著者
西森 克彦 東田 陽博 尾仲 達史 坂本 浩隆 黒田 久美 八尾 寛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

脳内オキシトシン(OXT)と受容体は社会行動の制御機能を持ち、ヒト鼻腔投与OXTが社会性を高める事から自閉症への投与試験も開始された。本研究ではOXTR発現性神経の社会行動制御機構を解析した。まずOXTによる5-HT分泌制御の役割を解析した。そして、社会識別時にMeAのOXTR発現神経の多くでc-Fos活性化を検出した。5-HT神経特異的OXTR遺伝子KOマウスを作製、当該神経の機能解析を行ったが社会記憶の障害は見出せなかった。体温調節能に関わる淡蒼縫線核のOXTR発現性Glutaminergic神経を見出した。一方、OXTR発現性I型味細胞の解析を進め、その性質について新しい情報を得た。
著者
岩波 裕治 内 昌之 福田 大空 黒田 悠加 杉澤 樹 海老原 覚
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1002-1008, 2019-12-18 (Released:2020-01-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

大動脈弁閉鎖不全症(aortic stenosis:AS)は,高齢化に伴い急速に患者数が増加している.高度な侵襲を伴う大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)が従来の標準治療であったが,ハイリスクのため適応とならない症例に対し,低侵襲治療の経カテーテル的大動脈弁植込み術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が積極的に実施されるようになった.適応に関しては,ハートチームでの検討が必要とされ,理学療法士もその一員で,術前後でのfrailty評価を含め心臓リハビリテーションの重要な役割を担う.TAVIに対しての心臓リハビリテーションに関するデータは少ないのが現状であるが,高齢frailtyな症例に対し,個々に適したプログラムの適応が重要となる.
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 高木 由夏 田口 恭仁子 黒田 昌弘 初瀬 リマ 大澤 幸治 渡辺 明治 Paulo R Souza Antonio F.N Magalhaes
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.463-471, 1994-08-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

Some patients complain of continuous or reccurent abdominal pain associated with high serum levels of pancreatic enzymes but without definite signs of chronic pancreatitis on various examinations including ERCP. CT and US. This condition has been called clinically suggested chronic pancreatitis (CSCP) . In this report, we propose a new pathophysiologic hypothesis and a strategy for the treatment of CSCP based on the viewpoint of system theory and phenomenology. A psychosomatic vicious cycle consisting of the following three processes is often observed in CSCP : 1) A depressive mood and anxiety induce hypersecretion of the pancreatic juice. 2) An elevation of the intraductal pressure resulting from the pancreatic hypersecretion causes abdominal pain and increases in the serum levels of pancreatic enzymes. 3) Exacerbation of the symptoms and the information of the abnormal examination results aggravate the depressive mood and anxiety of the patient. This vicious cycle is considered to exacerbate and prolong the disease in the presence of the constitutional factor of hyperreactivity of the pancreatic exocrine function. On the basis of this pathophysiologic hypothesis, we formulated the following therapeutic strategy from a viewpoint of system theory, focusing particularly on the physician-patient relationship. ( I ) Sufficient medical interview and physical examination ; ( 2 ) examinations needed to exclude malignancies ; ( 3 ) proper explanation of the disease ; ( 4 ) setting control of symptom as the goal of the treatment ; and ( 5 ) administration of anti-depressants, if necessary. In this report, the clinical courses of two cases of CSCP, a 39-year-old female and a 32-yearold male, treated according to this strategy are described phenomenologically, and the validity of the hypothesis and the therapeutic strategy is evaluated.
著者
酒井 健児 荒木 寿和 佐藤 和貴 黒田 重史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3398, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】夜間痛を有する肩関節疾患患者(以下,肩夜間痛患者)の姿勢特性として,円背を呈し,肩甲骨前傾・内旋が増大しており,小胸筋の緊張が高いことを経験する.このような姿勢を呈する患者は夜間痛出現部位として,過緊張を起こしている小胸筋よりも,上腕前面から外側面にかけて訴えることが多い.そこで今回,徒手で擬似的に小胸筋を短縮位にさせたときの三角筋前部線維の動態を,超音波診断装置を用いて調査した.そして,円背を呈した肩夜間痛患者に対する評価・治療する上で有用と思われる知見が得られたので報告する.【方法】対象は,肩関節に整形外科的問題がない健常成人10名20肩であり,ヘルシンキ宣言に基づいて十分に説明して同意を得て行った.方法は,超音波診断装置Xario(TOSHIBA製)のリニア型プローブを使用し,自然背臥位にて計測した.検者が徒手で他動的に肩甲骨を前傾・内旋方向に誘導し,擬似的に小胸筋を短縮位にさせた状態(以下,小胸筋短縮位)での三角筋前部線維筋束の動態方向を長軸像で観察した.【結果】全20肩で,小胸筋短縮位で三角筋前部線維筋束が末梢方向に移動した.その移動距離は,約5~10mmだった.【考察】我々は,先行研究として,3次元CTを用いて肩甲骨内旋増大している肩夜間痛患者の姿勢特性を調査し,肩甲骨の前傾・内旋と,鎖骨のprotractionが増大していることを報告した.つまり,小胸筋が短縮すると,烏口突起を介して,肩甲骨を前傾・内旋させる.そして肩鎖関節を介して鎖骨をprotractionさせ,三角筋前部線維の起始部である鎖骨遠位端が腹尾側方向に移動することで,三角筋前部線維の筋束が停止部である三角筋粗面に向かって,末梢方向に移動したと考えられる.したがって,肩夜間痛患者で小胸筋が短縮している場合,三角筋前部線維の末梢方向への伸張ストレスが,夜間痛発生に関与している可能性が示唆される.【まとめ】小胸筋短縮位における三角筋前部線維の動態方向を,超音波画像を用いて観察した.全例において,徒手で他動的に小胸筋を短縮位にすると,三角筋前部線維は末梢方向に移動することが観察できた.小胸筋が短縮している肩夜間痛患者に対して,小胸筋の短縮を改善させるとともに,三角筋前部線維を求心性収縮させて筋束を中枢方向へ誘導したり,ストレッチなどにより末梢方向への柔軟性を高めることが有効であると推察された.
著者
黒田 優香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.2-6, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

2018年の訪日外国人数は過去最高を記録し,2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けてさらなる増加が見込まれている。訪日外国人の受け入れ対策が進む中,言語の壁を解消する情報伝達手段としてビジュアルコミュニケーションの活用に期待が高まっている。その中でも,“案内用図記号”は,1964年東京オリンピックにも深く関係していた。本稿は,案内用図記号と東京オリンピック・パラリンピックの関係性に焦点を当てた特集記事である。
著者
大野 慎一郎 高梨 正勝 黒田 雅彦
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.134-139, 2014-03-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
12

各種細胞が分泌する膜小胞体の一種であるエクソソームは、RNA分解酵素に富む血液中でも安定してmRNAおよびmicroRNA(miRNA)を運搬することが明らかとなっている。一方で、核酸を用いた分子標的治療が未だ実用化に至らないのは、核酸医薬品が血液中において不安定であるため、病変部へ送達できないこと、人工的に構築されたキャリアーの抗原性が大きな問題と考えられる。このような背景のなか、生体成分で構築され、かつ体液中で安定に核酸を運搬する新規ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアーとして、エクソソームが注目されている。
著者
竹島 徹平 黒田 晋之介 湯村 寧
出版者
金原出版
雑誌
産婦人科の実際 (ISSN:05584728)
巻号頁・発行日
vol.66, no.13, pp.1839-1844, 2017-12-01

不妊の約半数に男性因子が関与しているにもかかわらず,無精子症の場合を除き男性不妊治療介入を経ずにART を導入されている例が少なくない。受精後,day 3 以後の胚発生には精子DNA の完全性が関与しており,断片化が生じると発生停止,着床障害,流産などの原因となる。精子DNA 断片化に対して,ラボにおける精子選別法以外にも,生活指導や採精指導,内服治療や手術に至るまで,ART 成績向上のための泌尿器科的に治療可能な取り組みが存在し,良好な治療成績が得られている。今後も治療エビデンスを確固たるものとし,ART 治療成績向上のため,婦人科医師と連携を図っていく必要がある。
著者
澤田 健 黒田 浩光 升田 好樹 今泉 均 巽 博臣 小濱 卓朗 秦 史壯 浅井 康文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-75, 2007-01-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
9
被引用文献数
6 4

試験開腹術にて早期診断できなかった非閉塞性腸管虚血症 (nonocclusive mesenteric ischemia, NOMI) の一例を経験した。症例は76歳男性で, 腹痛を主訴に来院し, S状結腸憩室穿孔に対して, 発症から9時間後にS状結腸切除と人工肛門造設を行った。入室24時間後にショックとなり, 腸管壊死を疑い試験開腹術を行った。術中, 腸管壊死を示唆する所見はなかった。その後も血清乳酸値が上昇し, 再手術から30時間後の胸腹部造影CTでは腸管全体の造影効果の低下を認めたが, 腸間膜動脈・門脈などに血栓を示唆する所見はなかった。その後, 血清乳酸値は低下傾向を示した。しかし, 創が離開し腹腔内を観察したところ, 十二指腸から大腸まで壊死しており保存的治療としたが, 多臓器不全により死亡した。開腹による一回の腸管漿膜面からの肉眼的な判断では, NOMIの診断を見誤る可能性がある。血管造影はもちろんであるが, 開腹にて判断がつかない場合には, 滅菌ドレープを用いて被覆した状態での腹壁開放創とした腸管観察も一つの手段と考えられた。また, 腸管虚血による血清乳酸値の上昇を示す症例で, 上昇後にみられる血清乳酸値の低下は腸管虚血の病態改善を示すものではない可能性が示唆された。
著者
天野 英晴 並木 美太郎 中村 宏 宇佐美 公良 近藤 正章 鯉渕 道紘 黒田 忠広
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

誘導結合チップ間無線インタフェース(Through Chip Interface:TCI)を用いて小規模なチップを多数結合し、多様な大規模システムを構築する「ビルディングブロック型計算システム」のチップブリッジを用いたシステム統合方式について研究する。既に開発された複数のLSIチップを、チップ自体をブリッジとすることにより組み合わせ、様々な機能、性能、エネルギー要求を満足するシステム構成の構築法を確立することを目的とする。具体的には、安価なボンディングを用いて多数のチップを組み合わせる積層手法、ソフトウェアからアナログ技術までを駆使して性能、電力をチューニングする手法、チップ内のスイッチとアクセラレータを統合する機構について研究する。2018年度は、TCIを用いたIP(Intellectual Property)の動作検証と、実チップテストを行うためのTCITesterチップを開発した。このチップは、ルネサスエレクトロニクス社65nmプロセスを利用して、3mm X 3mmのサイズで実装した。TCIを装備する様々なチップの上に装着し、その電気的特性を計測し、連続運転試験を行うことができる。他のチップ上に積層するのに先立ち、開発したTCI Tester同士を積層し、TCI IPの転送可能周波数、電源ドロップを計測し、TCI IPを組み込む場合の指針を得た。また、TCI IPを装備したKVSチップ、SNACCチップ、CCSOTBチップそれぞれの単体性能を実チップで計測した。また、積層を行った場合の発熱の時間経過を計測するTHERMO2の積層を行った。様々なチップ積層の可能性を探るため、熱解析ツールの改良を行った。
著者
黒田 基樹 清水 亮 杉山 一弥 石橋 一展 木下 聡 植田 慎平 花岡 康隆 谷口 雄太 中根 正人 石渡 洋平 駒見 敬祐
出版者
駿河台大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

関東および隣接地域に関する応永元年(1394)から享徳3年(1454)の間における文書・銘文史料の集成をすすめ、4000点を蒐集した。また鎌倉府に関する基礎的研究、鎌倉公方・関東管領・各国守護など鎌倉府関係者の発給文書の体系分析をすすめた。前者については、「関東足利氏の歴史」シリーズとして、初代足利基氏から4代足利持氏の各代ごとに、『足利基氏とその時代』などの著作を成果として刊行した。
著者
門家 千穂 氏家 寛 和気 洋介 岡久 祐子 黒田 重利
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.187-190, 2004-02-15

はじめに DiGeorge 症候群,軟口蓋心臓顔貌症候群(velo-cardio-facial syndrome),円錐動脈幹異常顔貌症候群(conotruncal anomaly face syndrome)は症状に共通点の多い疾患であるが,これらはすべて22番染色体長腕11領域の微小欠失を持つことから,最近は22q11.2欠失症候群と呼ばれることも多くなってきている。22q11.2欠失症候群は元々小児科領域の疾患であったが,近年,本症の成人例では高率に統合失調症様症状を呈するという報告が相次いでおり,その罹患危険率は一般集団の約25倍とされる7)。一方,統合失調症の2%に22q11.2の微小欠失が認められ,これは一般集団の80倍である4)。本邦では22q11.2欠失症候群で統合失調症様症状を呈した例の報告は調べたかぎりでは7例3,5,8)しかなく,その臨床像の特徴の描出にはさらなる症例の蓄積が必要である。今回,我々は統合失調症様症状を呈した22q11.2欠失症候群の1例を経験し,その臨床像と治療反応性において若干の知見を見いだしたので報告する。