著者
中澤 高清 森本 真司 塩原 匡貴 和田 誠 青木 周司 山内 恭 菅原 敏
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1998年7月、1998年12月〜1999年3月にスバールバル諸島ニーオルスンにおいて、大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの実態の把握を目指し、集中観測を行った。これらの観測から、北極域におけるCO_2、CH_4、O_3の変動が詳細に捉えられると同時に、CO_2データは海水表層でのCO_2交換の評価のための基礎データとなった。エアロゾルについては今回の集中観測で多くの基礎データの蓄積がなされ、冬から春にかけての極域におけるエアロゾルの特徴をとらえることができた。北極域における大気微量成分の広域3次元分布、特に極渦の形成・崩壊期に着目した輸送・循環・変質の過程を調べるため、1998年3月6日〜14日の期間、航空機にオゾンおよびCO_2の連続測定装置、大気サンプリング装置、エアロゾル計測装置、エアロゾルサンプリング装置等を搭載し、観測を実施した。観測は北極点を通過し北極海を横断する長距離高高度飛行(巡航高度12km)を基本とし、その他、スピッツベルゲン島近海上空およびアラスカ州バーロー沖合上空では海面付近から高度12kmまでの鉛直プロファイルの観測を行った。機器は概ね順調に動作し、良好なサンプルやデータを取得することができた。その結果、(1)CO_2やO_3濃度は圏界面高度で不連続に変化し、圏界面を挟んで鉛直混合が大きく妨げられる様子が確認された、(2)CH_4とN_2O濃度に見られた正の相関は前年度にスウェーデンで実施された大気球による北極成層圏大気の観測結果と良い一致を示した、(3)硫化カルボニル(COS)の高度分布測定から、COSが成層圏エアロゾルの硫黄供給源であることを示唆する結果が得られた、(4)北極ヘイズ層は多層構造をなし対流圏上部まで到達することがあった、(5)エアロゾルの直接サンプリングにより、成層圏・自由対流圏では主に硫酸粒子、下部混合層では海塩粒子の存在が確認された。
著者
中澤 高清 青木 周司
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

南極及びグリーンランドで掘削された氷床コアを分析することによって過去の温室効果気体の変動を推定するために、コアから効率よく空気を抽出する装置と試料気気中に含まれるCO_2,CH_4,N_2C,CO_2のδ^<13>Cを高精度で定量する装置を開発した。総合分析精度はそれぞれ、1ppmv,10ppbv,2ppbv,0.05%以内であった。これらの装置を用いて南極みずほコア,南やまとコア,グリーンランドSiteJコアを分析した結果、以下のことが明らかとなった。1.9000-250年前の後氷期におけるCO_2,CH_4,N_2O濃度は280.9±4.6ppmv,729±30ppbv,265±8ppbvとほぼ一定であった。しかし、何れの気体の濃度も、人間活動の影響によってこの250年の間に急速に増加し、現在のレベるに達した。2.南やまとコアを分析することによって得られたCO_2,CH_4,N_2O濃度は213.3±4.6ppmv,484±44ppbv,243±10ppbvであり、後氷期の値よりかなり低く、このコアは氷河期のものであることが示唆された。また、δ13CはCO_2濃度の変動とほぼ逆相関となっており、このことから、氷河期の大気中のCO_2濃度の変動は海洋生物活動に帰依されると考えられる。3.みずほコア及びSite Jコアから得られた250年以前のCH_4濃度はそれぞれ701±10ppbv,756±10ppbvであり、工業化以前でも自然的発生源の強度の違いを反映して、南半球高緯度よりも北半球高緯度において濃度が高かったことを意味している。また、現在の南北両半球の濃度差は本研究で得られた値の役3倍であり、CH_4の濃度増加の原因は北半球における人間活動による発生源の強まり、あるいは消滅源の弱まりによるものと考えられる。
著者
青木 健
出版者
東京大学東洋文化研究所
雑誌
東洋文化研究所紀要 (ISSN:05638089)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.72-41, 2004-12 (Released:2006-07-26)

An Annotated Translation of Zoroastrian Book Pahlavī Literature, the Dēnkard Book III: No. 1by Takeshi AOKIThe Dēnkard is one of the most voluminous Zoroastrian Book Pahlavī literature, edited by Zoroastrian high priests, Ādurfarrōbay-ī Farroxzādān and Adurbād-ī Ēmedēn in the 9^th and 10^th centuries.Here presented is an annotated transcription and Japanese translation of its third volume, which consists of 420 polemics against bad religions-Manichaeism, Judaism and Islam.Our process of preparing this translation can be divided into two steps.1. The late Prof. Gikyō Itō made a Pahlavī letters' transcription and its Japanese translation preciously corresponding to Madan's Dēnkard edition.Unfortunately, however, he passed away before completion this work.2. After Gikyō Itō's death, Takeshi AOKI made his work up-to-date, and added ① linguistic commentaries on Pahlavī letters' transcription and ② religious commentaries on Japanese translation.This time we can print only the 6^th chapter to the 9^th chapter, but we hope publishing serially the whole transcription and translation of the Dēnkard Book III in this Memoirs.
著者
近藤 祐一郎 長瀬 公秀 青木 弘行 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.45-52, 1998-09-30
被引用文献数
1

青森県稲垣村をケーススタディとして, 籾殻燻炭を用いた生活排水路の水質浄化実験を行った。実験は中期測定(朝8時と夕4時の1日2回, 10日間連続して測定)と, 短期測定(朝6時から夜10時まで2時間毎に測定)を行った。そして, 籾殻燻炭を設置した上流と下流の水質に対して, 水素イオン指数, 導電率, 濁度, 溶存酸素, 水温, 水深, 流速を測定した。実験の結果, 以下の知見を得た。1)籾殻燻炭を通過した排水は, 魚類が繁殖可能な値まで水素イオン指数が上昇し, 稲が生長可能な値まで溶存酸素が増加することを確認した。 2)籾殻燻炭を設置した区間内で, 従来まで確認することのできなかった水棲生物を確認した。これは, 指標生物学的に排水路の水質が浄化されたと判断することができる。 3)水質浄化活動を住民が目に見える形で行うことによって, 環境美化に発展することを確認した。
著者
蒲原 行雄 山家 仁 重岡 裕治 吉永 啓 青木 史一 梶原 義史 兼松 隆之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.922-926, 1994-04-01
被引用文献数
9

鈍的腹部外傷によって生じる小腸狭窄はまれな疾患である.今回われわれは,転倒による腹部打撲後に発症した小腸狭窄の1例を経験したので,本邦報告例の検討とともに報告する.症例は56歳の男性.バイク乗用中転倒し,下腹部を打撲し来院した.入院時の腹部超音波検査,computed tomography(CT)検査にて腹腔内出血を認めたが,保存的に軽快した.第14病日に腹痛と嘔吐が出現し,腹部単純X線撮影にて鏡面形成を伴う小腸ガスの増加を認めた.イレウス管を挿入し症状は軽減したが,小腸造影で回腸に全周性の狭窄を認めた.開腹にて回盲弁から50cmの回腸の狭窄と周囲の腸間膜に瘢痕を認めた.腸切除を行い,術後経過は良好であった.病理学的検索にて,U1II-IIIの輪状潰瘍と炎症細胞の浸潤,および線維化を伴う肉芽組織の増生を認め,鈍的外傷による回腸の限局性の循環不全で生じた瘢痕狭窄と考えられた.
著者
青木 昌三 宮崎 英一
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-24, 2004-09

本研究では,携帯電話を情報提供デバイスとした休講通知を中心とする掲示システムを,Windows XP上に構築した。システムはパーソナル・コンピュータとネットワーク環境さえ整っていれば,誰でもが簡単に構築でき,ユーザに村してデータ構造を隠蔽することで,プログラムの専門的な知識が無くても簡単に運用が可能である。更に,ユーザインターフェース部分とデータ構造の変更でユーザが要求するシステムへと簡単に変更ができる。また本研究で作成したプログラムはOSに依存しないため,Windows系OS以外でも実装可能であり,より幅広い分野への適応が考えられる。
著者
青木 均
出版者
愛知学院大学
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学経営研究所々報 (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.87-100, 2008-09

百貨店経営統合の一事例として大丸と松坂屋の経営統合を取り上げる。市場が縮小するなか,効率経営を実現する大丸が業績低迷の松坂屋を実質的に吸収する形で経営統合が進んできた。過去10年間大丸は最大の顧客満足を最小の費用で実現することを理念として営業改革を中心として経営改革を進めた。営業改革の本質は百貨店経営にチェーンストア経営の考え方を取り入れ,標準化と分業化を進めることだった。営業を前方業務と後方業務に分け,後方業務は標準化・システム化して費用削減に努め,前方業務は顧客満足向上の切り札として充実させた。その改革を松坂屋に移植することが経営統合初期段階の眼目になっている。改革移植の進行で松坂屋の業績が改善しつつある。
著者
青木 和麻呂 太田 和夫 荒木 志帆 松井 充
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.94, no.56, pp.47-60, 1994-05-20
被引用文献数
2

線形解読法をFEAL-8に適用した場合の安全性評価の実験結果を報告する。線形解読法では1)偏差率の大きい線形表現を見つれること、2)解読の計算量と記憶容量を計算機実験可能な範囲におさまるように実効ビット数を押えること、が重要である。従来知られているBihamの線形表現(偏差率は2^-11>)より大きい偏差率(1.149×2^-8>)の7段線形表現を発現し、線形表現における鍵ビット、テキストビットの影響を注意深く観測することで実効ビット数を削減して、FEAL-8に対する線形攻撃法をワークステーションで実装可能にした。計算機実験(SPARCstation 10 Model 30)を行なったところ、既知平文数2^25>個では1時間程度で70%以上、2^26>個では1時間強でほぼ100%の成功率ですべての拡大鍵を導けることを確認した。
著者
青木 健一 登谷 美穂子
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.1-14, 1994-05-20

基研のIBM machine jpnyitp上のプレプリントデータベース「spires」は皆さんよくご存じだと思いますが、新たにワークステーションからもgopherを通じてプレプリントデータベースをはじめとする「spires」データベースにアクセスし、検索、結果出力が可能になっています。また、今月から、原子核三者若手と協力して、素粒子・原子核・高エネルギー若手名簿をデータベースに加えました。これまでのjpnyitp上でのspiresとは少し使い勝手も異なりますので、データベースの内容紹介も兼ねて、簡単なマニュアルをまとめました。各データベース毎に具体例をあげながら、効率の良い利用のための実践的テクニックも示し、このマニュアルだけでSPIRES/gopherを十分使いこねせる様に意図しました。
著者
犬塚 澄雄 山本 浩史 大石 武士 青木 晋平
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.13-17, 1988-03-20

キノコ残渣の養鶏飼料化を図るため,26週齢の産卵鶏(RIR系)を用い,市販の成鶏用配合飼料にシイタケ残渣を8%と12%代替した飼料を給与し,卵質に加えてとくに今までほとんど検討されていなかった血液成分への影響について,市販飼料の結果と比較して,調べた.供試したシイタケ飼料(8%と12%)の一般成分は,市販飼料と比較すると,粗蛋白質と粗脂肪の各含量が低く,粗繊維と粗灰分合量に富んでいることがわかった.体重は減少する傾向が認められ,飼料摂取量は8%代替では市販飼料とあまり差はなかったが,12%代替では有意(P<0.05)に減少した.飲水量は逆に増加した.産卵率は市販飼料に劣らない良い成績が得られ,飼料効率の点ではむしろ優れているようであった.卵重は12%代替で有意(P<0.05)に小さい結果を得た.卵殻厚も同様で薄くなった.ハウユニットには差はなく,卵黄の色調は消費者の嗜好性からみて,実用上で全く問題はないと思われる.血液成分については,T-cho, HDL-cho, TG,およびβ-Lpの各濃度は市販飼料の場合よりも低い価が得られ,とくに12%代替では有意差(P<0.01)が認められ,総体的に脂質の低減効果が認められた.Ca濃度も有意(P<0.05)に減少した.GやMgの濃度はほとんど変化はなかった.シイタケ残渣の代替率は8%と12%の間にその適正値が存在することが推測された.