著者
野呂 文行 藤村 愛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.71-82, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
10

注意欠陥・多動性障害児童の授業準備行動の改善に関して、機能的アセスメントとそれに基づく介入方法の効果を検討した。機能的アセスメントは、教師に対するインタビューと教室内での直接観察によって収集された情報に基づいて実施された。このアセスメントから作成された介入案は、教室内で適用する前に大学相談室にて機能的分析が試みられた。アセスメントに基づいて担任教師に対して提案された介入案は、1)授業準備に関する個別指示、2)授業準備の遂行に対するトークンの提示であった。トークン表は担任教師により1週間に1回の割合で大学相談室に送付され、その結果に基づいてバックアップ強化子が対象児童に対して提示された。これらの手続きが実行されることで、対象児童の授業準備行動において改善が示された。この結果から、注意欠陥・多動性障害児童が教室内での示す行動問題に対して、機能的アセスメントの利用が有効であることが示唆された。
著者
佐々木 かすみ 竹内 康二 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.49-59, 2008-05-31 (Released:2017-07-28)

本研究は(1)演奏スキルの形成、(2)家庭における自己練習、(3)演奏発表から構成されるピアノ指導プログラムを自閉性障害児2名に実施し、その効果を各事例に即して検討することを目的とした。(1)ピアノスキルの形成は、楽譜・鍵盤へのプロンプトの配置による「系列指導」、音楽の随伴プロンプトによる「リズム指導」を行った。その結果、系列は速やかに学習し、リズムの学習は2名で異なった獲得経過を示した。(2)家庭における自己練習は、自己記録および録音により演奏そのものが強化子となり練習が維持された。(3)演奏発表は参加児の社会的強化機会だけではなく、参加児に対する周囲の評価が高まる可能性が示唆された。自閉性障害児においてピアノ演奏が余暇として定着するためには、演奏技術の習得、家庭練習における技術の習熟、発表会での社会的強化の経験を含む包括的なピアノ演奏指導の有効性が検証された。
著者
佐々木 銀河 青木 真純 五味 洋一 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.221-230, 2017-03-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
12

本研究では、自閉スペクトラム症のある大学生1 名に対して行動契約法を導入し、学生による自主学習が促進されるかを検討した。初回来談時のアセスメントの結果をもとに支援計画を立案した。まず、自主学習時において取り組む問題数を設定する目標設定を行った。その後、目標を書面化し、対応する強化子の提供等を明記した行動契約法を導入した。行動契約法の後で、再び目標設定のみによる自主学習の促進効果を評価した。その結果、目標設定のみでは自主学習は促進せず、行動契約法によって自主学習が促進されることが示された。この結果について、行動契約法で設定される強化子の設定・管理および障害学生支援としての意義について検討した。
著者
青木 康彦 龔 麗媛 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.87-102, 2019-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
41

自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)児の療育指導において社会的関わりによる強化は重要であると考えられるが、一部のASD児においては社会的関わりが強化子として機能していない可能性が指摘されており、社会的関わりを条件性強化子とする成立率が高い方法の検討が必要である。本研究では、ASD児、発達障害児や定型発達児を対象とした研究における年齢、診断、条件づけの方法、中性刺激の種類、強化子の種類、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせごとに条件性強化子成立の差異を検討し、ASD児における条件性強化子成立の条件を検討することを目的とした。条件づけを実施した26篇の研究を対象に、「年齢」、「診断」、「条件づけの方法」、「中性刺激の種類」、「強化子の種類」ごとに条件性強化子の成立率を算出した。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせにおける条件性強化子の成立率を算出した。その結果、年齢、診断、中性刺激、強化子の種類ごとに条件性強化子の成立率に差がみられた。また、中性刺激の種類と強化子の種類の組み合わせでは、ある中性刺激との組み合わせで条件性強化子成立率が高い強化子刺激であっても、別の中性刺激との組み合わせでは条件性強化子の成立率が低い場合がみられた。今後、ASD児にとって社会的関わりが強化子として機能するために、社会的関わりと組み合わせる強化子について検討する研究が多く実施されることが望まれる。
著者
青木 康彦 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.25-32, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
18

本研究では、自己刺激行動が多くみられ、食べ物、玩具を強化子とした随伴ペアリングによって、称賛の条件性強化子が成立しなかった自閉スペクトラム症児に対して、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけを実施し、その効果を検討することを目的とした。指導では、標的行動が生起した際に、日常生活で聞いた経験の少ない称賛コメントと自己刺激性強化子を産出する玩具を同時に与えた。その結果、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした随伴ペアリング後において、12ブロックの間、称賛は強化子として拍手の生起頻度を高めた。また、随伴ペアリングを行なっていない他の行動についても、ベースライン期よりもペアリングⅡ期後の称賛期で生起頻度が高いという結果が得られた。本研究の結果から、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけの有効性が示唆された。
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05 (Released:2017-06-28)

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
小野寺 謙 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-13, 2006-05-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
3

自閉性障害の小学生2名を対象に、見本刺激と比較刺激に対する反応分化手続きの導入が見本合わせ課題の獲得を促進するかどうかについて検討した。研究1では、児童1名に対して、絵-ひらがな単語間の見本合わせ課題に関して、反応分化手続きを導入した。その結果、比較刺激に対する反応分化手続きの導入が効果を示す一方で、見本刺激に対する反応分化手続きは促進効果を示さなかった。研究2では、児童1名に対して、カテゴリー弁別の課題において反応分化手続きを導入した。その結果、見本刺激と比較刺激の両刺激に対する反応分化手続きの導入によって、見本合わせが成立した。反応分化手続きの促進効果について、見本合わせ課題の下位スキルである、見本刺激の継時弁別および比較刺激の同時弁別の成立という観点から考察を行った。
著者
鶴見 尚子 五味 洋一 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.129-139, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

小学校3年生の通常学級の給食準備場面において、準備の遂行に困難のある児童2名を含む学級全体の準備行動、および相互作用の促進のために、相互依存型集団随伴性が導入された。研究の第一の目的は、集団随伴性に先行して対象児童に提供された個別的支援が、負の副次的効果を予防したかどうかを検討することであった。第二の目的は、学級全体と班のそれぞれに対する集団随伴性が、児童間の相互作用に与える効果の違いを明らかにすることであった。対象児童への個別的介入、学級全体への集団随伴性、班に対する集団随伴性の付加的導入を順次実施した結果、学級全体の準備行動が促進され、負の副次的効果は低い水準に抑えられた。また、最後の条件において適切な相互作用の生起頻度が増加した。この結果から、個別的支援と組み合わせること、強化を随伴する単位を小さくすることにより、相互依存型集団随伴性のもとで適切な相互作用を促進できることが示唆された。
著者
神山 努 上野 茜 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.361-375, 2011 (Released:2013-09-14)
参考文献数
90
被引用文献数
1 1

本研究は、発達障害である自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害を対象とした育児方法に対する保護者支援の先行研究において、保護者の負担がどの程度考慮されたかを検討することを目的とした。方法に関しては、2005年から2011年までの保護者支援の実践研究64本について、対象者の生活年齢および障害種別の標的行動、実施されたアセスメント、保護者の負担に関する記述の有無について分析した。その結果、保護者の負担に関する記述はいずれも半数以下にとどまり、保護者に関してや、標的行動・介入手続きの選定に関するアセスメントの実施も少なかった。今後の課題として、保護者の負担を考慮する必要があり、介入手続きの学習や実施維持において保護者にかかる負担を軽減するために、保護者の特性や、標的行動介入手続きの選定に関するアセスメントを検討する必要を指摘した。
著者
五味 洋一 大久 保賢一 野呂 文行
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.97-115, 2009-01-31

通常学級におけるアスペルガー障害児童の学習参加を標的として、機能的アセスメントに基づく自己管理手続きの効果を検討した。研究1では、インタビューおよび行動観察を通じて離席等の問題行動の機能を推定し、その結果に基づいて支援計画を立案した。支援計画はおもに1)個別課題の提示、2)代替行動の教示、3)課題従事に対する自己管理手続きの導入によって構成された。自己管理手続きを導入し、適切な行動および代替行動を自己記録の対象としたことにより、対象児の離席は顕著に減少したが、課題従事に改善はみられなかった。そこで、研究2では自己記録の対象を個別課題の正答数へと変更し、その効果を検討した。行動的産物である正答数を自己記録の対象とすることにより、正答数だけでなく、正答にいたるために必要な課題従事も増加した。これらの結果から、通常学級における効果的な自己管理手続きの適用方法が検討された。
著者
丹治 敬之 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.87-97, 2010-03-25

本研究では、既に平仮名の読みが可能であった自閉性障害児2名に対して、片仮名単語の構成反応見本合わせ課題を用いた指導を行い、直接指導していない平仮名-片仮名文字間において等価関係が成立するかどうかを検討した。研究1では、1名の自閉性障害児において、絵を見本刺激とする片仮名単語構成課題を実施した。その結果、直接指導していない片仮名文字や片仮名単語の読み獲得および、平仮名文字-片仮名文字間における等価関係の成立が示された。研究2では、1名の自閉性障害児に対して、音声を見本刺激とする片仮名単語構成課題を実施した。プレテストおよびポストテストを導入したことで、構成反応見本合わせの指導の結果によって、平仮名-片仮名文字間の等価関係が成立したことを明らかにすることができた。これらの結果から、先行研究で示されてきた平仮名や漢字の指導だけではなく、片仮名の指導においても刺激等価性を用いた指導の適用可能性が示された。
著者
四日市 章 河内 清彦 園山 繁樹 長崎 勤 中村 満紀男 岩崎 信明 宮本 信也 安藤 隆男 安藤 隆男 前川 久男 宮本 信也 竹田 一則 柿澤 敏文 藤田 晃之 結城 俊哉 野呂 文行 大六 一志 米田 宏樹 岡崎 慎治 東原 文子 坂尻 千恵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

研究成果の概要 : インクルーシブ教育を理論的・実践的両側面から捉え、国内外の障害に関する理念・教育制度の展開等について歴史的に解明するとともに、特定地域の幼児・親・教師を対象として、障害のある子どもたちのスクリーニング評価の方法の開発とその後の支援について、長期的な研究による成果を得た。
著者
野口 美幸 佐藤 容子 野呂 文行
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.237-247, 2005-03

本研究は、第1に不注意や多動を示す児童が示す攻撃的行動の実態を明らかにすること、第2に不注意や多動を示す児童の攻撃的行動の高低によって、抑うつや孤独感の状態が異なるかどうかを明らかにすることを目的としていた。研究1では、不注意・多動群の児童(N=85)と統制群の児童(N=86)の攻撃的行動を比較した。その結果、不注意・多動群は統制群よりも攻撃的行動尺度の得点が有意に高いこと示された。研究2では、まず、不注意・多動群と統制群の抑うつと孤独感について比較したところ、不注意・多動群は有意に孤独感の得点が高かった。次に、不注意・多動群と統制群をそれぞれ攻撃的行動高群、低群に分け、4つの群の間の抑うつおよび孤独感について比較した。その結果、抑うつについても孤独感についても群間に有意差は見られなかった。今後は攻撃的行動を細かく分類し、怒りや敵意を考慮に入れて検討してゆくことが重要であると考察された。