著者
種田 和正 片岡 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1309-1319, 1999-07-25
参考文献数
13
被引用文献数
10

動くエージェントに基づくルーチングアルゴリズム AntNetは, ルーチングが固定化 (ルーチングロック) する欠点をもつ. ネットワークに発生するさまざまなイベントに対して, ルーチングが素早く応答するためには, ロックしたルーチングの割合を少なくしたり, ロックを素早く解除するメカニズムが必要である. 本論文では, 2種類のロック解除アルゴリズムを提案する. シミュレーションにより, ロック解除アルゴリズムを組み込んだ AntNet (ロックフリー AntNet) は, オリジナルAntNetに比べて, 入力トラビックの変動やネットワーク内で故障が発生した直後のネットワーク内パケット数の増大を抑えることを示す.
著者
磯貝 光雄 熊井 満之 小林 陽一 黒岩 克年 荒川 佳樹 鈴木 龍太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.297-307, 2000-03-25
参考文献数
7
被引用文献数
3

災害時の安否照会のために, モバイルエージェント技術による情報検索システムを構築しその評価を行った.耐災害性と通信負荷の削減を目的としてモバイルエージェントを使用した.災害時には通信回線の障害・遮断・回復などが大規模かつ頻繁に発生する可能性があるが, エージェントソフトウェアはそれらの障害に対し自律的にうかいや待機を行い検索結果を持ち帰る.検索は被災地の外から被災地内に対し行う.検索の方法はモバイルエージェント方式, クライアントサーバ(C / S)方式及びその組合せを使用して実験を行った.実験結果はトラヒック量とレスポンスタイムで評価した.モバイルエージェントによる情報検索は, 耐障害性を有するとともに, 検索件数が多いほど, また巡回する情報サーバが多いほど, C / S方式に比べて端末回線のトラヒック負荷を削減するために有効であることが確かめられた.
著者
板生 知子 松尾 真人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.730-739, 1999-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
27

ユーザの要求とコンテクスト(ユーザのおかれている状況)に応じて, マルチメディアネットワーク上のサービスを利用するための環境(サービス環境)を動的に構成する適応型ネットワーキングサービス環境DANSE(Dynamically Adaptive Networking Service Environment)を提案する. DANSEは, ハードウェアからソフトウェアまでのあらゆるサービス構成要素を統一的にネットワークリソース(NR)として扱い, サービス実行時にユーザ要求やコンテクストに応じて必要となるNRを探索し, これらを組み合わせてサービス環境に割り当てる. ユーザが要求するサービスに必要なNRがそろわない場合は, コンテクストに応じた代替案を提案する. これにより, ユーザは意識せずとも常にNRをコンテクストに応じて組み合わせたサービス環境を利用できるようになる. また, 従来ならサービス内容の実現をあきらめていた状況にあっても, 代替案を示すことでネットワークは可能な限りユーザの要求にこたえることが可能となる. 更に, DANSEの機構を利用すれば, 既存のNRを利用し, サービス実施手順を規定するだけでサービスを作成し, 提供できるようになる.
著者
浦川 隼人 小林 和朝 高田 寛之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.5, pp.708-715, 2011-05-01

トークンバケットポリサー(TBP:Token Bucket Policer)を用いてQoS保証を行う背景にはNGN (Next Generation Network)の存在がある.NGNでは,SIP (Session Initation Protocol)を使ってRACF (Resource and Admission Control Function)によるリソース受付制御を実現している.この際にセッションごとに設定要求(帯域やバッファ)があり,これをもとに伝送路の経路やセッションの受入れを可否する.音声通信と異なり動画配信においてはセッションの設定値を定める方法論が確立されていない.そこで本論文では,動画配信のQoS保証を実現するTBPパラメータ推定のアルゴリズムを提案した.動画自体がもつ映像・音声データに転送付加情報を考慮することで転送トラヒックをシミュレーションし,そのトラヒックからTBPパラメータを推定した.推定結果と実測実験結果を比較すると,十分実用可能な推定ができていることが判明した.
著者
和泉 光紀 中川 健治 横谷 哲也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.5, pp.698-707, 2011-05-01

ネットワークシミュレータNS-2を用いてDRR (Deficit Round Robin) のパケット廃棄確率を推定する.IS (Importance Sampling) シミュレーション法を適用し,シミュレーションを高速化し,かつ推定精度を向上させる.その際,推定値の分散を最小にする分布,いわゆる最適シミュレーション分布を決定して使用する.MC (Monte Carlo) 法とIS法によるシミュレーション結果を比較し,考察する.
著者
深沢 徹 西岡 泰弘 大嶺 裕幸 浦崎 修治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.941-952, 2002-06-01
被引用文献数
11

本論文では,携帯端末におけるフリップの内部に平行2線とダイポールアンテナを配置したモデルに対し,フリップを開いた状態では逆相励振,閉じた状態では同相励振を行う方法を提案する.フリップ開時には電力が平行2線を伝達するため,その長さの分だけアンテナの放射部を人体から遠ざけることが可能になり,人体による性能劣化の小さなアンテナが実現できる.また,フリップ閉時には平行2線とダイポールから構成される逆Lアンテナが形成され,該アンテナにより誘起される筐体上の電流からの放射を利用することで帯域を広げることが可能となる.本論文ではまず初めに,上記アンテナのフリップ開時,閉時における放射インピーダンス整合の設計法について述べる.次に,フリップ閉時における帯域幅について検討を行い,逆相励振の場合に比べ,同相励振することで帯域幅が3倍以上広がることを示す.次に,放射特性についてミュレーションを行い,従来のモノポールアンテナより高い利得が得られることを示す.更に測定値と計算値を比較し,計算の妥当性を確認する.
著者
清 雄一 本位田 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.678-688, 2009-03-25

大規模なセンサネットワークでは,個々のセンサがセキュリティ侵害を受けやすい.セキュリティ侵害を受けたセンサは,嘘のイべント(不正イべント)を発生させるのに利用される.この攻撃は,イべントの受け取り手を混乱させるだけではなく,個々のセンサの有限のエネルギーを消費させる.多くの既存研究が提案されており,それらはネットワーク内で不正イベントを検知することが可能である.だが従来の既存研究では,小さなしきい値(例えば5)以内のセンサノードがセキュリティ侵害を受けた場合にのみ適用可能であるという制限があった.近年,この制限を克服した手法がいくつか提案されているが,それらは,データを収集するシンクが固定されている状況でのみ適用可能であるという別の課題をもつ.本論文では,シンクが移動するセンサネットワークにも適応可能な手法を提案する.同時に,多くのノードがセキュリティ侵害を受けても,高いセキュリティを保つことを目標とする.本手法が,従来の手法と比較して不正イべントをより早く検知できることを数学的な解析を行うことにより示す.
著者
木村 伸宏 山田 祥 瀬社家 光 西園 敏弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.224-233, 2005-01-01
被引用文献数
2

通信ソフトウェアに適用する高可用化サーバプラットホームを提案している.サーバのハードウェア故障時は系を切り換えて復旧するが,ソフトウェア故障時には,関連プロセスのみを初期設定して復旧することで,サービスの中断時間を大きく短縮できる.プラットホームの有効性は,3種類の実システムに適用することで実証した.具体的には,全プロセスを初期設定する場合,適用前と比べ,サービス中断時間が半減した.また,サーバのドメイン化とプロセスの冗長化により,中断時間が更に4割短縮できた(合計7割強の短縮).単独プロセスが故障した場合は,そのプロセスのみの再開で復旧し,他のプロセスはサービスを継続できることも確認した.以上の復旧処理は,アプリケーションプログラムを変更することなく,簡単な形式の再開定義を記述することで実行できる.故障プロセスを検出すると,再開定義を分析し,必要な再開フェーズを選択して実施する.通信ソフトウェアを構成するプロセスの性質を分類し,個別再開,グループ再開,全AP再開,全再開の4種の再開フェーズを規定した.故障復旧が失敗した場合,上位フェーズの再開に移行する状態遷移も実装した.
著者
森下 久 林田 章吾 伊藤 淳 藤本 京平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.687-697, 2002-05-01
被引用文献数
15

携帯端末がますます小形・機能化が行われているなか,それに使用されるアンテナは携帯端末機外側には現れない,アンテナの内蔵化の要求がますます高まってきている.また,小形になった携帯端末を実際に使用する際,使用者の多くは人差し指を立てた状態で携帯端末を保持するようである.ここでは,人体(頭,手及び指)を考慮した携帯端末用内蔵アンテナの特性について電磁界シミュレータを用いて解析し,アンテナが人体から受ける影響を明らかにする.解析モデルは,人体頭部と携帯端末機を持つ手及び指からなる人体モデル,及び金属筐(きょう)体に取り付けられたアンテナから構成される.内蔵アンテナには,既に実用されている平板逆Fアンテナと平衡給電型アンテナとして提案されている折返しループアンテナの2種類を用いている.本解析モデルを用いて計算した結果は実験値とおおむね一致し,人体モデルの影響を含めて携帯端末用アンテナの特性を比較的精度良く解析できることを示した.この解析モデルを用いて,W-CDMAの周波数帯において携帯端末に取り付けられた平板逆Fアンテナの特性を実用の携帯端末機に多く用いられている5/8波長モノポールアンテナの特性と比較して計算した.その結果,平板逆Fアンテナの放射効率は,人体モデルの影響を受け,指まで含めると約20%近くまで劣化することがわかった.折返しループアンテナにおいては,平板逆Fアンテナに比べ,金属筐体に電流が流れていないため,放射効率が約10%程度良くなっていることがわかった.
著者
小田 亮太郎 日高 大輔 大田 知行 角田 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.211-229, 2010-02-01

近年,携帯電話やPDA,ノートパソコンなどの無線通信機器を搭載したモバイル端末が広く普及しており,アドホックネットワークが注目されている.アドホックネットワークではノードの移動により,ノードの分布密度やネットワークトポロジーが頻繁に変化する.ノードの分布密度が一様でない場合,すべてのノードが一定の送信電力で通信を行うことは非効率的であり,消費電力の増加や電波干渉を引き起こすと考えられる.本論文では,隣接ノード数に基づく適応型電力制御法を提案する.提案方式は,自律分散クラスタリングを用いることで隣接ノードとの距離を測定する.そして電波の送信範囲内のノードが一定個数以下となるように自身の送信電力を制御する手法である.また,シミュレーション実験により提案方式の評価を行う.
著者
会田 雅樹 高野 知佐 小頭 秀行 中村 元
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.1430-1444, 2010-10-01
被引用文献数
1

通信ネットワークに関する各種データ(トラヒック量,ユーザ数等)には,何らかの形で人間社会の活動の特性が反映されていると考えることができる.我々はこれまで,情報通信サービスのデータに現れるべき乗則を利用して,人間の情報交換関係に関する社会ネットワークの構造を調べてきた.結果として得られた社会ネットワークの構造は,分析のもとになった特定の情報通信サービスのデータに関する表面的なサービス種別に左右されるものではなく,背後にある普遍的な社会ネットワーク構造を記述していることが望ましい.これを確認するためには,特定のデータ分析から得られる社会ネットワーク構造の分析結果を,他の通信サービスのデータによって検証することが有効であると考えられる.本論文では,複数の情報通信サービスのデータを相補的に用いて,データの自己無撞着性から許される社会ネットワークの構造やユーザ行動特性の分析を行う.また,得られた次数分布特性が現実のデータとよく一致することを確認する.
著者
引地 謙治 森野 祐直 福田 一郎 松本 壮樹 瀬崎 薫 安田 靖彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.268-278, 2003-02-01
被引用文献数
18

現在,実時間メディアのネットワーク伝送において,ネットワークの状況に適応したサービス品質の提供が問題となっている.音声・動画像メディアにおいては,インターネットにおけるネットワークQoS(Quality of Service)の劣化に対する制御,また劣化がユーザに与える影響などの研究が多く行われている.一方,ネットワークを通じた仮想空間共有システムにおいて触覚をユーザに提示することが可能となっている.しかしながら,このような触覚を含む仮想空間共有システムにおいて,ネットワーク品質の劣化がユーザに与える影響についての検討はほとんど行われていなかった.そのため,本論文ではネットワークの状況に適応的制御が可能な触覚を含む仮想空間共有システムを提案する.本システムにおいては,ネットワークにおける遅延,パケット損失に対する対策を行い,量子化・符号化により伝送情報量を低減させる.また,触覚を含むシステムの評価手法を定め,それに基づいてネットワークにおける遅延,パケット損失,また量子化による情報損失に対する特性を測定することにより,システムに必要とされるQoSパラメータの導出を試みる.
著者
松崎 貴史 系 正義 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.536-551, 2003-03-01

不要信号環境下における目標追尾において,目標信号消滅後に,不要信号や他の目標信号に誤追尾してできる誤航跡を解除するための目標消滅判定が必要である。目標消滅の例として,突然の航空機の衝突,船舶の沈没,車が崖から転落した場合などが考えられる。本論文では,追尾目標以外からの不要信号(雲,波,地面からの反射信号)が存在環境下で,PDAで追尾維持を行っている場合のアルゴリズムであるPDA (Probabilistic Data Association)の信頼度を使用して,目標が存在する確率と目標が存在しない確率の比を求め,その確率の比を使用した目標消滅判定法の提案する。計算機シミュレーションによる検討を行った結果,目標が実際に存在するシナリオと目標が実際に消滅するシナリオの両シナリオに対し,提案法は,安定した目標消滅判定を行うことが確認された。
著者
岩崎 哲弥 綾木 良太 島田 秀輝 佐藤 健哉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J93-B, no.10, pp.1388-1396, 2010-10-01

インターネットのBGP経路制御環境を前提とした,ルータの性能調査や運用監視技術の評価,実験を行う際には,可能な限りインターネットで運用されるルータと同等の環境が必要とされる.このような状況をテスト環境において実現するために,複数のBGPエミュレータが提案されている.しかし,これらのBGPエミュレータでは,インターネットと同等な経路情報,経路広告頻度の双方を満たした経路広告ができない.そこで,本研究ではインターネットで交換されるBGPの経路情報のアーカイブデータを利用し,過去の広告時刻を考慮した経路の再現,広告が可能なBGPエミュレータの開発を行った.また,経路情報をRDBMSにて管理することで,過去の特定期間における経路情報や,特定のパス属性値に基づく経路情報を柔軟に抽出し,広告することを実現した.実装したBGPエミュレータの評価を行い,経路の再現広告を行うBGPエミュレータとしての有用性を示す.
著者
石田 則明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1719-1727, 2002-10-01
被引用文献数
5

本論文は,チャネル間隔の狭小化を目的として,方形スペクトルを基本とした新しい波形伝送系を提案する.送信波形として,方形スペクトルを最も良く近似するk乗n段バタワース(以下,BWと略記)とし,受信フィルタとしては通常のm段BW形を用いその3dB帯域幅を選定することにより,受信波形の最適化を図った.C/N及びチャネル間干渉の点からk=2が最も望ましいことを明らかにした.この2乗BWスペクトルについて,アイ開口率,チャネル間干渉等を計算し,2乗BWを用いれば現行のPDCのチャネル間隔を約半分に縮小できる可能性を示した.
著者
木下 真吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1819-1842, 2002-11-01
被引用文献数
31

配信時の信頼性が求められるファイル等のデータを多数のユーザに効率良く一斉配信するための技術として,リライアブルマルチキャスト(RM)が注目されている.インターネットにおいては,IPマルチキヤストを利用し,その上位レイヤにおいて信頼性保証を行うリライアブルマルチキャストトランスポートプロトコルの研究が活発に行われている.このうち主要なものは既に製品化され,衛星イントラネットを中心に実サービスでの利用も開始されている.一方,インターネットにおけるRMの本格的な普及を目的とし,IETFにおける標準化も1999年から進められている.本論文では,次世代データ配信技術を担うRMの研究,製品化,標準化,それぞれの最新状況と今後の動向について報告する.
著者
中河 隆仁 森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.230-241, 2010-02-01

Unstructured型P2Pネットワークにおいて,ユーザの嗜好性を考慮し,嗜好の近いピアをオーバレイネットワーク上で近くに配置するセマンティックP2Pネットワークの研究が盛んに行われている.しかし,従来のセマンティックP2Pネットワークでは,同じ内容のクエリを何度も同じピアに転送するクリッピング現象が生じるため,ヒット率の点において課題が残されている.そこで,本論文では,クリッピングの影響を抑える新たなセマンティックP2Pネットワークの構築法を提案する.本方式では,各ピアが保持しているコンテンツのジャンルの比率とピアが保持しているコンテンツ数を用いて,他ピアとの嗜好の近さを計算し,検索の際に嗜好の近いピアだけでなく嗜好の異なるピアにもクエリを転送することにより,クリッピングの影響を抑える.これにより,検索範囲を広くできヒット率を高めることができる.また,本論文では,シミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.更に,より実際のネットワークに近い条件下での評価を行うためにmixiの解析を行い,これにより得られたデータをシミュレーションモデルに組み込んで提案方式の評価を行う.
著者
上野 洋 深川 周和 飯田 登 水野 忠則 渡辺 尚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.707-716, 2001-04-01
被引用文献数
2

モバイルコンピューティング環境のもとで, 即時系データと待時系データを統合的に送受信するマルチメディア通信方式として, 無線を使用した分散制御型の多重アクセス方式(DMMA)を提案する.DMMA方式は, (1)制御局を必要とせず, 端末が集まればその場でアドホック無線ネットワークを構築できる.(2)即時系データの連続性を保証しつつ低負荷時には待時系データの送信に複数のスロットを割り当て, チャネルの有効利用と不必要な遅延を回避する.(3)コンテンション領域(期間)が可変となるため, 即時系データを扱うには不向きなTreeアルゴリズムを, 領域が間欠的に現れる構造に改良している.(4)新規加入端末はある有限時間ネットワークを監視すれば網の状態を把握できるため, 動的に網に出入り可能である.以上の四つの特徴をもつ.また, DMMAの性能をシミュレーションにより評価を行い, その結果マルチメディアデータの種類によらず, 等しいスループットを提供できることを示した.
著者
小森田 賢史 伊藤 学 千葉 恒彦 横田 英俊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J93-B, no.7, pp.878-892, 2010-07-01

近年,ALL IPネットワーク上で高品質なサービスを実現するNGNが登場し,その中核技術であるIMSが注目されている.IMSは,従来閉じていた携帯通信事業者のサービスとインターネットなどのサードパーティとの連携を可能とし,連携したオープンなサービスの登場が期待されている.一方で,端末においても従来の通信事業者に特化した端末に対して,AndroidやLiMoのように端末共通のプラットホームに基づいたオープン化が進められている.特にAndroidは既に実用化されており,また構成要素の多くがオープンソースであるため自由度の高いプラットホームとして注目されている.しかしながら,それらを実際に用いたシステムとしての検証は十分ではない.そこで本論文ではAndroid端末にIMSクライアントを実装するための方針とアーキテクチャを提案し,実機上にその機能を実装する.また,IMSに接続して動作検証を行い,その動作と現在の課題を明らかにする.
著者
林 孝典 山崎 真一郎 森田 直人 相田 仁 武市 正人 土居 範久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.523-533, 2001-03-01
被引用文献数
20

本論文では, インターネットの複数経路にパケットを分配してデータ伝送する方式について検討し, 各経路へのパケット分配方法とパケット順序の並べ替えの効果をシミュレーションにより評価した.シミュレーションでは, 同じ回線速度の2経路を用いてファイル転送する場合を対象とした.また, ネットワーク品質として, 固定伝送遅延時間, 遅延ゆらぎ, パケット損失を考慮した.その結果, データ送信側ではパケットを送信バッファ待ち時間が短い経路へ分配し, データ受信側ではパケット順序の並べ替えを行うと同時に, 2経路からパケットを受信してもデータの連続性が更新されなかった場合は, パケット損失が発生したと判断して順序待ちを解除する方式が, 最も安定したスループットが得られることがわかった.また, 2経路の遅延時間差が4パケット時間以内の場合は, パケットを2経路に交互に分配する方法を用いれば, パケット順序の並べ替えを行わなくても, 前者の方式と同等の性能が得られることがわかった.