著者
金子 栄 各務 竹康 松尾 裕彰 直良 浩司 森田 栄伸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1250-1257, 2014

【背景・目的】アトピー性皮膚炎は慢性・反復性経過をとる疾患であるために,継続した治療が必要である.併せて患者の生活に配慮した指導が重要である.これまでの医師及び患者に対しての調査からは「外用薬の塗り方の指導」が重要であることが判明した.今回,「外用薬の塗り方の指導」について重要な役割を担う薬剤師に指導についてのアンケート調査を行った.【方法】島根県および広島県の病院および調剤薬局にアンケートを配布し,勤務する薬剤師全員にアンケートを依頼した.アンケートは指定した項目ごとに指導しているものを選択する形式とし,自由記述欄も設けた.【結果】集まった548通(回収率13.8%)を解析した.皮膚科の処方箋を扱わない薬剤師も多く, 1日で取り扱う処方箋枚数の中央値は1枚であった.ステロイド外用薬で最も多く指導している項目は,「塗布部位」(86%)でついで「回数とタイミング」(68%)であった.「副作用が出ないように少量塗布を指導」も45%の人が選択していた.タクロリムス軟膏については副作用の「ヒリヒリ感の説明」が最も多く(52%),ステロイド外用薬と保湿剤にくらべ,「パンフレットにて指導」(27.3%)が多くみられた.「実際に塗って塗り方を指導」は,どの外用薬でも少なかった.自由記述欄での医師への要望は用法用量の確実な記載と外用量指示が多く,失敗談の欄では自身の指導不足や副作用を説明することにより患者が外用しなかったことが挙げられていた.【結語】今回のアンケート調査により,薬剤師は外用薬の用法用量の指導を最も重視していることが明らかとなった.クロス集計からは,アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを知っている薬剤師が有意に様々な指導を行っていることが判明し,まずは薬剤師へのガイドラインの普及が重要と考えられた.
著者
西端 慎一 井上 栄 雑賀 寿和 佐橋 紀男 鈴木 修二 村山 貢司 横山 敏孝 斎藤 洋三
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.597-604, 1999
被引用文献数
14

東京都の3地区(あきる野市,調布市,大田区)の住民を対象に,アンケート調査と検診(スギ特異的IgE検査)によるスギ花粉症有病率調査を行い次の結果を得た.1)東京都における平成8年度のスギ花粉症有病率は,あきる野市で25.7%,調布市で21.1%,大田区で17.7%であった.2)年齢別有病率では30〜44歳がもっとも高く,あきる野市では40%を越えた.3)平成8年度の東京都全体のスギ花粉症推計有病率は19.4%で,昭和60年度の約2倍であった.4)最近約10年間での有病率の増加は,地区別では花粉数の多いあきる野市で高く,年齢別では14歳以下の低年齢層で高い傾向がみられた.
著者
手塚 純一郎 本村 知華子 池井 純子 井手 康二 漢人 直之 後藤 真希子 田場 直彦 林 大輔 村上 洋子 森安 善生 スビヤント ケイジ 柴田 瑠美子 岡田 賢司 小田嶋 博 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1034-1042, 2008
被引用文献数
2 1

【目的】2006年9月よりブデソニド吸入用懸濁液(パルミコート吸入液^[○!R])の販売が開始され,乳幼児でpMDI+スペーサーによる治療以外にも吸入ステロイドの選択肢が増えた.しかし,メッシュ式ネブライザーを用いた検討の報告はない.今回,ブデソニド吸入用懸濁液のメッシュ式ネブライザーでの有効性・安全性について検討した.【対象および方法】6ヵ月以上5歳未満の気管支喘息と診断された児30名を対象に,2週間の観察期間後,Pari TurboBoy^[○!R]+LC Plus nebulizer^[○!R],Pari eMotion^[○!R],Omron MicroAir NE-22U^[○!R]の3機種に10名ずつ無作為に割り付け,ブデソニド吸入用懸濁液0.25mgを1日1回朝に投与した.有効性および安全性の評価を,投与前,4週後,12週後に喘息日誌と血漿コルチゾール値・身長を用いて行った.【結果】対象3群のうち,投与前の血漿コルチゾール値は,Omron MicroAir NE-22U^[○!R]で有意に高かった.投与後の血漿コルチゾール値はOmron MicroAir NE-22U^[○!R]で4週の時点で有意に低下したが基準値を超えての低下は認めなかった.他のネブライザーでは有意な変化は認めなかった.また,投与前後の有症状日数は投与後に有意に低下していたが,ネブライザー間での有意な差を認めなかった.【結論】メッシュ式ネブライザーを用いてブデソニド吸入用懸濁液0.25mgを投与することは,有効かつ安全であることが示唆された.
著者
浅賀 英人 吉田 博一 馬場 廣太郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.357-363, 2002
被引用文献数
2

スギ花粉飛散期におけるエバスチンの効果および発現時期,持続性の検討を行うために,2000年3月5日,周囲を多くのスギ林に囲まれた宇都宮市森林公園にて野外比較試験(single blind)を実施した.試験当日は快晴に恵まれたこともあり,公園内の測定で235個/cm^2と大量のスギ花粉が飛散した.特に投薬を行った10時からの2時間は1時間に50個/cm^2を越える大量のスギ花粉が飛散し,この期間におけるプラセポ内服群の鼻症状は急激に悪化した.エバスチン内服群においてはこのスギ花粉大量曝露下の内服後2時間目からすでに症状改善傾向を認めた.またその効果は,24時間後の翌朝10時まで持続して認められた.エバスチンは,スギ花粉飛散期の大量曝露下における症状を即効性をもって抑制し,その効果は1日1回の内服により24時間得られるものと考えられた.また野外比較試験は,スギ花粉飛散期に行うことにより患者の症状を自然経過のまま観察,評価することが可能であり,抗アレルギー薬を含むさまざまな花粉症治療の臨床効果判定に有用であることが示唆された.
著者
網本 裕子 新垣 洋平 村上 至孝 増本 夏子 田場 直彦 村上 洋子 手塚 純一郎 本荘 哲 本村 知華子 柴田 瑠美子 岡田 賢司 小田嶋 博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1641-1645, 2011

【背景・目的】呼気中一酸化窒素(fraction of exhaled nitric oxide:FE_<NO>)は簡便な気道炎症の評価法である.気管支喘息キャンプに参加した吸入ステロイド(inhaled corticosteroids:ICS)使用者のコンプライアンスとキャンプ中の吸入指導によるFE_<NO>変化の関係を検討した.【方法】2008〜2010年のキャンプに参加した6-12歳の喘息児131人中ICS使用者50人にキャンプ前の予診時に家庭での薬剤管理状況を質問し,4群に分けた.キャンプ中の吸入指導により初日と最終日のFE_<NO>変化を薬剤管理状況別に比較検討した.【結果】年齢,性別,治療ステップ,FE_<NO>中央値いずれも4群間で差を認めなかった.FE_<NO>値は毎日ICS吸入をしている者では変化を認めなかったが,ICS吸入を忘れることがある者では最終日は初日と比較して有意に低下した.【結語】FE_<NO>値の変化はICS使用者におけるコンプライアンスをみる指標になる可能性がある.
著者
平 英彰 吉井 エリ 寺西 秀豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1187-1194, 2004
参考文献数
27
被引用文献数
6

スギは日本の準固有種で, 最も古い化石は秋田県田沢湖の北方, 檜木内川の上流にある宮田のおよそ530万年前の地層から発見されている. このことから, 日本におけるスギの出現は, 他の針葉樹に比べ比較的新しいと考えられている. スギは現在, 青森県から鹿児島県の屋久島まで広く天然分布している. 日本列島に生育しているスギは, 環境に対する適応性が高く, 他の樹木に比べ成長が早く, また, 材は通直で割裂性が高いため, 柱などの建築材やたらい, 桶等の生活品として古くから利用され, 日本の文化を支えてきた重要な樹木である. 万葉集(十巻1814)にも「古の人の植けむスギが枝に霞たなびく春は来ぬらし」と歌われているように, スギの植林は1000年以上も前からおこなわれていた. 商品としての材を生産するための大面積の植林も400年以上も前からおこなわれており, 江戸時代においては, 都市近郊に大面積のスギの植林地があった. そして, 江戸末期から明治年代にかけて, 産業の発展に伴いスギ材の需要が高まり, 全国でスギの植林が盛んに進められた.
著者
須藤 守夫 小林 仁 中澤 次夫 可部 順三郎 堀内 正 佐野 靖之 刑部 義美 秋山 一男 宮城 征四郎 城 智彦 上田 暢男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1262-1269, 1996
被引用文献数
1

喘息死および致死的高度発作救命例(以下, 救命例)についてアンケート調査により比較検討した. 喘息死は67例, 救命例は80例である. 喘息死は51.9歳と救命例の44.3歳より8歳高齢であるが, 病型, 重症度, 過去の高度発作歴など差を認めなかった. 高度発作の起こり方は急速型は喘息死で救命例より多く, 不安定急変型は喘息死で救命例より少なかった. 喘息死は在宅〜来院途中の死亡が76.2%を占めていた. 高度発作をおこした因子では受診の遅れが喘息死で救命例より有意に多く, また不適当な治療, 仕事・勉強の優先などがみられた. 死亡例と救命例の致死的高度発作前の状況では両群とも酸素吸入, 救急車の利用, 夜間外来受診, 入院歴などが目立つが差を認めない. 以上のごとく喘息死と救命例は, 基本的には同一のハイリスクグループに属し, 受診の遅れによりDOAになる前に救急施設に到着するかどうかの差であった. また喘息死の解明には救命例の分析が有力であることが判明した.
著者
今井 孝成 飯倉 洋治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1006-1013, 2003
被引用文献数
33

目的 食物アレルギーの臨床は混乱している.これは詳細な病態生理が未だ不明であることはもちろん,その疫学データが少ない点も一因となっている.我々は今後の基礎研究,臨床診療に寄与することを目的とし,即時型食物アレルギーに関する全国疫学調査を行った.方法 国内100床以上で小児科を有する病院2689施設に対し,"何らかの食物摂取後60分以内に症状が出現し,かつ医療機関を受診したもの"を対象とし調査分析を行った.結果 回収率は60.4%で,該当症例のあった498施設の1420症例を対象として検討した。平均年齢は6.7歳±13.1 (平均±標準偏差)であった.頻度の多かった原因食品は鶏卵,乳製品,小麦であり,以下ソバ,魚類,果物類,エビが多かった.症状は原因食品摂取後24.2分±19.4(平均±標準偏差)で出現し,皮膚,呼吸器症状が多く見られた.結論 本結果を基に厚生労働省はアレルギー表示制度に関する省令を一部改正し,卵,乳,小麦,ソバ,落花生の表示を義務化した.
著者
藤井 つかさ 荻野 敏 山邉 えり
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1543-1550, 2006
被引用文献数
3

【目的】スギ・ヒノキ花粉飛散量が大きく異なる3年間において,Web siteにアクセスした花粉症患者の症状・セルフケアなど,どのような項目で相違がみられるかを検討する.【方法】2003年・2004年・2005年の2月1日から4月30日までの3カ月間,B薬品株式会社のWeb siteによるアンケート調査を行った.【結果】初期療法の施行率は花粉飛散量と関連し,多い年は高率であり,少ない年は低率であった.前年との症状の比較では,飛散量が症状の重さに関係する成績が得られた.特に花粉飛散後期(3月15日〜4月30日)では「鼻閉」・「眼のかゆみ・涙」・「不眠」の症状において飛散量との間に明確な関連がみられた.セルフケアに関しては,外出に関連した項目と飛散量との間に関連がみられた.【結語】Web siteを用いたアンケート調査はインターネットにアクセスできる患者という限定した調査ではあるが,花粉症患者の動向調査においては極めて意義があると思われた.
著者
高橋 裕一 川島 茂人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1217-1221, 1999
被引用文献数
12

スギ花粉の総飛散数を予測する方法として,前年と前々年との夏期気温の差を用いた予測法を検討した.全国9地点におけるスギ花粉の実測総飛散数と予測総飛散数との相関はいずれの地点においてもr=0.84を越えた.7月の平均気温との相関が高い地点が多かったが,中には8月の最高気温,8月の平均気温あるいは7月の最高気温との相関が高い地点もあった.検討した135例のうち101例(75%)で実測総飛散数と予測総飛散数との差が1000個/cm^2以下であった.各地点で多く飛散した方から3年間について予測誤差を調べたところ,その誤差は40%以下で,その平均は17.5%であった.従来行われてきた前年の気象からの予測では過大評価になった大飛散年の翌年の予測が正確にできた.以上からこの総飛散数の予測方法は実用化できると考えられる.
著者
松本 一郎 小田嶋 博 西間 三馨 加野 草平 荒木 速雄 梅野 英輔 津田 恵次郎 犬塚 悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.435-442, 1999
被引用文献数
17

アレルギー疾患罹患率の経年的変化を調査する目的で, 1981年より1995年までの15年間, 福岡市の5小学校に入学した1年生(各年度平均533人, 総対象者数8000人)を対象に, ATS-DLD日本版・改訂版による質問票を用いたアレルギー疾患アンケート調査を同一地区, 同一手法で行い, 以下の結果を得た. 1. 気管支喘息の有病率には有意な増加を認めないが, 累積罹患率は1981年からの3年間の平均5.7%より1993年からの3年間7.7%へと経年的に有意に増加しており, 男女比は1.7:1で男子に高率であった. 2. アトピー性皮膚炎の累積罹患率は平均36.3%, 男女比は1:1.2で経年的変化は認めなかったが, 寛解児率は1987年からの2年間の平均14.3%よリ1994年からの2年間平均19.6%へと経年的に有意に増加していた. 3. アレルギー性鼻炎の累積罹患率は平均17.6%であり経年的変化は認めず, 男女比は1.5:1で男子に高率であった. 4. アレルギー性結膜炎の累積罹患率は1987年からの2年間の平均8.4%より1994年からの2年間平均11.1%へと経年的に有意に増加していた.
著者
川田 康介 高増 哲也 犬尾 千聡 相川 博之 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1403-1407, 2007
被引用文献数
7

症例は15歳の男児.平成12年(小学4年時)から外出時に顔面の発赤腫脹,水様性鼻汁を認めるようになった.平成15年(中学1年時),野球部に入部し,グランドでの練習中に喉が苦しい,息がしづらい,運動が続けられない,顔が腫れる,などの症状を経験するようになり,某病院にて喘息と診断され吸入ステロイド薬などの処方を受けたが改善しなかった.症状は夏に悪化し,冬には消失していた.平成16年12月,診断の再考目的で近医より当科を紹介された.肺機能(流量-量曲線)は正常で,ヒスタミンおよびアセチルコリン吸入試験は10000μg/dlまで陰性,運動負荷試験も陰性であった.血液検査で特異IgEは,カモガヤ56.2UA/ml,ハルガヤ48.2UA/ml,オオアワガエリ47.2UA/mlなどイネ科花粉が強陽性であった.以上より,喘息を合併しないイネ科花粉症と診断した.抗ヒスタミン薬内服とステロイド点鼻薬で部分的な症状の改善を認めた.平成18年3月より,花粉(オーツ麦,スズメノチャヒキ,スギ,ブタクサ)治療ワクチンを用いた急速免疫療法を開始し,良好な結果を得ている.
著者
鳥居 新平 平山 耕一郎 秋山 一男 池澤 善郎 内尾 英一 岡本 美孝 小倉 英郎 高橋 清 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1515-1530, 2006
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】シックハウス症候群(SHS)の定義を明らかにする目的で本研究を行った.【方法】SHSの定義は,1.発症のきっかけが住居に関連する.2.症状は住居内で現れる.3.住居から離れると,症状は軽くなるか又は消失する.4.住居に入ると繰り返し症状が現れる.以上をSHSとし,それ以外はMCSと分類した.SHSのみを完全に抽出すれば,MCSは複数の疾患を含むため,MCSの特徴的な症状は検出され難い.この作業仮説に基づき,オッズ比が,1超えがSHSの特徴的な症状となるように,MCSを参照としてlogistic regressionを行った.【結果】オッズ比が2以上のSHSに特徴的な症状は吐き気・嘔吐,何事もおっくうであり,症状が悪化する原因物質として香水,化粧品のにおいであった.各種アレルギー性疾患との比較で,アレルギー疾患に特徴的な症状が夫々検出された.【結語】この結果は,分類方法が適切であることを示し,本定義は,WHOのシックビルディング症候群に関する定義と基本的に変わらず,類似の症状が検出できた.
著者
杉田 和春 降矢 和夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-23,75, 1964
被引用文献数
6

国立相模原病院において, 空中の花粉を調べたところ, 花粉数は春・秋に多く夏には少なく, 冬にはほとんど0である.それでこの中で, 開花期が8月-9月であるブタクサと, 5月-6月であるカモガヤとについて, 次のことを確かめた.(1)これらの花粉を, それぞれの開花期にアレルギー性疾患患者に吸入させたところ, ブタクサは22名中11名に, カモガヤは18名中2名に, アレルギー症状即ち花粉症が起こった.対照と同程度の軽い症状を示した患者は陽性者から除いてある.(2)これらの花粉エキスによる皮内反応が陽性である気管支喘息患者の発作は, それぞれの開花期以後に増加している.(3)これらの花粉の吸入によるアレルギー症状の強さは, それぞれの皮内反応の強さと大体平行する.
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 服部 玲子 荻原 仁美 竹内 万彦 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1366-1371, 2007
被引用文献数
7

【背景・目的】スギ花粉症に対する免疫療法の直接医療経費を検討し,スギ花粉飛散数の違いによる影響を検討する.【方法】免疫療法および対照の初期療法の各18例で,スギ花粉大量飛散(2005)年,中等度飛散(2003)年,少量飛散(2004)年に同一患者が支払った医療費,薬剤費をレセプトおよび診療録から算出した.また,大量飛散年に無記名で症状と治療満足度のアンケート調査をVAS法で行った.【結果】免疫療法群は維持期の医療費を加えても総医療費が低く,処方薬剤費も少なかった.また,大量飛散年でも免疫療法群は処方薬剤費が増加せず,医療費が増さなかった.アンケート調査でも免疫療法群の満足度が高く,くしゃみ,鼻みず,眼のかゆみの症状が有意に良かった.【結論】免疫療法は直接医療経費の面からは医療経済上も有用で,特に花粉飛散数が多い程顕著になる.
著者
増田 佐和子 藤澤 隆夫 井口 光正 熱田 純 野間 雪子 長尾 みづほ 南部 光彦 末廣 豊 亀崎 佐織 寺田 明彦 水野 美穂子 清水 正己 東田 有智
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1312-1320, 2006
被引用文献数
8

【背景】近年,小児スギ花粉症の増加が指摘されている.しかし幼小児でのスギへの感作と花粉症発症の状況はよく解っていない.そこで,乳児から思春期までの小児のスギ花粉感作状況の調査を行った.【方法】243名のアレルギー疾患をもつ小児(8カ月〜16歳,中央値5歳)と137名の同疾患をもたない児(1カ月〜15歳,中央値4歳)についてスギ花粉,ヤケヒョウヒダニ,カモガヤ花粉,卵白,牛乳の血清中特異IgE抗体をCAP-RAST法で測定し,保護者記載による問診票とともに検討した.【結果】スギCAP-RAST陽性率はアレルギー疾患群で47.1%,非アレルギー疾患群で19.9%であった.スギ陽性率はアレルギー疾患群では3歳から5歳で急激に高くなっており,非アレルギー疾患群では幼児期から思春期にかけて徐々に増加していた.最年少のスギ陽性者は1歳11カ月のアトピー性皮膚炎男児であった.スギ陽性群では陰性群に比べ1〜3月生まれが占める割合が有意に高く,吸入抗原(ダニ,カモガヤ)の重複感作率が高かった.【結語】小児のスギ感作は就学前に成立するものが多い.今後,感作を回避するために乳幼児期からいかなる対策を立てていけばよいのか検討が必要である.
著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫 小笠原 英樹 成田 慎一郎 形浦 昭克
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.435-442, 2004
被引用文献数
6

2003年に札幌市南区にある耳鼻咽喉科診療所を発症後受診したシラカバ花粉症(鼻または眼症状の季節性とCAP陽性[スコア2以上])を対象にOASの有症率を調査した.また以前の1992年と最近の1998年の調査結果と一部比較した.シラカバ花粉症153例のうち42%(65例)が問診上OASを有していた.このOASの有症率は92年(24%)より多く,98年(45%)とは同様であった.シラカバ花粉症の中ではシラカバCAPのスコアが高いほどOASが多く,女性が男性よりOASが多かった.2003年は有意差はなかったが,98年には花粉症の初診日(その年に花粉症の症状発現後の最初の受診日)が4月までの患者が,5月以降の患者よりOASが多かった.2003年はイネ科とヨモギ花粉の陽性例にOASが多かったが,シラカバ花粉の感作の程度のためと思われた.
著者
増田 佐和子 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 大川 親久 坂倉 康夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.570-576, 1996
被引用文献数
3

スギ花粉の飛散状況は気候に大きく左右され, 総飛散量, 飛散パターンは年により大きく異なっている. 1993年から1995年までの三重県各地の2月, 3月のスギ花粉飛散数を示し, 全県下の耳鼻咽喉科診療施設の新患総数と, これに占めるアレルギー性鼻炎新患の総数を検討したところ, 飛散数に関わらず三分の一から二をアレルギー患者が占めていた. 1995年の飛散数は津市で17943個/cm^2,全県下で99512個/cm^2に達し, 12年間の観測史上最高であった. また, 症状出現前から酸性抗アレルギー剤を服用し, アレルギー日記による症状記録を行った同一患者の過去3年間における飛散期重症日数は, ばらつきが大きいものの飛散数に応じて変化しており, ある一定以上の飛散で症状が出現するが, その後の重症度は総飛散数にかなり依存することが示唆された. 1995年津市においては2月中はほとんど飛散がみられず, 3月になってから爆発的ともいえるほど大量の飛散があり, 患者30名の症状出現率と累積飛散数の対数はよく相関した. また花粉が累積で100個/cm^2飛散すると約半数の患者に, 1000個/cm^2飛散するとほとんどの患者に症状が出現し, これは1993年の結果と一致するものであった. 花粉飛散数が年により変動するのみならず, 患者の症状発現時期, 重症度は個々において大きく異なるものであり, それぞれの患者の状態を見極めた上でそれに応じた治療法を選択することが大切であると考えられる.
著者
高村 節
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.479-488,531, 1972

スギ花粉症患者を対象に鼻アレルギー患者の血中セロトニン(5-HT)についての検索とその測定意義を検討してみた.スギ花粉症患者を選びだすために, まず臨床的鼻アレルギー検査を皮膚反応試験, 鼻粘膜誘発反応試験, またはPK反応試験で行なったところ, これら3試験の成績はいずれも高度の陽性率を示した.また鼻粘膜の 5-HT に対する感受性試験を行なったが, 患者は健康者に比べ 5-HT に対して過敏であることを認めた.次いで患者の血中 5-HT をスギの非開花期と開花期, あるいは鼻粘膜誘発試験前と試験後とで測定比較してみたが, いずれも後者において有意に高値を示した.さらに人為的に 5-HT を変動させ, 鼻症状の消長を観察する目的で nialamide, reserpine さらに cyproheptazine を患者に投与した.Nialamide では血中 5-HT の上昇とともに鼻症状の増悪をきたしたが, cyproheptazine のように血中 5-HT に変動がなくても鼻症状は軽減し, reserpine では血中 5-HT の減少をきたすにもかかわらず鼻症状は増悪する傾向が観察された.以上のことから, 鼻アレルギー発症と血中 5-HT との間には一致した相関性は認められず, 鼻アレルギー患者の血中 5-HT の測定は鼻アレルギーの補助的診断としての示標にはなり得ないことが立証された.