著者
荒牧 正也 小川 修三 小川 修三 廣川 俊吉 沢田 昭二 早川 幸男 小沼 通二 荒牧 正也
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

坂田昌一氏は、氏の複合模型の提案にかぎらず夙に研究における方法論の重要性を強調していた。氏はまた湯川秀樹、朝永振一郎両氏の4年後輩として京都大学を卒業し、以来研究上でも両氏と緊密な関係をもっていた。そこで複合模型展開の研究に先立ち、坂田昌一氏の研究開始の時期に遡ってその足跡を辿り、氏の遺作や遺稿の収集・整理から手を付け、それを目録として纏めることとした。この仕事は未だ不十分なところが残っているが一段落し、「坂田記念史料室 資料目録第一集」として出版できた。これによって、坂田昌一氏の研究活動についてその背景を含めて検討する手立てが得られた。この目録作成と平行して、坂田昌一氏の社会的・文化的背景の検討を行ない、京都大学卒業論文から第二次大戦終結までに至る氏の方法論的考察の伸展と具体的研究との関連、とくに湯川博士との研究の進め方に関する考え方の違いが極く初期に遡ること及び武谷三男博士との緊密な関係と微妙な違いなどを追求し、その結果を「坂田昌一氏における『物理学と方法』」なる表題のもとにいくつか発表した。加えて坂田昌一氏とは研究の進め方及びその内容において相補的な朝永振一郎氏を提唱者とする、くりこみ理論、展開の歴史研究「Development of the renormalization Theory in Quantum Electrodynamics」が行なわれたが、これは複合模型の展開に至る坂田昌一氏の方法論に別の面から光を与えるだけでなく、日本の素粒子論発展の解明に大きく寄与すると考えられる。
著者
佐藤 政良
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ダムの設置による治水上の悪影響発生を回避するため、河川法に基づく標準操作規程があり、これをひな型として各ダムでは操作規程がつくられている。標準操作規程は、形式的には極めてよく整った内容をもっているが、現実にさまざまな問題が発生している。本研究は、予備放流の実施を中心に、農業用利水ダムにおける洪水管理のあり方を、実際の管理経験から検討した。多くのダムで、大雨の予想が出されてからの予備放流実施を、危険性が高いとして、あきらめており、その結果、本来の利水容量が減少、利水上の被害を発生させていることが分かった。羽布ダムにおいて、洪水発生と気象台からの大雨警報発令の関係を分析し、標準操作規程で想定しているような信頼を、気象台警報に置くことは危険であることを明らかにした。ダムで洪水が発生したとき、予備放流の実施に十分な条件を備えた警報は、全体の15%にすぎないので、ダム独自の予備放流実施基準の開発が必要である。羽布ダムで洪水が発生した過去の全事例で、予備放流が実施できる時間的余裕を考慮した時、気象台予報は、常に80mm以上の値であった。そこで、逆に、そのような予測が出されたときは必ず予備放流を実施するという基準を提言し、利水上の危険性の観点から、その採用の現実性を検証した。1976年から1991年の5-9月に出された80mm以上予測249事例を、半旬別に分け、過去の貯水池運用実績から、満水運用を原則にした場合の予備放流実施必要回数を求めると、十分な安全側の仮定を設けても年当たり1.3回にすぎない。小規模の出水を考えて、10cm水位低下を保証すれば、さらに治水上の安全度が高まり、かつ利水上の危険を減らすことが可能である。
著者
磯部 俊彦 吉田 義明 門間 要吉 山田 稔
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

今日、日本農業は過剰生産、価格低下、後継者難という深刻な危機に直面している。これらの問題を、個別農家の対応により解決することは困難である。従って地域農業における早急な土地利用管理システムの構築が必要とされている。このシステムは、個々の農家、集落の生産組織及び農協の相互の協力によって作られるべきである。その場合に各々の構成員が各々の特徴を活かした組織化が計られなければならない。この研究の目的は、各々の産地の実情に即した適切な集団的土地利用管理のあり方を提起することである。このテーマにアプローチするために、我々は愛媛県南予地方の優等ミカン産地及び沖縄県の野菜産地と工芸作物産地を調査した。そして、この問題について資料文献の収集、農家からの面接聞取り調査及び関係者との意見交換を行った。また、関連調査として山梨市のぶどう産地及び茨城の畑作地帯への調査も併せて実施した。以下は、その概要である。ミカン産地では高齢化と価格低下により荒廃園地が増大している。耕作できない農民は親せき又は他の農家に農地を預託する場合もあったが、特筆すべきは有機農法グループ「無茶々園」のメンバーで構成される「ヤング同志会」が耕作不能に陥った農地を管理していたことである。現在は点の存在ではあるが、この地域の集団化の歴史的経験の土台に立脚したものであるだけに将来さらに大きく育っていくであろう。沖縄県では農地相続が分割される場合が多い。しかし多くの相続者は農地を兄弟などに預けて出稼ぎに出るケースが多く、そして退職後に帰郷して農地を返してもらい農耕に従事する。この制度によって彼らの老後の生活も一応保証されるわけである。このような私的所有権の集団化ともいえる制度は、独特な相続制度に由来している。我々は、このような相続制度のあり方が、日本農業革命の鍵を提供しているように思われるのである。
著者
坪木 和久
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本課題では日本海上に発生したポーラーロウについて、数値実験を行なった。また、総観場の特徴、降水系のレーダーから見た特徴を調べた。より解像度の高いモデルにより日本海西部に発生したポーラーロウについて数値実験を行ない、その詳細な構造を調べた。解像度をあげることにより、ポーラーロウの発生した収束帯の詳細な構造が見られた。この収束帯は大陸東岸にある山体によって形成されたものであるが、収束帯上には正の渦度と負の渦度を持つ直径100km程度の渦が列状にならんだ構造が見られた。ポーラーロウはそのほぼ南端に発達し、大きな正の渦度を持っていた。日本海西部のポーラーロウについては傾圧性の他、海面からの顕熱・潜熱による加熱が擾乱のエネルギー源になっていること、北海道西岸のものについてはこれらだけでなく上空にある寒冷渦が下層のポーラーロウとカップリングしていることなどが明らかになった。カナダ東岸のラブラドル海に発生するポーラーロウについても数値実験を行なった。この数値実験にはまず総観規模の低気圧をシミュレートすることが重要で、その擾乱のサブシステムとしてポーラーロウが発生することが明らかになった。数値実験でシミュレートされたポーラーロウは上空の寒冷渦の下にあり、北海道西岸のポーラーロウとよく似た特徴を持つものであることが明らかになった。日本海上のポーラーロウの数値実験については、比較的良く現実を再現するものが得られた。これは日本付近のデータが豊富にあることが結果を良くしていると考えられた。これらから日本海上のポーラーロウについてはその構造が、かなり明らかにされてきた。一方で、カナダ東岸のものについては、数値実験によりポーラーロウに近い物は再現できたが、初期値を変えると発生しなかったり、現実のものほど強いものが再現されなかったりで、初期値・境界値の与え方に問題が残った。特に初期値の初期化において発散場が必要異常に弱められる点が問題と思われる。これらを解決するために非断熱加熱を初期に取り入れるための改良を行なった。これを観測された事例に適用しさらにシミュレーションをおこなう予定である。
著者
井田 齊 林崎 健一
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

三陸地方に回帰するシロザケの再生産形質(卵類・抱卵数)を資源量との関わりから検討した。調査の対象河川は岩手県南部の片岸川,盛川,気仙川の3河川である。1980年より1990年までの10年間に測定した試料を解析した。調査個体数は1598である。〔結果〕(1)回帰量は放流量と正の相関があり,近年は次第に増大傾向にある。(2)回帰量の増大とともに平均年齢は(回帰時の)高化している。(3)回帰魚の体長は経時的に振動しながらも減少傾向にあり,特に高令魚で顕著である。(4)この成長の鈍化は海洋生活の第1年目に顕著であることなどが判明した。再生産形質として卵経および抱卵数について,いずれの河川間でも差が認められた。河川間で年令組成および体の大きさに差があるので,魚体の大きさで修正した平均値で比較したところ,(1)卵サイズは高令魚ほど大きく,(2)抱卵数は逆に高冷魚ほど少ない傾向が認められた。魚体の小型化が進むにつれ,同一体重階終に属する魚の卵径は大きくなっている。これは各階級に属する魚の平均年令が上昇したことによる。
著者
小野 直達 梅木 利巳
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

平成元年及び2年度にて、大規模養蚕複合経営の存在形態を広く把握し、かつ両年度での実態調査を通じて当該経営の経営方式を一般化することを試みた。そのため、調査対象地として東日本地域から四県、西日本から二県を選択し、前述の課題に接近した。1、はじめに大規模養蚕と称しうる経営、なかでも収菌量3トン以上農家は昭和63年 127戸、平成元年 126戸であった。なお、元年度の経営方式を把握することは資料の制約上できなかった。いま昭和63年度での経営方式に関連させた場合、約8割の農家が両年とも3トン以上農家であった。この結果、養蚕大規模といえども他部門との結合が一般的形態であり、特に水稲部門との結合が高い割合を示しており、ついで野菜、畜産などであった。2、さて両年度における調査のうち、福島県安達町は県内でも主要な養蚕地帯を構成しており、経営方式では水稲部門との結合が高く、ついで野菜、畜産、菌茸であった。郡馬県前橋市芳賀地区の場合、多様な結合の展開がみられ、養蚕プラス畜産、野菜、更に水稲などであった。同県吉岡村明治地区は養蚕プラス野菜の結びつき、千葉県八街町は野菜および落花生との結合、西日本地域における鹿児島県姶良地域では生産牛および菌茸、愛媛県大洲市では養蚕プラス野菜、が特徴的であった。つまり各地域における部門結合は、立地条件を強く反映した経営方式の展開であった。要するに、両年度の調査結果から、ひとまず養蚕と水稲をはじめ、野菜、畜産などであった。との四つの経営方式を摘出できた。なお残された課題として当該方式の実現手法の開発に努めたい。
著者
蓬茨 霊運 柴崎 徳明
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究から次のようなことが明らかになった。1.X線新星、LMXB(低質量連星型X線星)それぞれのX線スペクトルには二成分が存在する。この内の一成分はどちらにも共通しており、降着円盤から期待されるスペクトルによく合う。この降着円盤成分はどちらのX線源においても強度の時間変動がきわめて少ないか、あってもゆるやかである。このことから中性子星のまわりにも、またブラックホールのまわりにも同じような性質の降着円盤が形成されているといえる。2.スペクトルのもう一方の成分は、X線新星の場合は、ベキ型のスペクトル、LMXBの場合は黒体輻射のスペクトルでよく表わされる。ベキ型の成分はブラックホールの近傍でホットプラズマによるcomptonizationあるいは非熱的なプロセスでつくられるのであろう。一方、黒体輻射成分は中性子星表面からの放射と考えられる。3.ベキ型成分、黒体輻射成分はどちらも激しい強度変動を示す。X線新星でもLMXBでも、スペクトルの二成分はそれぞれ独立に変動することをみつけた。もしこれらの二成分が正の相関をも動するならば、降着円盤を通過した物質がブラックホールや中性子星表面に到達することになる。したがって、二成分間に相関がないということから、中心天体への物資降着には降着円盤(幾何学的にうすく光学的にあつい円盤)を通過するチャンネルの他にもう一つ別のチャンネルがあると結論できる。もう一つのチャンネルに対し、私たちは降着降着円盤が二重構造、つまり光学的にあつく幾何学的にうすい円盤が光学的にうすい円盤ではさまれたサンドイッチ状の構造になっているのではないかと考えている。現在、観測との比較のため必要になる二重構造円盤のより詳細な性質に向けて研究を進めている。
著者
金森 修 杉山 滋郎 杉山 滋郎 小林 傳司 金森 修
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

金森修は、コンディヤックの『動物論』を分析する過程で、人間と動物との関係を巡る認識的議論にその調査対象が拡大した。その過程で、金森はフランスの重要な科学史家ジョルジュ・カンギレムの仕事に注目するようになった。そして結果としては、コンディヤックの『動物論』自体の分析は、擬人主義論の中ででてくることはでてくるが、副次的なものになり、より射程の広い擬人主義論、そしてカンギレム自体のさまざまな業績を扱った四つの論文、計5篇の論文の形で、その成果をまとめることができた。まず「擬人主義論」では、心理学が擬人主義を放擲かくするに及んで、もともとの研究プログラムを喪失していく過程の分析、比較心理学や動物行動学に伏在する擬人主義の剔抉などを中心に扱った。次の「主体性の環境理論」では、一八世紀から一九世紀初頭にかけて、環境という概念がどのようにその意味あいを変えていくかを巡る史的な分析を行い、それが一九世紀から二○世紀にかけて、主体を環境によって規定された受動的なものとしてではなく、それなりに環境を構成する能動的なものとして把握するという思潮がどのようにでてきたのか、またその考え方の環境倫理学的な意味あいについて分析した。次の「生命と機械」論では、古来からの生物機械論と生気論とが、現代的なバイオメカニックスや人間工学においては、対立ではなく、融合を起こしていること、そのため、人間がどこまで機械として説明できるのか、という問い自身がもはや成立しえないことを論証した。次の「生命論的技術論」では、技術的制作一般を巡る主知主義的な把握を破壊し、技術制作と創造者との間の相即的で相互誘発的な関係を分析した。 次の「美的創造理論」では、アランの美学をカンギレムが分析している文章を精密に分析する過程で、創造行為一般における創発性、規範の存在の重要性などを分析した。杉山滋郎は、平成2年度から4年度に収集した文献資料をもとに、当初の研究目的にそって考察を進めてきた。その結果、「生命観」の概念規定を明確にすることに努めつつ、わが国における「生命観」の時代的変化ならびにその特質について、概念が把握されつつある。現在のところまだ具体的な論考には結晶していないが、必要な資料をさらに収集して、今後しばらく検討を続けたうえで、すみやかに成果を公表する予定である。
著者
中澤 達夫 蔵之内 真一
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、低コストで高効率の太陽電池実現が期待される、銅-インジウム-セレン(GIS)系薄膜太陽電池の各要素のうち、バッファ層用のCd(Zn)Sおよび吸収体材料であるCIS(S)薄膜を溶液法で堆積するための基礎を検討したものである。得られた新たな結果を以下にまとめて示す。・CBD法によりCdS薄膜の堆積では、出発原料としてよう化物,あるいは,硫酸塩を用いると、塩化物や酢酸塩を用いた場合に比べ、よりムラが少なく表面状態の良好な膜が得られた。・溶液法によるZnS膜の堆積は困難であった。CdZnS膜については、溶液中のCdとZnの混合比率の制御により、膜中のCd/Zn比を制御することができた。・電気めっき法によるCIS薄膜の堆積では、Cu-In-Seの三元素を混合した溶液を用いるone-step堆積法により、ほぼ良好なCIS薄膜が得られることがわかった。・CIS膜の禁制帯幅制御を行ってさらに太陽電池の変換効率を改善することを目指し、三元素の電着溶液にさらに硫黄(S)を加えた四元素を同時電着する方法を試みた。この場合、電着溶液を一定時間放置し、生じる沈澱をろ過し去った溶液を用いることでCuIn(S, Se)_2四元薄膜が堆積できることがわかった。このとき、ほぼ化学量論組成の膜を得るための電着条件(電着電位、溶液組成)を明らかにした。・電着した薄膜を真空中で熱処理することにより、CuInSe_2およびCuIn(S,Se)_2のX線回折ピークが観察され、カルコパイライト構造を持つ半導体薄膜の形勢が確認できた。・CIS薄膜上にアルミニウム薄膜を蒸着した構造で、整流性が確認できた。
著者
谷口 郁雄 田中 英和
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

聴覚中枢損傷後の機能的な回復に関する基礎的な情報を得ることを目的として、脳の中でも再生した神経線維が再びシナップスを形成するかどうか、もしシナップスが再形成された場合には、その機能的性質は正常なシナップスと比べてどのような違いがあるのかという点について、マウスの下丘交連を矢状断し、その後の神経線維の再生の現象を利用して形態学的および生理学的な方法により検討した。その結果、次のことが明らかとなった。(1)金属およびガラス電極を用いた微小電極法による実験から、切断された交連線維は再生し、タ-ゲットである下丘で再びシナップスを形成することが確認され、再形成されたシナップスの機能的性質については、音刺激に対する応答を抑制するものが主で、加算的なものも少数認められた。(2)抑制性シナップスが認められることは再生した交連線維が下丘に対して抑制性の介在ニュ-ロンにも結合することを示している。(3)再形成されたシナップスは正常群と比べると下丘の比較的表層に分布する。(4)再生した下丘交連の神経細胞をペロキシダ-ゼでラベルすると、正常群に比べて軸索の走行はかなり乱れていた。(5)以上の結果は下丘において再形成されたニュ-ロン・ネットワ-クが多様であることを示唆する。シナップスの機能に関しては正常群と比べて大きな違いは統計学的にはないと思われるが、再生した軸索は走行が乱れるので、下丘のシステムとしての機能には微妙な変化が起こっていると考えられる。
著者
福嶋 正純
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

18世紀後半における大道歌の語りの部分と歌の中には未婚の母による嬰児殺人を主題とするものが多数みられる。嬰児が無残な殺され方をすることも少なくないが、罪は専ら女性の性的ふしだら、官能的快楽の追求にあるとされて誘惑する男性の罪を咎めることは殆んどない。大道歌の公演は当局の厳しい検閲を受けるため庶民の困窮の基盤となる政治体制批判、差別問題は全くとりあげられず、批判の的は専ら弱者に向けられる。一方時代思潮を先どりしているシュトルム・ウント・ドラング時代の文学作品は、誘惑する男性の罪が弾がいされ同時に貧困に苦しむ民衆を描いて社会批判を鋭く行なっている。大道歌においては事件や犯罪の原因を厳しく追求する事は稀で悲惨な事件の描写に終止する。苦難の生活を強いられている庶民は、罪を厳しく問われて処刑される犯人の物語、鉱山事故、大災害の描写を耳にし、災難をまぬがれている自分を幸せと感じ、自分は人生をもっと幸せに送っていると考えて自己満足に浸る。大道芸人の語りは庶民に安っぽい同情と満足感を呼び起こし、処刑される犯人への同情などは焔情的な事件を垣間みたいと言った残忍な気持と表裏一体をなしている。大惨事の描写においては事故や災害の原因は追求されず全ては運命の糸の導きとして諦められる。神を恨んだり神の仕業に疑念を抱くことはなく、神は常に善行を報い正義を許えてくれるものとなる。この世の罪悪が神の所業とされることはなく事件や犯罪行為は神の責任の範囲外にある。神はこの世の運命、摂理の良い面だけを代表するのであって人間世界を支配する最高神とはならない。大道歌で語られるのは基本的にキリスト教徒の倫理であって善行、誠実、慈悲はキリスト教徒の備えている属性であり、悪行、邪悪、残忍は非キリスト教徒、とり分けイスラム教徒の属性に仕立てあげられていて、トルコ人の非人道的行為を描写する大道歌も数多くみられる。
著者
荻野 綱男
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

現代日本語の名詞シソーラスを作成しながら、語彙の意味分類の多様性についての研究を行った。現在までに、シソーラスを通して現代日本語の名詞の意味分類ができあがりつつあるが、こうして似た意味の単語をまとめてみると、全体が不整号になる現象が発生する。そこで、ある単語のグループを取り出して、そのグループが確かにグループになっているかどうかを検討することにした。シソーラスに関するさまざまな処理はパソコンを用いて行っているが、プログラムなどの整備が進み、シソーラスの効率的な検索を行うプログラムができあがった。このプログラムの完成によって、パソコン上でわかりやすい形でシソーラスが検索でき、またそれを利用してシソーラスのチャックができるというような態勢ができあがった。また、シソーラス全体を圧縮してフロッピーに格納するコマンド、およびフロッピーからハードディスクに圧縮を解除しながら格納するコマンドも作成した。以上の結果、シソーラスをフロッピー版で公開する用意が整った。
著者
上原 周三 星 正治
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1. ^<90>Sr+^<90>Yのβ線によって生成される制動X線を体外計測することによって体内^<90>Sr量を実験的に評価した例は少なくないが、定量的計算によって評価した報告はほとんど見当たらない.そこで^<90>Srの他に^<137>Csと^<40>Kのγ線放出核種が体内に分布していると仮定し,一台の光子検出器で簡便に測定する場合を考え,いかなる部位・測定条件の下で最良の光子スペクトルが得られるかを自作のモンテカルロシミュレーションコードSR90を用いて定量的に予測した.2.体外計測部位の候補としては骨の体積が大きく,かつ表面が薄い皮膚(水で代替)で覆われている脚部,腰部,頭部が挙げられる.計算の結果,腰部と頭部は内部に大容積の軟部組織を含んでいるためにバックグラウンドが大きくなり,不適であることが分かった.一方,脚部については単純に同軸円筒ファントムで近似し,骨の直径や皮膚の厚さをいろいろ変えて調べた.3.ファントムから逃げ出す光子を入射窓直径200mmの検出器で体外計測するとし,検出器に入射する光子スペクトルを計算した.スペクトルの30-160keVのエネルギー範囲における強度を積算し,次式で定義するs/n比を求め,体外計測の最適条件を定量的に調べた.脚部ファントムのいくつかの条件についてs/n比を比較した結果,1mm程度の薄い皮膚に覆われた太い骨(直径50mm程度)の場合に最も良いs/n比が得られた.4.計算結果と通常の体外計測の測定値を組み合わせることによって,β放出核種のための新しいインビボ計測法の可能性が開けた.
著者
三浦 軍三 岡本 敏雄 堀口 秀嗣 篠原 文陽児 児島 邦宏 井上 光洋
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

授業録画ビデオテープは、全国の教育系大学・学部で制作・管理され、現在精力的に収集され、いくつかの大学・学部ではライブラリーとして体系的に保存・管理されつつある。これらのビデオテープは、教育に関する臨床的・実践的・実証的研究に不可欠な資料である。とりわけ授業分析・設計に関する研究、教科教育および教育実習の改善研究にとって貴重な素材として位置づけられ、その価値がますます高まりつつある。本研究はつぎの課題で研究を遂行した。1)分類カテゴリーの設定:授業録画ビデオテープには原則として"授業の指導案"を添付することとし、(a)そこに、授業に関する基本事項、(b)授業を特徴づける枠組、(c)さらにビデオテープの種別を設定する。したがって、データファイル構成としては、3次元構造をもつ分類力テゴリーを開発し、その試案の段階で、テープライブラリーをもつ3つの大学・学部の研究者と情報交換を行うとともに、専門家に対し意見をもとめ、分類カテゴリーの再構成をはかった。2)検索システムは、(ア)分類カテゴリー・システムにもとづく基本データ管理(イ)検索の2つのモジュールから構成され、マイクロコンピュータによるシステム開発を行った。3)検索システムの開発試行をふまえて、検索の適切性の視点から分類カテゴリー、とくに授業を特徴づける枠組について再検討する。あわせて、他の教育系大学・学部の研究者の協力を得て実験試行した。4)上記、1)、2)の分担課題にふまえ、検索システムのアセスメントと改善点(システムの柔軟性,拡張性,利用,流通等の視点)を明らかにし、総合的評価とシステムの再構築をはかった。
著者
出口 寛文 中山 康 田中 孝生 北浦 泰 河村 慧四郎
出版者
大阪医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

【I】.ヒト心筋症心筋炎の研究:11例の拡張型心筋症患者の生検心筋insituではLeu【1^+】のT細胞の浸潤を認める。T細胞サブセットの中、Leu【2a^+】のCytotoxic/suppressonT細胞(Tc/s)は8.7±3.5%,Leu【3^+】のHelper/inducer T細胞(Th/i)は5.5±3.6%であり、T4/T8比は0.7±0.6であった。またT4/T8比は11例中9例で1以下を示した。一方、4例の特発性心筋炎ではLeu【2a^+】,Leu【3^+】のリンパ球浸潤の程度は様々であり、T4/T8比は0.1〜2.5と一定の傾向を示さなかった。症例中にはLeu7のNK細胞の浸潤の多いものもみられた。心筋生検組織像とリンパ球浸潤の程度との対比:拡張型心筋症患者の生検心筋光顕像を筋原線維の疎少化,心筋細胞の錯綜配列核の変化,線維化について0〜4+のスコアで半定量化して、各症例のリンパ球浸潤の程度との相関を求めたが、有意な結果は得られなかった。NYHAの心機能分類と単核細胞浸潤の程度を対比するとNYHAの【III】〜【IV】群は【I】〜【II】群に比して単核細胞浸潤が多い傾向を示した(P<0.1)。【II】.マウスの実験的Coxsackie B3 visus性心筋炎:ウイルス接種第5日より細胞浸潤が出現し、第9日で最も広範囲であった。T細胞は第9日,14日,3カ月,12カ月では各々90±29,113±22,16±3,6±1/0.2【mm^2】,Lyt【1^+】のTh/iは79±23,101±19,14±4,6±2,Lyt【2^+】のTc/sは15±3,12±4,4±1,2±1であった。Lyt1/Lyt2(T4/T8比と相同)は第14日で最も高く、9.1±3.6を示し、概して高値であった。ウイルス性心筋炎ではリンパ球数の上からはTh/i細胞が優位であった。免疫電顕ではLyt【2^+】のリンパ球が心筋細胞の筋鞘に付着し、心筋細胞をin vivoで傷害していると考えられる像が観察された。また、Lyt【1^+】のリンパ球がマクロファージと接合する所見もみられ、helper T細胞の活性化に関係する像と考えられた。以上のごとく、心筋症心筋炎の心筋in situではリンパ球による細胞性免疫機構が極めて重要な役割をはたしていることが明らかとなった。
著者
須田 燕 徳永 幸之 湯沢 昭
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、昭和62年7月に開業した地下鉄南北線により、仙台市の交通形態の変化、及び土地利用の変化を実証的に調査し、地下鉄の影響を総合的に把握することを目的とした。そのため地下鉄開業前(昭和62年6月)に交通実態調査を行い、また開業後1年を経過した昭和63年6月にも同様な調査を実施した。また土地利用の実態調査としては、地下鉄沿線の商業、住宅の床面積の変化、及び地価についても行った。その結果、自家用車利用者の地下鉄への転換は、地下鉄駅周辺の徒歩圏で、かつ目的地が都心部の場合は若干見られたものの、全体としては数パ-セントの値となっている。従って、地下鉄利用者の大部分はバス利用者からの転換であり、結果的にバスと地下鉄との競合関係となっている。土地利用の変化としては、特に地下鉄の両端のタ-ミナル周辺の土地利用が急激に変化し、また地価も高い水準となった。また長町周辺ではマンションの建築も進んでおり、今後もこの傾向は続くものと思われる。地下鉄開業による商業立地への影響を定量的に検討するため、Huffモデルによる商業地選択モデルを作成した。これは旧仙台市、旧泉市を73ゾ-ンに分割し、各ゾ-ンの人口、小売業床面積、年間小売業販売額のデ-タを用い、地下鉄開業による時間短縮効果が商業施設の立地に与えた影響をインパクトスタディを使用して検討を行うものである。その結果、地下鉄開業による正の効果が地下鉄の両端タ-ミナルに顕著に表れ、また都心部を含む沿線においても小売販売額の増加が見られた。さらにその開発したモデルにより、現在建設中の地下鉄の延長、計画中の地下鉄東西線についても検討を行った結果、MRTの整備により地下鉄沿線への商業施設の集中がさらに進み、地域内の隔差が今まで以上に進むことが予測された。
著者
宮良 高弘
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

津軽海峡を挟む北海道側と本州側は、いわゆる異文化が相互に接する周辺地域(marginal area)であった。津軽海峡文化圏域を中心に、北方民族およびそれが担う生活文化が本州のどの地域にまで及び、また本州側の母村を異にする人々によって北海道にもたらされた生活文化が津軽海峡を隔てて北海道側のどの地域にまで及び、どのように複合・重層しているかを、機能から逆照射して探るのが本研究の目的であった。この地域は、(1)北方民族と和人が担う異文化が相互に接触する地域であり、遺跡から出土する遺物や、地名、民具などからその共通性が把握されている。アイヌのアトゥシは青森県や岩手北部などで近代まで庶民が着用していた。(2)和人相互の内的接触による文化複合がみられる地域である。人々は、にしんを追い弧を描くように、積丹半島、小樽、留萌、羽幌などへと北上し、遠くは礼文、利尻の両島にまで及んでいる。社会構造や網元を頂点とする労働組織は類似し、衣生活におけるドンジャとよばれる労働着、年中行事の食習では、正月のクジラ汁や一月十五日の女の正月のケの汁などが、荒馬踊りなどの民俗芸能や繁次郎に代表される口承文芸が、対岸の青森県各地と共通している。(3)藩制時代以降に、交易によって上方や北陸地方から受容した生活文化の重層構造の共通性である。下北半島の要のむつ市の田名部神社やその周辺にくり広げられている例大祭、江差町の姥神神社、福島町や乙部町など道南西域一円にみられる例大祭の山車に、京都祇園祭りの流れをくむ上方の生活文化の受容が濃厚にみられる。(4)北海道で用いられているデメン(出面=日雇い)という言葉は、お雇い外国人がもたらしたday's menに由来しているとされ、この造語が青森県地方に及んでいる点も無視できない。青森県の船大工は、北海道のにしん場で修行した者が多く、こうした出稼ぎ人による北海道側からの逆移入は、造船などの技術文化においてもみられる。
著者
小松 秀雄
出版者
神戸女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

現代都市の伝統的祭りに関わる人々の行動様式と組織形成の実態について比較社会学的調査を実施してみた。まず、神戸の春の生田祭-神戸の都心における最大の神社祭礼-を支える人々の活動と組織構造を実証的に解明した。それによると、神戸の中心地域と重なる氏子区域を11の地区に分け、民主的な輪番制と委員会方式に基づいて祭祀を運営している。政教分離、氏子離れ、住民の流動化、都市文化の多様化などが進み、神社祭礼の実施は年々難しくなっているけれども、生田祭は岡方や宮元地区などの熱心な氏子たを核としながら、以前と変わらず盛大に行なわれている。次に、生田祭と比較する形で横浜の日枝神社の秋季例大祭-横浜の都心では最大の神社祭礼-の組織構成を調べてみた。その結果を見ると、やはり生田祭以上に盛大に行なわれており、例えば30台余りの山車が横浜の繁華街伊勢佐木モールを巡行し、強烈な集合的オルギーが顕在化した。参加者は年令、性別、職業に関して余り偏寄りがなく、全ての住民が平等に参加できる祭りであると言えよう。仕掛けや組織形式を工夫すれば、大都市でも伝統的祭礼が十分に伝承されることが明らかになった。なお、当初予定していた長崎の祭礼調査は、研究の都合上省略した。
著者
小場 弘之 森 雅樹 鳥脇 純一郎 山岸 雅彦 小場 弘之
出版者
札幌医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.肺腫瘤影の良悪性の鑑別に関する研究-X線学的特徴とデジタルパラメータ良性40例,悪性40例,計80例の小型孤立性肺腫瘤影の胸部X線像を対象とし,X線学的特徴とデジタルパラメータによる肺腫瘤影の良悪性鑑別について検討した.良性腫瘤影は悪性に比し,形状は整で,濃度が高く,辺縁が鮮明で,スピキュラや血管収束像が少ない傾向があった.腫瘤影の面積Sをもとに半径を設定した多重円構造のウィンドウを設定し、デジタルパラメータを測定した.腫瘤影中央部のDCF-N出力値,腫瘤影辺縁の濃度勾配値および腫瘤影周辺部の濃度値と濃度差エントロピー値を測定し,腫瘤影の良悪性鑑別に有用な情報を得た.今回採用したデジタルパラメータによる良悪性の判別率は78%で,医師の読影による上記のX線像所見によって良悪性を判別した場合の判別率は74%であった.これらのデジタルパラメータは,腫瘤影の良悪性鑑別に関する診断支援に役立つ可能性があると考えられた.2.胸部X線像を用いた肺気腫の進行度の定量評価計算機によって胸部X線像上の血管影の太さを自動計測し,その結果を正常例と比較することによって肺気腫の病勢進行度を定量評価するための基礎的検討を行った.胸部単純像上で肋間部に複数のPOIを設定し,様々な方向の2階差分フィルタ出力の最大値を出力するMax-DDフィルタを用いて血管影の強調と抽出を行う.その後,孤立点や枝の除去・穴埋めを行い,血管影の太さの推定を行った.正常例および肺気腫例(中等度,重度)の胸部X線像を対象に検討したところ,肺気腫例では正常例よりも血管影の太さの分布が有意に細い方に偏っていた.今後は,各ROIの肺気腫進行度について医師と計算機の評価結果を比較し,本法の臨床的な有用性について検討する必要がある.
著者
犬飼 義秀
出版者
岡山県立短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本年度は、前年度の「児童期における社会性の発達」「仲間集団における社会性の発達」に関する諸理論を、子供の日常生活に求めた。まず、平日・土曜日・日曜日の生活時間および、家庭学習、塾・習い事、テレビ視聴、遊び、スポ-ツ活動等について650名の小学生(4〜6年生)を対象に調査を実施した。その結果、塾通いや習い事が日常化しており、友人仲間それぞれのスケジュ-ルが異なり、共通して遊べる時間あまりなく、集団的な遊びが弱体化している。現代の子供達の遊びは、全体として(1)室内において、(2)少人数で、(3)活動量の少ない、(4)商品化された物を相手に、(5)受動的な遊びが多くなっている。しかし、一方では外遊びと家の中での遊びとでは、外遊びを好み、遊ぶ人数では、より多くでの遊びを好んでいる。このように戸外で多人数の遊びを求めながら、家の中での遊びが中心であることは、子供達が友達と遊べなくなったというよりも、遊べなくなったという深刻な問題がある。このように、遊び活動の衰退は、仲間集団の形成を阻害し、形成されても脆弱化する。次に、こうした仲間集団の具体的状況を、子供スポ-ツ集団の事例的研究に求めた。その結果チ-ムメイトは、クラス内においては好きな友達として上位に選択される。しかし、チ-ム内における相互選択では、レギュラ-はレギュラ-を、イレギュラ-はイレギュラ-を選択するというスポ-ツ集団における層化した人間関係の構造が存在する。さらにレギュラ-同士の人間関係は強いが、イレギュラ-同士の関係は弱い。二層分化したレギュラ-とイレギュラ-を結ぶ関係が弱いことは、集団全体の課題達成や統一維持にとって問題である。レギュラ-・イレギュラ-という層化した人間関係の構造は、地位構造・勢力関係にも反映されている。レギュラ-間における地位ランクは、技能、活動に対する知識水準の高い者と、キャプテンというオ-ソライズされた地位付与者が上位にある。このことは、レギュラ-成員は、活動や勝利という課題達成の遂行者を上位にランクしていることがわかる。一方、イレギュラ-間の地位ランクは、レギュラ-で自分たちとの人間関係の強い者が上位にランクされている。地位ランクの上位者は、スポ-ツ集団におけるリ-ダでもある。リ-ダ-シップ機能には、集団の目標達成機能と統一機能とが見られる。レギュラ-間においては課題達成機能が、イレギュラ-間では統一維持機能がより重要視されている。特に、イレギュラ-は、やさしく・親切な成員をリ-ダ-の選択基準にしている。このように子供スポ-ツ集団の内部に、二層分化の構造が生まれる背景には、過度な勝利志向と技術的上達を求める監督・コ-チの指導態度が強く関係している。今回対象にした子供の発達段階からすれば、親の庇護を離れて仲間の世界へと入っていき、仲間との共通の基盤の上に立ち、大人への全面依存からそれを断ち切り精神的自立の達成を課せされた時期である。現代の子供の人格発達のゆがみは、基本的には子供集団と子供文化が存在していないこと、その中での能動的な活動が保障されていないことから派生されている。学校の週休2日制を前に、地域における子供集団とその文化の再生についての検討が必要である。