著者
遠藤 瑶子 今泉 有喜 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.403-412, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水温上昇速度1.5~20℃/minで加熱する場合もしくは沸騰水加熱におけるジャガイモの内部温度および硬さの変化をプログラム計算により予測し,最適加熱時間を算出した。計算の結果,沸騰のみで加熱を行った場合に比べて,水温上昇期を利用することで適度な硬さとするための沸騰継続時間が短縮され,試料形状の違いによる沸騰継続時間の差も小さくなった。水温上昇速度が3℃/minよりも緩慢になると硬化の影響が大きくなり,沸騰継続時間は長くなった。水温上昇が1.5℃/minと緩慢な加熱,もしくは95℃一定温度での加熱により試料内部の硬さは均一となり,煮くずれしにくいことがシミュレーションにより示された。5段階評点法による官能評価を行ったところ,1.5℃/minでの加熱により調製した試料よりも煮くずれがほとんどないと評価された。
著者
香西 みどり 石黒 恭子 京田 比奈子 浜薗 貴子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.579-585, 2000-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14
被引用文献数
12

米を加水比1.5で炊飯し, 米粒と炊飯液に含まれる還元糖および遊離アミノ酸量を洗米後の浸漬 (20℃, 1h), 加熱 (温度上昇速度6.6℃/min), 蒸らし (15min) の各段階において測定した.(1) 生米に含まれる還元糖量は洗米により2/3に減少し, 40~60℃の問で米粒, 炊飯液ともに最大の増加を示した.還元糖量の増加にはグルコースの寄与が大きかった.炊飯過程 のこれらの糖の変化に米粒内部の酵素の分布や温度依存性の違いが関与していた.(2) 生米に多く含まれるアスパラギン酸, グルタミン酸量は洗米により約1/5に減少した.これらのアミノ酸量は浸漬により炊飯液中で増加し, 米粒では 80℃~沸騰の問で増加した.(3) 還元糖および遊離アミノ酸量を米粒および炊飯中の水分に対する濃度で表した結果, 米粒では最大値が還元糖では60℃, 遊離アミノ酸では沸騰直前にあり, 炊飯液ではいずれも沸騰直前にあった.
著者
香西 みどり
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炊飯における米の吸水過程は米飯の食味に影響するが、これまで米粒内の水分含量や水分分布という視点から吸水過程を把握した報告はない。本研究では米の吸水過程に着目し、加熱中断で起こる異常炊飯米の生成条件および吸水特性を明らかし、その生成メカニズムを検討した。その結果、65℃、4時間浸漬すると再炊飯しても粘らず食味が低下しており、デンプンの一部が糊化した異常糊化状態となり、吸水は進むが、米粒が割れて正常な炊飯米とならないことが明らかになった。
著者
伊藤 有紀 福留 奈美 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.351-358, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

一汁三菜の食事に適した食器や盛り付けの要点を調理初心者に示すことを想定し,好ましい食器の組み合わせの数値的な指標を明らかにすることを目的とした。まず,もっとも影響が大きいと考えられる飯碗・汁椀以外の食器の大きさについて調べた。飯碗・汁椀の面積(=大きさ)を1.0としたときの三菜(主菜,副菜,副副菜)の大きさ比を種々に変化させて組み合わせた10通りの写真を作成した。料理を盛り付けた状態で女子大学生に好ましさを評価させたところ,主菜2.5:副菜1.5:副副菜1.0の食器の大きさ比がもっとも評価が高く,これを食器の大きさの基準とした。次に,大きさが同一のときの形の影響を調べるためコンジョイント分析を行なった。基準の大きさ比で三菜の食器の形の組み合わせを変えた8通りの写真の好ましさを調理実習指導経験者に評価させたところ,主菜の食器が縦1:横1.6(楕円や長方形)で,副菜の食器が縦1:横1(正円形や正方形)の組み合わせが好まれた。
著者
伊藤 有紀 佐野 睦夫 福留 奈美 大井 翔 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.209-216, 2016 (Released:2016-04-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

We aimed to determine the appropriate way of arranging rice in a bowl for the purpose of teaching how rice should be served. To determine the three-dimensional arrangement of rice in a bowl, we attempted to measure the height of rice in a bowl using a depth sensor defined as “Nakataka-do”, which is an index of the particular arrangement of rice in a bowl, where the center is higher than the edge. In addition to this, we defined “Tobidashi-do” as the degree of roughness of the contour of the rice. The weight and shape index of 29 rice samples were measured by 21 undergraduate students and 8 cooking teachers to determine the arrangement of rice in a bowl. The results of the analyses are as follows: The “Tobidashi-do” of the students’ samples were higher than those of the teachers. The range of “Nakataka-do” of 100~120 g rice samples showed a wide distribution. It was suggested that an appropriate arrangement of 100~120 g rice samples in a bowl is possible by being aware of “Nakataka-do.” Cluster analysis showed three distinct sample arrangements. On the basis of these results, we demonstrated the appropriate arrangement of rice in a bowl.
著者
伊藤 有紀 佐野 睦夫 福留 奈美 大井 翔 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.209-216, 2016

We aimed to determine the appropriate way of arranging rice in a bowl for the purpose of teaching how rice should be served. To determine the three-dimensional arrangement of rice in a bowl, we attempted to measure the height of rice in a bowl using a depth sensor defined as "Nakataka-do", which is an index of the particular arrangement of rice in a bowl, where the center is higher than the edge. In addition to this, we defined "Tobidashi-do" as the degree of roughness of the contour of the rice. The weight and shape index of 29 rice samples were measured by 21 undergraduate students and 8 cooking teachers to determine the arrangement of rice in a bowl. The results of the analyses are as follows: The "Tobidashi-do" of the students' samples were higher than those of the teachers. The range of "Nakataka-do" of 100~120 g rice samples showed a wide distribution. It was suggested that an appropriate arrangement of 100~120 g rice samples in a bowl is possible by being aware of "Nakataka-do." Cluster analysis showed three distinct sample arrangements. On the basis of these results, we demonstrated the appropriate arrangement of rice in a bowl.
著者
米田 千恵 笠松 千夏 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.339-345, 2012-10-05
参考文献数
25

北海道厚岸産シングルシード方式による養殖マガキ成分の季節変化について調べた。産卵期後の2004年8月および2005年9月の試料は軟体部重量ならびに軟体指数ともに最低となった。タンパク質は産卵期前後の試料で最高になった。グリコーゲンは産卵期前後の試料で10%以下(乾重量換算)であったが,秋から春にかけては20%以上となった。ATPおよび関連化合物の総量は,11月に最高となり9月に最低となった。遊離アミノ酸総量は,6月に最高となり,9月に最低となった。主要なアミノ酸はタウリンが最も多く,次いでアラニン,プロリン,グリシン,グルタミン酸の含量が高かった。9月および11月のマガキから調製したエキスの官能検査の結果,11月のエキスは,まろやかさが強く,苦味が弱いことが示された。
著者
掛江 美和子 今井 悦子 村上 知子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.2-14, 2004-02-20
被引用文献数
3

A questionnaire survey was conducted on the compatibility between four alcoholic beverages (beer, wine, sake, and chuhi sour) and various foods. Beer showed a relatively high score regardless of the food variety when the average value of each result was used ; therefore, the validity of the results was confirmed by applying a multivariate analysis by Quantification Method III and a sensory evaluation. The sensory perception by the evaluation panel for certain foods that go well with beer was confirmed. When the compatibility with beer was scaled from the results by Quantification Method III, eight foods (green soybean, Japanese fried chicken with soy sauce seasoning, Japanese barbecued chicken, grilled beef, sausage, fried chicken, dumpling, and grilled pork on a skewer) were considered to be clearly more favored than the other foods tested. The validity was also confirmed by the results of the sensory evaluation, which showed that the correlation was high between each ranking from the questionnaire and sensory evaluation. Furthermore, when the relationship with the degree of substitution of each food was investigated, there was a significant positive correlation with the lipid content and the "oiliness" score, and a significant negative correlation with the starch content. The salt content of each food had no significant correlation with its compatibility with beer.
著者
大石 恭子 足立 里穂 米田 千恵 大田原 美保 香西 みどり
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.360-367, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
30

1.コシヒカリおよびあさひの夢を試料とし,マイタケ抽出液を用いて飯を調製した.官能評価では,水で炊飯した飯に比べてコシヒカリのマイタケ飯は粘りが強く,あさひの夢では軟らかく,つやおよび粘りが強いと評価された.物性測定ではいずれの品種においても粒全体の硬さが低下した.コシヒカリを試料とし,浸漬のみのマイタケ抽出液の利用でも飯の物性向上が見られ,浸漬および加熱の両方でマイタケ抽出液を用いることで冷蔵後の物性も改善した.2.米をマイタケ抽出液に50℃で1時間浸漬すると,米からの溶出タンパク質量が増加し,プロテアーゼ阻害剤のぺプスタチン添加により溶出が抑えられた.浸漬液のSDS-PAGE分析では,マイタケの金属プロテアーゼによるグルテリン酸性サブユニットの部分分解が認められた.さらに遊離アミノ酸の分析において疎水性アミノ酸が多く遊離していたことから,エンド型,エキソ型両方の金属プロテアーゼが炊飯時の米のタンパク質を分解し,飯の物性変化に関与していることが示唆された.
著者
森田 亜紀 早川 文代 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.107, 2020-07-01 (Released:2020-08-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

パンの品質は主に外観,香り,食感,風味から総合的に判断されるが,中でも香りは消費者のパンの嗜好性を左右する重要な品質要因とされている.パンの香りの評価方法として官能評価や香気成分分析などがあるが,パンの香りのイメージを専門家以外で共有することは難しい.本研究では,パンの香りの官能特性を明らかにし,色彩評価による結果と合わせて考察した. パンに含まれる7成分を添加した香りの異なるワンローフ成形の食パンを調製した.パンの香りの強さや質の違いは,10語の評価用語による9段階評定尺度法を用いた評価により表現できた.またPCCS表色系の新配色カード199を用いてパンの香りのイメージに合致する色を選択させたところ,パンの香りは橙,乳に由来する香りは黄と相関があった.また,焼成で生じる香りは明度の高い方向で表現された. 本評価法を利用することにより,パンの香りは言葉で表現可能なだけでなく色彩により可視化できる可能性が示され,より消費者にもわかりやすくパンの香りを伝える手段として提案できた.
著者
小西 史子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.15-22, 2002-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
3

スルメイカを用いて 1~6℃ の天日乾燥あるいは 32 ℃ の温風乾燥によりスルメを製造した.その後, エキスを抽出し, 遊離アミノ酸, 核酸関連物質, 有機酸, グリシンベタイン含量, 色を測定し, 官能検査により生イカとスルメ完成品の違いを比較した.また, 乾燥方法によりどのような違いがあるのかを検討した.1) 官能検査の結果, スルメ完成品のエキス成分は生に比べて, 天日乾燥, 温風乾燥ともに苦味, 酸味, うま味が有意に強かった.天日乾燥では甘味も有意に強かった.2) スルメ完成品の遊離アミノ酸総量は, 天日乾燥により有意に増加したが, 温風乾燥では変化がなかった.3) 温風乾燥によりスルメ完成品の ATP, AMP, IMP は著しく減少したが, 天日乾燥では温風乾燥より減少程度が小さかった.4) スルメ完成品の有機酸については, 天日乾燥によりリン酸と乳酸が, 温風乾燥により乳酸と酢酸が有意に増加した.グリシンベタイン量には天日乾燥, 温風乾燥により変化がみられなかった.5) 温風乾燥によるスルメ完成品の b 値は天日乾燥より有意に高く, メイラード反応が進行していることが示唆された.6) 官能検査の結果, 天日乾燥によるスルメ完成品が温風乾燥より, 甘味とうま味が強かった.
著者
飯島 久美子 郡山 貴子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.280-288, 2020 (Released:2020-05-29)
参考文献数
31

本研究ではムクナ豆の歴史を調査し, 江戸時代の古文書である「新刊多識編」, 「本朝食艦」, 「大和本草」, 「本草綱目 啓蒙巻之二十」, 「和漢三才図会」にムクナ豆 (八升豆) に関する記載を確認した. 「和漢三才図会」に記載された調理法の「黒汁を取り去り」に着目し, 褐変について検討した. 未熟豆の切断の場合, ポリフェノールとポリフェノールオキシダーゼと酸素が同時に存在するために速やかな反応が見られた. 温熱水浸漬では, 空気中より穏やかな褐変反応であり, これは浸漬液中の溶存酸素の量や浸漬温度や溶出物質, ムクナ豆に含まれる酵素の至適温度などが関与すると考えられる. ムクナ豆の調理時に浸漬液や浸漬豆が黒くなった場合は, L-DOPA量が減少しているが, L-DOPAの一部であって全量ではないことが明らかになった.
著者
畑江 敬子 香西 みどり 古川 英 熊谷 美智世 伊藤 純子 十河 桜子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.250, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】近年、家庭用調理機器においては従来のガスコンロに代わり、電気の誘導加熱を利用した電磁調理器(IH)の普及が進んでいる。そこで本研究では、現状の調理内容に即したエネルギー使用データを収集し、ガスコンロとIHの違いを把握することを目的としている。【方法】 春夏秋冬それぞれ1日の朝食、昼食、夕食の献立を、女子栄養大出版部「栄養と料理」献立カレンダーより選定し、さらに一部をアンケート結果による人気メニューに置きかえることにより、季節、栄養、カロリー、調理方法、人気を考慮した現代版メニューを作成した。年代と調理経験の異なる3人の調理者により、作成メニューについてガスコンロ、IHそれぞれに対し同じ調理を行い、熱量および使用時間を測定した。実験では大きさを揃えた両調理器で適した鍋を用い、同一メニュー内では食材および量を統一した。【結果】IHの方が多くの一次エネルギーを消費した。四季別において冬メニューでは夏の2倍以上のエネルギーを消費し、調理別においては湯沸かし茹で、煮るでエネルギー消費量全体の6割以上を占め、これらはガスコンロ、IHで同じ傾向を示した。火力別の効率と使用割合から一次エネルギーでの総合効率を求めると、ガスコンロで50.0%、IHで27.7%となった。ランニングコストは四季別、調理別のどちらにおいても電気代の方がガス代に比べ高くなった。両調理器の10年間の使用を含めた製造から廃棄までの総エネルギー消費量は、IHではガスコンロの約1.3倍となった。
著者
大田原 美保 後藤 詩絵 香西 みどり
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.289-297, 2018 (Released:2018-04-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

The relationship between rice storage conditions and the physicochemical and sensory properties of cooked rice was investigated. Both polished rice (90% yield) and brown rice were stored in the following conditions: (i) 37℃ and 75% relative humidity (RH) for 30 and 80 days; (ii) at room temperature (22.2-27.5℃, 31.3-53.9% RH) for 180 days from May to November. Treated samples of brown rice storage were polished at 90% yield after storage. The increase in fat acidity levels after storage was larger in polished rice storage than in brown rice storage, whereas the increase in reducing sugar levels after storage was larger in brown rice storage than in polished rice storage. After storage for 80 days at 37℃ and 75% RH, the hardness of cooked rice increased, and the stickiness decreased. In addition, compared with the control cooked rice sample, rice quality worsened, hardness increased, and stickiness decreased remarkably after refrigerating cooked rice at 4℃ for 16 h. The peak temperature of gelatinization for rice flour, obtained using DSC, increased after storage but that for rice starch was comparable regardless of storage conditions. This suggests an increase in interactions between rice starch and other ingredients during storage. Sensory evaluation of cooked rice stored at 37℃ and 75% RH suggested that polished rice storage was better than brown rice storage in terms of aroma and taste. In contrast, after storage at room temperature, it was suggested that brown rice storage was better than polished rice storage in terms of appearance and taste.
著者
嶋田 淑子 飯島 久美子 小西 史子 香西 みどり 畑江 敬子 齋藤 利則
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成14年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2002 (Released:2003-04-02)

食品用脱水シートでから揚げの揚げだねを前処理することによる、揚げだねのおいしさと揚げ油の劣化に及ぼす影響について検討した。揚げだねとして鯖と鶏肉を用い、脱水シートで1.5時間包んだ後、180℃の油で3分間揚げて試料とした。対照として脱水シート処理をしないものを用い、それぞれ15回連続して揚げ作業を行った。試料と対照を組み合わせ、官能検査を行なった結果、脱水シートを使用したから揚げは対照より有意に好ましいとされた。揚げ油の劣化を、酸価(A.V.), アニシジン価(An.V.), 色差ΔEで評価した。さし油をして連続してから揚げをした場合, 脱水シート処理した揚げだねを揚げた油の方が、A.V., An.V., 色差ΔE, いずれも低く抑えられ脱水シート処理によって揚げ油の劣化が抑えられたといえる。
著者
粟津原 元子 田中 佐知 早瀬 明子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.188-195, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
21

鶏肉の加熱中のうまみ成分の変化を明らかにすることを目的とし,鶏ももミンチ肉を緩慢加熱(オーブン(O)210℃,35分),急速加熱(電子レンジ(M)500 W,7分),4種類の組合せ加熱(M 3分+O 30分,M 4分+O 25分,M 5分+O 20分,M 6分+O 15分)で加熱し,加熱中の温度履歴と鶏肉のうまみ成分との関係を検討した。5'-IMP量は,緩慢加熱の時間が短い条件ほどその減少は抑制されうまみの保持に効果があった。グルタミン酸及び総遊離アミノ酸量は加熱条件による顕著な違いは見られなかったものの,緩慢加熱の時間が長い条件では分子量約18,000のペプチドの消失が見られ,タンパク質やペプチドの分解により生じた低分子ペプチドによりうまみが増加している可能性が示唆された。以上の結果から,加熱条件によって5'-IMP,グルタミン酸,ペプチドの量が異なり,加熱条件を組み合わせることにより,よりうまみの強い焼上がりにできる可能性が示された。
著者
浜守 杏奈 大倉 哲也 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】これまで大麦と米の混炊において,それぞれを単独で炊飯するよりも混炊することで糖の生成量が増加すること,炊飯中に大麦と米の酵素が互いの粒内に移動していることを確認した。しかし,両内在性酵素がどのように麦飯の糖生成に関与しているかは明らかになっていない。本研究では米と大麦から調製した粗酵素液を用いて糖生成活性の測定を行い,それぞれの粗酵素液と基質を組み合わせて実際の炊飯を想定した混炊モデル実験を行うことによって混炊における大麦と米の酵素の特性および相互作用を検討した。</p><p>【方法】90%搗精米(日本晴),75%搗精丸麦(モッチリボシ)を試料とした。米および大麦から50mMリン酸バッファーを用いて粗酵素液を調製し,基質を可溶性デンプン,米・大麦から調製したデンプンとし,糖生成活性を測定した。還元糖はソモギーネルソン法,遊離糖はHPLCにより測定した。混炊モデル実験は,基質デンプン総量に占める大麦デンプンの割合が0,10,20,30,40,50,100%となるように調整し,糊化させた米・大麦デンプン混合液に同様の割合で混合した粗酵素液を反応させ,単独の値から算出される混炊の計算値と比較した。</p><p>【結果および考察】還元糖生成活性については大麦が米よりも顕著に高く,その至適温度は大麦の方が低いことが示された。モデル実験において大麦単独ではβ-アミラーゼによるマルトースの生成量が多いが,混炊による遊離糖の増加はグルコースが顕著であり,大麦の割合が高いほどその傾向は強かった。大麦の酵素が米粒内でも作用することでマルトースが生成され,米のα-グルコシダーゼが作用しやすくなり,混炊でのグルコースの増加に影響したことが推察された。</p>
著者
浜守 杏奈 露久保 美夏 大倉 哲也 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】近年,大麦に含まれる&beta;-グルカンによる健康効果が注目されており,大麦は米よりもデンプン分解酵素の活性が高いこと,米と大麦の混炊においてそれぞれの単独炊飯よりも還元糖量が増加すること等を明らかにしてきた。しかし,米と大麦の混炊中に酵素がどのように移動し,どこで糖生成に関与しているかについては明らかになっていない。本研究では&beta;-アミラーゼ欠損品種である日本晴と大麦の混炊を行い,大麦の&beta;-アミラーゼの炊飯中の挙動を調べることで混炊における糖生成のメカニズム解明の一助とすることを目的とした。 <br>【方法】90%搗精米(日本晴),75%搗精丸麦(モッチリボシ)を試料とした。官能評価により混炊割合および加水量を決定した。生試料および炊飯後試料から成分抽出液を調製し,ソモギーネルソン法,フェノール硫酸法およびHPLCにより各種糖量を測定した。酵素活性測定は大麦粗酵素液を可溶性デンプンに反応させ,加水分解活性を測定し,&beta;-アミラーゼ活性はメガザイムのキットを使用した。炊飯途中の米・麦粒および炊飯液から粗酵素液を調製し,&beta;-アミラーゼのポリクローナル抗体を使用し,酵素の有無をイムノブロット法により調べた。免疫染色では混炊および単独炊飯した際の米粒を4%PFAで固定後凍結切片を作成し,蛍光顕微鏡観察により&beta;-アミラーゼの局在を調べた。 <br>【結果】官能評価より米と大麦の混炊においては混炊割合50%,加水比が米重量に対し1.5,麦重量に対し1.8となった。イムノブロット法の結果より混炊の1時間浸漬中にすでに大麦の&beta;-アミラーゼが炊飯液に溶出し,さらに米粒内に浸入すること,40℃まで粒内に留まり,60℃で再び溶出することが明らかになった。免疫染色の結果でも,大麦の&beta;-アミラーゼは1時間浸漬中に米粒の表面付近に存在していることが示唆された。<br>
著者
原 夕紀子 飯島 久美子 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.76, 2011 (Released:2011-08-30)

目的緑色野菜に含まれるクロロフィル系の色素は、加熱により分解、変色しやすいため、調理過程を予測するには色と物性両方の定量的把握が必要である。本研究では、ゆで加熱・炒め加熱・揚げ加熱による野菜の色と硬さの変化を定量的に扱い、これらの単独加熱に炒め加熱を加えた組み合わせ加熱において、色と硬さの変化を予測し、最適条件の設定を行った。さらに「油通し」に代わる前処理法として「湯通し」の効果を検討した。 方法試料としてピーマンを用い、ゆで加熱では70~99.5℃、炒め加熱と揚げ加熱では100~190℃の各温度で加熱し、色(色差計,-a*/b*)と硬さ(テクスチャーアナライザー)を測定し、-a*/b*を緑色度とした。各温度における色の変化と軟化の速度定数を求め、試料の色と硬さの変化を予測し、実測値と比較した。ゆで加熱後に炒め加熱(湯通し)を、また揚げ加熱後に炒め加熱(油通し)を行い、単独加熱で算出した色の変化と軟化の速度定数から、組み合わせ加熱における試料の色と硬さの変化を予測し、実測値と比較した。 結果いずれの加熱操作も、加熱初期段階に緑色度の増加がみられ、その後に退色が起こるため、2段階で解析した。100℃における緑色度増加の速度定数はゆで>あげ>炒め、退色はあげ≧ゆで>炒め、軟化の速度定数は、あげ>ゆで>炒めの順に大きかった。単独加熱の結果を用いて、組み合わせ加熱における試料の色と硬さの変化を予測し、実測値と比較した結果、ほぼ一致した。また、「湯通し」は「油通し」より、炒め時の外観が良好で、簡便な前処理としての利用が期待でき、実際の調理における油通しや湯通しを用いた組み合わせ加熱への本法の応用可能性が示された。
著者
成田 亮子 白尾 美佳 赤石 記子 伊藤 美穂 色川 木綿子 宇和川 小百合 大久保 洋子 香西 みどり 加藤 和子 佐藤 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】平成24,25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき、昭和35〜45年頃に食べられていた東京都における家庭料理について聞き書き調査を実施し、次世代に伝え継ぐ家庭料理における行事食の特徴を検討した。</p><p>【方法】東京都23区(台東区・世田谷区・中野区・杉並区・品川区・板橋区・練馬区)、都下(日野市・奥多摩町)、島しょ(新島・式根島)の3地域に分け、70歳以上の都民を対象に、家庭料理を聞き書き調査した。その結果より正月、節分、桃の節句、端午の節句、七夕、お盆、土用、お彼岸、月見、七五三、大晦日などの行事食について抜出した。</p><p>【結果・考察】正月は雑煮が食べられていたが、23区と都下でも地域によって食材が異なり特徴がみられた。お節料理では、黒豆、紅白なます、昆布巻き、数の子、きんとん、田作りなどが重詰めにされて食べられていた。節分では23区でイワシの焼き魚、煎り豆、都下で福茶が飲まれていた。桃の節句では蛤の潮汁、ひなあられ、端午の節句では島しょでしょうぶ、いももち、お彼岸ではぼたもちの他に、都下で海苔巻きずし、いなりずしが食べられていた。お月見では月見団子の他に島しょであおやぎ、七五三では都下で、とりの子餅、大晦日では23区で年越しそば、すき焼きなども食べられていた。不祝儀や仏事では23区で白和え、島しょでひら、忌明けだんごが食べられていた。ひらは祝儀と不祝儀で盛り付け方を区別して用いていた。東京23区、都下では行事食で食べられているものは現在と変わらないものが多かった。島しょでは特徴があるものがみられた。聞き書き調査を行い、昭和35年ごろから現在まで行事食は変わらず受け継がれていることが分かった。</p>