著者
鈴木 元子 スズキ モトコ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-14, 2017-03-31

ユダヤ系アメリカ作家ソール・ベローのホロコースト体験者を主人公とした2つの小説『サムラー氏の惑星』及び『ベラローザ・コネクション』と、日本の作家遠藤周作の『沈黙』とその周辺のエッセイを中心に、比較文学文化研究をおこなった。1章の序論では共通するアイデンティティの葛藤について、2章では両作家の宗教的背景・大病との闘い・シュタイナーの影響について、3章ではホロコーストとキリシタン弾圧、及びその作風について、4章では同化か隠れかについて、アルメイダとフェレイラのマラーノ出自説からの読み直し、そして最後に、両作家のオウム/九官鳥という動物表象を論じて結びとした。
著者
鈴木 紀雄 井上 貴之 永井 覚 丸太 誠
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.547-552, 1999-06-01
参考文献数
2
被引用文献数
3

鉄筋コンクリート造柱一フラットスラブ接合部の周囲に配筋されたフープ筋の効果を調べることを目的とした実験を行った。その結果,水平力方向のスラブ筋に巻いたフープ筋は変形能力を向上させること,水平力に直交する方向のスラブ筋に巻いたフープ筋は,ねじり強度と変形能力を増大させることが明らかとなった。
著者
鈴木 雄大 吉岡 和夫
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

水星は非常に希薄な大気(~1e-10 Pa)を保持しているが、常時強い太陽光圧や太陽風に晒されている上に重力が小さいため、非常に多くの気体が宇宙空間へと散逸している。外気圏が地表に直接接続しているため、水星大気の生成量・散逸量は周囲の環境に応じて劇的に変化する。 外気圏を構成する元素は主にNa, Mg, H, K, Ca, He等であるが、このうちH, Heは太陽風、それ以外の元素は水星表面からの脱離によって供給されると考えられている。脱離プロセスとしては例えば熱脱離、光励起脱離、イオンスパッタリング、微小隕石衝突等が考えられている。熱脱離量は公転に伴う太陽-水星間距離の変動による表面温度の変化、光励起脱離量は太陽活動度の変化による太陽放射の変動、イオンスパッタリングによる脱離量は太陽風の変動や太陽フレアによる水星周辺のプラズマ量の変化、微小隕石衝突による脱離量は水星周辺のダスト量によって変動する。従って、それぞれの過程による水星大気の生成量を推定することは太陽系内縁環境の理解に繋がる。 生成過程ごとに放出される粒子の速度分布が異なるため、現在はMESSENGER探査機の観測データから得られる大気鉛直密度分布から放出温度を推定し、水星大気生成への各過程の寄与を推定することが多い。しかし、特に高温成分の気体の存在量の推定精度に問題があるほか、探査機の軌道の都合上、中緯度帯および北半球高緯度の大気生成過程の推定が非常に困難である。 熱脱離は、粒子に与えるエネルギーが小さく、放出粒子が再度地表に戻るまでのタイムスケールが水星の自公転周期に比べて十分に短くなる(~10分)ので、地表面におけるNa原子の分布を支配していると考えられる。また、イオンスパッタリングは中高緯度で多く生じるため、MESSENGERが苦手とする中緯度および北半球高緯度における大気の生成にも大きく寄与していると考えられる。本研究では特に熱脱離とイオンスパッタリングに着目して水星における中性Na粒子の生成から散逸までの挙動をモンテカルロ法によりシミュレーションする。さらにこの結果とMESSENGER MASCS UVVSの観測データを比較し、熱脱離とイオンスパッタリングの水星大気生成への寄与について議論する。
著者
鈴木 秀典
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.452-453, 2019-10-15

大塚正徳博士は,神経伝達物質研究の進歩に大きく貢献した。特にサブスタンスPに関する研究は,ペプチド性物質が哺乳類の神経伝達物質であることを初めて明らかにした画期的な業績である。この研究はわが国でなされ,国内の神経科学研究の発展につながった。ファミリーペプチドの発見や受容体のクローニングなど,サブスタンスPに関連する世界的な成果がわが国から発信されている。
著者
鈴木 篤 山分 規義 大坂 友希 島田 博史 浅野 充寿 村井 典史 鈴木 秀俊 清水 雅人 藤井 洋之 西崎 光弘 鈴木 誠 櫻田 春水 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.SUPPL.4, pp.S4_176-S4_183, 2010 (Released:2012-08-21)
参考文献数
12

症例は34歳, 男性. 生来健康であり, 突然死の家族歴なし. 4~5年前より心電図異常を指摘され, 2008年2月, 健診にて心室性期外収縮(PVC)およびST-T異常を指摘された. 同年3月下旬職員旅行の2日目, 朝食中にCPA(心室細動: VF)が発症し, AEDにより除細動され, 後遺症は認められなかった. 近医入院中の心電図にてcoved型ST上昇(type 1)を指摘され, Brugada症候群と診断されICD植え込み術を施行された. 2008年5月, 当科紹介受診. OGTT負荷により, IRI, および血糖値の上昇に伴い, coved型ST上昇が顕性化した. 12誘導Holter心電図記録では, 各食後においてV2誘導にてcoved型ST上昇が認められ, その程度は, 朝食後に特に強く認められた. 一方, PVCは1日中記録され, QRS波形は左脚ブロック型を呈していた. そこで後日, 朝, および昼禁食で同様に12誘導Holter心電図記録を行ったところ, 日中のPVCは著明に減少し, 朝食後, および昼食後に一致する時間帯の記録ではcoved型ST上昇は消失していた. PVCがVFのトリガーとなっている可能性を考え, カテーテルアブレーション治療を施行しPVCは軽減した.本例においてはST上昇, および心室性不整脈発生の増悪に食事が強く関与していた. 以上, Brugada症候群における致死的不整脈の自然発生機序を考慮するうえで, 夜間就寝中の発症ばかりでなく, 食事の影響も注目すべきと考えられた.
著者
小谷 恵美 鈴木 直人
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.210-215, 2002 (Released:2009-06-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

This study investigated the effect of information within visual fields on postural control. Thirty-six undergraduate and graduate students participated in the experiment. The body sway was measured while participants watched static visual stimuli presented in the central visual field, the peripheral visual field, and the full visual field. Squares that differed in sizes were used as stimuli to provide similar visual information in each visual field. The result showed that body sway was reduced when the stimulus was presented in the peripheral visual field relative to when it was presented in the central visual field. This result suggests that information of the peripheral visual field may play an important role in postural control.
著者
鈴木 敏之 奥田 綾子 中川 恭子 中野 康弘 楢崎 陽香
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.14-20, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
17

上部気道炎とホルネル症候群の徴候を示す18ヶ月齢の猫が来院した。内科的治療に効果を示さなかったので、CT検査を実施した結果、右鼓室胞と鼻咽頭部に軟部組織塊を確認した。全身麻酔下で軟口蓋切開によりアプローチして、耳管咽頭口から鼻咽頭部に出ているポリープを除去したところ、呼吸障害は改善したが神経徴候は持続した。その1ヶ月後、MRI検査所見に基づいて、腹側鼓室胞切除術により右鼓室胞内に充満する炎症組織を除去したところ、術後に臨床症状の悪化も認められず、神経徴候はほぼ改善した。2回の手術で摘出した組織は、組織学的に炎症性ポリープと診断された。本症例の経過から、猫では鼓室胞と鼻咽頭の炎症性ポリープによって上部気道障害とホルネル症候群が生じることあり、その治療として両部位の病巣切除が必要になりうることが示唆された。手術から16ヶ月後に鼻咽頭部から採取した検体のPCR検査ではMycoplasma felisが陽性であったが、この感染が鼻咽頭ポリープの原因であるとの結論には至らなかった。
著者
鈴木 昌道
出版者
日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.p49-53, 1981-08
著者
鈴木 昌道
出版者
日本造園学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.49-53, 1981 (Released:2011-03-05)
著者
福田 英嗣 鈴木 琢 佐藤 八千代 猿谷 佳奈子 向井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.11, pp.2195-2201, 2010-10-20 (Released:2014-11-28)

重症なアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)患者の入院治療は,短期間に皮膚症状を改善する有用な治療法である.しかし,入院中に使用される比較的多くの量のステロイド外用薬が生体に及ぼす影響については明らかではない.今回われわれはADの入院患者において,入院時(検査は入院翌日)および退院時の血中コルチゾール値を測定し,その推移について検討を行った.対象は,当院皮膚科に2007年5月から2008年8月までに入院加療した重症度の高いAD患者である.11歳から43歳(平均値±SD:27.4±7.5歳)の20名(男性12名,女性8名)に,入院時および退院時の朝7時から8時の間に血中コルチゾール値を測定した.結果は入院時の血中コルチゾール値は3.7±5.7 μg/dl(平均値±SD)と低下を示していたが,退院時は11.6±4.4 μg/dlと上昇した.この推移には統計上有意差を認めた(p<0.05).また,入院期間は13.3±4.7日(平均値±SD)であり,血中コルチゾール値が基準値である4.0 μg/dlに復するのに必要な入院期間は平均4.8日(推定)であった.入院中に使用したステロイド外用量はII群が8.6±6.3 g/日(平均値±SD),III群が4.8±5.8 g/日であり,ステロイド外用薬の使用量と血中コルチゾール値の変化量には差がなかった.今回の検討で, 入院を要する重症AD患者では,入院時には副腎皮質機能が抑制されているケースが多く,入院治療を行うことにより皮膚症状の改善が認められ,さらに入院時に基準値より低かった16症例のうち1例を除き退院時には基準値以上になり副腎皮質機能が正常に回復することが示された.重症AD患者においての入院療法は,短期間で効率的に皮膚状態を改善させるのみでなく,抑制状態にある内分泌系機能も同時に回復させることが示された.
著者
鈴木 和雄 高士 宗久 小幡 浩司 深津 英捷 大串 典雅 置塩 則彦 栃木 宏水 酒井 俊助 篠田 正幸 牛山 知己
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.96-102, 1990
被引用文献数
3

1980年から1986年の7年間に東海地方会泌尿器腫瘍登録に登録された膀胱腫瘍2,304例について主に治療成績を中心に検討を行った.<br>膀胱腫瘍全体の5年相対 (実測) 生存率は73.8% (61.9%) であった. 深達度別ではTa; 101.9% (88.0%), T1; 87.6% (75.3%), T2; 57.9% (47.8%), T3; 33.7% (28.2%), T4; 6.1% (5.0%) であった. 組織型・異型度別ではG1; 93.7% (78.8%), G2; 87.2% (74.1%), G3; 47.3% (38.9%) となり, 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍は48.9% (42.4%), 複数組織型の混在した腫瘍は48.8% (41.3%) となっている. T2, G3以上で明らかに生存率は低下した. 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍および複数組織型の混在した腫瘍は移行上皮癌 grade 3とほぼ同様の結果であった. TUR施行症例の5年相対 (実測) 生存率は98.1% (82.2%) であった. 深達度別ではTa; 103.9% (89.7%), T1; 96.0% (82.6%), T2; 61.1% (49.1%), 異型度別ではG1; 102.2% (86.6%), G2; 104.3% (88.3%), G3; 56.9% (48.3%) であり, T1, G2以下がTURの適応と思われた. 膀胱全摘施行症例の5年相対 (実測) 生存率は62.4% (52.3%) であった. 深達度別ではTa; 102.3% (90.6%), T1; 77.8% (68.2%), T2; 56.3% (47.9%), T3; 41.8% (34.9%), T4; 15.2% (13.1%), 異型度別ではG1; 96.9% (80.9%), G2; 63.6% (55.7%), G3; 55.4% (47.1%) となっている. 進行癌症例の相対(実測)生存率は3年5.3% (4.8%), 5年0.87% (0.73%) と極めて予後不良であった.
著者
鈴木 弥香子
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.32-44, 2019 (Released:2020-03-09)

本稿は、ウルリッヒ・ベックのコスモポリタン理論を「新しいコスモポリタニズム」と関連させながら論じることで、その特徴と意義、問題性を明らかにし、批判的継承への方途を探る。「新しいコスモポリタニズム」の議論では、コスモポリタニズムが現代的文脈に照らし合わされ、批判的/反省的に再構成されてきた。そこで重視されているのは(1)ローカル/コスモポリタン二分法批判、(2)アクチュアリティの強調、(3)ユーロセントリズム批判の三つの観点である。ベックのコスモポリタン理論にもこれらの観点は色濃く反映されており、第一の観点については「コスモポリタン化」概念の提示、第二の観点については「現実(real)」というキーワードの強調がそれぞれ対応している。第三の観点、ユーロセントリズム批判に関しては、ベックはユーロセントリズム批判を展開する側であると同時に、ユーロセントリックだと批判される側にもなっていると言える。例えば、バンブラはベックのコスモポリタニズムがユーロセントリックだと批判し、その理由として帝国主義と植民地支配の歴史の軽視を挙げるが、これはベック理論における一つの問題だと言える。また、もう一つの問題と考えられるのが、ベックは「コスモポリタンな現実」を過大評価することで規範的/倫理的な問いを回避する傾向にあることである。こうした問題に対応するためには、ポストコロニアルな思考を取り入れ、差異や歴史的な文脈に注意深く目を向けながら、他者とどう向き合うべきかという問いについて取り組んでいく必要がある。
著者
鈴木 昌子
出版者
学校法人 山野学苑 山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-23, 1996

古代より日本の女性の美は垂髪にありと,いわれてきた。桃山時代から江戸時代にかけて結髪が流行していたが,あの絢爛豪華な元禄時代を迎えようとしていた貞享年間(1684〜1688)に結髪が発展せず,菱川師宣の「見返り美人」図に見られる「玉結び」が流行していた。当代随一といわれた有職故実の学者である高橋宗恒が,工人に種々の形の笄(当時に笄と簪との区別がない)を作らせた。また,この宗直が簪を発案したともいわれ曖昧になっている。一本脚の簪を宗恒が,二本脚の簪を宗直が紹介した。宗恒は笄の発案者と囃したてられたが,彼はそれを紹介した人である。古代において高髻から垂髪へと移行した過程と同じような傾向にあった垂髪を喰い止め,日本髪の基をつくった彼と,当時の社会情勢を踏まえながら考察したい。