著者
布施 陽子 矢崎 高明 福井 勉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.77-80, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

〔目的〕本研究目的は腹横筋収縮を促進する具体的方法を検討することである.〔対象〕対象は健常者12名とした.〔方法〕超音波診断装置を用い,A:安静背臥位,B:ストレッチポール上背臥位(上肢支持あり),C:Bと同様だが上肢支持なしの3条件での安静呼気終末の外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の筋厚を体幹矢状断部で左右両側とも計測した.〔結果〕A~Cの3条件間において,腹横筋のみ筋厚に有意差を認めた.また腹横筋厚はA-B間・A-C間に有意差が認められた.〔結語〕腹横筋エクササイズとして,ストレッチポールの使用は有効である.
著者
和田 太成 鈴木 啓介 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.341-345, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕膝蓋下脂肪体(IFP)の変形と膝関節痛の関係を検討する前段階として,健常若年者の膝関節運動(0~45°)に伴うIFPの形態変化を調べた.〔対象と方法〕健常若年者23名を対象に,超音波画像診断装置を用いて膝伸展位,15°,30°,45°屈曲位でのIFPの遠位部と中央部の厚みを測定した.〔結果〕IFPの遠位部は,伸展位から15°屈曲位の運動範囲で最も厚みの減少量が大きかったが,中央部では有意差を示さなかった.〔結語〕IFPは伸展位から15°屈曲位の運動範囲では,遠位部で膝関節屈曲に伴いIFPが介在する膝蓋靭帯深部の空間容積が増加して圧迫され変形が生じるが,中央部では変化がなかった.IFPの膝関節痛への関与が今後の検討課題である.
著者
生方 瞳 霍 明 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.101-104, 2014 (Released:2014-03-26)
参考文献数
23
被引用文献数
2

〔目的〕腰痛の有無および疼痛側と非疼痛側を比較し,腰痛と多裂筋の筋硬度の関係を調査することを目的とした.〔対象〕健常成人(以下,健常群)6名と一側に慢性腰痛を持つ者(以下,腰痛群)11名とした.〔方法〕L5棘突起より2.5 cm側方の多裂筋を筋硬度計にて測定した.〔結果〕健常群に比べ,腰痛群の筋硬度は疼痛側,非疼痛側共に有意に低値であった.腰痛群では非疼痛側に比べ,疼痛側の筋硬度は有意に高値を示した.〔結語〕疼痛側の多裂筋は筋スパズムを発生させ疼痛が生じ筋力低下と筋萎縮を呈しており,非疼痛側の多裂筋は代償的に弛緩しているため,疼痛側だけでなく非疼痛側へもアプローチする必要があることが示唆された.
著者
高松 賢司 平松 佑一 藤田 暢一 木瀬 憲司 荒木 和子 宮井 一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.153-157, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

〔目的〕回復期リハビリテーション病棟を退院した後の在宅生活におけるFunctional Independence Measure(FIM)運動下位項目の経時的変化を明らかにする.〔対象と方法〕対象は,退院直後から訪問リハビリを開始した41名の脳卒中患者とした.診療録から抽出したFIM運動項目合計と,その下位項目の点数を各時期(退院時,退院直後,退院後3ヵ月)で比較した.〔結果〕退院直後は排泄(排便)が向上,移動(歩行)が低下した.退院後3ヵ月はセルフケア(食事,清拭,更衣下半身,トイレ動作),排泄(排尿,排便),移乗(ベッド,トイレ,浴槽),移動(階段)が向上したが,整容,更衣上半身,歩行は変化しなかった.〔結語〕退院後3ヵ月におけるFIM運動下位項目の変化は,生活段階で異なることが示唆された.
著者
吉本 好延 大山 幸綱 浜岡 克伺 明崎 禎輝 吉村 晋 野村 卓生 佐野 尚美 橋本 豊年 佐藤 厚
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.245-251, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
14
被引用文献数
8 4

[目的]本研究の目的は,在宅における脳卒中患者の転倒の有無と,入院中の身体機能との関連性を調査し,入院中から在宅での転倒予測が可能かどうかを検討した。 [対象]入院中に歩行可能であった脳卒中患者79名であった。[方法]身体機能の評価として,Brunnstrom Recovery Stage,片脚立位時間,10 m歩行時間などを発症から3ヶ月以降(発症から身体機能評価までの平均期間111.1 ± 19.6日)に測定し,退院後1年間の転倒状況は,郵送法を用いたアンケート調査を行い,入院中の身体機能との関連性を検討した。[結果]転倒者は50名(63.3%)であった。転倒群は,非転倒群と比較して,Brunnstrom Recovery Stage,麻痺側片脚立位時間,非麻痺側片脚立位時間,麻痺側膝関節伸展筋力,非麻痺側膝関節伸展筋力,Barthel Indexの項目が有意に低値であった(p<0.05)。10 m歩行時間の項目は有意に高値であった(p<0.05)。ロジスティック解析の結果,麻痺側片脚立位時間は最も重要な転倒関連因子(オッズ比:0.902,95%信頼区間:0.829~0.981)であると考えられた。麻痺側片脚立位時間3.5秒をカットオフ値とした場合,感度86.0%,特異度69.0%であった。[結語]在宅における歩行可能な脳卒中患者の転倒予測として,入院中の麻痺側片脚立位時間の測定が有用である可能性が示唆された。
著者
加藤 順一 来栖 昌朗 宮地 条治 逢坂 悟郎 原 泰久 谷口 洋
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.71-74, 1996 (Released:2007-03-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

肥満患者を対象に運動および全身温熱(サウナ)負荷テストによる呼気ガス分析を実施し,呼吸循環器面より両負荷の生理学的影響について比較検討した。また運動強度からエネルギー需要量を推測できることから,両負荷による非蛋白呼吸商から負荷方法の違いによる糖および脂肪のエネルギー消費の関与について検討した。その結果,(1)自転車エルゴメーターによる運動負荷で最大酸素摂取量(VO2 max)および最大心拍数(HR max)は著しく増加したのに対し,サウナ負荷ではVO2 maxは軽度の増加とHR maxは, 中等度の増加にとどまった。(2)サウナ負荷で呼吸商(RQ)は,運動負荷時と比較して有意に低値を示した。(3)サウナ負荷時の最大心拍数を運動負荷テストより得られた心拍数と酸素摂取量(VO2)の回帰式より酸素摂取量を計算した期待値すなわちサウナ負荷時の予想VO2 max値は,実際のサウナ負荷時の実測VO2 max値より有意に高値を示した。これらの結果より,運動強度および非蛋白呼吸商から糖および脂肪のエネルギー消費の関与する割合を推測すると,運動負荷ではRQとVO2が高く,糖質の燃焼の割合が高いのに対して,サウナ負荷ではRQとVO2が低く,脂肪燃焼の割合が高いと考えられる。すなわち運動負荷では主にグルコース代謝によるエネルギー消費が,またサウナ負荷ではグルコース代謝のみならず脂肪代謝が関与することが示唆された。
著者
松村 将司 宇佐 英幸 小川 大輔 市川 和奈 畠 昌史 清水 洋治 古谷 英孝 竹井 仁 篠田 瑞生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.239-246, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

〔目的〕関節可動域(ROM)と筋力に関して,年代間の相違とその性差を検討すること.〔対象〕若年群,中年群,高齢群に分けられた脊柱,下肢に整形外科的既往のない男女141名.〔方法〕ROMと筋力測定は,股,膝,足関節に対して行った.〔結果〕ROMは,多くの項目が男性は中年群,女性は高齢群で著明に低下し,股関節内転,膝関節屈曲,足関節背屈では性差を認めず,股関節外旋のみ男性が有意に大きく,その他の項目は女性で有意に大きい値を示した.筋力は,多くの項目が男女とも中年群で著明に低下し,若年群の股関節伸展・外転・内転,膝関節伸展・屈曲,中年群の膝関節伸展において男性で有意に大きい値を示した.〔結語〕男女それぞれのROM,筋力の加齢による変化の傾向および性差を考慮した理学療法を実施することが重要である.
著者
岡田 裕隆 濱田 輝一 肥後 成美 永崎 孝之 二宮 省悟 福留 英明 山本 広伸 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.337-341, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
8

〔目的〕超音波診断装置を用いて足関節角度変化に伴う連続した遠位脛腓結合の可動性を明らかにすることである。〔対象〕足部機能に問題のない健常成人14名で,左右を合わせ28肢とした。〔方法〕対象者に底背屈運動を行わせ,前額面における連続した遠位脛腓結合の変化を超音波画像にて記録し,画像解析により脛骨と腓骨の開離距離を計測した。〔結果〕脛骨と腓骨の開離距離は,足関節の底背屈変化に伴い増大を示した。また,その変化は均一的,直線的ではなく,底屈及び背屈初期までは緩やかに増加し,背屈後期では急速に増加するという特徴的なものであった。〔結語〕遠位脛腓結合の開離には,足関節背屈時の距骨滑車関節の前後における左右幅の変化だけでなく,筋収縮による腓骨自体の動きや距骨の中枢側への引き込みによる距骨の上下の左右幅の変化に伴った一連の複合的な作用が影響する可能性が示唆された。
著者
宮下 浩二 播木 孝 谷 祐輔 太田 憲一郎 小山 太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.707-711, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
21

〔目的〕投球障害肩の要因となる肩内旋制限(硬さ)と肩後方動揺性(緩さ)は一見相反する現象だが,投手の肩で併存するか明確でない.本研究は両者の関係性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕社会人投手47名を対象とした.両側の内旋・外旋可動域と後方動揺性を測定した.左右の肩内旋可動域の差が20°以上をGIRD群(24名),20°未満を健常群(23名)とした.両群間の可動域の差,後方動揺性の陽性割合の差を検定した.〔結果〕内旋可動域はGIRD群26.0 ± 12.6°,健常群50.0 ± 14.3°で有意差があった.後方動揺性は両群間で割合に有意差はなかった.〔結語〕投手の肩は内旋可動域制限がある一方,同時に後方動揺性も併存する場合があることが示された.
著者
山田 健二 須藤 明治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.519-521, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

〔目的〕足把持力と50 m走の疾走速度との関係について明らかにすることを目的とした.〔対象〕健康な男子学生101名を対象とした.〔方法〕足把持力は,足指筋力測定器を用い,片足で椅座位姿勢にて3回行った.50 m走は,裸足と靴の2条件で行い,それぞれ2回行った.〔結果〕靴よりも裸足の疾走速度は大きかった.また,両条件において,足把持力と正の相関関係が認められ,相関係数には条件間で差は認められなかった.〔結語〕足把持力は,疾走能力に重要であり,基礎的な身体づくりに役立つ能力であると示唆された.
著者
兵頭 甲子太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.565-568, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕本研究の目的は,片脚ブリッジ動作と負荷を課した側臥位での股関節外転運動の筋活動を比較し,片脚ブリッジ動作の有効性について検討することである。〔対象〕対象は整形外科的疾患の既住のない健常成人12名とした。〔方法〕負荷量(体重の0%,2%,4%,6%)と外転角度(外転0 °,10°,20°)を変えた側臥位での股関節の外転運動と片脚ブリッジ動作を行い,その時の中殿筋,大殿筋上部線維,大腿筋膜張筋の筋活動を測定した。〔結果〕片脚ブリッジ動作と負荷を課した側臥位での股関節の外転運動間に大きな有意差はなく,同程度の筋活動がみられた。〔結語〕今回の結果から,股関節外転筋への筋力増強訓練として,片脚ブリッジ動作が側臥位での股関節の外転運動と同程度の有効性があると考えられた。
著者
菊池 麻美 中江 秀幸 對馬 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.647-650, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 1

〔目的〕在宅などの狭い環境下での歩行評価法の条件を検討するための予備的研究として,健常成人における歩き始めから歩幅と歩行速度が一定となるまでの距離を確認することである.〔対象〕健常成人男性10名.〔方法〕10 mの歩行路を最大歩行速度で歩いた時の平均歩幅および速度,さらに,歩き始めから7歩目までの歩幅と歩行速度をビデオ画像により計測し,歩幅と歩行速度が一定となるまでに必要な距離を統計学的に分析した.〔結果〕1~7歩目間で歩幅は3歩目以降に,歩行速度は4歩目以降にそれぞれ一定となることがわかった.〔結語〕健常成人の速歩では,4歩目までの平均歩幅が3.27 mであったことから,歩幅や歩行速度が一定となるまでの助走距離の目安を3.5mとすることが妥当と思われる.
著者
壹岐 伸弥 大住 倫弘 赤口 諒 谷川 浩平 奥埜 博之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.937-941, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
12

〔目的〕日常生活動作は概ね自立しているも在宅復帰に対する不安を強く訴えた症例の要因について明らかにすること.〔対象と方法〕対象は橋延髄梗塞によりWallenberg症候群を呈した患者 1 名.一般的な理学療法評価に合わせて,入院時から退院までの約150日間,1週間ごとに①10 m歩行試験,②自己効力感,③不安と抑うつ,④状態-特性不安の評価を実施した.〔結果〕10 m歩行試験と不安・状態不安,自己効力感と③・④との間に負の相関を認め,10 m歩行試験と自己効力感の間に正の相関を認めた.また,片脚立位時間の延長に伴いできる日常生活動作も拡大した.〔結語〕退院に向けて心身能力の改善が不十分であった症例に対して,前庭機能に着目した介入や心理面への考慮が必要であった可能性が示唆された.
著者
山崎 裕司 井口 由香利 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.209-212, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
8
被引用文献数
10 5

〔目的〕足関節背屈可動域がしゃがみ込み動作時の足圧中心位置および動作の可否に与える影響について検討した。〔対象と方法〕健常成人42名(20.1±2.4歳)に対して足関節背屈可動域の測定としゃがみ込み動作時の重心動揺測定を実施した。〔結果〕しゃがみ込み動作が可能な対象者は42名中27名であった。足関節背屈可動域としゃがみ込み時の前後足圧中心位置偏位量の間には,r=0.718の有意な相関を認め,背屈可動域が小さいほど足圧中心位置は後方に偏位した。しゃがみ込み動作可能群と不可能群の足関節背屈可動域は,それぞれ18.9±4.6度,9.6±3.5度であり,可能群で有意に大きかった。足関節背屈可動域が小さくなるに従って,しゃがみ込み動作可能者は有意に少なくなり,10°未満では全例(9例)が不可能であった。逆に,20°以上の症例(13例)では全例が動作可能であった。〔結語〕足関節背屈可動域の不足は,しゃがみ込み動作時の足圧中心位置を後方へ偏位させ,背屈可動域がある一定以下に制限された場合,動作が不可能となることが示された。
著者
木村 護郎 今野 宏亮 徳元 仁美 松原 由未子 粟井 瞳 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.323-329, 2004 (Released:2005-01-29)
参考文献数
34

大腿四頭筋(Q),内・外側ハムストリング(H)各々の筋力の筋力比と大腿部肉離れの発生との関係を明らかにするために,スポーツ活動を行っている大学生27名を対象に,膝伸展筋力と膝屈曲筋力(下腿内旋位,中間位,外旋位)を測定した。対象者は,過去に大腿部肉離れを起こした経験のある学生(損傷群)10名,経験のない学生(対照群)17名の2群に分類し,対象肢は,損傷群における損傷肢と非損傷肢,ならびに対照群の両脚34肢(対照肢)とした。損傷群のうちの2名(陸上1名,バレーボール1名)はQの肉離れを経験しており,損傷側においてQの筋力は相対的に弱い傾向があることが示唆された。Hの肉離れを経験した者8名において,QならびにHの筋力が対照肢よりも損傷肢で高値であった。特に,外側Hを損傷した者のHの筋力は対照肢よりも損傷肢で強かった。Qの肉離れは,競技の動作特性ならびに相対的なQの筋力の不足が発生要因である可能性があり,外側Hを損傷した者は,その筋の動筋に対する拮抗作用としての収縮・弛緩の微調整の役割が強いか,不備が生じやすいと考えられた。
著者
村山 菜都弥 村田 伸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.195-198, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕健常成人を対象に利き手と,非利き手を使用した際の前頭葉の脳血流量を比較検討した.〔対象と方法〕健常な男女12名(男性9名,女性3名,年齢20.3±0.5歳,対象者のすべてが右利き)を対象に,蚊取り線香をかたどった渦巻きと同じ大きさの円を10秒間書いてもらい,次に渦巻きの壁に当たらないようにできるだけ早く線を書いてもらった.この渦巻き課題を利き手,非利き手で行った際の各所要時間と施行中の酸素化ヘモグロビン(HbO2)の変化をNIRSを用いて測定した.〔結果〕利き手と非利き手を用いた作業時のHbO2に有意な差が認められ,非利き手使用時に有意にHbO2が高まった.〔結語〕利き手よりも非利き手を使用したほうが,前頭葉の脳血流量が増加することが示唆された.
著者
浅井 直樹 鈴木 智高 菅原 憲一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.793-800, 2019 (Released:2019-12-21)
参考文献数
19

〔目的〕難度の異なる同種の運動課題を反復練習した前後におけるH反射の変化と運動学習の程度を検討した.〔対象と方法〕健常成人21例を運動課題に用いる不安定板の底部の形状によって高難度群と低難度群に分け,それぞれ不安定板上での平衡運動課題の練習を行った.練習前後に運動課題遂行時の目標との誤差とヒラメ筋H反射,表面筋電図を計測した.〔結果〕H反射と前脛骨筋の活動が高難度群で練習後に有意に低下した.運動課題の誤差は低難度群で練習後に有意に減少した.〔結語〕運動課題の難度が高い場合では運動学習に伴って脊髄運動神経の興奮性や筋活動が変動し,難度が低い場合これらは変動しないが運動学習の効果はより高い可能性が示唆された.
著者
竹井 仁
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-54, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
15

顎関節症の治療は,その原因を明確にした上で実施することが大切である。理学療法の実施にあたっては,顎関節の解剖学や運動学を理解した上で評価が完全になされていることが重要となる。本論文では,欧米諸国の顎関節症の治療理論と実際をふまえながら,顎関節症の理学療法と生活指導について述べる。理学療法としては,物理療法の他に,マイオフェイシャルリリース,軟部組織モビライゼーション,アクティブ・ストレッチ,リラクセーション,下顎下制リリース,関節モビライゼーション,関節包内運動再教育訓練,筋力増強及び協調性訓練などについて概説する。
著者
八谷 瑞紀 村田 伸 大田尾 浩 有馬 幸史 溝上 昭宏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.593-597, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
16
被引用文献数
6 2

〔目的〕脳卒中片麻痺患者の起き上がり動作を定量的に評価し,上下肢ならびに体幹の機能との関連を検討した。〔対象〕片麻痺患者20名(平均年齢65.4±11.3歳)を対象とした。〔方法〕非麻痺側機能としての握力と大腿四頭筋筋力,麻痺側機能であるBrunnstrom stage,体幹機能をTrunk control testによって測定し,起き上がり所要時間との関連を検討した。〔結果〕単相関分析および重回帰分析によって,起き上がり所要時間に影響を及ぼす要因として抽出されたのは非麻痺側下肢筋力と体幹機能であった。〔結語〕起き上がり動作には麻痺側上下肢の機能より,非麻痺側機能や体幹機能の影響が大きいことが示され,片麻痺患者の起き上がり動作をスムーズにするためには,非麻痺側機能や体幹機能の向上を目的とした理学療法アプローチの重要性が示唆された。
著者
関川 清一 磯田 亜美 岩本 えりか 高橋 真 稲水 惇
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.381-385, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕嚥下前後の呼吸コントロールが飲み込みやすさに与える影響を明らかにする。〔対象〕健常成人22名とした。〔方法〕自由嚥下および嚥下前後の4つの呼吸位相パターンでの嚥下中の舌骨上筋群活動量と時間,喉頭運動時間,および主観的飲み込みやすさを測定した。〔結果〕指示嚥下では,自由嚥下と比較して,喉頭運動時間には有意差が認められなかったが,舌骨上筋群筋活動量は有意に低値を示した。主観的飲み込みやすさは,指示嚥下と自由嚥下間に有意差が認められ,指示嚥下内での比較では嚥下前が呼気であると高値を示した。〔結語〕指示嚥下は,自由嚥下と比較すると,主観的には飲み込みにくくなるが,効率よく嚥下ができる可能性があり,その中で,嚥下前後に呼気コントロールを行うことが,主観的にも飲み込みやすいパターンになることが示唆された。