は確立されていない。本研究では、表面に作製した電極対(表面電極対)の微小なギャップを利用してデバイスの動作環境の再現を試み、ナノスケールにおける弾性特性評価が可能な超音波原子間力顕微鏡(UAFM)により評価して、強誘電体材料の実用的な環境における材料評価技術の確立を目的とした。強誘電体材料には様々なものがあるが、ここでは特定の結晶方位に分極処理を施すことで従来の材料に比べて著しく高い圧電係数を発現することで近年注目されているマグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg2/3Nb1/3)O3-PbTiO3:PMN-PT)単結晶について実験を行った。その結果、この材料はキュリー点が130℃と低いために真空蒸着による電極作製時の入熱で脱分極分域組織が発生してしまったものの、表面電極対の電場で分域構造を駆動可能なことが初めて示された。その際に発生した分域境界をUAFMで観察した結果、表面下で斜めになっていることを示唆する結果が得られた。これはPFMのように誘電率の高い材料で電場が表面に集中する状況では不可能な測定であり、UAFMによる表面下欠陥の3次元構造の解析の可能性を実証できた。このように強誘電体材料の分域構造の評価において表面電極対を用いた電界印加およびUAFMによる非破壊評価が有用なことを初めて実証した。以上の研究により微細加工電極により分極・駆動される強誘電体の超音波原子間力顕微鏡による非破壊評価に関する基盤技術が確立でき当初の目的を達成した。
著者
赤尾 慎吾 佐久間 正典 小針 健太郎 山本 祐太朗 野口 和洋 中曽 教尊 辻 俊宏 山中 一司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.212, pp.81-86, 2008-09-18

安全・安心のために、ユビキタスな多種類ガス分析装置の要求がある。多種類のガス検出手法として、ガス成分の時間分離を原理としたガスクロマトグラフ(GC)が多く使用されているが、キャリアガス等のユーティリティが必要でかつ装置が大型であることから、ガスをサンプリングして分析室内での使用を余儀なくされてきた。我々は、小型で室温動作可能な球状弾性表面波(SAW)センサを開発してきた。SAWを球の表面に特定の条件で励振させることにより、無回折な自然な平行ビームとして多重周回させる事で長距離伝搬を可能にした。このため、音速の変化や強度の減衰率が超高感度で計測できる。この技術をGCに応用することで、小型で、高感度な多種類ガスセンサを提案する。
著者
辻 俊宏 小針 健太郎 井手 清志郎 山中 一司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.147, pp.23-28, 2006-07-05

超音波原子間力顕微鏡(UAFM)の高精度化にはカンチレバーのスプリアス応答の抑制が重要である。スプリアスの主な原因はカンチレバーチップの基板のたわみ振動である。そこで制振板により基板の曲げ剛性を高める手法を提案する。その結果、共振周波数の測定精度が向上した。また水平曲げ1次(L1)モードの測定の再現性も改善した。L1モードは横接触弾性を選択的に評価できるので、たわみモードによる縦接触弾性の評価と組み合わせることで、UAFMによる組織や欠陥の方向性評価が可能になる。強誘電体単結晶PMN-PTの分域構造の評価に適用した結果、L1モードを用いた評価により分域境界でせん断弾性が著しく低下する現象が初めて見出された。