著者
髙瀬 陸 小林 隆史 大澤 義明
出版者
応用地域学会
雑誌
応用地域学研究 (ISSN:1880960X)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.25, pp.15-26, 2022-03-01 (Released:2022-03-03)
参考文献数
15

我が国では各地で「地域医療構想」が策定され病院の集約が検討されている。一方で、5Gなどの最新技術によるデジタル化の進歩で、病院間の連携はスムーズになり、そして住民は自宅で医療サービスを享受できるようになる。この二種類のデジタル化は病院の集約化にどのような影響を与えるのか、線分都市モデルを通して、投票と費用最小化との間に生じる齟齬、多数決のパラドックスに及ぼす影響を抽出する。さらに、集約化が進む医療高度化時代の費用構造に限定すると、投票ではハコモノ行政と揶揄される非効率な選択がされること、自宅病院間のデジタル化が改善、病院間デジタル化が改悪になることを明らかにする。
著者
吉岡 学 中川 浩文 諸菱 正典 保髙 拓哉
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.114-122, 2022-06-15 (Released:2022-08-16)
参考文献数
16

視覚障害者の鉄道利用者は単独で移動する際に様々な困難や危険に遭遇する.本研究では,重大な危険性がある駅ホームへの転落を軽減するためのシステムについて述べる.本方式では,通常の白杖の先端にRFIDリーダを装着し,RFIDリーダとスマートフォンのアラーム音を連動させ,白杖先端部がRFIDタグの取り付けてあるホーム端に近づくとRFIDデバイスが作動するシステムを提案する.本システムを試行した結果,RFIDタグから横方向に150 mmの距離,RFIDタグから100 mmの高さ,駅ホームに対する白杖先端部の振り速度が1.5 m/sまでであれば,いずれの使用状況においても白杖先端部に取り付けられたRFIDリーダの動作が確認された.しかし,環境音がない場合,検出率は低下した.アンケートでは,91.7%の人がスマート白杖の重量が増加したことを指摘し,72.8%の人が本システム搭載のスマート白杖の購入を希望していた.この結果から,本システムが視覚障害者の駅ホーム転落防止システムとして社会実装の可能性があることを示した.
著者
髙柳 伸哉 伊藤 大幸 浜田 恵 明翫 光宜 中島 卓裕 村山 恭朗 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-73, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
36

本研究では,青年における自傷行為の発生に関連する要因と,自傷行為の発生に至る軌跡の検証を目的とした。調査対象市内のすべての中学生とその保護者に実施している大規模調査から,自傷行為の頻度やメンタルヘルス,対人関係不適応,発達障害傾向等について質問紙による3年間の追跡調査を行った5つのコホートの中学生4,050名(男子2,051名,女子1,999名)のデータを用いた。中3自傷発生群と非自傷群について,各尺度得点のt検定の結果と,非自傷群の中学1年時の得点を基準とした各尺度z得点による3年間の軌跡を比較した結果から,中3自傷発生群は3年時に非自傷群よりもメンタルヘルスや家族・友人関係で問題を抱えていることに加え,1・2年時でも抑うつなどが有意に高いことが示された。中学1―3年時におけるz得点の軌跡からは,中3自傷発生群は非自傷群と比べて1年時からすでにメンタルヘルスや友人関係・家族関係等での不適応が高いこと,3年時にかけて両群の差が開いていくことが示された。本研究の結果,中学3年時に自傷行為の発生に至る生徒の傾向と3年間の軌跡が明らかとなり,自傷行為のリスクの高い生徒の早期発見と予防的対応につながることが期待される。
著者
本郷 裕一 山田 明徳 伊藤 武彦 猪飼 桂 守川 貴裕 髙橋 雄大
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

シロアリの餌である木片の消化の大部分は、シロアリと1.5億年以上前に共生を開始した腸内原生生物群集が担っているが、それら原生生物の起源や共生に至った過程は未知である。本研究の主目的は、木質分解性原生生物を進化過程で喪失した「高等シロアリ」の一系統群が比較的最近、新規な木質分解性原生生物を再獲得した可能性の検証である。結果、新規原生生物は多様な高等シロアリに共生しているものの、多数の原生生物細胞が見られるのはやはり一系統群のみであること、同原生生細胞質が木片で充満していること、同原生生物を含む腸画分はセルロース分解活性を有することなど、今後の研究の基盤となる重要な情報を得ることができた。
著者
上田 早智江 高田 真史 東條 かおり 櫛田 拳 髙木 豊 樋口 和彦
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-34, 2023-03-20 (Released:2023-03-21)
参考文献数
18

COVID-19の感染拡大により,長時間の衛生マスク(以下,マスク)の着用が必要となった。そこで,この長期間のマスク着用による皮膚性状の変化を客観的に捉えるべく,本研究では,マスク内の温湿度環境を計測するとともに,マスク内の温湿度環境の角層への影響を評価した。また,長時間のマスク着用による皮膚性状の変化の実態を調査した。その結果,マスク内は高温多湿であり,マスクを外すことで急激な温湿度の変化が起こること,くわえて,軽度な運動負荷を伴ったマスク着用では,30分という短時間でも角層の質の変化を誘発していることが明らかとなった。長期間のマスク着用の影響解析においては,マスクの内側の皮膚性状は,外側の皮膚と比して,バリア機能が低く,ターンオーバーが亢進し,敏感な状態であることが明らかとなった。さらに,遊離脂肪酸の比率が高い皮脂が存在し,広範囲にマスクとの「こすれ」が生じることで,より皮膚性状が悪化する環境が形成されていることがわかった。
著者
日髙 尚子 田口 学
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.330-336, 2019-05-30 (Released:2019-05-30)
参考文献数
28

Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群とは,急性関節痛・四肢末端の圧痕性浮腫を特徴とする炎症性疾患であり,DPP-4阻害薬の副作用として報告されているが,高リスク群や量依存性の有無などの詳細は不明である.我々は,DPP-4阻害薬内服中にRS3PE症候群が発症・増悪した6例(シタグリプチン3例,ビルダグリプチン2例,リナグリプチン1例)を経験した.男性3例,年齢中央値72.5歳,HbA1c中央値7.6 %.全例で膠原病の合併または家族歴を認めた.2例はDPP-4阻害薬の種類変更後に発症し,1例は同一DPP-4阻害薬の増量後に発症した.RS3PE症候群発症は,膠原病の合併や家族歴との関連が疑われ,患者側のリスク状態の変化や被疑薬増量に伴い発症する可能性が示唆された.
著者
吉﨑 由美子 金 顯民 奥津 果優 池永 誠 玉置 尚徳 髙峯 和則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.170-178, 2015 (Released:2018-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

本研究では韓国麹「ヌルク」を用いた焼酎商品化の可能性について検討した。10種類のヌルクの発酵能力を確認したところ,米麹と比べ全てのヌルクで発酵能が弱かった。しかし,その中でも2種のヌルクは比較的高い発酵能力を示した。ヌルクに含まれるα-アミラーゼとグルコアミラーゼは米麹とほぼ同等であり,生デンプン分解活性に関してはヌルクの方が高かった。ヌルクに含まれるデンプン質の糊化度は米麹と比較して低く,糊化度の低さがヌルクの緩やかな発酵に影響していることが強く示唆され,糊化度をもとに発酵能力の高いヌルクを選抜できる可能性が示された。ヌルクを用いて製造した米焼酎の官能評価は,米麹を利用した焼酎より酸臭と酸味がある一方で,華やかであった。さらに,一次仕込み時に焼酎酵母を添加することでヌルクを使用した米焼酎の酸臭および酸味を抑制できる可能性が示唆された。また,ヌルクに含まれる酵母の1つとしてSaccharomyces cerevisiaeを同定し焼酎製造に適した微生物をもつことが確認された。 本研究は韓国RDAとの共同研究(Project No. PJ008600)で実施された。
著者
伏見 華奈 齋藤 敦子 更谷 和真 土屋 憲 池ヶ谷 佳寿子 加瀬澤 友梨 徳濱 潤一 原田 晴司 柴田 洋 髙森 康次 増田 昌文
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.136-142, 2018-07-25 (Released:2019-01-25)
参考文献数
25

本邦には歯科用ユニットの給水に関する水質の基準がなく,レジオネラ属菌による汚染の報告もみられず医療関係者の関心も低い.当院は1997年より院内感染対策の一環として院内給水系のレジオネラ定期環境調査を行っており,2014年から歯科用ユニットの給水を環境調査に追加した.4台の歯科用ユニットのうち1台よりLegionella sp.が60 CFU/100 mL検出され,部位別にみると,うがい水,低速ハンドピース,スリーウェイシリンジから,1,000 CFU/100 mLを超えるLegionella sp.が検出された.対策として,給水の温水器停止と回路内のフラッシング,次亜塩素酸ナトリウム希釈水の通水を行ったが,Legionella sp.は検査検出限界以下にならなかった.歯科用ユニットの構造的理由から,高温殺菌や高濃度消毒薬の使用など更なる対策の追加はできず,やむを得ず歯科用ユニットを交換した.近年,大半のレジオネラ症例は感染源が明らかではない国内単発例と報告されており,これまで認識されていない感染源の存在が示唆される.エアロゾルを発生する装置としての歯科用ユニットの給水システムはレジオネラ感染の極めて高い潜在的リスクと考える.歯科用ユニット製造業者と使用管理者,行政が連携し,歯科用ユニット給水汚染の制御法確立とレジオネラ症予防のための適切な管理基準の策定が望まれる.
著者
上条 陽 藤垣 洋平 パラディ ジアンカルロス 髙見 淳史 原田 昇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00244, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
14

本研究では,対象地域における人口全体の移動需要を考慮し,現況に加えて人口・施設分布を集中または分散させた異なる都市構造を仮定した移動需要データを生成し,異なる都市構造におけるシェア型自動運転サービス(SAV)の利便性・運送効率の比較評価とSAVの地域実装による影響分析を行った.SAVの利用意向を尋ねたSP調査から推定された交通手段選択モデルをもとにエージェントベースシミュレーションを実施した.対象地域は地方中小都市である群馬県沼田市と利根郡周辺とした.人口・施設分布を集中させ,移動需要が中心部に集中するほど利便性・運送効率は増しSAVの運用にあたっての好影響が強まった.一方で,利便性の地域間格差については,中心市街地から離れた人口低密度地域にて顕著にSAV待ち時間が長くなる結果が得られた.
著者
髙木 聖 安藤 直樹 中村 優希 今村 康宏
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.98-103, 2012-04-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

回復期リハビリテーション病棟(リハ病棟)において下肢装具を処方した脳卒中片麻痺患者を当院一般病棟からリハ病棟に転棟した群(A群)と急性期病院から当院リハ病棟に転院した群(B群)の2群に分け,発症から装具作製までの日数ならびに総入院日数について比較・検討した.両日数ともにA群で有意に短く,早期装具作製が総入院日数の短縮につながる一要因であると考えられた.また,転院時期や転院から作製までの日数がそれらに影響をおよぼすことが示唆された.急性期病院とリハ病棟の双方が装具処方に対する認識を共有し,早期処方,スムーズなリハの継続,そして早期の在宅復帰につながるよう地域連携パスが有効に運用されることが望まれる.
著者
榎 裕美 苅部 康子 谷中 景子 堤 亮介 長谷川 未帆子 田中 和美 髙田 健人 古明地 夕佳 岡本 節子 遠又 靖丈 長瀬 香織 加藤 すみ子 大原 里子 小山 秀夫 杉山 みち子 三浦 公嗣
出版者
一般社団法人 日本健康・栄養システム学会
雑誌
日本健康・栄養システム学会誌 (ISSN:24323438)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.31-42, 2023 (Released:2023-02-14)
参考文献数
16

目的:栄養マネジメント強化加算による栄養ケア・マネジメントの体制と取り組み、併設の通所サービスおよ び認知症グループホームにおける管理栄養士の関わり等について、インタビュー調査を実施し、今後の栄養ケ ア・マネジメントの推進および質の向上についての課題の整理を行うことを目的とした。 方法:対象は、良好な栄養ケア・マネジメントの取り組みが為されている特別養護老人ホーム5施設、老人保 健施設5施設に所属する常勤の管理栄養士(責任者)とした。インタビューガイドを用いたWEB インタビュー を行い、逐語録から概要表を作成した。 結果:栄養マネジメント強化加算は、経営面および実務を担う管理栄養士から高く評価され、多職種による週 3 回以上のミールラウンドは、多職種間の連携が強化されていた。認知症グループホームにおける栄養管理体 制加算算定は、職員の意識付けとなっていた。見えてきた課題として、介護支援専門員との連携不足、介護保 険サービスにおける管理栄養士の人材確保および人材育成が挙げられた。 結論:令和3年度介護報酬改定は、あらゆる側面で、栄養ケア・マネジメントの向上に寄与していた一方で、 人材育成などの喫緊の課題も明らかとなった。
著者
小幡 大輔 黒田 聡 菅原 俊継 早川 康之 清水 久恵 髙橋 昌宏
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual60, no.Abstract, pp.82_2, 2022 (Released:2022-12-01)

[はじめに]これまで我々は、磁性粒子を利用して血液回路関連の異常対応訓練シミュレータについて、主に透析の条件で検討してきた。今後、アフェレシスやECMO等への仕様拡大を目指しているが、特にアフェレシスのように低流量であると、磁性粒子が沈降して血液回路内を循環できない可能性が考えられた。そこで本報告では、磁性粒子が血液回路内で循環可能な限界流量について検証した。[方法]血液回路(内径4mm、全長150cm)を水平に設置し、粒子径20µmの磁性粒子懸濁液を50mL/minから400mL/minの透析とアフェレシスを想定した流量で、ローラポンプにより循環させた。循環中に血液回路の流入口と流出口を撮影し、その際の流動状態と画像から推定された磁性粒子の量を比較した。[結果] 磁性粒子懸濁液は、100mL/minより流出口まで一様に堆積を伴う流れとなり、160mL/minより均質流であった。また、磁性粒子の量は、100mL/minまで流入口に対して流出口の方が少なかったが、120mL/minより同量となった。[まとめ]磁性粒子が血液回路内で循環可能な限界流量は120mL/minであることが示唆された。しかし、アフェレシスを想定すると50mL/minで循環させるため、粒子径を小さくする等の検討が必要である。また、臨床を想定すると血液回路の様々な設置の条件での検討が必要であると考えられた。
著者
巻 直樹 髙橋 大知 仲田 敏明 長谷川 大吾 若山 修一 坂本 晴美 藤田 好彦 高田 祐 佐藤 幸夫 柳 久子
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.138-144, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
42
被引用文献数
3

【目的】嚥下機能低下を呈した要介護認定高齢者を対象として,呼吸トレーニングにおける短期および長期的な効果を検証する。【方法】通所リハビリテーションを利用している65 歳以上の要介護認定高齢者を対象とした。同意が得られた31 名に呼吸トレーニングを2 ヵ月(8 週)行い,理学療法前後,follow-up 1 ヵ月後,6 ヵ月後に測定を行った。【結果】理学療法前と理学療法1ヵ月(4 週)評価との間では,呼吸機能,嚥下機能,QOL は有意に改善を示した。理学療法2 ヵ月(終了時)とfollow-up 6 ヵ月後との間で呼吸機能,QOL は有意に減少を示していた。【考察】要介護認定高齢者に対し,呼吸トレーニングを導入することにより,呼吸機能や嚥下障害,QOL を改善することが可能であった。
著者
髙橋 希元
出版者
缶詰技術研究会
雑誌
食品と容器 = Food & packaging (ISSN:09112278)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.714-715, 2017-12