著者
山崎 歌織 外西 壽鶴子 加藤 和子 河村 フジ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 2000-02-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

材料の種類と水煮時間が異なる煮こごりの品質に付いて調べた結果は次のようであった。1.煮汁をゲル化させた場合,最も硬いゲルを形成する水煮時間は,ぶりやまだらが鶏手羽先よりも短かった。ゲルの硬さは,鶏手羽先が最も高く次いでぶりであり,まだらはかろうじてゲル化する程度であった。2.鶏手羽先のゲルは長時間水煮において安定した硬さを保持するが,ぶり,まだらのゲルは水煮30分以降徐々に軟らかくなった。3.煮汁の透明度は水煮時間の経過と共に低くなり,煮汁中のタンパク質は,ぶり,鶏手羽先では増加した。4.煮汁中のタンパク質には,ゲル形成を促進させるゼラチンの他に阻害するものが含まれている。5.長時間水煮により煮汁中のゼラチン分子は低分子化してゲルは軟らかくなった。
著者
大喜多 祥子 石村 哲代 大島 英子 片寄 眞木子 阪上 愛子 殿畑 操子 中山 伊紗子 中山 玲子 樋上 純子 福本 タミ子 細見 和子 安田 直子 山本 悦子 米田 泰子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.224-233, 2004-05-20
被引用文献数
3

O157食中毒予防の観点から,ハンバーグ焼成方法の実態および問題点を把握するために,一般家庭の調理担当者を対象としたアンケート調査を行った。また,料理書などの文献の記載について調査した。その結果,1)一般家庭におけるハンバーグは,手作りする者が圧倒的に多く,肉は牛掻き肉が用いられる機会が多かった。2)加熱器具はフライパンを用いる者が圧倒的に多かった。しかし,蓋無しや加熱時間10分など,明らかに加熱不充分と推測される焼成を行っている者が相当数存在した。オーブンを用いる者は少ないが,設定温度や時間から見て,加熱不充分と推測される者が少なくなかった。3)焼き終わりの判断の指標は,「透明な肉汁」とする者が最も多かった。しかし,濁った肉汁や赤い肉汁を指標とする者,切り口の状態,加熱時間や押した感じなど,明らかに安全性に問題のある判断方法に頼っている者がかなり存在した。4)「O157による食中毒の発生以来食品の扱いや調理方法に注意している」と回答した者は約79%あったが,O157に対して75℃以上1分間の加熱が必要であることの認識は低かった。実際の調理においてはO157への関心の強さが安全性の高い調理操作に反映していることが確かめられた。5)ハンバーグの焼き方を学校の調理実習で教わったものが,必ずしも安全性の高い調理操作を行っているとはいえなかった。6)上記の調査結果(1999年)に対し3年後の2002年に実施した追跡調査においては,澄んだ肉汁を焼き終わりの指標とする者は増加傾向にあった。しかし,依然として不適切な方法をとる者が多い。フライパンで焼成する場合の蓋使用についても普及していない状況が確かめられた。7)文献調査の結果,焼成方法については記載が曖昧であり,特に焼き終わりの判断方法については触れていない文献がほとんどであった。以上,今回実施したハンバーグの調理方法の実態調査結果,および現在出回っている数多くの料理書などの記述などから見て,一般家庭で調理されているハンバーグは食品衛生上問題がないとは言い切れない実情が明らかとなった。O157による食中毒は大発生をみた1996年以降も例年発生し死者も見られている(厚生労働省2003)。そこで筆者ら焼く分科会としては,現在までに得られた一連の実験結果から,以下の点を全体的なまとめとして,一般の注意を促したいと考える。1.ハンバーグの焼成にあたっては,食品衛生上,内部温度が75℃以上,1分間加熱されることが不可欠であることを認識する必要がある。焼く分科会による実験結果によれば,これをクリアできる焼成条件は,1OOg大の場合ガスオーブンでは230℃で15分以上である。なお,フライパンについての詳細は次報に報告する。2.ハンバーグの焼き終わりを透明な肉汁で判定する方法は,内部温度が75℃に到達していることを確認するうえで有効な方法と言える。焼き色,弾力性,加熱時間,断面などで判定する方法は,内部温度との関連性から見て,必ずしも安全性の指標とは成り得ないことに留意する必要がある。3.現行の学校教育で用いられている教科書や,市販の料理書の記述においては,従来,おいしさの追求が主体であり,食品衛生上の安全性に言及したものはほとんど見当たらない。これらの内容が一般の調理担当者に及ぼす影響の大きさを考えた時,今後は,安全性を視野に入れた焼成方法や焼き終わりの判定方法についての正しい記載が徹底されることが望まれる。
著者
岡本 洋子 畦 五月 田口 田鶴子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.166-177, 2000-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11

We investigated the effect of the eating behavior of infants on their taste sensitivity and development. The study was carried out on a total of 130 children between the ages of one and three years (74 males and 56 females in the age range from 18 months to 41 months) who were enrolled at three approved nursery schools in the prefecture of Okayama. The study involved observing the eating habits at mealtimes in households according to Enjoji's Developmental Questionnaire for Infants, and using flavored aqueous solutions for evaluating taste sensitivity. At least half the children lived in households in which they were provided with home-cooked food and were able to enjoy eating while taking with their family during the meal. The majority of the children in this study were sensitive to sweet, sour and salty tastes within a range of concentration of 0.2-0.8% for an aqueous sucrose solution,0.02-0.06% for an aqueous citric acid solution, and 0.04-0.16% for an aqueous sodium chloride solution. We did not observe any statistical correlation between the eating situation and taste sensitivity of the children, except in the case of sensitivity to a salty taste. However, there existed a significant correlation between the eating situation and the development of the children in four to five categories among the total of six categories. It was clear that a healthy eating situation in infancy did play a positive role in development (for example, in such areas as basic habits, language formation and language comprehension). The results indicate that eating patterns in the household during the early stages of infancy did not have a significant effect on taste sensitivity, except for a salty taste, but suggest that there may have been some effect on the children's development.
著者
本同 宏成
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.216-219, 2020-06-05 (Released:2020-06-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
日本調理科学会近畿支部 焼く分科会
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.400-406, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
15

過熱水蒸気で焼成した製品の特徴を明らかにするために,家庭用過熱水蒸気オーブンの過熱水蒸気機能とオーブン機能を用いて,低温加熱(150°C)と高温加熱(250°C)でハンバーグの焼成を行った。試料内部温度が75°Cになるまで焼成を行った。加熱初期の温度上昇速度は,過熱水蒸気では低温加熱は高温加熱と同様に速かった。製品重量や製品から採取した肉汁量は焼成温度の違いによる差はなかった。官能評価において,低温加熱の方が焼き色は薄く(p<0.001),香ばしい香りは弱く(p<0.01),総合評価は悪かった(p<0.01)。しかし,ジューシーさと脂っぽさは差がなかった。このことから,過熱水蒸気の低温加熱は,加熱時間を長く要する料理に向いていると考えられる。

2 0 0 0 OA 凍豆腐

著者
田村 正紀
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.114-122, 1995-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16
著者
品川 喜代美 金 娟廷 河村 彩乃 岩崎 裕子 高戸 良之 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.126-133, 2014 (Released:2014-07-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

高齢者向けにテクスチャーを改善した餅様食品が開発されている。その食べやすさについて検討するため,テクスチャー特性と筋活動量の測定ならびに官能評価を行った。テクスチャー特性の測定は,飲み込む直前の食塊についても行った。試料は,高齢者向けに開発された餅様食品S,K,および市販の切餅を用いた。餅様食品SおよびKのテクスチャー特性の付着性は,切餅に比べて小さいことが示された。若年者を被験者にした官能評価において,餅様食品SおよびKの喉につまる危険性は,切餅に比べて低いと評価された。また,SおよびKの筋活動量は切餅に比べて少ないことが示された。餅は高齢者が喉につめやすい食品であり,高齢化にともない咀嚼機能が低下するといわれている。付着性と喉につまる危険性および筋活動量に関係がえられたことから,付着性を抑えた餅様食品は,切餅に比べて食べやすいことが明らかとなった。
著者
木村 友子 福谷 洋子 菅原 龍幸 佐々木 弘子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1995-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11

To develop a new cooking method for rapid rehydration of dried radish (strips of dried radish), several conditions for rehydration including a step of ultrasono-irradiation were studied. The conditions for the best rehydration were determined at 5,25 and 40°C and the effects of ultrasonication on physical properties and palatability of the cooked radish were investigated. The results were as follows:(1) The amount of water absorbed into dried radish increased as the rehydration time goes up. The irradiated radish showed further improved swelling in shorter time and their tissues were softened faster than those in the control without irradiation.(2) When rehydration was conducted under the suitable conditions at the water temperature of 25°C, no difference was observed between the subjects irradiated for 15 min and those soaked for 30 min without irradiation, with regard to in the contents of moisture, total sugar, free sugar, crude protein, free amino acids and ashes, and the remaining proportions of mineral components in both subjects were 81% for Ca,70% for iron and 69% or more for Mg.(3) For texture characteristics, ultrasono-irradiated radish after cooking exhibited large rupture strain and chewiness than the control without irradiation. In addition, the permeability of seasonings was a little higher in ultrasono-irradiated radish and also the odor specific to the dried radish was somewhat decreased, resulting in superior taste evaluation.
著者
畑江 敬子 飯島 久美子 小西 史子 綾部 園子 村上 知子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-242, 2003-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
19
被引用文献数
2

沖縄から北海道まで2,633家庭の雑煮の食べ方を調査し,次のような結果を得た.(1)2002年正月,雑煮の喫食率は,92.2%であった.元旦の喫食率が82.0%と最も高く,2日以降は減少した.(2)餅の形は東日本は角餅が多く,西日本は丸餅が多かった.しかし,山形に丸餅の飛地が,鹿児島,徳島に角餅の飛地があった.(3)だしは天然素材が60.4%を占め最も多かった.(4)雑煮の味付けは醤油が最も多かった.しかし,味囎には地域性がみられ,近畿を中心とする一帯に多かった.(5)具材は多い順にニンジン,ダイコン,鶏肉などがあげられたが,具材は多様であり,各家庭の自由な発想が伺えた.しかし,地域独特の具材も残っていた.(6)CHAIDによる解析から,全国の雑煮は鶏肉の有無で2分され,さらに餅の形で2分され,それらがさらに鰹削り節,干しシイタケ,ゴボウ,かまぼこの有無で2分されることがわかった.