著者
志垣 瞳 池内 ますみ 小西 冨美子 花崎 憲子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.206-214, 2004-05-20
被引用文献数
8

若い世代の魚食嗜好に関連する要因を把握し,魚離れの食行動を見直すことを目的に奈良県内の大学,短期大学の2回生を対象に,1999年4月〜5月に魚介類に関する食嗜好調査を実施した。得られた結果は次の通りである。1)魚介類が「大好き」と答えた学生は29.1%,「好き」は40.8%で,「大好き・好き」は69.9%を占めた。魚介類が「嫌い・大嫌い」な学生は5.6%と少なかった。魚介類の嗜好には,性別による違いはみられなかったが,母親の嗜好は大きく影響していた(p<0.001)。2)肉類が「大好き」な学生は25.8%,「好き」は47.3%で,「大好き・好き」は73.1%であった。肉類が「嫌い・大嫌い」は2.0%であった。肉類の嗜好も性別による有意な差はみられなかったが,男子に嫌いと答えた人はいなかった。3)魚介類を好きになった時期は「幼稚園以下」が最も多く(42.7%),次いで「小学校低学年」(24.9%)であった。嗜好別にみると,「大好き」なグループでは,好きになった時期が「幼稚園以下」と答えた人は54.8%であった。4)魚介類が夕食で摂取される頻度は「週に3〜4回」以上が50.5%であった。魚介類の摂取頻度は性別や魚介類の嗜好別で違いがみられた(各々p<0.001)。5)肉類が夕食で摂取される頻度は「週に3〜4回」以上が62.5%であった。6)魚介類の好きな調理法は,焼く(27.3%),生(22.3%),煮る,揚げる,汁物の順であった。家でよく食べる調理法は焼く(32.9%),煮る(25.6%),生(20.5%),揚げる,汁物であった。好きな調理法は魚介類の嗜好別で違いがみられ(p<0.001),魚が「大好き」な人は調理法の種類に偏りが少なく,どの調理法も好んでいた。7)好きな魚介類は,サケ・マス(34.9%),エビ(28.6%),サンマ(23.3%),マグロ(22.5%)であり,よく食べる魚介類はサバ(50.4%),サケ・マス(45.3%),サンマ(29.9%),ブリ(29.4%),エビ(29.1%)であった。好きな魚介類,よく食べる魚介類は,性別で違いがみられた(各々p<0.001)。8)魚介類が好きな人ほど,好きな魚やよく食べる魚の種類が多かった。9)魚離れをくいとめるためには,幼稚園以下の幼い頃から魚介類を食べる習慣をつけ,母親がいろいろな魚や調理法を用いて魚料理を作ってやること,おいしく楽しい食体験の積み重ね,親子がそろって魚が「大好き」という味覚教育が大切である。
著者
藤井 恵子 赤堀 博美 川辺 知子 川畑 章子 大越 ひろ 中濱 信子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.261-269, 2001-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
33

Milk jelly samples made with six different gelling substances, agar, gelatin, l-carageenan, corn starch, sodium alginate and LM pectin, were prepared, and the physical properties of these samples were investigated. The rupture stress of all samples was the same. The rupture strain of the agar milk jelly was the lowest, while the values for the elasticity of the Hookean and Kelvin-Voigt bodies, and the viscosity of the Kelvin-Voigt body of the agar milk jelly were the highest. On the other hand, the values for the elasticity of the Hookean body and viscosity of the Newtonean body of the gelatin milk jelly were the lowest. The melting temperatures of the agar, LM pectin, l-carageenan and gelatin milk jelly samples were 84.1°C,55.8°C,52.3°Cand 30.3°C, respectively. While there was marked syneresis of the agar milk jelly, there was little with the alginate milk jelly and LM pectin milk jelly. A sensory evaluation judged the agar and gelatin milk jelly samples to be palatable, while the LM pectin and alginate milk jelly samples were judged to be unpalatable.
著者
横溝 佐夜子 山本 由美 山下 英代 四谷 美和子 水野 千恵 丸山 悦子 荻野 正子 深蔵 紀子 山田 克子 瓦家 千代子 冨岡 和子 内田 真理子 梶田 武俊 辻 郁代 花崎 憲 生野 世方子 吉村 美紀 芥田 暁栄 山野 澄子 奥田 展子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-48, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15

5種の設定した加熱条件下でじゃがいもを加熱した場合の針入度と官能評価について,以下の結果を得た. 1.針入度による硬さの測定では,測定部位,測定時間による差がみられた. 2.設定した5種の加熱での官能評価では,弱火32分が最もやわらかいと評価されたが,総合評価は3分放置では中火20分が,20分放置では強火16分が最もよい評価となり,加熱条件と官能検査項目や放置時間との影響が確認された. 3.官能評価項目を5種の加熱条件での有意差の表れ方で比較すると,加熱条件の影響を受けやすい項目と,受けにくい項目とに分類できることが認められた. 4.5種の加熱条件における硬さの官能評価と針入度の間には,一致した傾向が認められた.
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 小島 憲治 神田 真由美 南出 隆久 高井 隆三 中島 孝 高畑 宏亮 大谷 晃也
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.356-365, 2001-11-20
被引用文献数
1

We investigated the relationship between the frothing and foam stability of beer and the surface properties of various kinds of drinking vessel (glass mugs and 6 kinds of ceramic mugs), whose size and shape were almost the same. Although the initial bubbles produced when pouring beer into a mug have been thought to depend on the gas created by the mechanical stirring and on the air adsorbed to the surface of the beer mug, we considered that the frothing and foam stability of beer in the mug might also be related to the shape and size of scratches and on the wettability of the surface of the beer mug. The mechanism for continuous bubbling was investigated by a theoretical equation which showed that the size of a bubble produced on the surface of the beer mug was significantly correlated with the wettability and shape of scratches on the surface, and that the place where a bubble was continuously produced was where air remained to form the nucleus of the next bubble after the previous bubble had been released.
著者
サントソ マルタ 山口 智子 的場 輝佳 髙村 仁知
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.202-213, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
30

パンギノキ (Pangium edule Reinw.) は,東南アジアおよび南太平洋諸島の熱帯植物であり,現地では,その種子から高含量のシアン化合物を取り除いた後に食される。パンギノキの種子はそのまま植物性食素材として消費するほか,穴埋め発酵により,特徴的なセイボリーなフレーバーを付け加えた香辛料として消費される。発酵した種子はクルワックと呼ばれる。これまでに,種子が高レベルの抗酸化活性および抗酸化成分を有することが報告されている。本研究では,パンギノキ種子における抗酸化活性および抗酸化成分の分布,ならびに穴埋め発酵および加熱調理の影響について,1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル (DPPH) 法,酸素ラジカル吸収能 (ORAC) 法,全フェノール量,アスコルビン酸量,ビタミンE量,脂肪酸組成を測定した。さらに,穴埋め発酵がパンギノキ種子の物性に及ぼす影響についても解析した。種子に含まれる抗酸化活性および抗酸化成分は,DPPHラジカル捕捉活性を指標とした場合,主に水系画分に存在したが,ORACを指標とした場合,水系,油系の両方に存在した。水系,油系の主な活性成分はそれぞれフェノール化合物およびγ-トコトリエノールであった。穴埋め発酵により,水系および油系の抗酸化活性は有意に増加したが,これはメイラード反応生成物によるものと思われる。同様に,加熱調理過程においても両方の画分で抗酸化活性が増加した。
著者
村田 美穂子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.244-248, 2000-05-20

野菜類の硝酸および亜硝酸の定量方法として、フローインジェクション法(FIA法)による分析を試み、検討した。また、これまで報告例のないモロヘイヤについても定量した。極微量に含まれる亜硝酸の添加回収実験において、回収率はコマツナ、ダイコン、モロヘイヤのいずれも93%以上であったことより、FIA法での有効性が確認された。また、代表的な5種類の野菜類(ホウレンソウ、コマツナ、ダイコン、セロリ、キャベツ)での定量において、この方法での適用が確認できた。また、モロヘイヤの硝酸および亜硝酸の含有量については、硝酸は142.1mgから1,026.8mg/100g、亜硝酸は1.3mgから1.8mg/100gの範囲であり、特に硝酸含有量については個体差が大きいことが認められた。従来の複雑で煩雑な方法に比べて、FIA法は簡便で迅速であり、環境汚染においても、これまでの方法よりも格段に廃液量が少なく、再現性にも優れているので、今後野菜類の硝酸および亜硝酸分析の有効な手段となりうると考えられた。
著者
三神 彩子 喜多 記子 佐藤 久美 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.98-105, 2010-04-05
被引用文献数
2

本研究では,幅広い料理法に対応できる中華鍋(鉄製)の特性を活用し,省エネルギー効果およびCO_2排出量削減効果をはかることを目的に,「炒める」「焼く」「揚げる」「蒸す」「煮る」の5操作法別に代表的な調理での他の鍋類との比較を行い,調理時のガス・水使用量,試料内部温度,仕上がりまでの加熱時間を測定し,さらにCO_2排出量に換算した。炒める(キャベツ炒め)では,中華鍋は鉄製フライパンと比較し約26%,テフロン加工フライパンとでは約56%,焼く(ハムステーキ)は,中華鍋は鉄製フライパンと比べ約13%,テフロン加工フライパンとでは約47%,揚げる(トンカツ)は,揚げ鍋と比較し約16%,蒸す(蒸しイモ)は,中華鍋で蒸籠を使った場合と西洋蒸し器とで比較すると,約7%のCO_2排出量削減効果が得られた。煮る(煮豚)では,中華鍋によるCO_2排出量削減効果はみられなかった。以上5項目中4項目の加熱操作の中華鍋使用の料理で7〜56%のCO_2排出量削減効果が確認できた。
著者
阿部 芳子 上舩津 暢子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.289-295, 2006-10-20
被引用文献数
4

中華麺のうち卵を用いて調製したドウとそれを製麺してゆでたゆで麺の性質をうどんと比較し,結果をまとめると次の通りである。1.卵で調製した麺のドウは,加水率40%ではほとんどねかし時間を必要としないほどこね操作中にまとまりやすく,かつ,軟らかかった。2.官能検査による麺のテクスチャー評価では,卵麺はうどんよりも硬さが硬く,もちもち感が少ないと評価された。3.ゆで時間の同じ卵麺とうどんの硬さを物性測定機により比較すると,卵麺はうどんよりも硬く,とくに中心部の硬い部分がうどんよりも多く残っていた。卵液により水分の浸透が抑制されていることによると考えられる。4.卵麺の糊化度は,ゆで時間4〜12分で55〜65%であり,うどんでは62〜78%で,うどんよりも低いものであった。5.卵麺とうどんの顕微鏡観察で,中心部の胚乳細胞はいずれも形が残存しており,周辺部の胚乳細胞はうどんでは膨潤して形がほとんどみられない部分が多かったが,卵麺では表面近くまで胚乳細胞が卵と小麦粉タンパク質の混合物に包まれて残っているのが観察された。
著者
磯部 由香 森岡 めぐみ 寺原 典彦 小宮 孝志 成田 美代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.247-250, 2006

Yuka Isobe Megumi Morioka Norihiko Terahara Takashi Komiya Miyo Narita The antioxidative activity of the crude pigment extracted from akamajiri-kuromai colored rice was measured by its suppressive activity toward the oxidation of linoleic acid, DPPH radical-scavenging activity, and OH radicalscavenging activity. The pigment extracted from akamajiri-kuromai exhibited higher antioxidative activity than the pigment extracted from red rice and black rice. The pigment of akamajiri-kuromai contained two components: the one fractionated from butanol was identified as Cy 3-Glc by HPLC and <sup>1</sup>H-NMR analyses, and the one fractionated from ethyl acetate seemed to be tannin.
著者
藤江 歩巳 久保田 真紀 梅村 芳樹 大羽 和子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.380-389, 2001-11-20
被引用文献数
18

(1) 新鮮ハーブ12種類のVC量は,新鮮重100g当たり45〜170mgであり,ほうれん草の2〜6倍多かった。しかし,DPPHラジカル捕捉活性とVC量の間に相関は認められず(R^2=0.031),DPPHラジカル捕捉活性を説明できる量ではなかった。(2) シソ科ハーブ(10種類)およびセリ科ハーブ(8種類)のDPPHラジカル捕捉活性は,新鮮重100g当たり2,900〜17,500μmolA_sA当量および40〜4,500μmolA_sA当量であった。中でもラジカル捕捉活性の最も高いオレガノにはほうれん草の76倍の活性があった。(3) シソ科ハーブ(9種類)のポリフェノール量は,新鮮重100g当たり3,300〜17,200μmolクロロゲン酸当量および60〜3,600μmolクロロゲン酸当量であった。シソ科のセージのポリフェノール量はほうれん草の44倍であった。(4) 新鮮重100g当たりのDPPHラジカル捕捉活性(μmolA_sA当量)とポリフェノール量(μmolクロロゲン酸当量)の比の平均は1.1であった。DPPHラジカル捕捉活性とポリフェノール量の間には正の相関が認められた。(R^2=0.958) (5) 2%食塩水で茹で加熱した後のDPPHラジカル捕捉活性は生の値の平均1.2倍と増加したが,ポリフェノール量は殆ど変わらなかった。以上の結果,新鮮ハーブのDPPHラジカル捕捉活性は主にポリフェノール成分に起因していることが示唆された。
著者
掛江 美和子 今井 悦子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.200-209, 2003-08-20
被引用文献数
3

Four alcoholic beverages (beer, wine, sake and chuhi sour) were investigated to evaluate the sensory compatibility between these alcoholic beverages and foods. A total of 876 consumers, including brewery staff in the Kanto area, participated in this study. The participants were asked to grade these beverages on a 6-point scale according to the perceived compatibility with various foods. The average scores indicate that each alcoholic beverage had varying affinity to different foods in the minds of consumers. As a whole, beer tended to score relatively highly regardless of the food variety, whereas wine was considered to have more specific affinity to certain types of food. When the foods were ranked according to the compatibility scores with a particular alcoholic beverage, beer and chuhi exhibited broadly similar profiles. The results are also discussed of a principal component analysis for mapping foods.
著者
畑江 敬子 飯島 久美子 小西 史子 綾部 園子 村上 知子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-242, 2003

沖縄から北海道まで2,633家庭の雑煮の食べ方を調査し,次のような結果を得た.<BR>(1)2002年正月,雑煮の喫食率は,92.2%であった.元旦の喫食率が82.0%と最も高く,2日以降は減少した.<BR>(2)餅の形は東日本は角餅が多く,西日本は丸餅が多かった.しかし,山形に丸餅の飛地が,鹿児島,徳島に角餅の飛地があった.<BR>(3)だしは天然素材が60.4%を占め最も多かった.<BR>(4)雑煮の味付けは醤油が最も多かった.しかし,味囎には地域性がみられ,近畿を中心とする一帯に多かった.<BR>(5)具材は多い順にニンジン,ダイコン,鶏肉などがあげられたが,具材は多様であり,各家庭の自由な発想が伺えた.しかし,地域独特の具材も残っていた.<BR>(6)CHAIDによる解析から,全国の雑煮は鶏肉の有無で2分され,さらに餅の形で2分され,それらがさらに鰹削り節,干しシイタケ,ゴボウ,かまぼこの有無で2分されることがわかった.
著者
森地 敏樹
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.55-60, 2008-02-20
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
赤石(喜多) 記子 長尾 慶子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.351-358, 2010

栄養成分が豊富でアレルギーを起こしにくいと言われているスペルト小麦を用いて加熱操作の異なるパンを調製し,外観,物性,機能性面から比較検討した。ベーグルパンは茹で操作中にドウ内部が予備加熱される為,パンの膨化は他の加熱法に比べて最大となった。パンの色調は乾式加熱でメイラード反応によりa*値,b*値の上昇とL*値の低下がみられた。破断試験の結果,パン内層部の破断エネルギーは天火加熱と電子レンジ加熱で高値となり,ベーグル加熱,揚げ加熱,蒸し加熱で低値となった。クラスト及びクラムの水分の存在が力学特性に強く関与していることが推察された。普通小麦パンでは生ドウを加熱することで,抗酸化性が損失するのに対し,スペルト小麦パンでは低下せずに安定性が高いことが認められた。SDS-PAGE結果より,スペルト小麦パンと普通小麦パンでは分子量50 kDa及び37 kDa付近に差異が見られ,10~15 kDa付近のバンドは長時間加熱の天火加熱及び蒸し加熱法で消失することが確認された。
著者
峯木 真知子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.128-132, 1999-05-20
被引用文献数
2

名古屋コーチン種の卵黄球について,飼料と大きさの同じ白色レグホン種卵を用いて,卵重及び卵黄重,組織観察,画像処理による計測を行って比較検討した。 1) 卵重,卵黄重及び卵黄/卵重比は,名古屋コーチン種と白色レグホン種の卵では違いがみられなかった。 2) 卵黄球の大きさ及び形状(長短軸比)は,名古屋コーチン種卵が白色レグホン種と比較して,有意に小さく丸く,組織観察の結果と一致した。 以上,卵黄球の大きさについて,白色卵系市販卵との比較検討も行った結果,卵黄球の大きさは鶏種によって異なり,名古屋コーチン種卵の卵黄球は,白色卵系鶏種(白色レグホン種)の約70%程度であることがわかった。 卵黄球の大きさの違いがテクスチャーに及ぼす影響については今後の課題である。
著者
野坂 千秋 箕輪 澄乃 星川 恵里 久保田 浩二 大越 ひろ 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.10-16, 2001-02-20
被引用文献数
5

熟練したシェフの調理技術に着目し,非熟練者と比較し,ソース中の成分の状態や物性に与える,調理操作条件の影響について検討を行った。1.調理過程を比較したところ,ルーと牛乳の攪拌工程に顕著な差が見られ,シェフは非熟練者に比べ2倍近い攪拌速度を示した。2.ルーと牛乳を攪拌混合した直後の試料で比較すると,シェフではルー中の小麦澱粉・タンパク粒子が均一に分散し,油脂が細粒化した状態にあるのに対し,非熟練者では澱粉粒はタンパクと絡み合って凝縮し,油脂は油脂は大きな粒径を呈した。ルーと牛乳の攪拌速度の上昇に従い,シェフに近づく傾向を示した。3.流動特性において,シェフソースは非熟練者ソースに比べ,降伏値,チキソトロピー性,粘稠性係数が有意に大きい物性を示した。モデルソースにおいても,攪拌速度の上昇に従い,シェフソースに近づく傾向を示した。4.シェフソースは非熟練者ソースに比し,滑らかで,ボテつかず,粘りが少なく,クリーム風味の好ましいホワイトソースであることが示された。モデルソースにおいても,攪拌速度が速い程,同様の傾向を示し,シェフソースの食感や風味に近づいた。また,総合評価と相関の高かった「なめらかさ」は、澱粉・タンパク粒子径と粘稠性係数と高い相関を有することが示された。以上より,シェフの調製方法は,ルーと牛乳を高速攪拌する点で非熟練者と異なることが特徴として挙げられ,その調理方法が,良好なホワイトソースに反映していることが示唆された。
著者
長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.324-334, 2013-10-05
被引用文献数
1

抗酸化能を高めた中国料理献立を立案するために,栄養・嗜好面に配慮した基本献立と食材や調理手法を変えて抗酸化能を高めたモデル献立の抗酸化能を評価した。その結果,大菜の煮込み料理の[紅焼白菜]では食材のカニ,ケール及びエノキタケを選択し,同じく 炒め料理の[木穉肉]では調味料の五分たまり醤油と甜麺醤に薬味のネギ,ショウガを選択した。[湯菜]ではだし素材の干し椎茸と鶏ガラにネギとショウガを加えて加熱した。甜点心の [杏仁豆腐]では,杏仁霜と牛乳で調製した寒天ゲルに,黒糖シロップと果物のブルーベリーを選択し,鹹点心の[餃子]ではキャベツを脱水せずに加え蒸し加熱する方法で,どの料理も抗酸化能を高めることができた。これらを組み合わせたモデル献立にして,数種の測定法で抗酸化を測定したところ,基本献立に比べて抗酸化能の有意に高い中国料理モデル献立として提案できることが示唆された。
著者
粟津原 理恵 樋口 二美子 土田 幸一 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.319-326, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

ソバの機能性成分ルチンの損失を抑え,歯応えの良いソバ切り(麺)の調理条件の解明を目指し,ソバ切り調製時におけるルチンと小麦グルテンの相互作用について追究した。ルチン含量の異なる普通ソバ粉,普通-ダッタン配合ソバ粉,およびダッタンソバ粉を用いてグルテン添加量を変えたモデル麺を調製し,ゆで麺の破断特性測定および走査型電子顕微鏡による構造観察を行った。配合ソバはグルテン添加量の増加により,均一な構造となり,普通ソバに類似した破断特性を示したが,ルチン含量の最も高いダッタンソバはグルテンを添加しても構造が粗く,歯ごたえの弱い脆い麺であった。また,逆相クロマトグラム分析から,ゆで処理による配合ソバおよびダッタンソバからのルチン損失が,グルテン添加により抑制されることが示唆された。以上より,配合ソバ程度までのルチン含量のソバ粉は,10~20wt%のグルテン添加により,歯応えがあり,機能性の高い麺に調製できることが期待できる。