著者
井上 博紀 谷 万喜子 西村 栄津子 高田 あや 鈴木 俊明 吉田 宗平
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-104, 2007 (Released:2008-01-18)
参考文献数
8

We report the effect of acupuncture based on the meridian concept by the writing evaluation test and writing pressure in a patient with writer's cramp. The case was a 32-year-old male, who was right-handed. The patient reported feeling a sense of incongruity while playing slot machine, and also in handwriting in X+6 years. When the department of nerve internal medicine at a local hospital was consulted, the problem was diagnosed as dystonic writer's cramp. We started acupuncture treatment in our clinic from X year. Acupuncture was performed once a week. Multiple epidermis penetrating needles were used to treat skin and muscle shortening on the palm and forearm. Retaining needles were used for scalp acupuncture in the upper limb zone, LI4 and ST11. Consequently, although some involuntary movement persisted 10 weeks after the start of treatment, control of handwriting became possible. Moreover, agitation during the application of writing pressure before acupuncture therapy was improved after acupuncture therapy. The results suggest that acupuncture therapy with the retaining needles and multiple epidermis penetrating needles is beneficial for dystonic writer's cramp.
著者
生田 啓記 谷 万喜子 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-123, 2017-03-31 (Released:2019-05-27)
参考文献数
16

膝関節における運動器疾患では内側広筋の筋緊張低下の改善に難渋する.本研究は循経取穴による鍼刺激が膝関節伸展運動時の大腿四頭筋の筋機能に与える効果を検討した.対象は健常者9名とした.課題は経穴刺激(太白穴),非経穴刺激,無刺激とし,膝関節伸展を膝関節屈曲60°,最大随意収縮60%での等尺性収縮で置鍼刺激開始前,開始直後,5分後,10分後,15分後で行い,内側広筋斜頭,内側広筋長頭,大腿直筋,外側広筋の表面筋電図を各3回5秒間計測した.経穴刺激群での内側広筋斜頭の筋電図積分値は,置鍼刺激15分後に有意な低下を認めた.太白穴を用いた鍼治療では置鍼15分後において内側広筋斜頭の疲労緩和と筋機能向上に対する効果がみられた.
著者
岩城 隆久 嘉戸 直樹 伊藤 正憲 藤原 聡 鈴木 俊明
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.4, 2008

【目的】運動学習は、結果の知識(KR)によって学習効果に影響することが報告されている。我々は第43回日本理学療法学術大会で、運動学習の練習終了後のテストにおいて、2試行に1回の言語的KR付与の練習が学習効果を認めることを報告した。今回、この先行研究の結果より練習中の学習戦略について検討した。<BR>【方法】対象は本研究の参加に同意を得た健常人23名(男性16名、女性7名、年齢25.3±2.1歳)とした。本研究では握力学習を試行した。被験者は、利き手最大握力の50_%_握力を目標値とした。KRは目標値の上下2_%_誤差範囲を正答KRとし、その範囲内の試行で「正答」、正答KRより低い値は「下」、高い値は「上」という言語的KRを用いた。全学習試行にKRを付与する群(100_%_KR)、2試行に1回KRを付与する群(50_%_KR)、3試行に1回KRを付与する群(33_%_KR)、KRを付与しない群(0_%_KR)に被験者を無作為抽出した。実験は学習前試行、学習試行、学習後試行の順で行った。学習試行では、群分けのKR付与頻度に応じて10試行を1セットとし計3セット実施した。測定はデジタル握力計GRIP-D(竹井機器工業株式会社)を使用し、文部科学省の体力測定における握力測定法に準じて実施した。学習試行中の目標値と実測値のずれとしてRoot Mean Squared Error(RMSE)を算出した。RMSEが目標値に対するパーセンテージとなるようNormalize Root Mean Squared Error(NRMSE)への正規化を行い、学習試行の各セットにおいて群間比較した。<BR>【結果】各セットのNRMSEは次の結果を示した。第1セットは0%KR(31.6±18.6)に対して100%KR(10.6±2.6)は低下を認めた(p<0.05)。第2セットは0_%_KR(33.2±7.4)に対し100_%_KR(9.3±3.4)、50_%_KR(10.1±2.7)、33_%_KR(10.1±3.0)は低下を認めた(p<0.01)。第3セットは0_%_KR(29.1±9.2)に対し100_%_KR(7.5±4.2)、50_%_KR(12.6±6.9)、33_%_KR(10.6±1.9)は低下を認めた(p<0.01)。<BR>【考察】言語的KR付与の頻度は、学習戦略に影響を与えることを示唆した。学習初期は内的基準の修正にKRが使用され、試行回数が増加するにつれて、内部モデルの強化のためにKRが有効的に使用される。しかし、100%KRのようにKRが高頻度であるとKRに依存的になり、学習において重要とされる内部モデルの強化は乏しくなると考える。Salmoniらのガイダンス仮説やSwinnenの内部フィードバックへの注意と学習の関係からも同様のことが示されている。<BR>【まとめ】言語的KRの頻度は学習過程に影響し、付与頻度による戦略の違いが運動学習に影響を及ぼすことが示された。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 鈴木 俊明 森原 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A0600, 2007

【目的】肩関節疾患患者が肩甲骨挙上筋群の過剰収縮と前鋸筋の収縮不全によって、肩関節屈曲初期より肩甲骨の不安定性を呈することを頻繁に経験する。そのため理学療法では前鋸筋の筋力強化や筋再教育、肩甲骨挙上筋群の抑制が必要となる。前鋸筋の筋力強化は諸家の報告により様々な方法が紹介されているが、これらの方法を有疾患患者に適応した場合、肩甲骨挙上筋群の過剰収縮を招きやすく本来の目的を達成しているかは疑問を感じる。本研究目的は、肩関節屈曲運動にて運動肢位を変化させた時の僧帽筋上部・下部線維、前鋸筋下部線維の筋活動を筋電図学的に分析し、肩甲胸郭関節の安定化に対する運動療法を再考することである。<BR>【方法】対象は健常男性5名両側10肢(平均年齢30.2±4.3歳、平均身長177.8±8.7cm、平均体重76.2±8.5kg)。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋下部線維、三角筋前部線維とし、筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。具体的な運動課題は座位、背臥位の各肢位にてそれぞれ肩関節を0°、30°、60°、90°、120°、150°屈曲位を5秒間保持させ、それを3回施行した。分析方法は座位での肩関節屈曲0°位の筋電図積分値を算出し、これを基準に各肢位、各角度での筋電図積分値相対値(以下、相対値)を算出した。各筋の相対値を各角度にて座位と背臥位間で対応のあるt検定を行った。<BR>【結果】僧帽筋上部線維の相対値は屈曲60°~150°間にて座位と比べ背臥位にて有意に減少した。僧帽筋下部線維および前鋸筋下部線維の相対値は屈曲30°では座位と比べ背臥位にて増加傾向を示したが、90°~150°間では有意に減少した。三角筋前部線維の相対値は屈曲30°では座位と比べ背臥位にて有意に増加し、60°~150°間では有意に減少した。<BR>【考察】背臥位での肩甲帯は胸郭に対し平面位となり、僧帽筋上部線維の活動は重力の影響が軽減される肢位である。肩関節屈曲60°より肩甲骨は上方回旋することから、屈曲60°以上での活動減少は、背臥位という運動肢位が僧帽筋上部線維の活動を発揮させにくい肢位であることが示唆された。三角筋前部線維の相対値は背臥位での屈曲30°にて有意に増加した。これは肩関節屈曲30°で生じる肩関節への力学的な伸展モーメントは背臥位の方が増大することから、これに抗するための筋活動増加であると考える。三角筋前部線維の活動は、肩甲骨と上腕骨の連結を行い、その伝達された力は浮遊骨である肩甲骨に不安定性を生じさせる。背臥位での屈曲30°で僧帽筋下部線維、前鋸筋下部線維の相対値が増加傾向を示したのは、肩甲骨の不安定性に対する制動の役割が座位よりも大きいことが示唆された。
著者
高崎 恭輔 鈴木 俊明 清水 卓也
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.57-68, 2009 (Released:2010-01-16)
参考文献数
6

We assessed the direction and grade of pelvic deviation using palpation and spinal malleolar distance (SMD) measurement in patients with pelvic deviation at the sacroiliac joint affecting daily living and sporting activities. In this article, we introduce the pelvic deviation-testing method with palpation that we developed, with regard to the pelvic deviation condition in which the unilateral coxal bone at the sacroiliac joint in the pelvic region shows anteroposterior inclination. We report the pattern of pelvic deviation classified based on clinical data, and introduce a simple, objective examination procedure using the SMD. In addition, we present patients with pelvic deviation as an etiological factor influencing basic/sporting activities, and review the evaluation and treatment of pelvic deviation in physical therapy.
著者
拜藤 繁彰 奥谷 拓真 石濱 崇史 末廣 健児 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0423, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】着地動作におけるpreactivationは,着地の事前に生じる筋活動で,下肢の関節安定化を担う作用があると言われている。膝前十字靭帯損傷患者では,しばしば着地直後からknee-in&toe-outなどの膝関節不安定性に起因する動的アラインメントの変化が起こる。これらの患者では,筋力低下や関節可動域制限の影響も受けて,安静時の下腿回旋アラインメントの異常を呈することが多く,着地後の動的アラインメント異常を誘発する要因にもなる。着地動作に関しては,着地後の筋活動変化や下肢各関節角度変化の影響について検討されたものが多く,着地動作のpreactivationと下腿回旋アラインメントの関係を検討されたものはない。この関係を検討することで,着地動作における動的アラインメントについて筋電図学的に考察することができると考える。そこで本研究では,筋力低下や関節可動域制限などの機能障害を有さない健常者を対象に,テーピングにより人為的な下腿回旋アラインメント変化が,着地動作における膝関節周囲筋のpreactivationに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は神経外科学的,整形外科学的な既往を有さない健常男性12名(平均年齢25.4±4.2歳,身長171.6±4.3cm,体重61.0±6.2kg)とした。また,ニトリート社製のテープEB50mmを用いて(このテープを貼付するためのアンカーテープにCB38mmも使用)対象者の左下腿を膝関節20°屈曲位で可及的最大の内旋位および外旋位になるように固定した。このときの下腿回旋角度は,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線と膝蓋腱のなす角度とした。また,上記のアラインメントを保持する際,テープの貼付によって膝関節伸展制限が生じるため,対象者の下腿回旋アラインメントを中間位に保ったまま膝関節伸展を制限するテープの貼付も行った。これらのテープの貼付はランダムに実施した。その後,対象者には上肢の影響を除くため両上肢を胸の前で組ませ45cm台からの左片脚着地動作を十分に練習させ3回実施した。着地動作はメトロノームに合わせて1秒間で実施した。この時,対象者の左内側広筋,左外側広筋,左内側ハムストリングス,左外側ハムストリングよりテレメトリー筋電計MQ-air(キッセイコムテック社製)を用い双極導出法にて筋電図を記録した。そして,重心動揺計(ユニメック社製)からの信号も筋電図と同期収録し,それをもとに接地の100ms前の筋電図積分値を算出し,本研究でのpreactivationとした。また,左側の上前腸骨棘,大転子,膝関節外側裂隙,外果,第5中足骨頭の計5箇所にマーカーを貼付し,側方からデジタルビデオカメラを用い動作を60Hzのサンプリングで収録し,解析ソフト(imageJ)を用いて股・膝・足関節の矢状面角度を算出した。中間位の各筋の筋電図積分値を1とした相対値を求め,内旋位・外旋位の各筋の相対値について検討した。そして各筋の相対値について正規性の検定を行い,正規性を認めたことから内旋位・外旋位のデータを対応のあるt検定により比較した。有意水準は5%とした。【結果】下腿の平均回旋角度は中間位16.1°±1.2に対し,内旋位12.7°±1.4,外旋位19.4°±1.4となった。また各実験後において,テーピングの緩みによる下腿回旋角度変化は生じなかった。preactivation時の矢状面上における下肢各関節の角度変化も認めなかった。筋電図積分値相対値は,外旋位に対して内旋位での内側・外側ハムストリングスに有意な増加を認めた(p<0.05)。【考察】本結果では下腿を内旋位にした際,内側・外側ハムストリングスの筋活動に有意な増加を認めた。Andrewsらは下腿を内旋位にすることで,脛骨前方引き出しなど膝前十字靭帯の緊張を介した筋活動がハムストリングスにみられると報告している。また,浦辺らは着地初期では下腿は内旋し,直後から下腿が外旋運動に変わると述べている。したがって,今回観察された下腿内旋位でのpreactivationにより,着地動作において外側ハムストリングスが着地初期の下腿内旋の制動に,また内側ハムストリングスがその後の下腿外旋の制動に作用しやすくなり,着地後の動的アラインメント変化を軽減させることができる可能性も考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究では45cm台からの着地動作であるが,下腿回旋アラインメント変化によって着地動作のpreactivationに相違を生じることが明確になった。本結果より下腿回旋アラインメントの調整は着地動作においても関節安定化に貢献できる可能性が示唆された。
著者
川幡 太一 鈴木 俊哉 永崎 研宣 下田 正弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. DD, [デジタル・ドキュメント]
巻号頁・発行日
vol.2013, no.7, pp.1-4, 2013-07-19

悉曇文字は日本において、仏典の研究や菩薩の種字等に用いられるインド系文字の一種である。本報告では、日本の悉曇文字の国際符号化文字集合 (UCS) への提案活動に関して、その概要・標準化の経緯・および標準化にあたっての技術的課題および今後の予定について述べる。
著者
山本吉則 嘉戸直樹 鈴木俊明
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【はじめに,目的】運動学習の初期には,速い運動よりも遅い運動を行う方が適しているといわれており,遅い運動では体性感覚が入力されやすい可能性がある。感覚機能の客観的な評価法として体性感覚誘発電位(SEP:Somatosensory evoked potential)が用いられている。運動中には,SEP振幅は低下することが知られておりgatingと呼ばれる。このgatingの機序としては,運動の準備や実行に関与する運動関連領野による求心性インパルスの抑制や,運動時の固有感覚入力や触圧覚入力と上肢刺激で生じた求心性インパルスとの干渉作用が推測されている。我々は先行研究において運動頻度の異なる手指反復運動がSEPに及ぼす影響について検討し,0.5Hzや1Hzの手指反復運動では体性感覚入力は変化しないが,3Hzの手指反復運動では3b野および3b野より上位レベルの体性感覚入力に抑制効果を示すと報告した。しかし,臨床ではさらに詳細な運動頻度を設定する必要があると考える。そこで本研究では,運動頻度を詳細に設定し,運動頻度の増加が体性感覚入力に及ぼす影響について検討した。【方法】対象は整形外科学的および神経学的に異常を認めない健常成人8名(平均年齢24.9±3.5歳)とした。SEPは安静条件(安静背臥位を保持する),注意課題条件(0.25,0.5,1,2,3,4Hzの頻度の聴覚音に注意を向ける),運動課題条件(0.25,0.5,1,2,3,4Hzの頻度の聴覚音を合図とした右示指MP関節屈曲・伸展の反復運動を3cmの範囲で実施する)において記録した。注意課題条件と運動課題条件の課題の順序はランダムとした。SEPの記録にはViking4(Nicolet)を使用した。SEP導出の刺激条件は,頻度を3.3Hz,持続時間を0.2ms,強度を感覚閾値の2~3倍とし,右手関節部の正中神経を刺激した。加算回数は512回とした。記録条件として探査電極を国際10-20法に基づく頭皮上の位置で刺激側と対側の上肢体性感覚野(C3´),および第5頸椎棘突起上皮膚表面(SC5),刺激側と同側の鎖骨上窩(Erb点)に配置し,基準電極を刺激側と対側の鎖骨上窩(Erb点),前額部(Fpz)に配置した。C3´-Fpz間からはN20とP25,SC5-Fpz間からはN13,同側Erb点-対側Erb点間からはN9の振幅および潜時を測定した。安静条件,注意課題条件,運動課題条件における振幅と潜時の統計学的比較にはDunnett検定を用いた。なお,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,本研究の目的と方法,個人情報に関する取り扱いなどについて書面および口頭で説明し理解を得た後,研究同意書に署名を得た。なお,本研究は本学の倫理委員会の承認を得て行った。【結果】安静条件,注意課題条件では,各振幅に有意差は認めなかった。運動課題条件では,N9,N13振幅には有意差を認めなかったが,N20,P23振幅は安静時と比較して2Hz以上の運動頻度において有意に低下した(p<0.01)。安静条件,注意課題条件,運動課題条件の潜時には有意差を認めなかった。【考察】上肢刺激によるSEPの各成分の発生源として,N9は腕神経叢,N13は楔状束核,N20は3b野,P25は3b野より上位レベルの由来と考えられている。本結果より,運動課題条件による2Hz以上の運動頻度では,3b野および3b野より上位レベルで体性感覚入力が抑制されることが示唆された。この要因として,運動頻度の増加に伴う求心性インパルスと運動関連領野の影響を考えた。Blinkenbergらは,0.5Hzから4Hzの頻度での右示指のタッピング運動において,対側の第一次運動野,第一次体性感覚野,補足運動野や小脳が賦活し,さらに第一次運動野および第一次体性感覚野の血流と運動頻度には有意な正の相関を認めると報告している。本研究においても,2Hz以上の運動頻度では,右示指MP関節の屈曲・伸展に伴う触圧覚入力や固有感覚入力の増加,運動関連領野の活動の増加により3b野および3b野より上位レベルで体性感覚入力が抑制されると考えた。この体性感覚入力を抑制する役割として,西平らは感覚フィードバックを利用して適宜修正すれば期待した運動を実現できるが,その働き自体はゆっくりであると述べている。2Hz以上の運動頻度では,運動を円滑に遂行するために3b野および3b野より上位レベルで不必要な体性感覚入力を抑制する可能性がある。【理学療法学研究としての意義】体性感覚入力を促して感覚フィードバックを利用する際には,低頻度の運動を実施し,運動が習熟するに伴い低頻度の運動から高頻度の運動へ移行する必要がある。
著者
由留木 裕子 鈴木 俊明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.96-100, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
14

【目的】ラベンダーの刺激が筋緊張にどのような影響を及ぼすのか,筋緊張の評価の指標といわれているF波を用いて,上肢脊髄神経の興奮性に与える影響をあきらかにすることである。【方法】嗅覚に障害がなく,アロマの経験のない健常者10名(男性7名,女性3名),平均年齢25.9±6.0歳。コントロール群9名(男性6名,女性3名),平均年齢29.1±8.8歳。被験者を背臥位にし匂いのない状態とラベンダーの匂いのある状態でF波を測定した。実験後,香りの好き,嫌いについてのアンケート調査を行った。【結果】出現頻度においては,吸入終了後5分と10分の出現頻度は,安静時と比較して有意に低下した。ラベンダー吸入開始時,吸入1分後の振幅F/M比は安静時と比較して有意に増加した。アンケート調査の結果,対象者全員好きな香りであると答えた。【結論】アロマ未経験者において,ラベンダー刺激終了後に上肢脊髄神経の興奮性が低下する。そのため,筋緊張の抑制を目的とする場合はラベンダー刺激終了後に筋緊張を抑制するアプローチを行えば筋緊張をより低下させる効果が得られる可能性があると考える。
著者
杉山 峰崇 笹野 佑 鈴木 俊宏 原島 俊
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.820-826, 2016
被引用文献数
1

<i>Saccharomyces cerevisiae</i>(以下,出芽酵母)は,エタノールや異種生物由来の有用物質の高い生産能力をもつことから,バイオエタノールやプラスチックの原料となる乳酸の発酵生産宿主として利用・検討されている.これらの生産を効率化するためには,高い温度域でも増殖し発酵を行う高温ストレス耐性や乳酸などの有機酸へのストレス耐性が重要となる.本稿では,出芽酵母の高温ストレスや有機酸ストレスへの適応応答について紹介し,われわれが取り組んできた耐性出芽酵母の開発から得られた成果を紹介したい.
著者
三浦 雄一郎 福島 秀晃 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0634, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々はNgらによる腹筋群の解剖学的研究を参照とし、歩行時における個々の体幹筋の機能について報告してきた。内腹斜筋単独部位は立脚期に筋活動が増大し、骨盤の安定化に作用していることが示された。今回、上肢の運動に伴う体幹筋の機能に着目した。上肢の運動に伴う体幹筋の筋電図学的研究では、Hodgeらによると一側上肢を挙上運動させた時に反対側の腹横筋が三角筋の筋活動よりも先行して活動すると報告している。しかし、上肢挙上時における同側体幹筋の筋電図学的報告は少ない。そこで肩関節屈曲時の同側の体幹筋に着目し、その機能について検討したので報告する。【方 法】対象は健常者5名(男性3名、女性2名、平均年齢32±5歳)両側10肢とした。筋電計はマイオシステム(NORAXON社製)を用いた。運動課題は端座位での肩関節屈曲位保持とし、屈曲角度は下垂位、30°、60°、90°、120°、150°、180°とした。各屈曲肢位における上肢への負荷は体重の5%の重錘を持たせることとした。測定筋は運動側の三角筋前部線維、前鋸筋、腹直筋、外腹斜筋とした。サンプリングタイムは3秒間、測定回数は3回とし、平均値をもって個人のデータとした。下垂位における各筋の筋積分値を基準値とし、各角度における筋積分値相対値を求めた。各筋に対し角度間における一元配置の分散分析および多重比較検定を実施した。対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結 果】三角筋の筋積分値相対値は肩関節屈曲120°まで徐々に増大し、それ以上では変化を認めなかった。前鋸筋の筋積分値相対値は屈曲角度増大に伴い漸増的に増大した。腹直筋の筋積分値相対値は屈曲角度に関係なく変化が認められなかった。外腹斜筋の筋積分値相対値は肩関節屈曲60°で増大し、屈曲角度60°以上で漸増的にが増大した。【考 察】 肩関節を屈曲させる際、上腕骨の運動に伴って肩甲骨の上方回旋運動が生ずる。前鋸筋は肩甲骨を上方回旋させる作用があり、肩甲骨の外転方向の柔軟性と前鋸筋の求心性収縮が必要となる。しかし、前鋸筋は起始部が第1肋骨から第8肋骨の前鋸筋粗面(肋骨の外側面)であることから前鋸筋のみ求心性収縮が生じた場合、肋骨外側面を肩甲骨内側縁にひきつける力が生ずる。結果として体幹の反対側への回旋運動が生ずることになる。また、座位姿勢は骨盤上で脊柱を介して胸郭がのっている状態であり、きわめて不安定な状態であることから、この反対側の体幹回旋は容易に生じやすいことが考えられる。運動側の外腹斜筋はこの体幹の反対側への回旋を制御し、体幹安定化に作用していることが推察される。
著者
鈴木 俊夫
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.34-69,iii, 1980-02-29 (Released:2010-11-18)

This paper presents a business history of the Western Bank of Scotland (hereafter, cited as the WBS) during the period 1832 to 1857. The paper also attempts to compare the management of the WBS with that of other Scottish banks.A.W. Kerr attributed the cause of the failure to the WBS's manager's mismanagement leaving the bank with a shortage of reserves, in his “History of Banking in Scotland.” On the contrary, R.H. Campbell favoured the directors and manager and ascribed the failure to the hostile behaviour of the Edinburgh banks.Five Edinburgh Chartered banks (The Bank of Scotland, The Royal Bank of Scotland, The British Linen Co., The National Bank of Scotland, The Commercial Bank of Scotland) played a great part in Scotland. These banks still had a large amount of Government Securities (Consol or Exchequer Bill) which accounted for 1/4 to 1/3 of the total assets of the bank. In consequence, the Edinburgh banks had a very stable constitution making them apt to hesitate to advance money into the industry field.However in Glasgow, one of the centre of Anglo-american trade, many merchants and manufactures desired to establish a bank, financed trades. Under such a circumstances, the WBS was set up in 1832.It is obvious that the comparatively high demand for money in Glasgow accelerated the promotion of the WBS. However the WBS made the mistake of adopting a lending policy which was too financed a considerable amount of the railway investment in U.S.A. by means of letters of credit through an agency in New York, James Lee & Co.
著者
高木 綾一 畠 淳吾 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0752, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】一般的に人事考課の成績は,処遇に反映し,動機付け,人材育成を図ることを目的に活用される。しかし,セラピストの人事考課に関する報告は少なく,組織マネジメントへの活用には至っていない。そこで当院の平成22年から平成25年までの人事考課成績を分析し,人事考課成績に影響する要因を検討したので報告する。【方法】対象は,平成22年から平成25年までの間に人事考課を受けたセラピスト504人(平均経験年数2.8±1.9年,男性322名,女性182名)であった。考課者は被考課者の上司2名が行った。人事考課は1.職能2.成績3.情意のそれぞれ構成する下記に記載する項目に対して5段階評価(1点から5点)にて加点し,全項目の合計点により総合評価を定めるものである。1.職能は法人が定めたセラピストの業務や臨床に必要な能力の基準を定めたものである。2.成績は,目標達成,改善行動,計画的行動の項目より構成される。3.情意面は努力,挨拶,言葉遣い,身だしなみ,コスト意識,期限厳守,感情コントロール,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,研修会参加,自己啓発,人間関係,他者支援の項目より構成される。初めに全項目合計点の上位より20%(上位群:101名),60%(中位群:303名),20%(下位群:101名)の3群に分類した。次に各群間における1.職能2.成績3.情意の項目を分散分析,多重比較を用いて比較した。また,対象者全員の職能を従属変数,業績,情意の17項目を独立変数とし,ピアソンの相関係数(r)を算出した。なお,統計処理ソフトにはエクセル統計2012を用いた。【説明と同意】対象者に本研究の目的及び方法を説明し,同意を得た。【結果】3群間において職能(上位:4.0±0.1中位:3.0±0.2下位:2.1±0.5),成績(上位:3.4±0.4中位:2.9±0.4下位2.5±0.5),情意(上位:3.4±0.5中位3.0±0.4下位2.7±0.5)となり,すべての項目において3群間に有意に差が認められた(p<0.01)。また,成績,情意の17項目と職能の間におけるピアソンの相関係数(r)は以下の結果となった。目標達成(r=0.48),改善行動(r=0.51),計画的行動(r=0.49)努力(r=0.54),挨拶(r=0.28),言葉遣い(r=0.28),身だしなみ(r=0.14),コスト意識(r=0.41),期限厳守(r=0.36),感情コントロール(r=0.39),コミュニケーション(r=0.61),部署方針順守(r=0.46),責任感(r=0.5),研修会参加(r=0.07),自己啓発(r0.19),人間関係(r=0.47),他人支援(r=0.44)となった。すなわち,職能との間に中程度以上の相関がみられたのは成績の3項目すべて,情意面の努力,コスト意識,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,人間関係,他者支援であった(r=0.41~0.61)。なかでも,情意面のコミュニケーションはもっとも強い相関(r=0.61)が見られた。【考察】職能,成績,情意において職能の能力開発が最重要と言われている。しかし,実際の現場では職能だけなく,成績や情意の高低が人事考課成績に大きく影響を与えている印象がある。また,現場では職能だけでなく,目標達成や同僚や組織に対する態度などの指導も行っている。そこで本研究では成績上位,中位,下位群の職能,成績,情意の比較と対象者の各項目の相関関係を算出し,効果的な介入を検討した。結果より,上位,中位,下位において職能,成績,情意のすべてにおいて有意差が認められた。つまり上位成績を得るためには職能,成績,情意面の全ての能力開発が重要であると考えられた。また,職能と成績の項目である目標達成,改善行動,計画的行動には中等度の相関があった。成績の項目は仕事の結果水準を評するものであることから,仕事の結果を求める目的志向への介入が重要と考えられた。職能と情意の項目である努力,コスト意識,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,人間関係,他者支援には中等度以上の相関があった。コスト意識や部署方針順守は経営的関与であり,努力,コミュニケーション,責任感,人間関係,他者支援は責任性と協調性を示すものである。つまり,職能の能力開発において情意面からの相乗効果を出すためには経営的関与並びに責任性と協調性への介入が重要と考えられた。【理学療法学研究としての意義】セラピストの人材育成は組織マネジメントにおける重要な経営課題の一つである。本研究は人材育成において職能だけでなく成績,情意の介入の必要性を示唆するものである。
著者
鈴木 俊光 中川 清晴
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.66-79, 2011-03-01
参考文献数
44
被引用文献数
6

世界で最初に,ダイヤモンド微粒子を触媒担体に用いるいくつかの触媒反応を行った。ダイヤモンドは長年安定な物質と考えられていたが,その表面は水素や酸素と反応し,C&ndash;H結合や,C&ndash;O&ndash;C,C=O結合などが最表面に生成することが知られるようになった。我々は,酸素で表面処理したダイヤモンド(酸化ダイヤ,以下O-Diaと呼ぶ)を触媒担体に用いて,金属酸化物,金属を担持した触媒を調製し,次の反応にO-Dia担持触媒が高い活性を示すことを見出した。本論文では以下の反応に関する著者等の研究をまとめた。(1)酸化クロム/O-Dia触媒によるエタン,プロパンなどのアルカンの脱水素反応,(2)酸化バナジウム/O-Dia触媒によるエチルベンゼンの脱水素反応,(3)メタン,エタンの酸化バナジウム/O-Dia触媒上での二酸化炭素を酸化剤とする酸化反応によるアルデヒド生成反応,(4)Ni/O-Dia,Co/O-Diaを用いたメタンの部分酸化による合成ガス生成反応,(5)NiまたはPd/O-Dia触媒上でのカーボンナノフィラメント生成反応,(6)Ru/O-Dia触媒によるアンモニア合成反応。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 森原 徹(MD) 鈴木 俊明
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会 第51回近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.88, 2011 (Released:2011-10-12)

【はじめに】前鋸筋は上位8~10肋骨から起始し、肩甲骨に付着する筋で上部、中部、下部線維に区分される。肩甲上腕リズムの観点からも肩甲骨運動に重要な筋であり、肩甲骨と胸郭との安定性にも関与している。上肢挙上時の肩甲骨運動と前鋸筋の機能に関する研究は多数あるが、前鋸筋の下部線維を対象としたものが多く、前鋸筋中部線維(以下、中部線維)に関する報告は少ない。本研究目的は肩関節屈曲、外転運動での中部線維の機能を筋電図学的に検証することである。 【対象と方法】 対象は事前に研究の趣旨を説明し、同意を得ることができた健常男性8名(平均年齢28.8±5.4歳、平均身長177.6±6.8_cm_、平均体重72.3±9.7_kg_)の右上肢とした。筋電計はmyosysytem1200(Noraxon社製)を用いた。中部線維の電極貼付位置はRichardら(2004)の方法に準じ広背筋と大胸筋の間で第3肋骨レベルに貼付した。運動課題は端坐位での上肢下垂位から肩関節屈曲と外転方向に30°毎挙上し120°まで各角度5秒間保持し、これを3回施行した。分析方法は3回の平均値を個人データとし上肢下垂位の筋電図積分値を基準に運動方向ごとに各角度での筋電図積分値相対値(以下、相対値)を算出した。次に_丸1_各運動方向における角度間での分散分析(tukeyの多重比較)、_丸2_角度ごとでの屈曲と外転間での対応のあるt検定にて比較した。 【結果】 中部線維の相対値は屈曲、外転方向ともに角度増加に伴い漸増傾向を示した。_丸1_屈曲では30°と比較して90°および120°において有意に増加した(p<0.01)。外転では30°と比較して120°において有意に増加した(p<0.05)。_丸2_各角度において屈曲と外転間での相対値には有意差は認められなかった。 【考察】 中部線維は第2,3肋骨から起始し、肩甲骨内側縁に付着し肩甲骨の外転作用を有する。肩関節屈曲、外転運動における肩甲骨運動について我々は座標移動分析法(2008)を用いて検討したところ肩甲棘内側端は屈曲では120°まで外側方向に外転では90°まで内側方向へ90°以降外側方向へ移動することを報告した。このことから肩関節屈曲における中部線維の機能は肩甲骨の外転運動に関与したと考えられる。一方、肩関節外転では肩甲棘内側端は内側方向へ移動することから中部線維の肩甲骨外転作用に対して肩甲骨運動は拮抗している状態である。しかし、中部線維の相対値は肩関節屈曲と有意差を認めなかったことから肩関節外転における中部線維の筋活動は肩甲骨運動に関与するのではなく、肩甲骨と胸郭との安定性に関与したと考えられた。また、肩関節外転120°で有意に相対値が増加したことは肩甲棘内側端が内側から外側方向へ移動が転換される角度であり、中部線維は肩甲胸郭関節の安定から肩甲骨運動に機能転換されることが示唆された。