著者
黒田 朋斎 中尾 菜穂
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.15, pp.23-38, 2019-03

本稿では、ベトナムの中等日本語教育支援として2016年度末から2017年度にかけて全国の中学校および高校のベトナム人日本語教師を対象に、筆者らが定めた「教師の成長イメージ」にある「授業に慣れた教師」を「自立した教師」に引き上げることを目的として実施した全国研修およびそのフォローアッププログラムについて述べる。「学習者中心」をテーマとした全国研修の参加者(以下参加者)は、その後のフォローアッププログラムとして全国研修での学びを実践する公開研究授業、および全国研修非参加者(以下非参加者)との合同研修での報告、最終レポートの作成を行った。その結果、参加者の「学習者中心」の授業の実践を促すことができただけではなく、「学習者中心」のテーマが合同研修を通じて非参加者にも理解され実践につながる様子が見られた。本プログラムには教師の成長を促す一定の効果があると見られるが、その効果についてはプログラム実施を繰り返しながら継続して検証していく必要がある。
著者
黒田 長久
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.221-223, 1965
被引用文献数
1

筆者は1965年6月,コマドリの調査を主目的として利尻島に2泊した。礼文島は船便と日程の関係で泊れなかった。両島は全島保護区であるので,北海道庁生物保護指導監斎藤春雄氏のお計らいと現地の方々の御好意により,島での飼育鳥から2羽の標本を得ることができた(1羽は偶然前日死亡のもの),また多くの籠鳥をみた。これらは何れも同一型の羽色(多少顔の濃淡はあるが)であった。この標本を山階鳥研の本州産標本及び飼育生鳥とも比較して,次のような点で明らかに区別できたので,和名リシリコマドリ,学名<i>Erithacus akahige rishiriensis</i>を与えることにした。<br>1.頭頂から上面,翼にかけ一様にオリーブ(緑色味)を帯び,本州産より赤味が弱い(オリーブ味は古い標本で多少失われるかもしれないが)。<br>2.従って上面の色は本州産より顔部の橙赤色とはっきり境され,額から顔部も本州産ほど濃赤色でなく,とくに上胸に至り明るい橙色となる。<br>3.この上胸の橙色は以下の青黒色とはっきり境し,この色も濃く鮮かである。<br>4.尾も本州産より多少薄く,脇も淡くオリーブを帯ぶ。<br>5.測定では差はない。<br>なお,1932年12月の利尻標本は上面はより赤味があるが,本州産に比すれば少しオリーブを帯び淡い(季節的な変化や古い標本でオリーブ色が失われる傾向があるかもしれないが)。また一般に胸の青黒色の羽は羽縁が淡灰色で,春はこれがすれて一様な青黒色となるらしい。しかし本州産標本からみて,個体(または年令)により羽毛全体に青黒色の少ないものもある。全般として,利尻のコマドリは羽色の対照が鮮かで,全体に赤色味の強い本州のコマドリよりも美しく,声も高く美しいように思った。なお,北海道の個体について今後調査する必要がある。<br>ここに,斎藤春雄氏をはじめ,御協力を得た東利尻町長小松為五郎氏,同主事山田重男氏,利尻町長小田桐清実氏,同建設課安田美樹穂氏,沓形愛鳥保護会の兼田広氏,田尻忠司氏ほかに感謝の意を表し,併せて,礼文島で飼育コマドリを拝見し得た礼文町長向瀬貫三郎氏にも同様御礼申し上げる。<br>リシリコマドリの生態,羽色,渡りについては,さらに将来調査したいと思っており,重ねて御援助を乞う次第である。
著者
黒田 長禮
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-61, 1950-08-20 (Released:2011-02-23)
参考文献数
15

Most of the Japanese ichthyologists consider that Bembrops caudimacula is confined to the near coasts of Honsiu, Shikoku, Kiusiu and Formosa. As already pointed out by Alcock (1902). B. caudimacuta has wide but isolate distribution from the seas of Japan, the Bay of Bengal, the Gulf of Mexico and to off the Atlantic coasts of North America.The present author has examined and sketched an adult specimen (total length 245 mm.) taken near Heda, Suruga Bay, and compared it with figures of specimens of Goode & Bean (1895) and Alcock (1902). From the result of the comparison the author finds that two figures used by the above gentlemen are no doubt junenile examples with short first dorsal spine and with a fine eye-like dark spot on the upper side near the base of the caudal fin. The adult specimen from Suruga Bay, however, has a rather elongate and curved first dorsal spine, and has no eye-like spot on the upper side near the base of the caudal, while it has a dark longitudinal band on the lower margin of the caudal.Moreover, the author points out the individual variation concerning the number, of dorsal spines and number of scales on lateral line.The two scientific names: Hypeicometes gobioides Goode (1880) and Bathypercis platyrhynchus Alcock have thus become pure synonyms of Bembrops caudimacula of Steindachner (1876).
著者
桜井 邦好 青柳 栄 豊福 初則 大木 実 吉沢 豊吉 黒田 敏男
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.3565-3566, 1978-11-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
3 4

Selective N1-tetrahydrofurylation of uracils has been performed in satisfactory yield by direct addition of uracils to 2, 3-dihydrofuran in the presence of PCl5 in hexamethyl-phosphoramide (HMPA).
著者
市川 ゆかり 黒田 緑
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.336-346, 2008-07-01
参考文献数
23

本研究の目的は,産後1ヵ月の時点の産後うつ病を疑われる母親の割合と関連要因についての現状把握である。研究方法は産後1ヵ月の健康診査に来院した母親を対象に,日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価票(以下,EPDS)と日本語版WHO The Subjective Well-being Inventory検査用紙(以下SUBI)を測定用具とした調査研究である。EPDS区分点となる9点以上を「産後うつ病が疑われる」群,8点以下を「正常」群とし比較検討した。その結果は以下の通りである。1.対象者は152名(有効回答率86%)で,そのうち「産後うつ病が疑われる」群は29名(19.1%)であった。2.「産後うつ病が疑われる」群は正常群に比較し,「今回の妊娠出産のための退職」「未婚」「相談相手として夫を選択していない」点で,有意な差が認められた(p<0.05)。3.「産後うつ病が疑われる」群は,母乳栄養の割合が有意に低かった(p<0.05)。4.精神的コントロールに関する褥婦の訴えは,産後うつ病の早期発見として重視すべき情報である。5.産科学的関連要因および新生児学的関連要因に有意な差はなかった。
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子 篁 宗一 蔭山 正子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.76-87, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
34

目的 精神障害者の子を持つ親が,親亡き後の当事者の地域での生活を見据えて具体的にどのような準備をしているのかを明らかにすることを目的とした。方法 関東近郊に在住の精神障害者の子を持つ親22人に対して2016年12月から2017年2月までインタビュー調査を行った。インタビューデータは質的帰納的に分析し,逐語録から親が行っている準備に関する記述をコードとして抽出した。コードの意味内容の類似性と相違性を検討し,類似するコードを複数集めて抽象度を上げたサブカテゴリとカテゴリを抽出した。なお各々のカテゴリをさらに類型化し,なぜその準備が行われたのかという目的を考察した。結果 研究参加者のうち父親が9人(40.9%),母親が13人(59.1%)であった。彼らの年代は60歳代が9人(40.9%),70歳代が10人(45.5%),80歳代が3人(13.6%)であった。 親亡き後の当事者の生活を見据えた具体的な準備として10カテゴリが抽出された。すなわち 1)自分の死を予感し,支援の限界を認識する,2)親の死について当事者との共有を試みる,3)自分の死後を想定し,当事者に必要な情報や身辺の整理を進める,4)親族に親亡き後の当事者の生活や相続について相談するとともに,社会制度の利用を検討する,5)当事者の住まいと生活費確保の見通しをつけようとする,6)親が社会資源とつながり,当事者の回復や親自身の健康維持に努める,7)当事者の病状安定や回復に向けて服薬管理や受診の後押しをする,8)当事者が自分の力で生活することを意識し,生活力を把握する,9)当事者の生活力や社会性を育み,親以外に頼れる人をつくる,10)当事者が楽しみを持つことすすめ,就労を視野に入れて支える,であった。親は,親亡き後に残された当事者が生活する上で困らないようにすることと,当事者が地域で安定して暮らすことを目的として準備を進めていた。結論 親が自分の死後を視野に入れて当事者の地域での生活に向けた具体的な準備を進めるためには,当事者の自立生活の必要性を意識することの重要性が示唆された。
著者
菊池 浩明 黒田 康嗣
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.251-252, 1994-03-07

広域ネットワークInternetの商用利用が進むに伴い, 電子メールのセキュリティの重要性が問題となっている. 現在普及している電子メールシステムでは, 中継ネットワークでの盗聴と, 改竄に対する考慮がされていないためである. そこで, 暗号技術を適用し電子メールのセキュリティを強化するPEM(Privacy Enhanced Mail)が提案され, 現在世界中で盛んに実装と接続実験が繰り返されている. PEMでは, 公開鍵暗号と秘密鍵暗号をハイブリッドに組み合わせて暗号処理を高速化し, 信頼できる第三者(発行局)により電子署名された公開鍵証明書(証明書)によって公開鍵を安全に, かつ効率的に管理することを主な特徴としている. ところが, 証明書を正しく発行するためには, 申請者が正規のユーザであり, 偽りのない申請をしているかどうかを確認しなければならず, この証明書発行時のユーザ認証をどのように実現するかが, 発行局の大きな課題となっていた. ユーザの規模が小さい場合は, 管理者が直接確認したり, 信頼できる正規ユーザリストとの照合したりする認証が可能だが, 本研究が意図するInternetの様な大規模な環境では現実的ではない. 多数の発行局を階層的に組織する提案もあるが, 無計画な階層化では, 発行局が乱立してユーザ情報が分散し, 証明書の検索や配布が困難となる恐れもある. そこで, 本稿では, この課題に対して, 公証人による申請方式を提案する. そして, 提案方式を実装した発行局での運用実験を行ない, その安全性と広域環境での有効性を検討する.
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2118-2129, 2013-10

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,(1)汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,(2)高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,(3)並列度の爆発に抗する技術の導入,(4)高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
黒田 乃生
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture = Landscape Research Japan Online (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.659-664, 2002-03-30
被引用文献数
10

我が国において身近な生活の場であった森林について,その利用の変遷と景観の変容を把握することは今後重要であると考えられる。白川村荻町の森林では多様な利用が続けられてきたが,1960年代を境にその多くが衰退,消滅したことがわかった。1960年代までは森林の利用がその時々の森林区分と相まって多様な林相を示していた。その後,草地の減少が最も大きな景観の変容として現われ,それまであいまいだった集落と森林の境がより明確に変化した。これらのことから地区の森林において,その利用が景観に直接影響すること,現在見られるような高木に覆われた森林景観が利用の減少によってここ数十年で形成されたものであることが明らかになった。
著者
三木 恒治 黒田 昌男 清原 久和 宇佐美 道之 中村 隆幸 古武 敏彦
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.264-272, 1980

61歳男子の前立腺原発カルチノイドの1例を報告した. 主訴は排尿困難と肛門部疼痛であつた. またカルチノイド症候群は示さなかつた. 膀胱尿道造影, 直腸指診より前立腺癌と診断したが, 経直腸的前立腺生検による診断はカルチノイドであつた. しかし, 胸部ならびに胃腸レントゲン検査, 直腸鏡にて異常は認めなかつた. その他血清セロトニン値が345μg/lとやや高値を示した他血液学的検査で異常を認めなかつた. 患者は1976年11月11日直腸膀胱前立腺全摘, 回腸導管造設人工肛門造設術を施行した. また右腸骨リンパ腺に転移を認めた. 摘除標本は肉眼的には充実性腫瘍で前立腺部に相当する位置に存在し, 正常前立腺組織は殆んど認めなかつた.<br>組織学的には, 腫瘍は, 胞巣形成, ロゼット形成を示し, 組織化学的にはグリメリウス染色陽性で, マッソニフォンタナ染色陰性であり, 電子顕微鏡的には特徴的な分泌顆粒を認めた. 以上の所見より前立腺原発カルチノイドと診断した.<br>患者は術後1カ月5-FUの静注を行なつたが, 徐々に全身衰弱, 腰痛を来し, 術後4カ月後に死亡した. 剖検は施行されなかつた.
著者
黒田 チカ
出版者
共立出版
雑誌
科学の実験 (ISSN:04530721)
巻号頁・発行日
vol.2, no.10, pp.726-731, 1951-10