著者
和田 光一 鈴木 紀夫 川島 崇 塚田 弘樹 尾崎 京子 荒川 正昭
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.620-627, 1992-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

1976年より1990年までの最近15年間に, 新潟大学医学部附属病院第二内科で取り扱った208例の菌血症 (単独菌例182例, 複数菌例26例) について, 臨床的に検討した.1981年以降, 菌血症は明らかに増加し, 起炎菌もStaphylococcus aureusを初めとするグラム陽性菌の頻度が, 陰性菌の2.6倍となっている.これらの原因は, 血管留置カテーテルの増加による要因が大きいと考えられた.臨床背景では, 院外で発症した菌血症は18例 (8.7%) のみであり, これらの症例は院内発症の例より, 予後は良好であった.Focusは, カテーテル, 皮膚および軟部組織の頻度が高かった.全体の予後は, 144例 (69.2%) が除菌され, 年度別および年齢別では, 有意差は認めなかった.基礎疾患に白血病および血液疾患, 悪性腫瘍例を有する症例, 肺炎を合併している症例では, 予後が不良であった.起炎菌別の検討では, methicillin resistant S.aureusとPsudomonas aeruginosaの予後が不良であった.死亡例における生存日数は, 平均5.1日で, 3日以内に40例 (62.5%) が死亡しており, 特にP.aeruginosa菌血症の生存日数が短かった.検査所見では, 白血球数10,000/mm3以上の症例が38.3%, 1,000/mm>3未満の症例が25.3%であったが, 除菌率で両群に有意な差は認めなかった.CRP8.5mg/dl以上の症例は63.5%で, CRPの低い群に比較して, 除菌率は有意に低かった.血清ビリルビン値と除菌率は, 有意に反比例していた.以上の検討より, 菌血症においては, 起炎菌判明後の治療では手遅れのことも多く, empiric therapyが重要であると考えられる.
著者
高山 直秀 菅沼 明彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.815-821, 2003-10-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

2000年1月から2002年12月までの間に当院に入院した113名の成人麻疹入院患者について年齢, 麻疹ワクチン接種歴, 感染経路, 最高体温, 有熱期間, コプリック斑や発疹の有無などの臨床症状を調査し, 同時期に入院していた1~5歳の小児麻疹患者と比較した. 患者の年齢分布では20代前半の若年成人患者が最も多く, 大多数の患者は麻疹ワクチン未接種, 麻疹未罹患であり, 感染経路は不明者が最も多かった. 臨床症状では咽頭痛を除いてコプリック斑, 咳嗽, 発疹などの出現率において小児麻疹患者と差がみられず, 入院期間はやや長い傾向がみられたものの有意差はなく, 有熱期間や最高体温にも有意差がなかった. 合併症は113例中17例にみられた. 成人患者では脳炎3例, 急性散在性脳脊髄炎1例と中枢神経系合併症が相対的に多く, 肺炎は4例と比較的少なかったが, 小児患者では中枢神経系合併症例はなく, 気管支炎・肺炎が45例中16例に, 仮性クループが1例に, 中耳炎が6例にみられた. 後遺症を残した小児例はなかったが, 軽度の後遺症を残した成人麻疹例が3例あった. 以上より, 成人麻疹入院患者の症状は小児期麻疹入院患者と同等ないしやや重症といえる.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 山家 滋 山路 浩三郎 角田 恭治 上野 久美子 林 純 白井 洸 原 寛 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1259-1265, 1996-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
5 4

高齢長期入院患者における発熱や死亡のハイリスクグループのマーカーを検索するために, 観察病院において1年以上入院した患者478名を対象として, 血清アルブミン値と発熱及び死亡との関連について検討を行なった.対象の平均血清アルブミン値は3.79g/dlで, 加齢と共に漸減傾向を示した.延べ504,189日の発熱の調査結果より得られた各患者の平均年間発熱回数と血清アルブミン値の関連は, 血清アルブミン値4.1g/dl以上の群の平均発熱回数が最も低く1.8回/年で, 血清アルブミン値の低下に従って段階的に上昇し, 3.0g/dl以下の血清アルブミン値著明低下患者では5.3回/年であった.年齢補正後の死亡率は, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群が40.4%で, 他の3群の13.0%~19.8%に比し著しく高率であった.血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では死亡率はどの年齢層においても高率であったが, 他の3群においては, 80歳以上で死亡率が高かった.血清アルブミン値4.1g/dl以上の群をcontrol群として求めたrelativeriskは, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では発熱で2.9, 死亡では2.0であった.以上の結果より, 血清アルブミン値は, 高齢期入院患者における, 発熱や, 1年後以降に生じる死亡の予測因子として有用であり, 特に血清アルブミン値3.0g/dl以下の患者は発熱, 死亡のハイリスクブループであると考えられた.
著者
所 光男 長野 功 後藤 喜一 中村 章
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.861-865, 1990

SS寒天平板上で赤痢菌が疑われた集落由来株を培養時間24時間で簡易に鑑別できる培地を改良するための基礎実験を赤痢菌23株, <I>Escherichia coli</I> 129株を用いて行なった. その結果, 合成培地に酢酸ナトリウム0.3%, ブドウ糖0.02%, クエン酸ナトリウム0.3%を加え改良したCA培地 (Citrate-Acetatemedium) は, 従来我が国で常用されているクリステンゼンのクエン酸塩培地に比べ, 赤痢菌と<I>E. coli</I>の鑑別に優れていることが確認された.<BR>健康者検便のSS寒天板上で赤痢が疑われた集落由来株130株を用い赤痢菌との鑑別性をCA培地, クリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地を用いて比較した結果, 24時間の培養の時点では, CA培地はクリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地より鑑別性が優れていることが確認された.<BR>更に, 使用した130株の同定を行い上記3培地の菌種による鑑別性を検討した結果, 赤痢菌の鑑別培地としてCA培地は<I>Escherichia sp.</I> の鑑別ではクリステンゼンのクエン酸塩培地より優れており, <I>Hafnia sp.</I> の鑑別では酢酸ナトリウム培地より優れていることが確認された.
著者
菅原 民枝 大日 康史 多屋 馨子 及川 馨 羽根田 紀幸 菊池 清 加藤 文英 山口 清次 吉川 哲史 中野 貴司 庵原 俊昭 堤 裕幸 浅野 喜造 神谷 齊 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.555-561, 2007-09-20 (Released:2011-05-20)
参考文献数
19
被引用文献数
6 8

目的: 現在ムンプスワクチンの予防接種は任意接種であるが, 定期接種化された場合の費用対効果分析を行った.方法: 本研究は, 外来診療における医療費と家族の看護負担に関する調査を行い, 入院や後遺症死亡例の重症化例の情報を加味した.外来診療の医療費と家族看護に関する調査は, 平成16年6月15日から平成18年1月15日までの19カ月間, 人口10万人都市で, 小児科を標榜する9診療所と県立病院大学付属病院の11医療機関で実施した.入院例調査は, 平成16年1月から平成17年12月までの2年間, ムンプス及びムンプスワクチン関連により24時間以上入院あるいは死亡した例について実施した.結果: 外来診療に関する回収は189枚家族票112枚であった. 外来診療の疾病負担は, 家族看護費用も含めて平均値471億円 (最大値2, 331億円, 最小値6億円) であった.ムンプスの入院患者数は全国で4596例と推測した. 入院は, 家族看護も含めて平均値13.5億円であった. 後遺症, 死亡例を加え総疾病負担は, 平均値525億円 (最大値2434億円, 最小値109億円) であった.費用対効果分析では, 予防接種費用を6000円とすると, 増分便益費用比は, 5.2であり, 95%信頼区間下限においても1を上回っていた.考察: 増分便益費用比は1を上回っており, 定期接種化によってもたされる追加的な便益が, 追加的な費用を上回っていた. したがって, ムンプスワクチンの定期接種化に向けて政策的根拠が確認された.
著者
松原 康策 仁紙 宏之 岩田 あや 内田 佳子 山本 剛 常 彬 和田 昭仁
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.7-12, 2012
被引用文献数
2

わが国の小児期侵襲性肺炎球菌感染症 (invasive pneumococcal disease,IPD) の季節変動とそれに関連する因子を明らかにするために,地域中核病院小児科で IPD 患者を後方視的に検討した.対象は,1994 年7 月から2011 年 6 月までの 17 年間に西神戸医療センター小児科で IPD と診断された 15 歳以下の 72 例 (2回の反復例を3 例に認め,患者数は 69 症例) である.疾患内訳は occult bacteremia 48 例,肺炎10 例,髄膜炎10 例,眼周囲蜂窩織炎3 例,乳突洞炎1 例であった.IPD の関連因子として,1) 月齢,2) 同胞数,3) 未就学の同胞数,4) IPD 発症時の本人の保育園・幼稚園の通園の有無,5) 未就学の同胞がいる場合にその同胞の通園の有無の 5 因子を,カルテ記載または電話問診で調査した.季節変動の結果は,4~5 月 (n=21) と 11~12 月 (n=20) の二峰性のピークを形成し 7~9 月 (n=8) の夏季に最も少なかった.4~5 月の 21 例はその他の月に発症した 51 例と比較して,本人の通園している割合 (4~5 月群vs その他の月に発症群,12/21[57.1%]vs 12/51[23.5%];odds ratio,4.3;95% confidence interval,1.5~12.8;p=0.006) においても,また,本人,かつ/または,同胞が通園している割合 (17/21[80.9%]vs 27/51[52.9%];odds ratio,3.8;95% confidence interval,1.1~12.8;p=0.027) においても有意に高かった.しかし,発症月齢 (中央値:14 カ月 vs 15 カ月),同胞数 (0 人[9 例],1 人[11 例],2 人[1 例]vs 0 人[21 例],1 人[27 例],2 人[2 例]),未就学同胞数は 2 群間に相違を認めなかった.一方,11~12 月の第 2 峰群とその他の月群においては上記 5 因子に有意な相違を認めなかった.<BR> 以上から,わが国の小児期 IPD は二峰性の季節変動を示し,4~5 月のピークは通園者が有意に多いことが判明した.4 月からの集団保育への参加が肺炎球菌の保菌率の上昇をもたらし,4~5 月の小児期 IPD のピークを形成する重要な要因のひとつと推測された.
著者
福光 研介 鈴木 雄二郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.282-286, 2012-05-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

A 30-year-old woman was admitted to our hospital with high fever and chest pain. She had a ventricular septal defect, but was asymptomatic and had not undergone surgical repair. She also had had atopic dermatitis since childhood that had not been adequately treated. Chest computed tomography showed multiple peripheral nodules and infiltrates in both lungs. A transthoracic echocardiogram detected vegetation on the wall of the right ventricle, and Staphylococcus aureus was cultured from a peripheral blood sample. She was diagnosed as having a septic pulmonary embolism associated with right-sided infective endocarditis caused by S. aureus. She was treated with Cefazolin, resulting in gradual improvement of laboratory and chest radiographic findings. Recent studies have revealed that atopic dermatitis is one of the risk factors for infective endocarditis. In this case, uncontrolled atopic dermatitis might have caused the right-sided infective endocarditis.
著者
遠藤 宣子 小野川 傑 奥田 俊郎
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1608-1614, 1992

血清補体値が低下した宿主の初期の感染防御反応に於ける肝臓以外の組織での補体産生の役割を明らかにするために, ニュージーランド・ブラックとホワイトの一代交配・雌 (B/WF1) マウス (5, 15, 35および48週齢) の補体産生状況を, 腹腔から採取した固有マクロファージの単層培養細胞 (PMφ) を用いて調べた.単層培養細胞による補体第一成分の亜成分, Clq, の産生は, 5週齢マウスに比べて15週齢で顕著な低下 (p<0.01) を示した後, 35週以降有意 (p<0.01) に増大し, 48週齢においては5週齢の量を上回る増加を示した.35週齢と48週齢で認められた単層培養細胞のClq産生の増大は, 血清Clq値の顕著な低下と血清中への抗核抗体および尿タンパクの出現と一致した.一方, 対照のddY系マウスの単層培養細胞によるClq産生は, 5週齢でB/WF1マウスの2倍を示したが, 15週齢にはその1/2値まで低下, その後もその値を維持する傾向にあった.血清Clq値はこれとは逆に, 5~35週齢まで変化せず, 48週齢で5週齢値を越える著しい増加を示した.<BR>B/WF1マウスのPMφ におけるClq産生は, ddY系マウスと異なり, 老齢期に増加した.血清Clq値の低下時に認められたこの増大は, 血清補体価の低下した宿主の感染防御に重要な役割をしていることを示唆している.
著者
原 三千丸 高尾 信一 福田 伸治 島津 幸枝 桑山 勝 宮崎 佳都夫
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.803-811, 2005
被引用文献数
13

2004/2005年シーズンに, インフルエンザを疑われた小児278例を対象として, 型別判定可能でワンデバイスの4種類のイムノクロマト法インフルエンザ迅速診断キット, エスプラインインフルエンザA & B-N (エスプライン), ボクテムインフルエンザA/B (ボクテム), Quick VueラピッドSP influ (クイックビュー), キャピリアFluA+B (キャピリア) の有用性を比較検討した. なお, ボクテムは, 2005/06年用の改良品である. 鼻咽腔吸引液を稀釈してウイルス分離培養に供し, 残りの検体を遠心して得られた上清を用いて, 迅速診断試験を行った.<BR>40例よりA香港型が, 163例よりインフルエンザB型が分離された. A香港型40例のエスプラインの感度, 特異性は, それぞれ, 100%, 100%, ボクテムは, 95%, 100%, クイックビューは, 98%, 96%, キャピリアは, 98%, 96%であった. B型163例に対するエスプラインの感度, 特異度は, それぞれ, 89%, 100%, ボクテムは87%, 100%, クイックビューは88%, 97%, キャピリアは86%, 98%であった.<BR>B型およびA香港型に対して, エスプラインが, 感度, 特異性共に, 最も優れていた. しかしながら, すべてのキットで, B型に対する感度は, A型と比べて明らかに低く, 改良の必要がある.
著者
小山 孝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.243-257, 1979-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
23

Time course studies were carried out on splenic lymphoid cell subpopulations, serum antibody titer and weight of the spleens in mice infected with Rickettsia sennetsu and Rickettsia tsutsugamushi of high and low virulent strains.1. All of the mice infected with R. sennetsu Miyayama strain died in two weeks. In this case, weight of the spleens and the number of lymphoid cells, both T and B cells, increased trasiently at the time of manifestation of symptoms, and decreased later at the late stage.When the mice infected with R. sennetsu Miyayama strain were treated with tetracycline, the spleens enlarged till the convalescence and then constricted to near normal range. They enlarged with the recrudescence and constricted again when symptoms of the mice became severe, and the mice died finally in spite of the treatment. In lymphoid cell subpopulations of the spleens, T cells began to increase first at a start of the treatment. Increase of B cells, on the other hand, ocurred later at the convalescence. Lymphoid cell subpopulations of the spleens returned to normal range temporarily when the mice were recovered by the treatment. However, the number of lymphoid cells of the spleens, both T and B cells, decreased again when the mice had a relapse of the disease and became in a critical condition after discontinuance of tetracycline therapy.High titers of serum antibodies were observed at the 4th week after infection and were maintained even when the mice relapsed into the disease and were in a critical condition.2. Most of the mice infected with Gilliam strain of high virulent R. tsutsugamushi died in two weeks. In this case, weight of the spleens and lymphoid cell subpopulations of the spleens showed changes similar to those observed in mice infected with R. sennetsu. But occasionally some of the mice were long-survived. In these mice, the spleens enlarged till the convalescence and then constricted to near normal range. In lymphoid cell subpopulations, T cells increased first prior to the convalescent stage, whereas, increase of B cells ocurred when the mice recovered.High titers of serum antibodies were observed at the 4th week after infection and were maintained for a long time.3. The mice infected with Irie strain of low virulent R. tsutsugamushi progressed subclinically. In this case, the spleens began to enlarge from the 2nd week to the 3rd or the 4th week after infection and c/a then constri ted to near normal r nge. T cells in the spleens began to increase at the 2nd week. On the other hand, B cells continued to decrease till the 3rd week and then increased. Finally, the number of lymphoid cells of the spleens and their subpopulations recovered to normal range.Serum antibodies were detected at the 2nd week after infection. They reached to high titers at the 4th week and were maintained in high titer for a long time.These findings suggested that increase of T cells had a very important role on recovering from rickettsial infections and that humoral immunity could not prevent the development of the rickettsial infections but cellular immunity could prevent it.
著者
新井 智 鈴木 里和 多屋 馨子 大山 卓昭 小坂 健 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.181-190, 2005
被引用文献数
1

ヒトエキノコックス症は, 1999年4月から施行された感染症法に基づく四類感染症, 感染症発生動向調査全数報告疾患に規定され, 国内患者サーベイランス (感染症サーベイランス) が実施されている.1999年4月から2002年12月までの感染症サーベイランスの結果から, 単包虫症が3例 (27~81歳, 中央値55歳), 多包虫症51例 (15~86歳, 中央値64歳) が報告されている.多包虫症については, 年齢が上昇するにつれて報告数も増加し, 71歳以上の報告が最も多かった.3例の単包虫症は全て本州からの報告で推定海外感染例として報告された.全報告症例のうち症状を伴っているとされた症例は17例であった.感染経路が明らかであった症例は認められなかった.多包虫症は, 51症例中50例までが北海道の保健所からの報告であった.北海道を6地区に分類し症例を地域ごとに集計したところ, 報告数は石狩・胆振・後志地区 (20例), 根室・網走・釧路地区 (15例) が多かったが, 住民人口10万人あたりの報告数とすると, 根室・網走・釧路地区 (2.13/10万人) についで, 宗谷・留萌地区 (2.05/10万人) の順であった.これらの結果は, 数年以上前の感染発生状況を示しており, 1999年4月から2002年12月までのサーベイランス実施時期の感染発生状況は不明であった.
著者
小田 隆弘 磯野 利昭 中川 英子
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.180-185, 1983

1981年8月28日から30日まで韓国 (釜山) を旅行した福岡市内一民間会社職員27名のうち16名 (発症率59.3%) が在韓中の8月29日昼すぎから帰国後の9月1日朝にかけて, 下痢 (93.8%), 腹痛 (87.5%), 脱力感 (68.8%), 頭痛 (62.5%), 発熱 (37.5%), 吐気 (12.5%), 嘔吐, 悪感 (各6.3%) を訴える集団下痢症例が発生した.下痢は水様ないしは粘液便, 回数は最高10回, 平均4.5回で, 発熱は最高38.5℃, 入院を含めた臥床者が7名いたが死亡者はなく, 経過は良好で数日後に全員回復した. 患者の発生は31日をピークとする一峰性を示した. 在韓中の食事または飲料水が疑われたが感染源の推定はできなかった.<BR>細菌学的検査の結果, 患者13名中10名の便より毒素原性大腸菌 (ST<SUP>+</SUP>LT<SUP>-</SUP>) が検出され, 血清型別により, 034: H10と型別不能の2種の毒素原性大腸菌による複合感染事例である事が判明した.
著者
秋田 博伸
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1203-1215, 1982-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
17
被引用文献数
12 1

抗生剤抗与による副現象は現在まだ避け難いものとして多くの問題も残しているが, その内, 腸内細菌叢の変動は臨床上よく遭遇するものである. 著者はこの変動を検討する為にIsolator内で, 同一飼料にて飼育した無菌マウスを使用し, 腸内細菌叢の主要構成菌, Gram陽性, 陰性, 嫌気性のうち4種を選択し, 下記の如く, 単一, 2種, 4種感染マウスを作成し, 従来Gram陰性菌に対して用いられたABPC, GMと現在, 尚開発の盛んなCephem系薬剤を筋肉内へ投与した時の腸内細菌叢の変動を検討した.(1) E.coli単一感染マウス(2) Ecoli, Lacto.2種感染マウス(3) E.coli, St.faecalis, Lacto, Bac.4種感染マウスその結果, 胆汁排泄の少ないといわれるGM, CETの投与例では, 菌の減少は認めなかった.ABPC投与例では単一感染マウスでE.coliに対するABPcのMlc値の上昇を投与2日目より全例に認め菌数の変動は認めなかったが, 2種, 4種感染マウスではMIC値の上昇は認めず, E.coli, Lacto.で菌数減少を認めた.CEZ投与例ではE.coliの著明な減少を認めたが, Bacは著明に減少する例と, 軽度減少する例とを認めた.St.faecalisの減少は認めなかった.CMZ, LMOX, CMX投与では, 投与3日目よりE.coli, Bac.の著明な減少を認め, CMX投与例ではLacto.も同時に著明に減少した.St.faecalisは菌の減少を認めなかった.以上の結果, 胆汁排泄が良く, 広域スペクトルを有する抗生剤を筋肉内投与すると, 感受性菌の減少, 耐性菌の残存という菌交代を惹起させる傾向を認めた.
著者
宮本 泰 児玉 威 秋山 昭一 滝沢 金次郎 松島 章喜
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.9-11, 1970-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
3

A type distribution survey of A Group Streptococci was conducted cooperatively with twelve institutions including hospitals and public health laboratories in Japan. Six hundred eighty strains of Streptococcus pyogenes were collected, of which 506 were mainly from scarlet fever patients and 174 were from healthy carriers. The alteration of the patterns of main predominant types for the past six years was also depicted.While type 4 strain has gradually been decreasing for the past six years, type 6 strain had once increased to such an extent that the replacement of the former with the latter was about to happen. Being suppressed, however, by the rapid uprise of type 12 strain, type 6 strain has come to decrease again since 1967, thus permitting type 1- and type 2 str ins come to the front to cover the room corresponding to the depression of type 4- and type 6 strains.In April 1968 to March 1969 type 12 representing the absolute predominance (36.9%) for the period was attended by four other principal types 4, 6, 22 and 1. These types were with a slight difference in percentage, almost evenly distributed and seemed to compete with each other, thus exhibiting a trend of multipolarity.The isolation of B3264 and 5/27/44 seemed to be a characteristic of the group of our healthy cartiers. Despite the predominance of type 12 strain we seldom encountered nephritis cases or related syndromes.
著者
池田 苗夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.131-138, 1974-04-20 (Released:2011-09-07)

1) A special hemogram: red cells have tendency to increase at the earlyphase and decrease after haemorrhagic phase; in the acme appeared reticulocyte; generally hemogrobin has decreasing tendency. White blood cells show a slighly decrease in the beginning, but increase at the pyrogenetic stage (febriletime); early in the second day of the pyretolysis or late in the several days return to normal. In the leucocyte analysis, the increase of the neutrophile leucocyte was seen; a marked shift to the left is noted in the beginning; myelocyte and metamyelocyte at times appear; mean nuclei counts show a high value 1.5-2.0; distinct vacuolated leucocyte and toxic granules are present in the pyrogenetic stage and the acme. The appearing and disappearing of eosinophile leucocyte are not distinct like typhoid disease. Mononuclear leucocytes and plasmacells a little increase; basophile leucocytes are present in the beginning, but basophile leucocytes are hardly seen in the acme; the platelet number decreases from the beginning and then increases and return to normal but in the patient of grave prognosis the counts remain low. I indicate the thrombopenie as a prognostically important factor of the Epidemic Hemmorrhagic Fever.2) Urinalysis: urobilinogen and urobilin or Diazo tests showed questionable results, but Indican test at times was positive. On the convarescence, the amount of the urine increased and urinary albumin and casts and flocks disappeared.
著者
三木 寛二 吉崎 悦郎 田村 和満 坂崎 利一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.708-711, 1988-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

最近報告された腸内細菌科の新菌種Enterobacter asburiaeをま, Enterobacter cloacaeに近似した生化学的性状をもつために, E. cloacaeと混同されていると思われたので, いままでの臨床分離E. cloacae150菌株を再同定したところ, 7株がE. asburiaeであった. これら7株はVoges-ProskauerテストでEasburiaeの記載陽性率がやや異なったが, これは用いた培地および方法の相違によるものと考察された. 7菌株の由来から, 本菌は日和見的感染菌と思われ, 現在一般に用いられている同定システムでは同定不能かまたはE. cloacaeと誤同定される. なお, 7菌株の薬剤感受性パターンもまたE. cloacaeに類似した.
著者
福山 正文 今川 八束 原 元宣 田淵 清 伊藤 武 尾畑 浩魅 甲斐 明美
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.508-512, 1994-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
22

ヒトのVero毒素産生性大腸菌 (VTEC) 感染症に対する感染源や感染経路を究明する一環として, 1991年10月から1992年3月までの期間に相模原市, 横浜市および平塚市で飼育されていた健康な家畜 (ウシ, ブタおよびヤギ) の新鮮糞便を採取し, VTECの分離を試みたところ, ブタ105例中1例 (1.0%), ウシ55例中2例 (3.6%) およびヤギ13例中12例 (15.4%) からそれぞれVTECが認められた.特にヤギについてはわが国では初めての分離例であった.分離菌株の血清型と毒素 (VT) 型の組合わせはウシ由来株ではO116: H21 (VT2) とO163: H19 (VT2), ブタ由来株ではOUT: H19 (VT2vp), ヤギ由来株ではすべてOUT: H21 (VT1) であった.以上の成績からウシおよびヤギから分離されたVTECは, ヒト由来のVTECが産生するVTと同じ毒素型のVTを産生していることが明らかとなり, これらの家畜がヒトの感染源に関与していることが考えられた.
著者
岩田 敏
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.903-920, 1984-09-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
21 3

抗生剤投与中の出血傾向は重要な副作用の一つであるが, 特に最近では, 新しいCephem系薬剤の使用に伴い問題視されている. そこで, 抗生剤投与中の小児について, ビタミンK欠乏の際特異的に出現する異常プロトロンビンであるProtein induced by vitamin K absence or antagonist (PIVKA II) を主な指標として血液凝固系の変動を調べ, 腸内細菌叢, 経口的食餌摂取, 下痢との関係, 及び抗生剤別, 年齢別, 疾患別の差異について検討した. その結果160例中37例 (23%) がPIVKAII陽性を呈した. このうち2/3以上の症例は. 抗生剤の投与開始後7日以内に陽性化した. 出血傾向は160例中11例 (7%) に認められ, 全例でPIVKAIIは陽性を呈した. 腸内細菌叢の変動は124例について検討したが, 腸内細菌叢が抑制された83例のうち, 23例 (28%) がPIVKAII陽性を呈し, さらに経口的食餌摂取量の減少が重なった23例については15例 (65%) が陽性を示して, 腸内細菌叢の抑制と経口的食餌摂取の不足により, 高率にビタミンK欠乏を生ずる可能性が示唆された. 年齢別の検討では, 乳児例においてPIVKAII陽性例が少なかった. 疾患別のPIVKAII陽性率は, 敗血症, 胎内感染, 中枢神経感染症例で高く, 尿路感染症例で低い傾向が認められた. 抗生剤別の検討では, LMOX, CMZ, CPZ等の3位に1-methyl-1-H-tetzazole-5-y1-thiomethyl基を有するCephem系薬剤にPIVKAII陽性例が多く認められ, この基とビタミンK依存性凝固因子の関係について, 今後検討の必要があると考えられる.以上より, 腸内細菌叢に大きな影響を及ぼす広域抗生剤, 特に新しいCephem系薬剤のような抗生剤を投与する際には, PIVKAIIも含めた血液凝固系の注意深い観察が必要であり, 新生児や経口的食餌摂取の不足している症例など, 症例によってはビタミンKの予防投与が必要である.