著者
堀田 裕之 黒田 悦史 蜂須賀 徹
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.291-302, 2007-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 1

生殖免疫学の原点は, 半同種移植片(semi-allograft)である胎児が何故拒絶されないのかという免疫学的妊娠維持機構の解明にある. 1953年にMedawarがこの免疫学的矛盾を指摘して以来, 多くの研究者達がこの命題に取り組んできた. その結果, 妊娠の成立維持には単なる免疫寛容ではなく, 免疫系が積極的に胎児抗原を認識する事immunotrophismが重要である事が分かってきた. さらに着床, 妊娠維持におけるleukemia inhibitory factor (LIF)を始めとするサイトカインの重要性やTh2優位なサイトカイン環境の重要性なども分かってきている. しかしながらこれらサイトカインの生殖現象に対する分子生物学的なメカニズムは不明な事が多い. これらメカニズムの解明は不妊症や習慣流産などに対する将来の臨床応用に役立つものと思われる.
著者
黒田 誠 MAKOTO KURODA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.59-70, 2013-03

本稿はSFというジャンルに代表される科学的世界観を超出した存在/現象理解をプレゼンテーションの基軸に据えた思弁的アニメ作品 Ergo Proxy を対象にして、形而上的映像表現に仮託し得る“意味”の全方位的拡張を模索することにより、現実と仮構を連続体として捕捉する統括的なシステム理論の適用を通して神と人の位格的遷移を辿った神話的表象の註解を試みるものである。そこには存在と現象、概念と質料、記述と創造の相互変換を可能にする仮想的基幹原理を反映した二次創作的記述/論考が企図されている。
著者
黒田 悦史
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S19-2, 2014 (Released:2014-08-26)

アレルギー性疾患の増加は社会問題の一つとなっており、その原因の解明と効果的な治療法の開発が急務とされている。アレルギー性疾患の増加の要因としては、アレルゲンの増加、感染症の減少(衛生仮説)、食生活の変化、生活環境における化学物質の増加などが考えられている。化学物質の増加に関しては,産業の発達とともに産出されてきた様々な微小粒子状物質のアレルギー性疾患への関与が示唆されており、さらに最近では微小粒子状物質の一つであるParticulate Matter 2.5(PM2.5)が健康被害を引き起こすとしてその影響が懸念されている。粒子状物質はアレルゲンとは異なり、それ自身は抗原とはならない。しかしながら粒子状物質を抗原とともに感作することで、その抗原に対する免疫応答を増強させるアジュバント効果を有することが知られている。興味深いことに、粒子状物質の多くがアレルギー反応の原因となるTh2型免疫反応を誘導することが報告されており、粒子状物質によるTh2アジュバント効果と近年のアレルギー性疾患の増加との関連が示唆されている。しかしながら、粒子状物質がどのような機構で免疫反応を活性化し、Th2型免疫反応を誘導するかについては明らかにされていない。 我々は、粒子状物質をマウスの肺に注入することで誘発される免疫反応について解析を行っており、粒子状物質によってダメージを受けた細胞から遊離される内因性アジュバント、すなわちダメージ関連分子パターン(DAMPs)が抗原特異的なIgEの誘導に重要であることを見いだした。本シンポジウムでは、DAMPsに焦点をあて、粒子状物質によって活性化されるTh2型免疫応答のメカニズムについて紹介したい。
著者
黒田 泰介
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.481, pp.195-203, 1996
被引用文献数
2 2

The purpose of this study is to clarify the function and the part of the reutilized ruins of roman amphitheater in the process of formation of italian cities. This paper is to clarify the general outline of this phenomenon with a classification of the 40 samples in 39 roman cities according to the four functions : "fortress", "house", "religious building", "public buiIding", showing a chronological chart of the functions. Particularly the function as a "fortress" is analysed by four factors : "fortification for the reinforcement of city defence in the latter term of roman imperial times" (3C-5C), "fortification for the domination of the city by another nations" (5C-9C), "fortification for the reutilization of ruins as housing" (11C), "fortification for the reinforcement of city defence in the latter term of medieval times" (11C).
著者
黒田 誠 大場 邦弘 濱田 洋通 関塚 剛史
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

川崎病患者28人について、入院時・半年後(充分な回復期)の2ポイントで便を採取し、次世代シークエンサーによるメタゲノム解析の結果、入院急性期ではStreptococcus 属に顕著な検出率を認め、回復後の遠隔期では Ruminococcus属の増加が顕著であった。 (Front Microbiol. 2015 Aug 11;6:824.) 川崎病を4回再燃発症した患児の便からも同様に Streptococcus spp. が有意に検出され、上記成果と関連した結果が示唆された。(JMM Case Rep. 2016 Feb 1;3(1):e005019.)
著者
趙 希鵬 菅原 俊継 黒田 聡 有澤 準二 木村 主幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.406, pp.21-24, 2006-11-28
被引用文献数
4

フィトンチッドは、樹木が産生する殺菌性物質として従来から知られている。フィトンチッドの主成分は、いわゆるヒノキチオール(β-ツヤプリシン)と呼ばれる化合物で近年その殺菌作用や消臭効果などが注目され、フィトンチッドを含有した製品が次々と発売されている。しかし、その基本的な殺菌・抗菌作用機序についての科学的な裏付けや実験的検証がほとんどなく、効果の事例のみが先行しているのが現状である。我々は、ヒノキチオールを主成分とするフィトンチッド剤NSPP08を用いて本剤の殺菌・制菌効果について実験した実験に供したフィトンチッド剤は、それほど強力ではないが一定の殺菌力を有することを確認した。これに対して各種細菌の発育を抑制する効果については、含有フィトンチッド成分の換算値で8ppm程度を含有させるだけで制菌効果を示すことがわかった。また、本剤の殺菌機序を解明する目的で黄色ブドウ球菌の表層抗原を検出する検査キットであるスタフィロLAを用いてフィトンチッド処理後の表層抗原の変化を観察したが、明瞭な変化を観察できなかった。
著者
黒田 浩司 岡井 文彦 高野 和朗
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.286-292, 2005 (Released:2005-06-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

The 76GHz millimeter wave radar has been developed for automotive application such as ACC (Adaptive Cruise Control) and CWS (Collision Warning System). The radar is FSK (Frequency Shift Keying) monopulse type. The radar transmits 2 frequencies in time-duplex manner, and measures distance and relative speed of targets. The monopulse feature detects the azimuth angle of targets without a scanning mechanism. Conventionally a radar unit is aimed mechanically, although self-aiming capability, to detect and correct the aiming angle error automatically, has been required. The new algorithm, which estimates the aiming angle error and vehicle speed sensor error simultaneously, has been proposed and tested. The algorithm is based on the relationship of relative speed and azimuth angle of stationary objects, and the least squares method is used for calculation. The algorithm is applied to measured data of the millimeter wave radar, resulting in aiming angle estimation error of less than 0.6 degree.
著者
黒田 景子
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学総合教育機構紀要
巻号頁・発行日
no.2, pp.17-40, 2019-03

マレーシアのクダーには歴史史料に登場しない情報を民衆が口承伝統として残している場合がある。近年クダーのマレー人ムスリムたちが自らの祖先の墓や歴史について古老の情報を残そうとし、それをマレー語のブログなどに公開する動きがある。特にタイ軍がクダーを攻撃占領した時期(1821-1842)は異教徒によるムスリムの支配時代の苦難と抵抗の時代としてクダーの村々で多くが伝承されている。本稿で扱うコタムンクアン村の伝承は 南タイから戦乱を逃れてきたマレームスリム王族の一団がこの村を築城し住み着いていたが、1821年のタイ軍の攻撃で一族がほぼ殺害されたというものである。しかし、残った長男の直系子孫によって伝えられたその王名がナコンシータマラート国主のタイ語の欽賜名を持っていること、マレー語ではなく「シャム語」と彼らが呼んでいるタイ語の南タイ方言に類似した言語を話していたことがわかった。クダーには現在はマレー語教育が浸透して数少なくなっているが、「シャム語」起源の地名は多く、また現実にシャム語を日常語としている村々が少数ながら存在していて、クダーとタイの長い歴史関係を物語る。ところが、この伝承がネットで公開されると熱心な支援者が現れ、独自の解釈をしてアユタヤ王朝は実はイスラーム王朝だった、その版図はインドの一部からマレー半島のマラッカ、ビルマの一部からフィリピンに至るという「奇説」に発展し、それを支持する人々が次々とネットで二次利用するようになった。マレーシアの歴史学会は歴史フォーラムを開いて独自の解釈をする情報提供者がよりどころとする歴史的資料である「クダー法」や「メロンマハーワンサ物語」から距離をおいて、「コタムンクアンの主」の「シャム語」話者ムスリム王についての発表を行ったが、現在も「アユタヤ朝最後の王はクダーに逃げてきてその子孫がいる。アユタヤ朝はイスラーム帝国だった」という言説がマレー語のWikipedia に乗るまでになった。なぜこのような説が熱心に支持されるのかを考察すると、歴史的に「シャム語」を話していた南タイからクダーに至る地域のムスリムが、1909年に英領マラヤに編入され分断されたことで、ムスリムの中のマイノリティとなり、かつて彼らが他者からサムサムと呼ばれ「敬虔ではないムスリム」と評された経験からマレー語話者ムスリムの中で「シャム語」を話すことを恥としたり、引け目を感じるアイデンティティの危機に陥っている現状が見えてきた。コタムンクアンの主アブ・バカール・シャーはクダーの歴史書に登場しない「シャム語」話者の「自らの歴史」に通じるものとして、過ちを検証されないまま民間での通説に成りかかっている。
著者
黒田 航 阿部 慶賀
出版者
杏林大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

H29年度は予備実験を次の要領で実施した.1. 刺激文: 33種類の原典とそれらの変異版を合わせて合計200種種類の刺激文を作成し,それら無作為に20文のセットに10分割し,それぞれのセットには提示順序を無作為化したA, B, C, D版を用意した.33の原典文の作成では,次の4種類の構文パターンP1, P2, P3, P4 と次の11種類の動詞を使った: P1: _-が _-で _-に _-と V-(し)た,P2: _-が _-で _-に _-を V-(し)た,P3: _-が _-で _-を _-に V-(し)た,P4: _-が _-で _-から _-を V-(し)た; V22. 行く,V26. 知る,V40. 教える,V44. 感じる,V131. 探す,V116. 答える,V326. 黙る,V338. 負ける,V377. 伝わる,V1147. 知り+合う,V1197. 感染+する.2. 実験: 東京,岐阜,福岡の三ヶ所で,合計251名の被験者から反応を取得した (東京で93名,岐阜で109名,福岡で49名).その逸脱反応の除去により,有効反応数は216名分となった.容認度評定と同時に次の評定者の社会的属性10個を入手した: A1. 年齢 [数値],A2. 性別 [男/女/その他],A3. 生誕地 [県名のコード],A4. 母語が日本語かどうか [はい/いいえ],A5. 一年より長く国外に住んだ事があるか [はい/いいえ],A6. これまでに学んだ異国語の数 [数値],A7. 異国語を学んだ延べ年数 [数値],A8. 日本語を話さない人と頻繁に接触するか [はい/いいえ/わからない],A9. 1ヵ月に読む本の数 [数値],A10. 教育を受けた年数 [数値].3. 解析結果の報告: 上のデータの解析結果を言語処理学会第24回年次大会で発表した.
著者
吉岡 京子 黒田 眞理子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.20-27, 2015

<b>目的</b> 本研究の目的は,行政の保健福祉専門職が対応に苦慮する困難な事例のうち,その支援を拒否する住民の特徴および関連要因を検討することである。<br/><b>方法</b> 本調査は,対応困難事例への支援について精神科医等が助言する専門相談事業を2006年から実施している A 自治体と共同研究協定を締結し実施した。この事業に2006~2012年に提出された372人を分析した。対象者の基本属性,家族要因,精神科的要因,問題行動,保健福祉専門職による支援への拒否の有無について個人名を特定できない状態でデータ提供を受けた。保健福祉専門職による支援への拒否の有無とその関連要因を検討するためロジスティック回帰分析を行った。<br/><b>結果</b> 分析対象とした309人のうち,支援拒否なし群は102人(33.0%),支援拒否あり群は207人(67.0%)だった。ロジスティック回帰分析の結果,生活保護を受給していること(Odds Ratio=1.86, 95%CI=1.02–3.39),拒薬があること(Odds Ratio=2.07, 95%CI=1.10–3.90),暴言があること(Odds Ratio=1.97, 95%CI=1.09–3.55)が,保健福祉専門職による支援への拒否があることに有意に関連していた。<br/><b>結論</b> 本結果から支援拒否あり群は,支援拒否なし群よりも病状悪化の危険性や危機介入の必要性がより高い者である可能性が示唆された。
著者
竹内 昌平 山内 武紀 黒田 嘉紀
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.17-22, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The spread of influenza depends on contact among people. Contact rates are known to vary depending on the combination of age groups, which means that the age structure of a population affects the spread of influenza. We herein report how future changes in the population structure of Miyazaki Prefecture, a rural region in Japan, will affect the potential spread of influenza. We also report the results of an investigation on how future fertility changes will modify the potential spread through changes in the population structure. The basic reproduction number (R0) was used as an indicator of spread. The future population structure was projected by the cohort component method. Age-group-specific contact rates were obtained by a questionnaire survey. We found that the R0 of a new type of influenza will not change over the next 100 years if vital statistics remain constant (Scenario 0). If the total fertility rate increases by 10% or 25% from 1.7 (the level in 2011), the R0 in 2111 will be higher than that in Scenario 0. These results suggest that fertility recovery, an urgent demographic policy target in Japan, has the potential to increase the spread of influenza.