著者
光武 範吏 高村 昇 サエンコ ウラジミール ログノビッチ タチアナ 高橋 純平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に試料の収集のための業務委託契約を結んだベラルーシのミンスクがんセンターだが、その後も順調に収集が進んでいる。ミンスクにある長崎大学代表部を通して、事務手続きも問題なく行えている。昨年度同様、現地にてフォローアップ中の患者をリクルートし、採血した血液よりリンパ球を抽出、長崎大学へ輸送している。その後、長崎大学においてDNA抽出を行い、ほぼ全てのサンプルで質・量とも問題なくDNAを得ることができている。一部、検体不良のサンプルがあったが、情報をフィードバックし、プロトコールの確認作業を現地で行った。本年度は100例を収集し、予定通り順調に進行中である。本年度はまた、ベラルーシ、ブレスト州の内分泌疾患センターを訪問した。この地区は、検診受診数、甲状腺癌患者のフォローアップ数が多く、上記ミンスクがんセンターとは協力関係にある。担当医に研究の趣旨を説明し、同センターを通した試料収集への協力を依頼した。また、モスクワの内分泌センターを訪問し、講演を行った。センター幹部との現地打ち合わせも行い、ここでも協力を依頼した。さらにオブニンスクの医学放射線研究センターへも共同研究者を派遣し、打ち合わせを進めた。甲状腺癌発症に関連する一塩基多型については、解析対象についてのデータ収集と検討を引き続き行っているが、本研究課題で想定していた350-400例程度では十分な検出力が得られないものもあることが分かり、解析対象について当初より拡大するためには、今後の収集数の再検討も考慮する必要があると考えられた。
著者
高橋 希 鈴木 忍 酒井 兼司 東 久弥
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.2, pp.100-106, 2015 (Released:2015-02-10)
参考文献数
31

近年,上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療において,EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の有効性が示されている.アファチニブは,EGFR(ErbB1)のほか,HER2(ErbB2)やErbB4のチロシンキナーゼ領域のアデノシン三リン酸(ATP)結合部位に共有結合することで,それらのリン酸化を阻害する不可逆的ErbB受容体ファミリー阻害薬である.非臨床研究においてアファチニブは,EGFRのほか,HER2およびErbB4のチロシンキナーゼ活性を選択的かつ持続的に阻害し,EGFR受容体を発現する種々の腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制効果およびマウス担がんモデルに対する腫瘍増殖抑制効果を示した.国内外で実施されたEGFR-TKIを含む化学療法未治療のEGFR遺伝子変異を有する進行NSCLC患者を対象とした臨床試験では,アファチニブは標準化学療法に比べ,無増悪生存期間(PFS)の有意な延長を示したほか,健康関連の生活の質(QOL)の評価において,肺がん関連症状の改善効果を示した.アファチニブによる有害事象としては,主に下痢,発疹/ざ瘡,口内炎,爪の異常などが認められたが,その多くは支持療法,休薬/減量により管理可能であった.以上から,アファチニブの有効性,安全性が確認されたことにより,我が国では,2014年1月に「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」に対する治療薬として承認された.

2 0 0 0 OA 認知的満足化

著者
高橋 達二 甲野 佑 浦上 大輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.AI30-M_1-11, 2016-11-01 (Released:2016-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
3

As the scope of reinforcement learning broadens, the number of possible states and of executable actions, and hence the product of the two sets explode. Often, there are more feasible options than allowed trials, because of physical and computational constraints imposed on the agents. In such an occasion, optimization procedures that require first trying all the options once do not work. The situation is what the theory of bounded rationality was proposed to deal with. We formalize the central heuristics of bounded rationality theory named satisficing. Instead of the traditional formulation of satisficing at the policy level in terms of reinforcement learning, we introduce a value function that implements the asymmetric risk attitudes characteristic of human cognition. Operated under the simple greedy policy, the RS (reference satisficing) value function enables an efficient satisficing in K-armed bandit problems, and when the reference level for satisficing is set at an appropriate value, it leads to effective optimization. RS is also tested in a robotic motion learning task in which a robot learns to perform giant-swings (acrobot). While the standard algorithms fail because of the coarse-grained state space, RS shows a stable performance and autonomous exploration that goes without randomized exploration and its gradual annealing necessary for the standard methods.
著者
高橋 正義 十代田 朗 羽生 冬佳
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.571-576, 2003-10-25
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究は、戦後まもなく制定された観光関係特別都市建設法(以下、「国観法」)及び国観法制定都市に着目し、まず、(1)国会での議論から戦後復興期の観光政策の中で国観法並びに国観法制定都市がどのように位置付けられていたのか。を把握した上で、制定都市では、(2)法制定前後の時期に観光都市建設を目指してどのような計画が描かれたのか。さらに、(3)その構想実現のためにどのような具体的整備計画が立てられ、その後どのように変遷していったのか。の3点を明らかにすることを目的としている。資料としては、国会議事録、計画案、関連新聞記事、市史、関連文献・研究等を用いている。<BR> その結果、以下のことを明らかにしている。まず(1)国会での議論から観光政策が縦割り行政を越えられず都市計画行政の枠組みにはめられていったこと、また発言内容を総合すると、各都市の個別法を支える基本法あるいは一般法を制定すべきだという議論が議員からなされたが、政府はそれに対して都市計画法の改正での対応を示唆するなど否定的な見方をしており、結果的に国庫からの助成措置もほとんどなされることはなかったことを確認している。次に(2)各都市の計画内容から、現状認識を6項目、コンセプト4タイプ、主要目標14項目に大凡まとめている。この内、都市内部の条件や計画コンセプトに共通性がある都市間では、主要目標にも共通性がみられる傾向がある。一方で、国が推進する広域的な都市の位置付けよりも、都市内部に目を向けた計画となっていることが読み取れる。さらに(3)具体的な方策を見ていくと、法案提出以前から観光都市建設のビジョンのある都市では方策の中に観光要素が盛り込まれ、ビジョンを持っていなかった都市では既存の制度に則った計画づくりが行われているという史実を確認している。例えば、別府では、構想実現のため計画を既存制度に当てはめることが行われ、その後、国策の重点が工業開発へと変わると方向転換を余儀なくされ、結局、多くの事業が実施されることなく現在に至っている。<BR> 以上総括すると、国側における制度的裏付けの欠落、都市側での計画技術(構想力、実現力)の不足から国観法は機能しなかったと考えられる。<BR>
著者
田中 恵海 高橋 謙輔 鳥海 不二夫 菅原 俊治
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.98-108, 2010-01-26

本研究では,日本の中学校の一学級を対象とし,教師のいじめ対策行動の効果を検討するためのエージェントシミュレーションモデルを,ソシオン理論とハイダーの認知的均衡理論に基づいて作成し,教師のいじめ対策行動の効果を検討した.いじめは昨今の学級形成の重要な問題となっているが,その対策は十分確立できていない.教師による学級内のいじめ対策方法を確立するためにはその効果を確認する必要があるが,そのためには長期にわたる観測を行う必要があるため,難しい.本研究では,教師および生徒をエージェントとし,エージェント間の対人関係形成の変異をコンピュータによるエージェントシミュレーションで再現し,その効果を推定する.本研究では対策行動として「班行動,出席停止,予防活動」の3つをモデル化し,それぞれに対していじめ被害者および加害者の割合,全生徒間の好感度平均,教師に対する全生徒の好感度平均から各いじめ対策行動の効果と影響を検討した.本実験から,学級におけるいじめ対策行動として最も適切である学級運営手法は「予防活動」であるとの示唆を得た.
著者
山上 伸 樫尾 博 北澤 英理子 高橋 一喜
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.155-160, 2007-03-01

東京ガスのORチームは,社運を賭けて取り組んだ三大プロジェクトの遂行のために1971年に設立された.設立当初は華々しい成果を上げたものの,次第に課題が小粒になり,計算屋と化していった.梃入れにと1991年には研究部門へ移り,長期的な視点での研究に力を入れた.研究所での5年間の充電期間を経た後,企画部門に異動し,現在は経営に直結する課題の解決に携わっている.一方,2000年代に入ってから,ORを実践する組織が新たに二つできた.営業や製造供給の現場からのORニーズに応えるチームと,市場リスクを管理するチームである.三つのORチームはそれぞれに活躍している.
著者
高橋 雅雄 磯貝 和秀 古山 隆 宮 彰男 蛯名 純一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A65-A71, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
26

2014-2015年冬期と2015-2016年冬期に,関東地方の都市部と農村部の計32か所の湿性草原でオオセッカの生息調査を行ない,13か所で計94個体を確認した.そのうち4か所は都市部に位置し,住宅地等で囲まれて孤立した環境だった.また3か所では耕作放棄田で,別の3か所では自然生態観察公園で生息が確認され,これらの環境も越冬地として利用されることが確かめられた。さらに,オオセッカは多様なタイプのヨシ原環境で確認され,従来考えられていた以上に多様な植生環境を利用する可能性が示唆された.
著者
高橋 宗
出版者
聖泉大学
雑誌
聖隷学園聖泉短期大学人文・社会科学論集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A17-A41, 1991-01-31

商業活動にいろいろな影響を及ぼしている、多様な人間社会について検討することは、商店街の問題を検討する場合にも必要な事である。本研究では、同一次元で実施された購買動向調査と市民意識調査の中から、購買行動と性格特性の関係について分析した。その結果、次のような事が明らかにされた。1. 購買行動における性格特性として、主成分析の結果、4因子を抽出した。第一因子を感覚派タイプ、第二因子を現実派タイプ、第三因子を自己充実派タイプ、第四因子を知性派タイプと意味づけられた。2. これらの各因子群の項目と商店街イメージとの関係を数量化I類でもって検討された。その結果、第一因子では、商店街のファッション性と関係があり、各商店街によって違いが見られた。したがって、この因子特性の高い人は、商店街のファッション性に注目すると考えられた。第二因子では、各商店街の交通やサービスといった実利的側面との関係が見い出された。それに対して第三因子では銀座商店街のサービスや魅力性や大薮の専門店といったように、特定の商店街に対して関係が高く見られた。第四因子では、旧商店街と新商店街との工間に評価の違いがこの特性にあることが推考された。3. 性格特性のタイプは、商業施設や購入先店の選択においても違いが見られた。特に婦人・子ども服の購入先店と紳士服類の購入先店には、タイプの違いによって反転する結果が得られた。以上の結果から、商業活動に影響を与えるものとして、多数の社会的要因があると考えられる。しかし、それを検討するためには、消費活動をする人間自身に焦点をあてることの必要性が大切であることを本研究は明らかにした。特に、社会的要因の影響を受ける人間としての消費者をとらえる時、人間の性格特性を除外しては考えられないと判断された。したがって、購買動向における変動の本質的な要因を考える場合、又、商店街の活性化について考える場合でも、消費者の性格特性との関係で分析するといった試みは、今後とも、重要な課題であると考えられた
著者
酒井 治己 高橋 俊雄 古丸 明
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1-4, pp.109-121, 2014-03-31 (Released:2016-05-31)
参考文献数
54

Allozyme variability in the androgenetic freshwater clams Corbicula leana from Japan and the exotic C. fluminea were investigated. A total of 462 individuals of C. leana from 19 localities throughout the distribution range of the species were monomorphic at three allozyme loci as well as in purple inner shell color. Corbicula fluminea from three localities, on the other hand, was variable in shell color; with white, purple, white with purple flash, or deep purple examples. The present results suggest that they may include several clonal lines with different shell colors and allozyme genotypes. We discuss possible diversification of freshwater clams among bisexual species and hermaphroditic clones through clonal capture, genome capture, or ploidy elevation.
著者
赤倉 康寛 高橋 宏直 中本 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.632, pp.77-92, 1999
被引用文献数
1

本研究は, 今後発生し得る大規模地震による街路閉塞の被害を予測することを目的としたものである. 本研究では, 街路閉塞の発生を旧気象庁震度階を基にした地震動強さと街路幅員によりモデル化し, これによる予測結果を既往の研究における兵庫県南部地震での実測状況と比較, 概ね一致していることを確認した. さらに, 本研究のモデルを用いて横浜市中心地域が関東大地震と同規模の地震を受けた場合の被害予測を行い, これにより都市の地震災害に対する総合的な対応方策の検討の一部となり得ることを示した.
著者
高橋 靖
出版者
有斐閣
雑誌
ジュリスト (ISSN:04480791)
巻号頁・発行日
no.1232, pp.201-203, 2002-10-15
著者
須藤 裕子 高橋 優樹 小笠原 勝
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-9, 2006-03-20
被引用文献数
2 5

国道4号線の全区間において,2004年7月27日から7月30日に,約20km間隔に68地点で路面間隙雑草の植生調査を行った。その結果,44種の帰化雑草を含む総計27科102種の雑草を観察した。出現頻度はメヒシバ(Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler),ヨモギ(Artemisia princeps Pampan.),セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)の順で高く,生活型組成では一年生・重力散布・単立型雑草が優占しており,このような雑草植生の特徴は2002年および2003年に栃木県宇都宮市で行った調査結果と類似した。一方,道路周辺の土地利用形態を宅地に限定し,岩手県と栃木県小山市以南の雑草植生を比較したところ,メヒシバとニワホコリ(Eragrostis multicaulis Steud.)は両地域にほぼ同じ被度および頻度で出現したが,セイヨウタンポポとナガハグサ(Poa pratensis L.)は岩手県で,エノコログサ(Setaria viridis (L.) Beauv.)とオオアレチノギク(Conyza sumatrensis (Retz.) Walker)は栃木県以南に偏在していた。
著者
高橋 純一 山田 憲幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1257-1277, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
87
被引用文献数
9 17

誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)のバックグラウンドスペクトルには,試料やプラズマガスに起因する種々の多原子分子イオンが観測される.微量定量分析を妨害するこれらのイオンを除去する上で,質量分析計の手前にセルで囲ったイオンガイドを設け,気体分子とイオンとを衝突させる手法(collision/reaction cell)が非常に有効であることが示された.Collision/reactionガスの選択,セル内で副成するイオンの除去法,イオンの運動エネルギーの制御の仕方などにいろいろなバリエーションが見られ,少しずつ方式の異なる装置が市販されている.それらの原理,使用に際しての最適化,種々の試料への応用について概観する.試料への応用を通じて,期待される性能,あるいはその限界について紹介する.