著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
6

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。
著者
吉田 真美 平林 佐央理
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.398-404, 2015 (Released:2016-01-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の辛味主成分である6-ジンゲロールは加熱・乾燥により脱水が起こり,高率で6-ショウガオールに変化することが知られている。しかし,通常の食生活でなされる加熱調理条件下での,6-ジンゲロールの変化に関する研究はごく少ない。そこで,一般的な5種の調理方法(茹で,蒸し,炒り,焼き,電子レンジ)を想定し,ショウガ中の6-ジンゲロールの6-ショウガオールへの変化を経時的にHPLCで測定した。さらにDPPH法により抗酸化能の変化を測定し,また辛味の強度を官能評価により比較した。 生ショウガ中の6-ジンゲロールと6-ショウガオールの割合は98:2であった。60分間の茹で・蒸し加熱により,6-ショウガオールはそれぞれ3倍以上有意に増加したが,大半の6-ジンゲロールは残存していた(93:7茹で),(92:8蒸し)。 辛味および抗酸化能に関しては,加熱前後に統計的な有意差はなく,これらの特性は加熱後も維持されていた。
著者
亀谷 宏美 鵜飼 光子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-36, 2012-02-05
被引用文献数
1

インスタントコーヒーのヒドロキシルラジカル捕捉活性をESRスピントラップ法により評価した。ヒドロキシルラジカル捕捉活性の評価にはスピントラップ剤5-(2,2-dimethy-1, 3-propoxycyclophosphoryl)-5-methyl-1-pryoline N-oxide (CYPMPO)を使用した。H_2O_2とCYPMPOのリン酸バッファー溶液をHg-xeアーク灯で照射することで高純度のヒドロキシルラジカルを発生させた。ヒドロキシルラジカルとCYPMPOのアダクトのESRスペクトルは非常に安定しており,感度良く観測することができた。インスタントコーヒーは高いヒドロキシルラジカル捕捉活性を有すると結論した。
著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.132-140, 2021-06-05 (Released:2021-06-17)
参考文献数
37

江戸期の料理本33冊から酢料理を抽出し,江戸期の酢の使われ方について調査した。江戸時代を通して酢の総出現数は1,371回であり,醤油の出現数をやや上回っていた。江戸時代前期では,酢の出現数は醤油の1.5倍であったことから,酢は醤油が広まる以前は最も多く使われる調味料であったことが推察された。出現回数が最も多かった酢料理は魚のなますで,全酢料理の43.9%を占めていた。合わせ酢の種類が多く,香辛料,食材,または調味料との合わせ酢が122種類確認され,そのうち61種類は香辛料や食材と合わせた酢味噌であった。酢を用いた加熱調理法として最も多く出現していたのが「すいり」であり,主に煮物で行われていた。これには酢を加えてから煮る場合と,煮た後に酢を加える2種類の方法があった。その他の加熱調理法として,少量の酢を加えて加熱する方法や生魚に熱い酢をかける方法も見られた。現代の日本料理ではほとんど行われない,酢の加熱調理への使用は,江戸期では一般的なものであったと考えられた。
著者
須谷 和子 志垣 瞳 池内 ますみ 澤田 崇子 長尾 綾子 升井 洋至 三浦 さつき 水野 千恵 山下 英代 山本 由美
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.416-426, 2015 (Released:2016-01-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1

NHK「きょうの料理」に掲載された中から煮物レシピを抽出し,煮物に関する変遷を明らかにした。1960年度から15年間隔で収集した42冊を資料とした。料理総数3,373件のうち煮物は535件(15.9%)を占め,特に1975年度は和風煮物が74.8%であった。煮物で使われる主材料は野菜類がもっとも多く,だいこんはどの年代においても使用頻度が高かった。肉類では,牛肉・豚肉・鶏肉がよく使われ,年代で順位は変化した。 煮物のレシピは,食生活の変化とそれに伴った健康志向・簡便化志向を意識したものになっていた。
著者
植松 大壱 宮崎 早花 小八重 善裕
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.42-48, 2021-02-05 (Released:2021-02-12)
参考文献数
28

本研究は,黒千石ダイズの種子を少量の水で限定吸水させることで,①アントシアニンの溶出を抑制できるか,②黒さ・噛み応え等の黒千石の特徴を活かした豆ごはんが調理できるかを検討した。マイクロプレート内で吸水させ,経時的に吸水率を測定したところ,乾燥種子1 gあたり1.9 mLの吸水条件が,十分な吸水の最低ラインであることが分かり,これを限定吸水量とした。浸漬吸水においては,限定吸水に比べて,アントシアニンの溶出が3倍に増えており,種皮の損傷も大きかった。アントシアニンの溶出は,吸水直後から起こっており,種子の損傷とは無関係だった。限定吸水と浸漬吸水とで,黒千石の豆ごはんを調理し,官能評価を行ったところ,黒さと,食感の項目において,限定吸水のほうが高い評点を得た。以上の結果から,一般に行われている浸漬吸水よりも,限定吸水のほうが,黒千石大豆の色を黒く,食感をよくすることができる。
著者
堀江 秀樹 伊藤 秀和
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.357-361, 2006-12-20
被引用文献数
2 2

我が国では,ホウレンソウ葉中のシュウ酸がホウレンソウを食べる時のえぐ味に関係すると広く解釈されている。本報では,シュウ酸塩溶液を味わった後に残る不快な感覚をシュウ酸味と定義した。ホウレンソウの茹で汁は強いシュウ酸味を示したが,ホウレンソウ葉に水を加えて調製した抽出液では,シュウ酸濃度は茹で汁より高いにもかかわらず,シュウ酸味はごく弱かった。さらに,ホウレンソウの生葉を食してもシュウ酸味はほとんど感じられなかった。これらの現象は唾液由来のカルシウムイオンとホウレンソウ葉由来のシュウ酸イオンの間で,シュウ酸カルシウムの微細な結晶が生成され,これが口腔内を物理的に刺激するのがシュウ酸味である考えれば解釈可能であった。モデル系において,シュウ酸イオンとカルシウムイオンを混合すれば,シュウ酸カルシウムによる白濁が生じた。ホウレンソウ葉中にはクエン酸イオンも含まれ,クエン酸イオンの濃度が十分に高い場合には,シュウ酸カルシウム結晶生成に伴う濁りを抑制したが,クエン酸イオン濃度が低い場合には濁りが生じた。シュウ酸味には,シュウ酸カルシウムの生成を抑制する成分の寄与が大きいものと推定された。ホウレンソウの水抽出物は固相抽出法によって,水溶出画分とエタノール溶出画分に分離できた。シュウ酸イオンとシュウ酸味は水溶出画分に回収され,苦味はエタノール溶出画分に回収された。ホウレンソウの苦味については,シュウ酸とは異なる成分によるものと考えられる。

8 0 0 0 OA シュー生地

著者
大喜多 祥子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.392-397, 1997-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 小島 憲治 神田 真由美 南出 隆久 高井 隆三 中島 孝 高畑 宏亮 大谷 晃也
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.356-365, 2001-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
25

We investigated the relationship between the frothing and foam stability of beer and the surface properties of various kinds of drinking vessel (glass mugs and 6 kinds of ceramic mugs), whose size and shape were almost the same. Although the initial bubbles produced when pouring beer into a mug have been thought to depend on the gas created by the mechanical stirring and on the air adsorbed to the surface of the beer mug, we considered that the frothing and foam stability of beer in the mug might also be related to the shape and size of scratches and on the wettability of the surface of the beer mug. The mechanism for continuous bubbling was investigated by a theoretical equation which showed that the size of a bubble produced on the surface of the beer mug was significantly correlated with the wettability and shape of scratches on the surface, and that the place where a bubble was continuously produced was where air remained to form the nucleus of the next bubble after the previous bubble had been released.
著者
冨田 晴雄 坂本 薫 John Henderson 竹森 利和
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.18-25, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

充分に糊化された米飯の構造とテクスチャーとの関係を明らかにするため,4種類の浸漬時間の異なる浸漬米(10℃ 0分,20分,60分,120分)を調製し,同一条件で炊飯した米飯の構造や物性を評価した。SEMでの米飯の割断面構造観察から,割断面表層付近には多孔質構造があり,最表面には緻密な層が確認できた。浸漬時間が長くなるにつれ,多孔質構造が徐々に拡大し,緻密層は120分で急激に厚くなることが分かった。また,テクスチャー試験から,浸漬時間が長くなるほど弾性率が小さくなり,破断エネルギーや粘性率も60分まで減少後,120分で増加に転じた。多孔質構造とテクスチャーとの相関を定量評価するため,画像解析により多孔質構造の孔の平均面積を求めたところ,浸漬米の水分率や弾性率と高い相関を示すことが分かった。以上の結果より,従来の糊化度評価では差がない炊飯米において,構造と破断エネルギーや弾性率といったテクスチャーとの関係を示すことに成功し,構造観察から食感を推察できる可能性を示した。
著者
長田 早苗 青柳 康夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.7-18, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

加熱処理が,アブラナ科野菜中のGSL含有量へ及ぼす影響を検討し,以下の結果を得た。1.クレソンおよびブロッコリーに含まれるGSLは,50~60℃で加熱した時に最も損失が大きかった。2.中心温度95℃まで加熱したブロッコリーには,脂肪族系GSLが約80%残存した。インドール系GSLの残存率は,GSL の種類によって約20~75%の幅があった。3.茄で後のブロッコリーに含まれるGSLは,脂肪族系およびインドール系ともに,茄で時間が長いほど減少した。茄で水中には一定量しか残存せず,脂肪族系では約7%,インドール系では約18~20%であった。4.茄で水量の違いによるブロッコリーのGSL残存率については,ほとんど差異が認められなかった。5.中心温度95℃まで蒸し加熱,過熱水蒸気による加熱,真空調理を行った結果,GSLの損失は見られなかった。
著者
井部 奈生子 肥後 温子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.189-196, 2012-06-05

市販ぬれせんべい17種類の水分量は9.8〜28.7 g/100 g,水分活性は0.38〜0.81であり,製法,水分含量,テクスチャーを異にする各種の製品があった。そこで,調湿が水分およびテクスチャーに及ぼす影響を含めて製品を分類したところ,揚げせんべいタイプ,半乾きせんべいタイプ,湿せんべいタイプ,湿おかきタイプの4つのタイプに分類できた。なお,3タイプの代表的な製品について官能評価を行ったところ,破断しやすい製品が好まれる傾向がみられ,半乾きせんべいタイプの硬い食感,濃く味付けされたおかきの味が嫌われた。
著者
木村 留美 杉山 寿美 石永 正隆
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.145-152, 2011-04-05
参考文献数
40

日本の伝統的な食べ方である「口中調味」の実施が,白飯とおかずを組み合わせた時の白飯やおかずのおいしさへの関与を明らかにすることを目的とした。口中調味を実施している者は74.8%,実施していない者は25.2%であった。夕食におけるご飯類の摂取頻度,おかずの品数と量に実施群と非実施群で差は認められなかったが,白飯の量は実施群が多かった。和風,洋風,中国風料理のいずれでもおかずの嗜好性と白飯と組み合わせた時のおいしさは関係しなかったが,「おいしく食べるために白飯が必要なおかず」と「白飯をおいしく感じるおかず」の間には正の相関が認められた。実施群が非実施群よりも「白飯をおいしく感じるおかず」としたおかずの多くは,油やバターを用いた,あるいは,脂を含んだおかずであった。さらに,魚の塩焼き,煮魚,刺身のように和食献立の主菜となる魚料理や,肉じゃが,きんぴらごぼうのように白飯と組み合わせることが多いと考えられるおかずでも「白飯をおいしく感じるおかず」とした者の割合に差が認められた。