著者
平出 隆俊 小澤 浩之 斉藤 茂 柴田 恭典
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成5年度は、平成4年度にまとめた『歯の健康に関するアンケート』から得られた、1.咬合ならびに顎機能異常の出現状況の精度を検討するため毎年実施している矯正専門医による歯科検診の『咬合異常の頻度』との比較検討を行った.その結果、高校3年次男子においては歯科検診:22%、アンケートによる自己申告性:26.5%とほぼ同程度の割合であった.従って、本アンケート調査結果は信頼性の高いものと判断できた.このことから次に2.スポーツ活動時に生じた歯・顎・顔面部外傷による咬合・顎機能異常の出現との関連を調査した.その結果、スポーツ外傷は男子:13.8%、女子:0%であった.男子のスポーツ外傷のうち外傷が原因となりその後、咬合・顎機能に異常を訴えたものは男子:41.7%であった.以上のことから活発な顎・顔面部の成長発育期における学童のスポーツ活動に対しては、安全性に対する歯科医学的に検討されるべき点が示唆される.1、2の調査結果をもとにスポーツ活動時における顎機能を調査するため、平成5年度は中学1年生から高等3年生までの6学年に『咬合圧シート』を配布し回収した.現在本資料を解析中である.このことによりスポーツ活動を積極的に行っているものとそうでないものの差異、ならびに各種スポーツ活動に特有に見られる顎機能を調査中である.
著者
西 望 斉藤 幹 小山 高夫 木戸 豊 生山 博 片山 芳文
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

子宮頸癌患者手術時採取のヒト黄体組織のインビトロにおける培養実験よりメジュ-ム中に放出されるプロゲステロン、ランドロステンヂオン F2および細胞ホモゲネ-ト抽出液中のサイクリツクADMP、同GMPはいづれも10_-7のモル濃度で抑制されることが観察されたが2の濃度より生理的なものではないが薬理学的量を投与すれば性機能を抑制せしめることが出来ることをましている。ヒトにおいてin uivo、で脈波状にLHRHを投与する。下垂体は大量のLHを放出するためのLH/FSH比は増大する。そのアゴニストの投与は下垂体のダウン調節によりゴナドドロピンの放出は着減する。Yの際初段階において一過性にゴナドトロピンは増量するためこの活用で二次的に性腺もダウン調節をうける。この三つの作用でLHRHアゴニスト投与の際は性機能の一時的静止を誘起出来ることがわかった。また同アゴニストの50μgをプロピレングリュ-ルに溶解膣座薬として使用せしめると微量の持続的吸収DによりFSHの上昇と血中E_2の着明の上昇をもたらし卵胞発育と極めて良好な黄体が生じることが判った。以上の基礎的観察より、LHRHアゴニストの点鼻および膣座薬による子宮内膜症子宮筋腫の患者についてその自覺症状他覺的所見よりその効果を判定腫瘍マ-カ-にて経過を追跡した。子宮内膜症で80%以上の症例に自覺他覺的所見共改善がみられる子宮筋腫ではサイズの減少は希待出来なかったが貧血の改善出血量の軽減が殆んど前例にみとめられた。膣錠による視床下部性排卵障碍〓者の排卵誘発を試みたが血中DHEA-SとLHの下降FSHの上昇によりLH/FSH比の着明の改善がみられ5名の妊娠成功をみた。BBTより判定しても黄体機能の着明の改善が推定された。前者の内膜症加療効果は投与中止により再発率が高くまた症例の中で投与前より悪化してくるものや腫瘍マ-カ-でCA19-9等が上昇してくるものがみられている。長期の観察の必要性がある。
著者
小池 栄一 保崎 則雄
出版者
神奈川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究は、近年内外を通じて必要性が強く叫ばれている日本語教育の中でも最も重要な学習者との相互作用に重きをおいた教材開発に焦点を絞った。まず、NHKの行った日本語教員に対するアンケート(1991)などをもとに、筆者らの米国での日本語教育、文化教育の経験(1980-1987)、担当した日本語教育(1982-1986)、教員養成(1988)の経験を加味し、この分野で望まれていて、手薄になっている教育内容を総合的に分析した。その結果、教材開発が望まれている分野を、文化に根差した日本語表現や文化の一面をインターアクティブなものとして、制作することに意義があると筆者らは判断した。具体的には、俳句を英語で紹介するという内容、非言語コミュニケーションのうち、日本文化特有の言い回しで日本語学習者が習得に困難を感じているものの2点に絞って教材を開発した。また、実際の教材の特徴を知るため、市販されている、あるいは研究所、大学などで開発されている日本語教材をいくつか実際に見、あるいは資料を取り寄せて調査してみた。これらの教材を日本語学習者、日本語母語者、研究者らを対象として数回にわたりフィールドテストした結果、以下のことが明らかになった。1)文化学習には映像、音声、文字の複合情報が効果的である。2)静止画の中に動画を適宜挿入することで学習効果を高めることが出来る。3)学習者と教材との相互作用の高い教材を若年学習者は好む傾向がある。今後の日本語教育の指針の一つとして、言語習得は人間教師が中心となって補助教材を効果的に組み合わせていくこと、そして習慣、文化の学習は映像、音声、文字にて効果的に学習し、その後実社会において失敗を恐れず、繰り返しながら強化していくという図式が考えられる。
著者
野川 春夫 萩 裕美子 山口 泰雄
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の目的は、スポーツイベントに参加するツーリストの消費行動と支出傾向を調査することによって日本人のスポーツ・ツーリズムの実態を明らかにすると共に、スポーツ・ツアーがスポーツイベント開催地にもたらす経済効果を考究することであった。具体的には、1993年2月末にフィールド調査(奥日光クロスカントリースキー大会)で収集したデータの分析を行い、その研究成果を平成5年度の日本体育学会(11月大阪府)において発表するとともに、鹿屋体育大学研究紀要第11巻に『スポーツ・ツーリズムに関する研究II』として掲載される。また、1992年11月に実施した日本最大のウォーキングイベントである日本スリーデーマーチ(埼玉県東松山市)の調査データを分析・検討し、国際保健体育レクリエーシヨン協議会(ICHPER)第36年次世界大会(横浜市開催:1993年8月18〜22日)に『A Study of Japanese Sport Tourists』として発表し、Proceedingsに掲載されている。さらに、日本ウォーキング研究会第3回定例発表会(1993年9月28日:東京)において発表した。1993年11月には全国レベルの生涯スポーツイベントである日本スリーデーマーチの追跡調査を実施し、本助成金の研究成果報告書『スポーツ・ツーリズムと経済効果に関する研究』(印刷中)の参考資料として発表することになつている。生涯スポーツイベントよりもエリートスポーツイベント的な全国レベルの大会としてトライアスロンジャパンカップイン佐渡大会(新潟県佐渡島:1993年9月)を遊び、トライアスリートのフィールド調査を実施し、データの分析・検討を行い、前述の「奥日光クロスカントリースキー大会」と「日本スリーデーマーチ」の研究成果と併せて、月刊社会教育に『地域におけるスポーツイベントの動向』として発表し、さらに日本のスポーツ・ツーリズムの実態とその経済効果をまとめ、研究成果報告書『スポーツ・ツーリズムと経済効果に関する研究』(印刷中)を作成した。
著者
宮崎 由子
出版者
武庫川女子大学短期大学部
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

第3次健康食品ブームと言われている今日、健康維持に役立つ食品としてきのこが注目を集めている。特に最近、きのこ由来の多糖体が脂質代謝に関与したり、免疫促進作用を示すことが報告されているので、筆者はきのこに含まれる糖脂質に着目し、数種きのこの糖脂質について構造解析し、その生理活性について検討した。今回は、マイタケ(Grifora frondosa:新潟産)を用いて、Folch法に従い脂質を抽質した。抽出脂質はクロロホルム:メタノール:水(65:25:4by vol)及びクロロホルム:メタノール:酢酸(65:25:10by vol)の展開溶媒にて二次元薄層クロマトグラフィー(TLC)を行い、アントロン試薬で糖脂質を、Dittmer-Lester試薬でリン脂質を、ニンヒドリン試薬でアミノ脂質を各々検出した。総脂質をアルカリ加水分解しTLCで分画後、糖脂質を単離精製しIR分析及びFAB/MS分析により構造を同定した。総脂質の主成分は、カルジオリピン(CL),フォスファチジルエタノールアミン(PE),フォスファチジルコリン(PC),フォスファチジルセリン(PS)の各リン脂質と3種類の糖脂質(MGL-1,2,3)を検出した。単離した糖脂質について構造解析を行なった結果、MGL-1はグルコースを構成糖とし、d_<18:0>の長鎖塩基を持ち、脂肪酸として2-ヒドロキシステアリン酸を含有する質量数m/z742(M-H)^+のセラミドモノヘキソシドであることを確認した。しかし、MGL-2,MGL-3については構造を明確にはできなかった。さらに、MGL-1,2,3について生理活性を検討するために免疫の指標となるヒト好中球に対する貧食活性を調べた。ヒト末梢血よりmonopoly resolving meduimを用いて好中球を分離し、coverslip上にて90分前培養を行い、その好中球に各MGL-1,2,3をコートした黄色ブドウ球菌死菌体を加え60分培養した。その後メチレンブルーで染色し顕微鏡下で観察し、好中球内に貧食している菌数をカウントした。その結果MGL-2において貧食活性の促進が認められた。しかし、MGL-1およびMGL-3では変化はなかった。今後、MGL-2について、貧食細胞内での殺菌作用についても検討するつもりである。
著者
杉浦 光夫 森 光弥 丹羽 敏雄 片山 孝次 大槻 真 笠原 乾吉
出版者
津田塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1995年12月9日-12日,津田塾大学において、20世紀シンポジウムを行った。講演者および講演題目は次の通りである。20世紀数学の種々の局面をとらえた興味ある講習が多かった。11月9日13時00-14時 杉浦光夫(津田塾大)ヒルベルトの問題から見た20世紀数学、14時10分-15時10分斎藤利弥(河合塾)ポアンカレのAnalysis Situs.15時20分-16時20分松本幸夫(東京大)基本予想をめぐって、16時30分-17時30分三宅克哉(都立大)類体論とイデ-ル.11月10日 10時-11時 高瀬正仁(九州大)数学史家としてのアンドレ.ヴェイユ,11時20分-12時10分(河合文化研)20世紀数学基礎論の成果と展望、13時30-14時30分齋藤正彦(放送大)超準数学の理想A. RobinsonからE. Nelsonへ、14時40分-15時40分、高橋陽一郎(京大数理研)カオスを巡って、15時50分-16時50分宮野悟(九州大)計算量理論の誕生とその展開11月11日 鹿野健(山形大)解析学が数論してもたらしたもの、11時10分-12時10分堀田良之(東北大)簡約群の表現論における幾何学的描像、13時30分-14時30分佐武一郎(中央大)代数群と保型系数、14時40分-15時40分吉沢尚明(岡山理大)Radon変換の概念の発見と展開、15時50分-16時50分金子晃(東京大)コンピュータ・トモグラフィの歴史-数学者は何故ノ-ベル賞を取り損ねたか-、17時-18時足立恒雄(早稲田大)-フェルマークからヴェイユまで、11月12日 10時-11時小田忠雄(東北大)20世紀における代数幾何の発展、11時10分-12時10分上野健爾(京都大)20世紀代数幾何学-重複度と交点数をめぐって-、13時30-14時30分飛田武幸(名城大)ゆうぎの解析、14時40-15時40分再評価期の確率微分方程式、山田俊雄(立命館大)、15時50分-16時50分池田信行(立命館大)終路空間上の微積分-確率解析とFeynmanの経路積分-、17時-18時山口昌哉(熊谷大)20世紀の数学について、(これらの講演は「20世紀の数学」という題で日本評論社より出版される。)
著者
山本 清洋
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、学校週5日制が施行された前後2ヶ年間の子どもの生活構造と余暇や生活に関する意識の変容を分析し、学校週5日制の課題を明らかにすることである。子どもの生活構造の変容を分析するためには、生活時間調査を用いた。この研究で明らかになった諸点は、次のようなものである。(1).ほとんどの子どもが学校週5日制を好意的に評価し、施行1年後には、普通の休みと同じ感覚で受け入れている。(2).日常生活に対する子どもの満足感は、学校生活に関係が深いので学校のカリキュラムや学校生活を、学校週5日制と関連させて検討することが肝要である。(3).約50%の子どもが、学校と社会教育機関が準備した地域の諸行事へ参加していることが、施行後の最も大きな生活変容である。従って、今後は、この地域の諸行事を子どもの余暇活動として定着させることが課題となる。(4).子どもは、余暇で何をし、どうすればいいかという能力を有していることから、子どもを地域行事の企画か運営に参加させることが必要である。そうすることによって、子どもが自立して余暇を過す能力が育ち、同時に学校週5日制が社会に位置づくことになる。
著者
仁平 義明
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1)急速反復書字によるスリップの発生メカニズム特に書字速度を独立要因とした実験結果から、急速反復書字によってスリップが発生する原因は、次のようなものから構成されることが明らかになった:(1)急速な書字では、活性化された書字運動プログラムのうちトリガ-すべき運動記憶の選択機構が障害される。(2)活性化された不適切な運動記憶の抑制機構も急速という条件によって同時に障害される。(3)運動記憶のネットワ-クを通じて不適切な運動記憶に波及した活性化の水準が時間的加重によって高進する。従ってトリガ-されやすくなる。(4)反復は自動的なトリガ-部分だけをくりかえすことになるため、選択機構の機能低下が生じる。2)スリップがあらわれるときの書字時間インタ-バルは短縮される傾向があり、「わりこみトリガリング」によってスリップが生じることが示唆された。3)ネットワ-ク内の活性化の波及・活性化は書字対象の文字とリンクしている単一の文字だけではなく、ネットワ-ク全体に波及することがスリップの出現様式から分かる。ネットワ-ク内の書字運動記憶には、このようにきわめて密接なリンクがある。4)文字の運動記憶は、単純なネットワ-ク構造になっているのではなく、文字のための違った種類の運動記憶からなる重層的なネットワ-クを形成している。
著者
田辺 秀樹
出版者
一橋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究は、19世紀末から現代にいたる時代のさまざまな種類の大衆歌謡について、その歴史的変遷、作品としての構造(歌詞および曲)、地域による相違、社会的影響、〈高級文学〉との関連などを、幅広い視点から考察しようとするものであるが、本年度はまず基本的な資料の収集、機材の購入を行なった。具体的には、19世紀ドイツ・ベンケルザング関係、世紀転換期から20世紀前半の時代のウィ-ン・オペレッタ、カバレット関係の文献(書籍ならびに楽譜)、音声資料(レコ-ド,CD等)の購入、これらの資料を活用するためのコンピュ-タ-本体の購入が中心となった。これらを利用してのデ-タ入力,分類等は、今後長期的な計画にしたがって進められる予定であるが、すでに作業は開始されている。本研究の遂行のためには、今後さらに20世紀の大衆歌謡文化(具体的には大都市のカバレットの歌、ベルリン・オペレッタ、1920年代以降の流行歌、映画主題歌、第二次大戦後のLiedermacherやロック歌手のヒット・ソング等)についても資料を集め、政治、経済、社会情勢、外国文化の影響、いわゆる〈エリ-ト文化〉との関わり等に目を向けながら、総合的な考察をしてゆかなくてはならない。その意味でも、本研究への補助金が1年で打ち切られてしまったことは残念であるが、自費による研究を続行し、機会があれば再度の申請をしたいと考えている。なお、本研究のひとつの成果として、論文「陽気なミュ-ズの世紀末ーー世紀転換期ウィ-ンのオペレッタとキャバレ-」を執筆、これは木村直司編著『ウィ-ン世紀末の文化』(東洋出版)1990年10月発行)に発表された。
著者
徳永 正二郎
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。
著者
友田 勇 石田 卓夫 新井 敏郎 鷲巣 月美
出版者
日本獣医畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

競争馬,種牡馬,種牝馬,未調教2歳馬の赤血球におけるグルコーストランスポート活性と解糖酵素活性を比較した.血糖値およびインスリン値は各群間で差はなかった.グルコーストランスポート活性,ヘキソキナーゼ(HK),ピルビン酸キナーゼ(PK),グルコース-6ーリン酸でヒドロゲナーゼ(G6PD)活性については種牡馬,種牝馬,未調教馬群の間に特に差はなかったが,調教を積んでいる競争馬ではグルコーストランスポート活性は平均5.8nmol/min/mg proteinであり,他の群の値の2倍以上,HK,PK活性も2-3倍と著しく増加していた.競争馬のG6PD活性は他の群のそれに比べ若干増加傾向が認められたが,有意な差はなかった.以上のように調教を積んでいる競争馬では血糖値,インスリン値などはとくに変化しないにも関わらず,赤血球のグルコーストランスポート活性および解糖系酵素活性が未調教馬に比べ,著しく増加していることが明らかとなった.これは調教に伴う基礎代謝の亢進によりグルコース利用が高まっていることを反映したものと推察された.犬の正常な乳腺細胞と乳腺腫瘍細胞におけるグルコーストランスポート活性およびサイトソル酵素活性を比較した.乳腺腫瘍細胞のグルコーストランスポート活性は正常乳腺細胞の約2倍,腫瘍細胞のHK,PK活性は正常細胞の3-4倍,乳酸脱水素酵素(LDH)は約2倍であった.これらのことから,乳腺腫瘍細胞ではグルコースの取り込みやその利用が正常乳腺細胞に比べ著しく亢進していることが明らかとなった.また,悪性度の高い腫瘍では,LDHアイソザイムのV型活性が優位になる傾向が認められた.GLUT1のC末端の15アミノ酸残基の合成ペプチドでウサギを免疫し,抗GLUT1抗体を作製した.この抗体を用い,ヒト,犬,猫,豚,馬,牛,羊の赤血球膜に存在しているGLUT1の検出を試みたところ,全動物種にGLUT1抗体と特異的に反応するバンドが認められた.
著者
山村 則男 辻 宣行
出版者
佐賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成四年度では4つの保護形式、両親保護、オス保護、メス保護と無保護のいづれが純粋戦略になるかを、性比、両親保護と片親保護の場合の子供の数の比、片親保護と無保護の場合の子供の数の比の3つのパラメータで記述した。保護形式を決定する重要なパラメータは性比であることがわかった。また父性の不確かさがメス保護が多い理由のひとつであろうと思われた。オス保護とメス保護が重なったり、両親保護と無保護が重なったりする場合もある。どちらになるかは過去からの進化の歴史が決定する(3つのうちのどのパラメータが変化したか)。これらの結果はBehavioral Ecologyに掲載された。平成五年度は保護形式の多型に論点を移した。同一種内に複数の保育パターンが存在するもの(例えば地中海のクジャクベラ)、あるいは近縁種のグループ内に多種の保育パターンが存在するもの(例えば、一夫多妻の鳥、カエル類)等の実際の生物と、我々のモデルとの比較対応を行った。各分類の専門の生態学者からの情報をもとにして、モデルの予測と、その実際の保護形式を比較検討中である。また我々のモデルにおいては、実効性比が一番重要であったが、はたして性比が本当に一番影響が大きいのかを実際の生物で検討中である。また、保育行動の進化の統一的理論として遺伝的、生態的な総合的考察はその問題の大きさのために完了していない。一方、保育とは血縁関係のある親と子供の利益の対立である。保育することで親は繁殖の機会を失うが、子供は生存率が増す。即ち、親はできるならば保育はやりたくなく、子供は親にやらせたい。このような血縁のあるもの同士での利害の対立を、京都大学・阿部琢哉、東正彦らと共に数理モデルで検討した。この結果はEvolutionに掲載された。
著者
野口 和美 穂坂 正彦 木下 裕三
出版者
横浜市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

幼若ラットのセルトリ細胞培養液(SCCM)中に、成熟マウスのライディッヒ細胞を刺激してテストステロン(T)分泌を促進する因子があることを確認し、その生化学的性質の一部を明らかにした。セルトリ細胞は3週齢の幼若ラット精巣よりトリプシンとコラゲナーゼ処理により得、無血清培地で培養した。分子量1万をカットオフ値とする限外濾過にてSCCMを15倍に濃縮した。ライディッヒ細胞は10週齢の成熟マウス精巣より酵素によらず分離した。濃縮したSCCMをライディッヒ細胞浮遊液(最終密度10^6cells/ml)に加えたところ、37℃3時間のインクベーションにてSCCMの濃度依存性にTの基礎分泌は促進された。上清中のcAMPをRIAにて測定した。その結果、cAMPもTと同様に、添加したSCCMの濃度依存性に上昇した。5×10^7個のライディッヒ細胞をSCCMあるいはLHと34℃3時間インクベーションし、ライディッヒ細胞を分離した。これをホモジナイズして酵素液とした。14C-pregnenolone,14C-progesterone,14C-17α-hydroxyprogesterone,14C-androstenedioneを基質としてそれぞれ3β-HSD,17α-hydroxylase,C17-20 lyase,17β-HSDの酵素活性を測定した。コントロールと比較し、SCCM処理にてはLH処理と同様にこれら酵素活性に変化を認めなかった。すなわちSCCMの作用点はLHと同様にテストステロン生合成の初期段階、すなわちcholesterol→pregnenoloneの過程(ミトコンドリアでのT合成経路)に作用している可能性が考えられた。LHの過剰刺激下ではT分泌がそれ以上に亢進しないこともこれを裏付けるデータと思われる。各種濃度のFSHを4、72、96時間、培養セルトリ細胞に作用させた後新鮮な培養液に交換し、これに分泌された同因子の生理活性を測定して比較検討した。その結果、FSH100mIU/mlを4時間作用させたセルトリ細胞培養液中に有意にライディッヒ細胞刺激因子の生理活性が高かった。その他の条件下ではコントロールと比較していずれも生理活性は高かったが、有意差は認められなかった。
著者
植村 寿子 下茂 徹朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

南九州一帯に広く賦存するシラスは反応性に富む火山ガラスが8〜9割含まれ、量的にも豊富で、工業材料として極めて魅力のある研究対象である。しかしこれまで主に建築資材としてだけ利用され、高度な利用がなされていなかった。最近シラスが見直され、SPG(シラスポーラスガラス)等その特性を活かした利用開発がなされつつある。我々はシラス中のSiO_2(75%)、Al_2O_3(13%)に注目して、これを原料に安価なゼオライトの合成法の研究を行った。しかしシラスには約3%のFe_2O_3が含まれており、これが製品に混入、着色の原因になる事が分かった。シラスの脱鉄法が種々試みられているが、我々は次の系統的に各種のゼオライトを合成する方法でこの問題を解決した。まずシラス(100g)にNaOHとH_2Oの添加だけでNa-P型ゼオライト(60g、Fe_2O_3=1〜2.7%)を合成した。これは黄色を呈するが、高いイオン交換能を有するので廃液処理等着色が不利にならない分野での用途を考える。次に脱鉄されたケイ酸分に富むこの濾液(P型濾液1lが得られる)から各種の高純度ゼオライトを系統的に合成し、それぞれ適した分野での用途に供するものである。例えばP型濾液1lに120gのNaAlO_2を添加して6時間反応させる(100℃)と190gの高純度A型が得られる。同じくP型は5gのNaAlO_2を添加して5g得られる。X型は生成領域が狭く単一相としては合成し難くかった^<1)>。またP型濾液1lに各種の酸を添加して塩を含むゲル状沈澱物(Aゲル80g)を得た。これは水洗すると35g(Bゲル)に減る。Aゲルからは13〜50g、Bゲルからは25gのモルデナイトが得られる^<2)>。この2段階合成法では多種の製品が得られるので、単品コストが緩和され、また広範囲な用途開発が望めるので有利な合成法と思われる。1.植村、四元、染川、隈元、日本化学会誌、3月号掲載決定(1989)2.植村、村田、染川、日本化学会58春季年会発表予定1989年4月
著者
安原 洋 小見山 高士 新本 春夫 布川 雅雄 重松 宏 久保 淑幸 畠山 卓弥 大城 秀巳
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

再潅流障害における微小血管透過性の亢進と浮腫発生は局所の障害程度を推定するうえで重要なパラメータのひとつとなる.一方,四肢や腸などの重症虚血障害成立には微小循環下での組織の全血流量よりも血流の組織内分布がより大きな役割を演じていることが知られている.今回,われわれは再潅流障害の重症度を推定するパラメータとして,微小循環における浮腫発生部位の血流分布測定の有用性を実験的に検討した.微小循環モデルとしてはhamster cheek pouchを用い,生体顕微鏡下でpostcapillary venulesのアルブミン透過性を観察した.血管透過性は血管周囲に漏出した標識アルブミンの発する蛍光輝度で測定した.再潅流障害の発生はpostcapillary venules内腔における内皮細胞への好中球の付着をもって確認した.再潅流障害の発生が確認されたぶいでは透過性亢進血管が有意に不均一な分布をすることが観察され,生体顕微鏡を用いた微小循環の浮腫分布パターン解析が組織障害推定の有用なパラメータとなりうることが示唆された.
著者
上村 千賀子 中野 洋恵
出版者
国立婦人教育会館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、国立婦人教育会館及び各地の婦人教育施設、女性センター、生涯学習施設における女性学講座参加者を対象としたアンケート調査により、参加の目的、女性学講座に期待する内容と方法、学習上の問題点、性別役割分業観、男女の地位の平等観、及びそれらと性別、年齢、職業との関連を明らかにするとともに、社会教育における女性学教育の内容と方法を考察した。本調査は、女性学講座参加者956人に対する調査表記入方式により平成6年8月から平成7年1月に実施し、回収数604(女性545:男性56)、回収率63%であった。調査結果から次のことが明かにされた。(1)「男は仕事、女は家庭」の考え方について、『男女平等に関する世論調査』(総理府平成4年調査)と比較すると、「賛成」と答えた者が総理府調査では23%であるのに対して本調査ではわずか1%で、性別役割分業観から自由な参加者像が浮び上がった。さらに、本調査では、国立婦人教育会館とその他の施設、男女、職業、年齢により参加者の性別役割観に差がみられた。(2)学習上の問題点としては、内容が広すぎ焦点が不明、女性問題解決の方法が不明が最も多い。(3)期待する学習内容は、施設、性別、職業、年齢により違いがみられた。また、これらの属性に共通する学習内容として、「性・性差・性役割」「家庭・家族」「労働・職業」「社会活動」「教育・学習」「政治・政策」「男性の意識改革」があげられた。(4)属性による性別役割分業観、期待する学習内容と方法を分析することにより、社会教育における女性学の学習課題、成人男女の多様なライフ・スタイルやライフ・ステージに対応した具体的な学習内容を明らかにするための基礎的なデーターを得ることができた。
著者
笠井 芳夫 湯浅 昇 露木 尚光 松井 勇
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究により得られた成果は以下の通りである。(1)1対のφ0.7mm-ステンレス電極棒を用いた小電極により、これまで不可能であったような局部的なコンクリートの含水率の測定を可能とした。(2)実構造物のコンクリート品質を明らかにし、その耐久性を検討した。(3)乾燥に伴うコンクリートの含水率及び細孔構造の不均質性の形成を観察し、不均質性に及ぼす乾燥開始材齢、乾燥環境、調合、部材厚、仕上げ材の施工の影響を明らかにした。(4)乾燥に伴う各種セメントの水和への影響を物理・化学的観点から明らかにした。(5)乾燥開始材齢と微小セメントペースト供試体の圧縮強度の関係を明らかにし、これをセメントペーストの細孔構造から検討を加えた。(6)乾燥開始材齢、乾燥表面からの距離及び含水率と透気性、透水性、吸放湿性の関係を明らかにした。(8)乾燥開始材齢が早いほど、中性化の進行、塩分浸透、凍結融解による劣化が激しいことを明らかにした。次のような課題が残されている。(1)コンクリートの含水率、細孔構造の不均質データの蓄積(2)含水率及び細孔構造と強度、劣化因子の浸透、仕上げの劣化との関係を解明(3)構造体コンクリートの強度分布、透気性分布、透水性分布の推定と検証(4)強度分布の形成、耐久性低下のシュミレーションこれらの点については、今後研究を続ける予定である。
著者
山本 芳彦 金子 昌信 小林 毅 坂根 由昌 川中 宣明 川久保 勝夫
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.ジーゲル関数の2等分値、5等分値に関する数値計算と数式計算により、それらのみたす代数方程式やその値により生成される虚2次体上に類体としての導手をいくつかの例において決定した。特に等分値を24乗する前の値について、多くの予想が得られた。またデデキントのエータ関数の比に代数的性質についても実験した。2.山本と金子は楕円モジュラー関数について、各レべルのモジュラー方程式を計算し、それを用いて楕円曲線のスーパーシンギュラー(s.s,)素点を求めた。金子はエルキーズの定理の別証明を得ると同時に法Pのモジュラー方程式の解となるA.A.jー不変量についていくつかの結集を得た。3.山本は1.の結果を用いて虚2次体の類数の法2^nに関する合同式を与えた。また、実2次体の位数2のイデアル類の連分数展開の周期に関して合同関係のあることを示した。4.実2次体の極限公式を異なる方式で求めそれらの比較を行った。それらを代数的数の対数の2次形式で表わす問題については発展がなかった。5.(1)川中は有限体上に一般線型群のシンプレクティック対合に関する対称空間における球関数を決定した。(2)小林と村上はYangーBaxter方程式の解から絡み目の不変量を定義し、それと絡み目の被覆空間のベッチ数との関係を得た。(3)川久保はコンパクトリー群が作用する場合のコボルディズム定理を一般の形で与えた。(4)坂根はリッチ曲率が正のコンパクトケーラーアインシュタイン多様体で等質空間でないものの例を与えた。(5)西口はK3ー曲面の退化を小磯は3次元開半球面内の極小曲面を研究した。(6)宇野は有限群の表現を研究した。(7)村上と尾関は等質空間とリー群について研究した。
著者
中村 浩二
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

(2) 金沢市湯涌にあるハクサンアザミの群落とその周辺でアリ類の生態の基礎調査を行ったところ,2亜科9属16種が確認され,そのうち高密度であったのは,ムネアカオオアリ,トビイロケアリ3種,アシナガアリであった。(2) ハクサンアザミには,アザミヒゲナガアブラムシと他1種が5月後半から7月ごろまで高密度に発生するが,これにはアリ類はattend(随伴)しなかった。(3) アリ類に対するアザミ食葉性甲虫類の防衛行動をクロヤマアリの野外コロニ-とエゾアカヤマアリの室内飼育コロニ-を使って実験した。ヤマトアザミテントウ,アザミクビホソハムシ,アザミカミナリハムシには化学防衛が認められた。しかし,アザミクビホソハムシの防衛には背中にのせた糞の存在が重要であること,アザミカミナリハムシの化学防衛力はあまり強くないこと,ヤマトアザミテントウの化学防衛力は安定して強力であった。アオカメノコハムシは尾端に乗せた糞を巧みにあやつってアリの攻撃をかわすことができた。キベリトゲトゲは全く無防備であっが潜葉性であるためにアリには攻撃されにくいであろう(4) 渓流ぞいの谷間,道沿い,開けた場所など異なる環境にはえているハクサンアザミに対する各種甲虫類の分布を調べたところ,ヤマトアザミテントウは谷間に限って分布するが,アザミカミナリハムシ,アオカメノコハムシは様々なハビタ-トを利用できることがわかった。(5) ハクサンアザミの植物体上でのアリの密度は低かったこと,また甲虫類の化学防衛できるので,アリがギルド構造に及ぼす効果は少なかった
著者
北原 理雄 神谷 文子
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.予備的な分析として、西日本各地の小学校校歌をサンプルに、そこに謳われた景観要素の出現頻度と性格を考察し、校歌から抽出すべき景観要素の範囲を明らかにした。さらに、関東地方の小学校校歌をサンプルに、そこに謳われた景観要素の出現頻度と性格に加えて、主要景観要素の情景描写、地域性、また現実の景観との関係を明らかにした。2.三重県の3都市(津市・四日市市・松坂市)を取り上げ、各市内の小・中・高等学校を対象に、校歌の歌詞の中から景観要素を抽出し、地図上でその分布・頻度・影響圏の広がりを調べ、市民意識として共有される地域の景観構造を把握し、校歌に謳われた景観構造との照合を行い、両者の関係とその背景を明らかにした。3.千葉県の3都市(柏・八千代・銚子)を取り上げ、各市内の小・中・高等学校を対象に、校歌の歌詞の中から景観要素を抽出し、その分布と頻度から市民意識として共有される地域の景観構造を把握するとともに、それを現実の景観構造と照合し、両者の関係を明らかにした。また、各都市において校歌に謳われた景観の都市化の前後における変化を分析し、そこから市民のイメージの中に形成されている景観構造とその変容を読み取った。4.全国の各地域から選んだ人口規模10万〜50万の11都市(函館・八戸・秋田・前橋・清水・富山・奈良・松江・倉敷・松山・鹿児島)を対象に、それぞれの都市の小学校校歌の歌詞の中から景観要素を抽出し、その種類と頻度から校歌に謳われた景観像を都市比較的に把握した。また、その結果を踏まえて、地域景観の物的特性とイメージとしての景観像との関係を明らかにした。