著者
齊藤 正樹 井頭 政之 鈴木 正昭 関本 博 赤塚 洋 飯尾 俊二
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

使用済み燃料中に存在するプルトニウム以外の超ウラン元素は、現在、高レベル放射性廃棄物として長期間管理が求められているが、大きな中性子捕獲断面積を持つため、原子炉内に初期に装荷することにより、初期の余剰反応度を抑えつつ、中性子によって核変換し、新しい核分裂製物質に変換され、長期間原子炉内は核分裂を維持することが可能となる。本研究では、これらの超ウラン元素を適切に原子炉内に再装荷することにより、長期間新燃料補給の必要のない超長寿命原子炉(軽水炉・重水炉・高速炉)の成立性に関する研究を実施した。その結果、^<237>Npを軽水炉及び重水炉に装荷した場合、燃焼度150-200GWd/tを持つ長寿命炉心が成立すること、また、6種類の冷却材(軽水、重水、Heガス、CO_2ガス、ナトリウム、水蒸気)を選択し、長寿命特性及び炉心の安全特性に及ぼす中性子スペクトルの影響について系統的に検討を行った結果、黒鉛減速Heガス冷却の場合がその特性を良く発揮することがわかった。また、^<237>Npと同様な中性子工学的性質を有する^<241>Am等を軽水炉に装荷した場合、約100GWd/tの高燃焼度が達成できることを確認した。また、いずれの場合も使用済燃料中に^<238>Puが多く生成されるため、核拡散に対して高い抵抗性を持つPuが生成されていることがわかった。また、核燃料交換や反応度制御が一切不要となる可能性のある原子炉燃焼概念(核反応敵に活性な領域が自立的に移行する燃焼方式)について検討し、約400GWd/tの高燃焼度を持つ高速炉炉心の可能性を確認した。また、関連する解析コードの改良や核反応データベースの整備を行った。
著者
齊藤 修 橋本 禅 高橋 俊守
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、里山を対象として、供給サービス(木材、食料)、調整サービス(大気・水循環調整)、文化的サービス(レクリエーション、景観)、基盤サービス(生物生息地)の各生態系サービスを定量評価し、複数の将来シナリオのもとで生態系サービスが今後どう変化しうるかを政策立案者や地域住民に対して定量的・空間的・視覚的に伝え、協働を支援する対話型シナリオ分析ツール開発を行った。
著者
荻野 七重 齊藤 勇
出版者
白梅学園短期大学
雑誌
白梅学園短期大学紀要 (ISSN:0286830X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.63-77, 2000

大学入試の成功と失敗の原因帰属と欲求との関連をみることを目的とし、同一の大学生を対象に、欲求および帰属の調査を行なった。分析は10の帰属要因について、帰属の高い学生と低い学生を選び出し、54種類の欲求について2群間の比較を行なった。その結果、それぞれの要因について、以下のような欲求との関連をみることができた。a.「素性、生れの良し悲し」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は他者に対して受容的であるのに対し、失敗の場合は他者に対して否定的である。b.「才能、能力、素質の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は安心を求める傾向が高く、受動的である。この傾向は、失敗の場合にも共通する。失敗の場合は、さらに、自己を前面にだそうとする傾向が低いという特徴がある。c.「性格、性質の良し悪し」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は能動性が高く、欲求と行動のギャップが小さい。失敗の場合は、社会性、協調性を志向してはいるが、行動が伴なわない傾向がある。d.「出身校の良し悪し」への帰属について 成功の場合については欲求との関連が少ない。失敗の場合、帰属の高い学生は保身的、協調的傾向が高い。達成欲求があっても、行動が伴なわない傾向が特に顕著である。e.「長期的努力」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は低い学生よりも努力する傾向がみられる。失敗の場合、帰属の低い学生の特徴として、対人関係における関心の低さがみられる。f.「その時の対応の良し悲し」への帰属について 成功と失敗の間に類似性があり、いずれも、帰属の高い学生の能動性が高い。g.「課題や相手の難易」への帰属について 成功と失敗のどちらの場合も、帰属の高い学生は能動的欲求が高い。成功の場合は、なかでも優越支配欲求が高い。h.「環境の良し悲しや援助の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は低い学生よりも能動的、協調的、保身的である。失敗の場合は逆に、低い学生の方が能動的である。i.「運の有無」への帰属について 成功の場合、帰属の高い学生は保身的傾向が低い。失敗の場合は、競争や危険を避ける傾向がみられる。j.「運命、縁の有無」への帰属について 成功の場合、権勢的な面でも、非権勢的な面でも欲求が低い。失敗の場合は、挑戦をせず安心を求める傾向がみられる。また、物事を科学的、合理的に考えようとする欲求が低い。
著者
齊藤 剛史 小西 亮介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.1105-1114, 2007-04-01
被引用文献数
42

本論文では視覚情報を利用して人間の発話内容を理解する,いわゆる読唇において高認識率が得られるトラジェクトリ特徴量を提案する.トラジェクトリ特徴量は,口唇領域または口内領域より計測できる面積とアスペクト比の二つの特徴量をもとに,発話により生じる2特徴量の時間的変化を口形の軌道として表現される.認識はトラジェクトリ特徴量に二次元DPマッチングを適用する.(1)車椅子制御用10単語と(2)数字10単語の動画像において,これまで提案されている特徴量とトラジェクトリ特徴量の比較実験を行った結果,従来特徴量で最も高い認識率は(1)92.5%,(2)72.0%であったのに対し,トラジェクトリ特徴量は(1)99.5%,(2)83.5%の高認識率を得た.また処理速度,発話速度を考慮して擬似的にフレームレートを変更して比較実験を行った結果,従来の特徴量で最も高い認識率は69.5%であるのに対し,トラジェクトリ特徴量では98.0%と高い認識率であった.これより,トラジェクトリ特徴量は発話速度に対してロバストであり,かつ高い認識精度を有することを確認した.
著者
齊藤幸人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.350-351, 2005

関西医科大学胸部外科学講座は, 1956年4月に大阪府寝屋川市の関西医科大学香里病院に香川輝正を初代講座教授として開設され, 1963年10月には現在の守口市に移転し, 以後, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 食道外科, 乳腺外科と胸部外科全般の外科治療を担当致しました. 1970年以降は呼吸器外科, 心臓血管外科の2分野の外科診療に絞り, 香川は1989年に退任致しました. 1990年2月には今村洋二が現在の講座教授に就任し, その後講座名はそれまでの胸部外科学講座から胸部心臓血管外科学講座に改称されました. さらに1998年2月からは講座内に呼吸器外科と心臓血管外科の2つの診療科をおく複数診療科講座となり, 呼吸器外科の診療科科長として現在, 齊藤幸人が就任しております. 以上の歴史を持つ呼吸器外科は, 原発性肺癌, 悪性縦隔腫瘍, 転移性肺腫瘍, 気腫性肺疾患, 胸部外傷, 先天性小児呼吸器疾患などを対象に呼吸器疾患治療グループと共に診療を行っています.
著者
齊藤幸人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.350-351, 2005

関西医科大学胸部外科学講座は, 1956年4月に大阪府寝屋川市の関西医科大学香里病院に香川輝正を初代講座教授として開設され, 1963年10月には現在の守口市に移転し, 以後, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 食道外科, 乳腺外科と胸部外科全般の外科治療を担当致しました. 1970年以降は呼吸器外科, 心臓血管外科の2分野の外科診療に絞り, 香川は1989年に退任致しました. 1990年2月には今村洋二が現在の講座教授に就任し, その後講座名はそれまでの胸部外科学講座から胸部心臓血管外科学講座に改称されました. さらに1998年2月からは講座内に呼吸器外科と心臓血管外科の2つの診療科をおく複数診療科講座となり, 呼吸器外科の診療科科長として現在, 齊藤幸人が就任しております. 以上の歴史を持つ呼吸器外科は, 原発性肺癌, 悪性縦隔腫瘍, 転移性肺腫瘍, 気腫性肺疾患, 胸部外傷, 先天性小児呼吸器疾患などを対象に呼吸器疾患治療グループと共に診療を行っています.
著者
広瀬 弥奈 松本 大輔 八幡 祥子 前山 善彦 青山 有子 島袋 鎮太郎 千秋 宜之 松下 標 倉重 多栄 福田 敦史 伊藤 綾子 野呂 大輔 齊藤 正人 丹下 貴司 五十嵐 清治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.444-452, 2006-06-25
被引用文献数
4

改革した小児歯科学基礎実習の点検評価を,本学歯学部4年生の96名に対しアンケート方式にて実施した。アンケートの内容は,実習に対する理解度,満足度についてで,「全くできなかった,あまりできなかった,どちらでもない,できた,よくできた」の5段階による無記名回答方式で調査した。その結果,予習の段階で実習書の内容について理解できた者は,フッ化物応用法,ラバーダム防湿法,窩溝填塞法,乳歯の歯髄切断法,既製乳歯冠修復法,治療計画の立案(口腔疾患の予防)の各実習項目とも約80%を占め,多くの者がこれから行う内容についてある程度理解しながら実習を行っていると判断された。<BR>また,本実習を通して理解を深めることのできた者は,いずれの課題も80%以上を占め,本実習によりある程度体得できたものと思われた。テユートリアル実習においては80%以上の者が本実習に積極的に参加したと自己評価していたが,あまり参加できなかった者も16%認められ,再検討が必要であると思われた。マネキンを実患者と想定した施術時態度・技能の修得については,マネキンへの話しかけを有益でないと答えた者が約30%認められたことから,学生の意識改革を惹起するような対策・対応が必要と思われた。
著者
齊藤 知範
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2009年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2009 (Released:2009-12-16)

先行研究の問題点 先行研究によれば、犯罪不安とは、「犯罪や、犯罪に関連するシンボルに対する情緒的反応」、被害リスク知覚は、「犯罪被害に遭う主観的確率」とそれぞれ定義することができ、別々の構成概念として捉えることが可能である。 阪口(2008)が用いている、2000年のJGSS(日本版総合社会調査)における分析指標は、「あなたの家から1キロ(徒歩15分程度)以内で、夜の1人歩きが危ない場所はありますか(1 ある、0 ない)」である。アメリカのGSSが”afraid”という言葉を用いて「夜の1人歩きが不安な場所があるか」と尋ねており犯罪不安の指標に近いのに対して、JGSSの指標は「夜の1人歩きが危ない場所はあるか」と尋ねているためリスク知覚に近く、犯罪不安の指標としては不適切であると考えられる。先行研究においても、犯罪不安を測るためには、JGSSの指標を今後「夜の1人歩きが不安な場所があるか」という指標に変更することも検討すべきであるといった重要な問題点が指摘されている(阪口 2008:475)。阪口(2008)などの先行研究においては、犯罪不安を測る上ではワーディングをはじめとする調査設計に大きな問題点があり、データの制約上、犯罪不安の要因構造に関して充分な検討をすることが困難である。さらに、犯罪不安に関する調査設計や分析に際して、地理的な観点は、これまでわが国の諸研究においてはほとんど考慮されてこなかった。 本研究のアプローチ これに対して、本研究においては、住民調査を実施し、犯罪不安に関する指標を心理的な側面と行動に関する側面とに切り分けて測定することにより、分析に使用する。行動に関する側面については、具体的にどのエリアに対して犯罪不安に由来する回避行動を取っているかを、白地図を用いて記入してもらう調査を併用している。 住民調査についての概要を記す。神戸市須磨区のニュータウン地区と既成市街地地区からそれぞれ2小学校区、3小学校区を任意に選定し、これら5校区の20歳から69歳までの成人住民の縮図になるように、住民基本台帳にもとづき、確率比例抽出法によってサンプリングした。1つの調査地点につき50名ずつを抽出し、50の調査地点の合計2500名を対象に、2009年1月から2月にかけて、郵送法により調査を実施した。回収率の向上を目的とする、督促とお礼状を兼ねたリマインダー葉書は、1回送付した。1086票が回収され、回収率は、43.4%であった。回答に不備のあった4票を除外し、1082票を分析対象とした。 当日は、その分析結果の一部について報告し、社会学的、地理学的視座から、いくつかの考察を加えることとしたい。
著者
齊藤 博英 野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

生命の起源において、核酸などの化学物質から、進化する生命システムがいかにして誕生したのかという問題の解決は、生命科学が目指す大きな目標の一つである。天然に触媒分子として働く RNA が発見されて以来、遺伝子と代謝(触媒)機能の両者を兼ね備える生体分子として、RNAは生命の起源研究において注目されている。特に、RNA 同士の連結反応を触媒するリガーゼリボザイムの存在が生命初期の進化に非常に重要であると考えられている。本研究では、人工 RNAシステムを基盤として、自己複製反応を触媒する人工酵素をデザインし、人工細胞モデルシステムを創出することを目指した。具体的には人工リガーゼリボザイムを用い、RNA 自己増幅系のモデルを新たに設計・構築することにより、新観点から RNA ワールド 仮説の実験的検証をおこなった。この知見を基に、RNA 構造モチーフを利用した新規 RNA 自己複製システムモデルを設計・構築した。さらに設計した RNA 分子から構成されるμm サイズのコンパートメント(小胞)の構築を試み、RNA のみからなる機能性構造体の創出に向けて前進した。
著者
齊藤 涼子 池田 尚平 田丸 貴規 尾上 紀子 田中 光昭 石塚 豪 馬場 恵夫 篠崎 毅
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1466-1473, 2010 (Released:2012-04-24)
参考文献数
17

症例は33歳, 男性. 体重増加(160kg)と著明な労作時息切れを主訴に来院し, 精査加療目的に入院となった. 全身浮腫, 低酸素血症, 高二酸化炭素血症, 総ビリルビン値上昇を認め, 左室拡張機能および収縮機能は低下していたが, 肺水腫や肺うっ血は認めなかったことから, 右心不全優位の肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome; OHS)と考えられた. 簡易型終夜ポリグラフ検査にて重症の閉塞型睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA)を認めたが, 患者は持続陽圧呼吸療法を受け入れることができなかった. 心不全に対して通常の内科治療のみを開始したところ, 心不全は徐々に増悪し, 入院第13病日に多臓器不全を呈した. 心係数低下, 肺動脈楔入圧上昇を認めたため, 両心不全の増悪と判断し, 人工呼吸器管理を行った. 経過中にTorsade de Pointes(TdP)とそれに引き続く心不全の再増悪を認め, 持続緩徐式血液濾過が必要となった. その後, 心不全は徐々に改善し, 体重は77.5kgまで減少し, カルベジロールを開始した. 第211病日にはOSAと心機能は著明に改善した. 現在カルベジロール少量投与にて経過観察中である. 重症心機能障害を合併するOHSでは, 早期より気管切開による陽圧呼吸療法も含めた積極的な加療を考慮すべきである.
著者
齊藤 康廣 門田 暁人 松本 健一
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.5, pp.1-7, 2013-03-04

本稿では,自然言語で記述された提案依頼書 (Request For Proposal ;以下 RFP とする )に記載された非機能要件の記述の明確さを機械学習により評価する方法を提案する.提案方法では,まず,RFP から非機能要件に関するキーワード群を抽出し,個々の非機能要件の特性とマッピングさせる.次に,各キーワードの出現頻度と文脈ベクトルに着目して重み付けを行い,ランダムフォレストによって,非機能要件の記述の明確さをモデル化する.70 件の RFP を題材として,提案方法によって多数の非機能要件の記述の明確さを 3 段階で評価した結果,エキスパートによる評価に対する完全一致率の平均が 69.8 %となった.また,完全不一致率 (評価が 2 段階外れること) は極めて小さかった.このことから,エキスパートがいない状況においても,機械学習によって RFP の品質の自動評価をある程度行えることが分かった.This paper proposes a machine learning approach to evaluate the clarity of non-functional requirements (NFRs) described in a Request For Proposal (RFP) written in a natural language. In the proposed method, keywords related to NFRs are extracted from a RFP, and mapped to each NFR category. Then, the clarity of NFRs is modeled by the random forest with weight factors based on appearance frequency and context vectors. As a result of an experimental to evaluate the clarity (low, mid or high) of many NFR categories in 70 RFPs, the proposed method showed 69.8% match to the expert's decision. Also, there were few cases where the model concluded as clarity=high while expert concluded clarity=low, and vice versa. These results suggest that the proposed machine learning approach could be used to automatically evaluate the quality of RFP without experts.
著者
橋本 崇史 宮脇 美千代 齊藤 華奈実 石川 一志 甲斐 宜貴 杉尾 賢二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.741-747, 2014-09-15 (Released:2014-10-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

頭皮原発血管肉腫の肺転移は,続発性気胸を高率に引き起こすことが知られている.症例は83歳,男性.80歳時,頭皮原発血管肉腫の診断にて皮膚科で手術療法,放射線療法,化学療法をうけ,寛解したが,20ヵ月後に薄壁空洞型の肺転移を認めた.その数日後に左気胸をきたし,当科へ紹介となった.胸腔ドレーンを留置したが,エアリークの改善なく,胸腔鏡補助下左上葉切除術を施行した.免疫組織化学的にCD31陽性であり,頭皮原発血管肉腫の肺転移巣と診断された.短期間で気胸の再発を認め,エアリークが持続したため,2回目の手術を行った.残存する左下葉に多発する薄壁の小嚢胞性病変を認め,その数ヵ所よりエアリークを認めた.小嚢胞を一部楔状切除し,被覆術を行った.小嚢胞も病理学的に頭皮原発血管肉腫の肺転移と診断された.気胸は治癒したが,原病の進行による呼吸不全のため術後36日に死亡した.本疾患の肺転移による気胸は難治性であり,若干の文献的考察を加えて報告する.