著者
髙野 愛子
出版者
法政大学大学院
雑誌
大学院紀要 = Bulletin of graduate studies (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.13-29, 2021-03-31

本研究では,大学生を対象に2つのじゃんけんの手に対する勝敗判断課題を実施し,勝敗の判断基準に関する教示を与えずに,指の本数の多い方を勝ちとする数量に応じた勝敗判断を随伴性形成することを試みた。実験1では2色の背景色を用いて,数量とじゃんけんに応じた勝敗判断を分化強化した。数量に応じた勝敗判断が自発されない参加者には,通常じゃんけんに使用されない手を選択肢に追加して提示した。分析対象とした12名のうち,正誤フィードバックに従って勝敗判断が正しく分化したのは3名のみであり,じゃんけんの手同士の組合せの提示が,日常生活におけるじゃんけんの勝敗関係に基づく勝敗判断を強力に喚起することが示唆された。実験2では,数量に応じた勝敗判断を正反応とし,これを強制的に自発させて強化する強制選択条件を実施した。加えて,自由選択条件への移行に先立ち,プロンプトフェイディング法の導入有無を参加者間で変化させた。正誤フィードバックに従わず一貫してじゃんけんに応じた勝敗判断を示した4名の参加者のうち,プロンプトフェイディング法を導入しなかった2名は,強制選択条件の提示の中止に伴い正反応率の下降を示し,正誤フィードバックが提示されなくなると4名がじゃんけんに応じた勝敗判断を示した。このことから,数量に応じた勝敗判断が維持されない原因として,正反応の強制や正誤フィードバックの有無等の事象が勝敗判断の分化を招いたことが示唆された。
著者
恒吉 宏亮 平田 京一郎 鈴木 健一郎 髙橋 志宗 飛田 祐志 上田 篤 渡邊 慎太郎 市川 俊和 仲川 政宏 萩原 隆男 本間 正勝 岡本 勝弘
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.137-150, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
15

In the case of a fire incident such as arson, the combustion experiment that reconstructed the fire scene will be conducted to clarify the facts. However, various problems such as construction costs and securing an experimental environment must be dealt with. Therefore, the purpose of this study is to utilize fire simulation for the investigation of fire incidents. In this study, combustion experiments and FDS (Fire Dynamics Simulator) simulations assuming gasoline arson in the kitchen, which have not been reported so far, were conducted and compared. Next, the observation of fire damage using the accumulated heat-flux was evaluated by a newly developed analysis tool for visual evaluation. The simulation results such as burning behavior, temperature changes, and the burned away phenomenon of the door showed good agreement with those experimental results. Burning behavior in the kitchen, that couldn't be observed in the combustion experiment were grasped in detail in the simulation. Furthermore, the relationship between the fire source and the fire damage on the floor, which couldn't be explained only by the observation results after extinguishing the fire, could be reasonably explained by the visual evaluation of burning behavior and the accumulated heat-flux in the kitchen by using the simulation. Therefore, the fire simulation was shown to be an effective tool for analyzing fire phenomena.
著者
髙瀬 義昌 奥山 かおり 野澤 宗央 水上 勝義
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.675-678, 2018-10-25 (Released:2018-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

地域包括支援センターからの連絡で訪問診療を開始し治療に結びついた超高齢発症の遅発パラフレニーの症例を経験した.症例は94歳,女性.被害妄想や幻聴を呈した.近隣と騒音を巡ったトラブルや食思不振などがあり治療が必要だったが,外来受診の拒否が強く自力での通院が困難であったため,訪問診療が開始された.オランザピン2.5 mg/日を使用し改善を認めた.在宅医療では限られた資源と診療時間の中で,より精緻な鑑別診断と治療のアプローチが必要となる.高齢者に幻覚・妄想などの精神症状が出現することは臨床的にはよく知られているが,在宅医療現場では患者・家族やそれに関わる多職種にはよく知られておらず,見過ごされたまま対応に苦慮しているケースも少なくないと考えられる.今後更なる高齢化に伴い,在宅医療でも高齢者の精神疾患に対応しなければならない状況が増加すると推測される.超高齢社会の日本において,地域で高齢発症の遅発パラフレニーをいかに理解し継続支援していくのか,在宅医療・介護の推進にあたっての喫緊の検討課題であると考える.
著者
松山 敏之 竹越 哲男 髙橋 秀行 近松 一朗
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.310-316, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
8

アレルギー性鼻炎の有病率は年々増加し,長期寛解,治癒が望めるアレルゲン免疫療法は,今後ますます重要な治療法になると考えられる。今回我々は,スギ舌下免疫療法(SLIT)により改善した症状とQOL(quality of life)及びSLITの満足度との関係について検討を行った。2014年11月から2017年12月までの間にスギ舌下免疫療法を開始し,2019年2月1日まで継続治療できた39症例を対象とした。2019年スギ花粉飛散後にSLIT開始前とSLIT後の症状スコア,QOLスコア,SLITの満足度の調査を行った。鼻水,くしゃみ,鼻閉,眼のかゆみの評価したすべての症状でSLIT後に症状スコアの改善がみられた。QOLスコアにおいて評価したすべての項目でSLIT後に改善がみられた。治療前の症状スコアとQOLスコアの間には多くの項目で有意な相関を認めた。治療前の症状スコアは高満足群,低満足群の2群間に有意差はなかったが,治療前後のスコアの改善幅はくしゃみ,鼻閉,眼のかゆみの3症状で2群間に有意差がみられた。症状の改善幅が大きいとSLITの満足度は高くなってくると思われた。症状スコアの改善幅が高満足群と低満足群の2群間で有意差があった3症状について,高満足度への寄与度を多変量解析にて検定すると,治療前後での鼻閉スコアの改善幅が大きいことが満足度に最も寄与した。SLITの満足度に最も影響を及ぼすのは,鼻閉症状の改善であると思われた。
著者
山本 茂 東 倖成 髙木 山河 堀川 徳二郎 山崎 之博 宇治川 弘人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.88, no.915, pp.22-00097, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Strip walking is an unstable lateral movement in a hot strip finishing mill that causes the strip to crash into the side guides, resulting in a tail pinch where the strip is rolled in a folded state. Strip walking should be appropriately controlled to prevent tail pinches, and an adequate mathematical model is essential to design the strip steering control. In this paper, the traditional model and a recently proposed model representing strip walking are numerically compared, and the latter is shown to characterize the details of the actual phenomenon. Such a mathematical model derivation makes it possible to use model predictive control to optimally control the strip walking, considering the rate limit constraint of the actuator. However, model predictive control requires time-consuming optimization computation. Thus, control performance deteriorates with longer control periods. In this paper, we propose a new model prediction control method to reduce optimization computation time with discretized control input that enables fast discrete optimization instead of slow continuous optimization. It is also shown that fixing the misalignment between the roll and steel strip centers is insufficient to prevent the tail pinch. Moreover, it is vital to suppress the rotational motion of the steel strip by using numerical simulations.
著者
髙津 梓 田中 翔大 仲野 みこ
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.37-45, 2021-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
11

研究の目的 本研究では、排尿・排便が未確立なASDと知的障害を有する児童に対し、参加児と保護者の状況のアセスメントから保護者が実行可能な支援計画を作成し、支援の実行と効果を検討した。参加者 知的障害特別支援学校小学部3年に在籍する、ASDと知的障害を有する男児1名とその保護者。家庭や登下校時に失禁があり、トイレでの排便は未経験であった。トイレで座ることに対し強い抵抗を示し、声を上げ嘔吐をすることがあった。場面 排尿については登下校時、排便については家庭で保護者が介入をした。介入 排尿については、尿失禁が起こっていないその他の場面と同じ布パンツに変更した。排便については、拒否行動を起こさずトイレでの排便経験をし、排便することで好子が得られる方法を2つ提案し、保護者の選定により、浣腸の実施による短時間の着座と確実な排便の誘導、排便後の好子の提示を実施した。行動の指標 週あたりの登下校時の尿失禁と、家庭での排便の成功と自発の生起率、排便時の浣腸の使用頻度を指標とした。結果 保護者による支援が実行され、トイレでの排尿・排便が定着し意思表示も増加した。結論 保護者の実行可能性に基づいた支援計画が支援の実行を促し、排尿・排便の確立に繋がった。
著者
西本 有紀 辻井 良政 菱川 美千代 髙野 克己 藤田 明子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00055, (Released:2023-01-06)

本研究では,ブレンド米の食味評価方法に着目し,ブレンド比率による各評価の精度や,ブレンド米の食味について新知見を得られた.1. 酵素活性量測定,粘弾性測定,食味官能評価,機器による食味評価(食味鑑定団),いずれの方法においても,精白米のブレンド比率ごとの予測値と測定値の相関係数はr≧0.57(p<0.05)であり,高い精度で測定ができることがわかった.2. 食味評価が低い精白米のブレンド割合が多くなるにつれ,食味の低下がみられた.ただし,特徴が異なる精白米のブレンドにおいてはその比率による食味の変化が大きく,類似品種のブレンドにおいては,食味の差異が小さいことがわかった.3. ブレンド比率が食味に与える影響は,酵素活性量(β-アミラーゼ,β-ガラクトシダーゼ),粘弾性評価,そして食味評価(食味官能試験・機器測定)により明らかになることがわかった
著者
外山 信司 髙野 良子
出版者
学校法人 植草学園大学
雑誌
植草学園大学研究紀要 (ISSN:18835988)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.65-76, 2019-03-31 (Released:2019-08-21)
参考文献数
12

藩校は藩士の子弟のために諸藩が設立した学校で,私塾・寺子屋とともに近世の教育を担った。明治維新後の近代化と教育の発展は近世に培われたが,教育改革が課題となる中,教育の原点とも言うべき近世の教育について明らかにすることは意義があろう。下総佐倉藩の藩校は1792(寛政4)年,堀田順によって創設された。さらに堀田正睦は藩政改革の一環 として藩校を拡充し,「成徳書院」と改めた。朱子学と武芸を根幹とした教育が行われ,蘭学・英学などの洋学が積極的に取り入れられた。しかし,藩校は15 歳から24 歳までの藩士子弟が就学するのに対し,その前段階の教育については,従来の藩校研究,教育史及び地域史研究においても成徳書院に付随して概要が述べられるにとどまっていた。そこで,本論考では8 歳から14 歳までの藩士子弟が学ぶ教育機関であった東塾・西塾を中心に史資料「両塾諸生心得書」を読み解き,佐倉藩を例に藩校の初等段階での教育がどのように展開されたかについて述べる。
著者
堀内 泉 髙野 惠子
出版者
学校法人 甲子園短期大学
雑誌
甲子園短期大学紀要 (ISSN:0912506X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.31-37, 2021-03-15 (Released:2021-05-29)
参考文献数
35

本研究は、高齢者介護に従事する介護職員の感覚処理感受性、介護観、燃え尽き症候群、および離職意向の関連を明らかにすることを目的とした。国内の高齢者福祉の分野で働く介護職員(200名)を対象に調査を実施した。 その結果、相関分析において感覚処理感度と燃え尽き症候群の間には、有意な正の相関がみられた。パス解析では、感覚処理感受性が、バーンアウトを介して離職意向に影響を与える間接効果が有意となった。本研究の意義は、感覚処理感受性の離職意向に影響を及ぼすメカニズムを明らかにした点にある。介護観は、いずれも有意な結果が得られなかったが、今後は、ポジティブな要因と離職意向との関連など、さらなる研究が必要である。
著者
髙岸 敦夫
出版者
関西大学フランス語フランス文学会
雑誌
仏語仏文学 (ISSN:02880067)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.165-179, 2011-03-15

伊藤誠宏教授退職記念号
著者
中井 健太郎 山本 修太郎 友岡 知加 井上 めぐみ 古原 千明 宿理 朋哉 髙江 啓太 谷口 拓也 池田 綾 小江 雅弘 満生 浩司
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.61-69, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
24

透析患者の心臓手術においてガイドラインに即した周術期プロトコールを作成し, 多職種が連携して管理を行ってきた. 当院における周術期合併症を調査することによりプロトコールの検証を行った. 2016年から2018年に心臓手術を行った症例のうち大血管の同時手術を除く128例を対象として, 維持透析29例 (透析群) と, 非透析群99例を比較検討した. 心臓手術の内訳は, 大動脈弁置換術および冠動脈バイパス術が最も多く, 両群間で差を認めなかった. 入院中死亡は透析群で2例 (7%), 非透析群で3例 (3%) であり有意差を認めなかった. 術後在院日数は透析群で有意に長く (30.7日 vs. 23.3日), 予定外の体外循環を要した割合は透析群で有意に高率であった (17% vs. 1%). ただし, CABG単独においては, 術後在院日数, 予定外の体外循環は両群間で同等であった. 特に弁膜症手術に際しては, 予定外の体外循環を減らし入院期間を短縮するため, さらなる検討を行っていきたい.