著者
手島 孝人 丹 明彦 渡辺 奏 吉田 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.1566-1578, 2009-10-01
被引用文献数
5

インターネット上の通信を使ったアプリケーションが一般化し,遅延やパケットロスなどの通信品質への要求水準が高まる一方,そのようなアプリケーション自身を使った通信品質計測が可能になってきた.本論文ではその一例として,全世界で稼動しているオンラインゲームを使った通信品質計測実験について述べる.実験では実際に稼動しているオンラインゲームの通信状況を分析し,世界163ヵ国(地域)・IPアドレスで数えて120万ホスト間の通信遅延やその揺らぎなどの実データを1,600万点以上得た.本論文でははじめにその計測方法の特色について説明し,次に同一国内通信や国際通信における遅延の状況,国ごとの特色,帯域別・時間帯別に見た遅延の変化について計測結果を報告する.
著者
倉本 晶夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.797-809, 2007-09-01
被引用文献数
25

最近,UWB技術を用いたワイヤレスPANやワイヤレスUSBを実現するための小形・広帯域のアンテナが多数提案されている. UWB技術を用いたワイヤレスPANでは,3.1〜10.6GHzの周波数を利用して,高画質の動画をリアルタイムに転送することができる.また,ワイヤレスUSBでは,USBによるデータ転送をワイヤレス化するものであり,ディジタルカメラなどの大きな動画ファイルもUWB技術により数秒で転送が可能になる.いずれの用途においても,小形で広帯域のアンテナが必要になる.特にワイヤレスUSB端末では,アンテナ放射素子部の最大寸法を20mm程度以下とする要望がある.本論文は,ワイヤレスPANやワイヤレスUSBを実現するために,今まで報告されてきた小形・広帯域化技術を取り上げて紹介する.更に,その中の有力なものについて,その特性と課題について示す.
著者
付 鑑宇 唐沢 好男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1884-1894, 2002-11-01
被引用文献数
8

本論文ではOFDM変調方式を用いて多くのユーザが混信なく回線接続ができる無線アクセス方式:OFDMAのイメージを示し,その伝送特性を検討している.ここでは,周波数帯域(ユーザの全帯域幅)を全ユーザで共有し,一つのユーザが使用するサブキャリヤ数を固定する条件で,ユーザが優先順位に従って,伝送状況の良いサブキャリヤを選んでいく方式を提案する.その際,サブギャリヤごとに所要のBERを満たすように変調方式を伝搬特性に応じて可変する適応変調方式を取り入れる.この方式が理想的に動作した場合の伝送特性(スループット特性)が定量的に評価できる理論モデルを示す.また,そのモデルによる評価が妥当であることを計算機シミュレーションによって示す.
著者
多田 知正 今瀬 真 村田 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.4, pp.534-546, 2012-04-01

本研究では地理的に離れたデータセンタ間の負荷分散により消費電力を削減することを考え,特にネットワークの消費電力を考慮することの有効性について調べる.近年,サーバやネットワーク機器における電力比例性(energy proportionality)という性質が注目されている.消費電力の観点から負荷分散手法を適切に評価するには,電力比例性について考慮することが必要である.電力比例性が低ければ,消費電力は負荷の増減によってほとんど変化しないため,負荷分散による消費電力削減の効果は小さくなる.現在はサーバやネットワーク機器の電力比例性は低いが,今後の技術開発により向上することが予想され,それにより消費電力を考慮した負荷分散の有効性も向上すると考えられる.本研究ではこれまでの省電力技術の動向を踏まえてそれぞれの機器の電力比例性を設定して計算を行うことにより,現在及び将来においてネットワークの消費電力を考慮してデータセンタ間の負荷分散を行うことの有効性について評価を行った.
著者
西村 豪生 森谷 高明 大西 浩行 飯尾 政美
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.4, pp.510-522, 2012-04-01

対外インタフェースがオープン化されているNGNにおいては,インターネットとテレコム網のサービスを連携させたWeb-テレコム連携サービスが利用可能である.従来のWeb-テレコム連携サービスは,Web端末によるアクション契機で,Web端末とは独立したテレコム端末に対してテレコムサービスが提供される形態が一般的であった.既存のインターネットユーザに対する親和性を考慮した場合,テレコムサービスもWeb-テレコム連携サービスの開始契機を与えたWeb端末にシームレスに提供可能とすることが望ましい.本論文ではテレコム端末機能と連携するリッチインターネットアプリケーションをWeb端末上で実行することにより,単一Web端末によりWeb-テレコム連携サービスを利用可能とするアーキテクチャを提案する.提案アーキテクチャは,テレコム端末機能を共通コンポーネント化し,テレコム網の詳細が隠ぺいされた抽象APIによって利用可能とする.共通コンポーネントをサービス利用時に端末に動的配備する方式と,外部装置に静的配備する方式について,プロトタイプ実装による性能評価を通じてその実現性を確認した.
著者
松本 正 衣斐 信介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.1, pp.1-16, 2007-01-01

本論文の目的は,「ターボ概念」に関する理解を読者に提供することである.そのために,ターボ概念に基づくアルゴリズムの動作を理解する上で不可欠な相互情報量の伝達特性を評価するために便利なツールである,EXtrinsic Information Transfer (EXIT) チャートの概念を解説する.そのための題材としてターボ等化を取り上げ,現実性と柔軟性に富むSoftCanceller followed by Minimum Mean Squared Error filter (SC-MMSE)型ターボ等化アルゴリズムについて概説する.また,その特性を漸近特性と収束特性の両面から解析する.更に,合理的な拡張としてターボ等化の空間多重を行うMIMOシステムに適用する場合には,収束特性は多次元EXITチャートを用いて評価されなければならないことを示す.最後に,今後の課題や研究動向についても述べる.
著者
高山 佳久 豊嶋 守生 竹中 秀樹 門脇 直人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.11, pp.1443-1451, 2011-11-01

衛星通信において,将来の大容量伝送のための技術候補である光通信について述べる.これまでに衛星を用いて行われた実験の成功例を整理し,世界初を冠する三つの実験成果が日本の技術によって得られていることを示す.この中で特に,2005年に打ち上げられた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の光衛星間通信実験衛星(OICETS)と情報通信研究機構(NICT)の協力で実施した低軌道衛星と地上局間の双方向光通信実験に着目し,その成果を述べる.大気の影響を被る光通信の実施結果とともに,地上局に備えた大気の影響を低減する手法の効果を示す.また,世界的にも検討が加速されている宇宙光通信技術について,現在進行中の計画と宇宙機関の会合で最近始まった標準化の議論について紹介する.
著者
ミケカ チョモラ 新井 宏之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.2, pp.130-137, 2012-02-01

本論文では携帯電話基地局近傍の環境発電で動作する温度センサを提案している.基地局近傍での電界強度測定から環境発電に利用できる電界強度を推定し,その値をもとに温度センサシステムを設計する.そして,効率の良い受電回路として,ノッチを有する円形マイクロストリップアンテナと接地抵抗を最適化した整流回路によるレクテナを作成し,直流への変換効率として53.8%を得た.試作した温度センサは基地局近傍で取得したデータを間欠的に無線伝送できることを明らかにしている.
著者
武井 洋介 太田 耕平 加藤 寧 根元 義章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1464-1473, 2001-08-01
被引用文献数
10

近年, インターネットにおける不正アクセスが問題となっている. なかでもネットワークそのものを狙った不正アクセスは, ネットワーク全体に大きな影響を及ぼすもので, 対策の確立が急がれている. この種の不正アクセスを検出するには, ネットワークトラヒック観測が有効であると考えられる. しかし, DoS(Denial of service)に代表されるような不正アクセスでは攻撃元がパケットの送信アドレスを改ざんする可能性があることや, ネットワークの高速化によってパケット情報取得・解析が困難になることが問題となる. よって, 今後の高速ネットワーク環境下で, 信頼性がありかつ低負荷な観測手法と攻撃元の追跡が可能な手法の確立が急務である. 本論文では, トラヒックの変化量を抽出・比較することにより, 不正アクセスを検出するためのアルゴリズムを提案し, このアルゴリズムを適用することにより不正アクセスが検出・追跡できることを示す.
著者
市坪 信一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J93-B, no.9, pp.1140-1149, 2010-09-01

移動通信で使われる電波の周波数は様々で,同じサービスでも世代ごとに周波数は変わる.電波伝搬の周波数特性が広い帯域にわたって解明されれば,周波数ごとの研究は必要なくなり,自システムの回線設計だけでなく他システムとの干渉設計にも有益である.本論文ではこれまでに報告されてきた移動伝搬の周波数特性をまとめて全体像を明らかにする.対象とした伝搬特性は,屋外のマイクロセル環境や屋内環境における伝搬損と建物侵入損,伝搬遅延,到来波の角度広がりである.その結果,ほとんどの環境で周波数による伝搬特性の差が小さいことを示す.むしろ周波数に依存する伝搬特性やその環境を指摘する方が困難である.また,周波数の影響が小さくなる原因についての検討結果も示す.
著者
米津 遥 石井 大介 岡本 聡 大木 英司 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1323-1331, 2011-10-01

近年,インターネットの普及に伴いトラヒック量及びネットワークの消費電力が増加していることにより,ネットワークの省電力化が重要な課題となっている.そこで,ネットワーク内のトラヒックを特定リンク上に集約し,未使用リンクの電源を落とすことによって省電力化を実現するMiDORiが提案されている.MiDORiネットワークでは,一定時間ごとにトラヒック量に応じて物理トポロジーの最適化を行うために,実用的な省電力トポロジーの計算手法が必要となる.そこで本論文では,元のトポロジーから一定数のリンクを削減するごとに,ネットワーク性能を維持可能なトポロジーを局所最適解として選択することで,省電力トポロジーを導出可能な計算手法を提案する.また,トラヒック集約により,1リンク当りのトラヒック負荷が高い省電力ネットワークにおける障害回復方式として,protection方式及びrestration方式を提案する.計算機シミュレーションにより,提案する省電力トポロジー計算手法の省電力効果・計算時間における有効性を示し,二つの障害回復方式を比較検討する.最後に,自律的なトポロジー最適化を可能とするMiDORiネットワークのプロトタイプシステムを紹介する.
著者
持永 大 小林 克志 工藤 知宏 村瀬 一郎 後藤 滋樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1293-1302, 2011-10-01

本研究は2030年までのネットワークが消費する電力を検討することを目標とする.消費電力の低減を検討するためにネットワークの構成を見直して,現在のパケット交換方式だけでなく,消費電力削減効果が期待できる光回線交換方式やコンテンツ配信ネットワークも活用した将来のネットワークの構成を想定する.この構成の特徴はアクセス回線網,広域中継網,中核拠点網に階層化することである.本論文では,インターネット上で転送されるコンテンツの大きさによって通信方式を変化させる手法を活用して,提案する方式の消費電力を従来のパケット交換方式と比較する.この消費電力の算出にあたっては,通信方式による効果だけでなく通信量・利用者数の将来の伸び,技術進化による省電力化効果も算入している.従来のパケット交換方式に加えて光回線交換方式,コンテンツ配信ネットワーク(CDN)方式を組み合わせたネットワーク構成の消費電力を検討した結果,いずれの方式においても消費電力を削減可能であり,パケット交換方式と回線交換方式を併用すれば,従来のパケット交換方式と比較して,67.7%の省電力化が達成できることが分かった.
著者
岩井 浩 小川 晃一 畠中 順子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.784-793, 2006-05-01
被引用文献数
4

携帯電話端末を人体の正面で保持する姿勢(PDA:Personal Digital Assistance姿勢)を高精度に模擬したi携帯電話端末アンテナ電磁評価用のリアル形状上半身擬似人体を作製した.寸法は日本人34,000人の統計データの平均値に基づいており,44人の20〜30歳代男性に対してPDA姿勢で38個所に及ぶ計測部位の計測値の平均を用いて決定した.擬似人体の肩と肘にそれぞれ上下・前後に移動可能となる機構を設け,手首が仰角方向に回転可能となる機構を設けることにより,姿勢の個人差により生じる端末と人体との相対位置関係を調整可能とした.直方体状の金属筐体に装着された素子長が1/4波長のホイップアンテナを用いて擬似人体の放射特性を検証した結果,日本人の平均に近い身長及び体重を有する人体と放射指向性及びPAG(Pattern Average Gain)がよく一致していることを確認した.
著者
三本 雅 上原 直久 稲常 茂穂 藤坂 貴彦 桐本 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.2355-2363, 1999-12-25
参考文献数
8
被引用文献数
13

同相信号だけを検波するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダは小型・廉価化が容易であるが,一方,目標の距離と速度の計測時にアンビギュイティが発生する.本論文では,同相信号だけを用いて目標距離と目標速度を一意に計測するFMCWレーダ方式を提案した.送信信号には,従来のFMCWレーダで用いられるアップチャープ信号とダウンチャープ信号に加えて無変調CW信号を用いる.受信信号処理では,無変調CW信号の反射エコーに含まれる目標ドップラー周波数の絶対値を利用して,目標の距離と速度を求める.また,本方式ではこのドップラー周波数の絶対値を利用して,複数目標の距離と速度を同時に計測できることを示した.最後に,等速度で移動する車両を目標として,実レーダを用いた距離・速度計測試験を行った.その結果,検出確率0.91,距離精度0.53m,速度精度1.2km/hで,偽目標発生確率0.0028の性能が得られ,本方式の有効性を明らかにした.
著者
高橋 和秀 昆 孝志 秋山 一宜 神宮司 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1202-1212, 2005-07-01
参考文献数
26
被引用文献数
8

移動体通信ネットワークは, 地理的に散在する, 多種多様で非常に多くのネットワークエレメント(NE: Network Element), 及びこれらのNEからの警報を監視し, コマンドによりNEを制御するオペレーションサポートシステム(OSS: Operations Support System)から構成される.NEやOSSは, 高い処理能力を必要とするため, 通信キャリヤは, そのハードウェアとミドルウェアに非常に多くの投資を強いられるだけでなく, サーバ後継機種への更改やOSバージョンアップなどのようなベンダの戦略に追従せざるを得なかった(ベンダロックイン).本論文では, 小機能に分割されたNE/OSSアプリケーション処理を, 低価格の小規模IA (Intel Architecture)サーバに分散配置し, これらの小機能の間で, アプリケーションデータを, 高速で送受信して, 処理することにより, 高処理能力を得る分散データ駆動型アーキテクチャ(D3A: Distributed Data Driven Architecture)について説明する.本アーキテクチャに基づいて, NEやOSSを開発することにより, ベンダロックインに陥ることがなくなる.また, 本アーキテクチャの性能評価結果を示し, 試作したNEアプリケーションについても述べる.
著者
西嶋 仁浩 坂本 浩 原田 耕介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1701-1708, 2001-09-01
参考文献数
6
被引用文献数
8

バッテリセルを直列接続して使用する場合, 様々な要因からセル電圧にばらつきが生じ, これがバッテリの寿命や性能を低下させてしまう.本論文では, セル電圧を均等化するための簡単で高性能な電圧バランス回路を提案する.本回路は, nセルの直列接続に対しn-1個の双方向形コンバータを取り付け, それぞれのコンバータをPWM制御することによって高精度にセル電圧をバランスすることが可能である.また, 可変抵抗素子とダイオードで構成されたPWMコントローラを各コンバータに接続することにより, 一つのドライバと一つのバッテリマネージメント用マイクロプロセッサのみですべてのコンバータの駆動とPWM制御が可能である.本論文では, 提案する回路の動作説明及び状態平均化法を用いた定常解析を示し, 実際に作製した回路を用いて, 回路使用時, 未使用時のバッテリの充放電特性を測定することで回路の有効性を確認している.
著者
松本 好太 草間 裕介 橋本 修
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.544-550, 2001-03-01
参考文献数
12
被引用文献数
5

本論文では, 電子レンジ本体とドアとの間隙(げき)から漏洩(えい)する電波を抑制する方法として, 現在一般的に用いられているチョーク構造の代わりに, 間隙内にシート状の損失材を挿入した場合のシールド効果の検討を, 3次元のFDTD法を用いて行った.具体的には, 種々の高次モードのうち漏洩電波の形状に最も近いTE_<40>モードを用いて, 間隙及び損失材の挿入長の変化に対するシールド効果の計算を行った.この結果, 損失材の材質によっては, すきまなく充てんされた場合, 30dB以上のシールド効果を示すことや, 1mmのすきまが空いた場合, 30dB以上のシールド効果を得るためには損失材の挿入長が50mm以上必要であること等がわかり, 実用性をふまえたシールド効果を定量的に確認することができた.
著者
坂井 丈泰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2382-2389, 2005-12-01
被引用文献数
4

電離層遅延は衛星航法システムの主要な誤差要因であるが, 逆に位置があらかじめ分かっている受信機を利用すれば電離層の観測が可能となる.最近は国内外のGPS観測ネットワークが整備されていることからGPSは電離層観測の有力な一手段となってきており, レーダ等による観測に対して電離層全電子数の空間的・時間的分布を知ることができる特徴がある.二周波GPS受信機による電離層観測では観測データに含まれる周波数間バイアスを推定・除去する必要があるが, 本論文はこのための手法について述べる.バイアス推定処理で用いる電離層モデルの比較も試みたところ, 2層以上の電離層を仮定するモデルが有効であることが分かった.
著者
稲積 泰宏 吉田 俊之 酒井 善則 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1130-1142, 2002-07-01
被引用文献数
29

リアルタイム動画像通信に関するアプリケーションが普及する一方で,ユーザ数やユーザ当りの需要帯域の増大等によって帯域の確保が困難となっていることを背景として,動画像を利用可能なビットレートに再符号化して伝送するトランスコーダの必要性が高まっている.ユーザから見たサービス品質を可能な限り高く保つためには,動画像の空間・時間方向の情報をバランス良く削減する画質評価基準が必要がある.従来のトランスコーダは主に2乗誤差に基づく制御が行われているが,2乗誤差はユーザが視・知覚する動画像品質(主観評価品質)を直接に表しているとはいえない.そこで本論文では,ビデオサーバに蓄えられた動画像(原画像)を指定されたビットレートで再符号化する際に,主観評価品質を最大化するフレームレート(最適フレームレート)の推定手法を提案する.本手法は,多くの主観評価実験による平均オピニオン評点(MOS:Mean Opinion Score)を少数のパラメータを含む関数で近似し,原画像から得られる特徴量を用いて関数のパラメータを推定する.この関数に対して指定されたビットレートを与え,その最大点を求めることによって最適フレームレートを得る.提案法を用いてopen dataに対する最適フレームレートを区間推定した結果,平均誤差4frames/s程度で推定可能なことを確認している.