著者
望月 公廣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

海底下~10km以上深いプレート境界面上で、プレート間の固着が強い場所が、繰り返し発生する海溝型巨大地震の震源域である。なぜ固着強度が強くなるのか、その要因を解明するために、海域で人工震源を用いて行う構造調査で取得される波形記録の解析手法の開発を行った。これまでの手法では不十分であった解像度の向上に成功し、屈折波やプレート境界からの反射波に関して、到達エネルギーを明瞭に確認することができた。
著者
村路 雅彦
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

細胞小器官であるミトコンドリアのDNA(mtDNA)の塩基配列は、生物の進化や野外での集団動態を調べるための有効な分子マーカーであるが、核内の類似の塩基配列との識別が困難であるため、しばしば研究結果を誤る場合がある。本研究では多様な昆虫よりこの様なニセのmtDNAを単離し、その塩基配列と進化特性等を調べることにより、mtDNAを用いた解析の信頼性を高めるための技術開発を試みた。またそれを多様な昆虫に適用し有効性を調べた。
著者
山本 浩司 浜崎 桂子 福岡 麻子 RUPRECHTER Walter 山口 庸子 馬場 浩平 羽根 礼華 古矢 晋一 クリスティーネ イヴァノヴィッチ
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「翻訳」による「文化変容」論を批判的に検討するなかで、オリジナルとコピーという形での序列化を免れた「同時性」(Simultaneitat)という現象に着目した。学際的な文化研究の成果を踏まえた多角的な視点に立ちつつ、メディア間については、主に絵画・映像表現と言語芸術の相互作用の分析、言語文化間については、特に日独文化交流の通時的共時的分析を通じて、「翻訳」を理解する上で「同時性」概念が有効であることが明らかになった。
著者
村上 健一郎 菅原 俊治
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度は、主にIPv4++方式を実現するための多方面からの機能検証を行い、平成19年度は、実装上の問題点の明確化と設計へのフィードバック、そして実装を進めた。(1)レルムという概念を導入し、これで再帰的にネットワークが構成されるというパラダイムでIPv4++ネットワークが明確に説明できることを明らかにした。これを情報処理学会OS研究会にて発表した。(2)ミッションクリティカルな利用に対応するため、バックアップ機能の追加を行った。この切り替え時間を二桁程度向上させるための経路制御アルゴリズムTPV(Temporal Path Vector)について論文をソフトウェア科学会第8回インターネットテクノロジー研究会にて発表した。また、経路制御管理を容易にするための方式について、研究分担者が論文を発表した。(3)英文論文ドラフトを執筆し、研究協力者であるコーネル大学のポール・フランシス教授と議論を行った。論文が複雑になりすぎた事を指摘され、装置中心に書き直すとともに、実験結果を入れることとした。また、米国BBN研究所のクレイグ・パートリッジ博士と議論を行い、標準化トラックに載せるよりも、事実上の標準にすることを急ぐようアドバイスを受け、設計と実装を加速することとした。(4)機能設計および詳細設計の検討中に、VPN(Virtual Private Network)のパスを通すことができないことがわかり、VPNでは固定的に割り当てることで、本問題を回避することとした。(5)Linux上で本方式の実装を進めたが、進捗率は全体の70%程度となった。現在、実装を加速させている。
著者
市原 恭代
出版者
宝仙学園短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

いわゆるジャパニメーションと呼ばれる日本のアニメーションには、世界でも類をみない特色がある。極めて平面的でありながら、なおかつヒトの色覚を巧妙に生かした色彩の用いられ方である。かつて浮世絵が印象派の画家たちを驚かせたように、日本のアニメーションは今尚、欧米の視知覚様式とは異なったものを持ち、世界的な美術市場へ影響を与えている。日本の浮世絵,絵巻,漫画,アニメーション等に共通する視知覚様式の独特の点として・消失点が極端に高い点にある,あるいは消失点がいくつか別に画面中の存在する極端な遠近法・中景の厚みに相当する陰影の喪失した色面構成・記号化された顔面の諸器官の形による感情伝達,正面からにらみつけた眼,突き出された手の平を極端に大きく描くなどの正面性の高い表現方法・降り注ぐ雨や雪、爆発,閃光,風に翻る服のような動きを紋様化あるいはパターン化して形つくっていく表現があげられる。平成18年度に行った研究では、アニメーションの色彩設計がどのようにあるべきかについて問題提起し、定義した。一人のキャラクターに2種類の色を割り振ると見る側のキャラクターの同定が崩れてしまう。色の恒常性と形の恒常性を動画の中でどのように保つかが重要になる。ここでは、平成18年夏に公開された「時をかける少女」(細田守監督貞本義行キャラクターデザイン)作品を取り上げてその特徴を述べた。1.影の表現がないこと2.必要最低限の線でなされ、キャラクターを特徴づける特異な髪型や装身具などがなされてないこと。3.特異な色設定によって特徴づけられていないこと。静止した状態では目立つとはいえないたいへん地味なキャラクターである。しかし、いったん動画になると鞄をかける位置、ブラウスの袖の揺れなどが特徴的に表現され、キャラクターが動画によって同定するという全く新しい技法が生み出されている。
著者
中本 大 黒木 祥子 二本松 泰子 山本 一
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

4年間の研究期間において約850点の鷹書類のマイクロフィルムや画像データを蒐集し、それらの翻刻・注釈作業を通して各テキストが持つ意義や価値について明らかにした。また、これらの鷹書類をデータベース化して、各書の特性が一覧できるように整理・分類するための基礎作業も一通り達成した。その作業の過程において奥書などの書誌データを基に、それぞれの鷹書類の成立過程や流布・伝来の状況についても一定の解明ができた。
著者
福井 千春
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

フランス語の最古の武勲詩『ローランの歌』は悲劇の舞台となったスペインにも伝わるが、この地では逆にローランを屠るベルナルドの伝説が形成されていく。この人物は中世を通じて親しまれ、肥大化し、とうとう国民的英雄にまでなって『ドン・キホーテ』になだれこむ。カロリング朝の伝説とアーサー王伝説が結合して、近代文学で新たな意味をおびる様を論じた。
著者
北村 英哉 佐藤 重隆 小林 麻衣
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

人は意識的に気をつけて行動する場合と、意識しないで自動的に行動を行う場合がある。これを2つのモードとすれば、そのときの感情状態によって、いずれのモードをとるかの選択に影響が現れる。さらに、本研究では、現在の感情に加え、将来感じられると予期される感情予期の影響を取り上げ、現在の感情と未来の感情の双方がモード選択に影響することを示した。これらを社会的に重要な3つの場面-感情制御、偏見、学習の自己制御-において検討し、特に自己制御では将来の感情予期の影響が大きいことを見出した。
著者
澤田 眞治
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.非米州地域と国連に関するブラジル外交の考察ブラジルは、軍政下の1970年代ですら米国の意向に反してアンゴラ左派政権の独立を承認するなど、戦後60年間、文民政権であるか軍事政権であるかを問わず、プラグマティックな外交を独自に進めてきた。こうした実利外交は、開発/工業化という国家目標に基づくものであり、途上国のリーダーを自認しながら、先進国主導の世界秩序形成に自国の参加を求める両面的なものである。ルーラ政権は、反米左派政権の国々とは同調せずに、成長著しいブラジルの経済力を他の途上国で展開することも企図しており、脱イデオロギー的な姿勢を維持している。世界秩序への関心は、ハイチ等PKOへの積極参加など国連安保理改革に顕著であるが、戦間期に国際連盟の常任理事国入りを要求しながらも実現せずに、国際連盟を早期に脱退した史実もある。途上国のリーダーの座を維持しながら、豊富な資源と巨大な市場を梃子に、欧州など先進国との戦略的提携関係を構築することが世界秩序形成に参加する条件となろう。2.ブラジル外交と地政戦略の連関に関する考察20世紀のブラジルでは地政学的な戦略思考が外交と内政に影響を及ぼしてきた。内陸の人工都市ブラジリア遷都や「未来の大国」の標語は地政学思考と開発主義の理念の結合であった。旧来の自然地理学的な地政学は衰退したが、近年の地域主義の台頭や文明・文化論への関心の高まりから、地政戦略/地政文化的な視点は、ブラジル外交の特質を考えるうえでー助となろう。つまり、多国間主義を通してブラジルを軸に南米地域の結束が強化されることは、多極化する世界秩序における南米の地域大国ブラジルの地位を向上させるという考え方が、政権の左右を問わず、継続的に存在するのである。[付記]平成20年度の本研究計画は、研究代表者の退職によって中断されることになった。
著者
松久保 隆 杉原 直樹 須山 祐之 古賀 寛
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、学齢期(学校歯科保健)における食育の推進に口腔に関連した要因がどのように関連しているかを検討することを目的とした。また、医師会が行った生活習慣病リスクに口腔に関連した要因がどのように関連しているかについても検討し、次の結果をえた。(1)う蝕有病に関連する要因は、朝食の欠食であり、歯肉炎の有無(口腔清掃状態と関係する、ついでう蝕原因菌であるS. mutansとLactobacilliのレベル、歯列不正、就寝前の飲食などであった。(2)生活習慣病のリスクは、運動が嫌い、朝食の欠食、S. mutansレベル(10^5以上)であった。S. mutansレベルが関連しているのは、食生活の乱れを示していると考えらた。(3)小学校4、5年生の食べられる食品の多さに関連する要因(食品受容応答)は、保健行動に関連する知識(生活習慣病の知識、朝食(欠食)、フッ化物配合歯磨剤を使用、歯科医院での歯口清掃指導の有無)や習慣と口腔内の機能的な状態である唾液分泌速度や咬合状態が関連していた。検討したすべての項目で朝食の欠食が強く関連する要因であることが示された。これは規則的な食習慣は、う蝕のみならず、生活習慣病のリスクを大きく下げることを示唆するもので、学校保健活動における食育の重要性を示すものと考えられた。
著者
小杉 健二 佐藤 威
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

吹雪は積雪・寒冷地域においてしばしば視程障害や吹きだまりの原因となり、時として自動車の多重衝突などの深刻な災害を引き起こす。しかし、吹雪の時空間変動の観測に適した安価な測器が無いために、その変動特性には不明な点が多く残されている。本研究では、安価な吹雪計測方法を開発することを目的とする。低温実験室において、吹雪の中に音響センサーを置き、発せられる音響信号と雪の質量フラックス(単位時間に単位面積を通過する総質量)の関係を調べた。実験の結果、質量フラックスの増大とともに音響信号の変動も増大することが分かった。以上のことから、吹雪の計測に音響センサーを用いることの有効性が示された。
著者
岡部 恒治 三島 健稔 鈴木 俊夫 西村 和雄 西森 敏之
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本に伝わる和算・そろばんにある、イメージを利用し、直感的に理解させる思考法を用いて、数学が苦手な学生・生徒にわかりやすく理解させるための方策の研究である。この研究に基づいて、小学生向きの自学自習教科書を実際に作成した。その目覚しい成果は産経新聞、読売新聞、フジテレビなどでも紹介された。また、代表者の岡部は、この成果を用いてお台場のパナソニック・センターに18年8月に開設された「RiSuPia」の数学関連の展示コンテンツの監修をした。三島は教材の電子化に関して多大な貢献をした。このRiSuPiaは、数学に関しての本格的な体験的施設としては、現在本邦唯一のものである。このリスーピアも、NHKはじめ各テレビ局や新開でも大きく報道された。ここでは、和算・そろばんの果たした意義やその思考法を来場者自ら体験してもらうようにもなっている。
著者
石川 秀樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)大規模集客施設の現状や催事の分析など、施設や催事への医療支援に関する事項近隣の大規模集客施設の医療対応状況を調査し、各施設での傷病者数とその内容、治療状況、施設ごとの特性(医寮対応能力など)を明らかにした。結果公開に同意を得た野球場の状況を論文にまとめた(KJM 2007;56:85-91)が、野球場の医療対応に関する論文は本邦初で海外でも稀少である。催事に合わせ開催場所近隣の医療機関に救急医療対応を文書で依頼する「慣習」を分析し、催事内容や主催者の医療に対する考え方を論文にまとめた(JJDM 2005;10:10-18)。Mass-gathering medicineをこのような観点で捉えた報告は国内外を通じ皆無で、催事参加者、とくに観客の安全担保が不十分な国内の催事事情が判明し、実効性のない文書のみの医療対応要請を廃して主催者/施設責任者と医療機関双方でより具体的な準備を行うための貴重な資料となった。(2)教育体制や医療従事者側の意識向上など、傷病者への医療対応に関する事項大規模集客施設の救急医療需要に対応する医療者側の意識向上も不可欠で、研究代表者所属機関で一層の院内教育充実を図り、新規入職者(医療職・事務職すべて)への災害医療講演、初期臨床研修医への災害医療に特化したoff-job training(OJT)、医学部学生への講義、などを実施した。とくに0JTは教育対象者から好評で、その内容を学会で発表した。(3)現時点での本研究に対する評価と今後の展開以上の研究姿勢が評価され、研究代表者は平成19年度から都医師会の救急委員を委嘱されたため、行政側・消防庁などの諸機関と一層の連携強化を図った。本研究の成果に今後の分析を加え、都が誘致中の2016年夏季オリンピックを含む、さらに大きな催事への医療対応システムの確立を目指し、国内で恒常的に開かれる催事での参加者の安全確保に努める。
著者
レメイン ジェラード・バスチアン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

典型発達 (TD) の未就学児童 (3-7 歳) と同じ年代の自閉症スペクトラム(ASD)の子供について,共感を喚起する刺激の脳内処理を 2 つの実験で確認した。まず TD の未就学児童を対象とした脳磁図の計測において,手指の触覚刺激に対する神経応答が他者の足指が刺激される映像を見ているときと比べ手指を刺激されている映像を見る時のほうがより増強されることを示した。これは視覚情報が他者のものであるにも関わらず、自身の触覚刺激に対する神経応答に影響を与えたことを示唆する。次に我々は近赤外分光法を用い,TD と ASD の子供両方について通常の音声と比べてささやき声のほうが皮質の血流応答を増大させることを示した。この応答反応の増大は,より個人的な意思疎通における話者意図の理解に関わる処理を反映している可能性がある。両実験を通じて, TD と ASD の子供両方が他者の気持ちを理解する共感に関連した刺激に対して反応しうることを示した。さらなる研究が求められるが,ASD の子供のささやき声に対する皮質の感応性は医学的な応用のために利用できるかもしれない。
著者
畠山 兆子 松山 雅子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、現代のメディア・ミックス状況における子どもの読書指導の可能性と課題を明確にとらえるために、子どもの物語受容の根幹に潜む物語典型の内実を、最も日常的な物語体験であるテレビ視聴を軸に探ろうとした者である。本、テレビ番組、DVD、ゲームといった個別の媒体を問題にするのではなく、現代の子どもが多様な媒体を往還するなかで受け止めている<物語言語>のありようを対象テクストと子どもが出会うコンテクストの分析・検討を行うことを基本とする。それによって媒体の差異を越えて、今日の子どもの物語スキーマを解き明かす物語の構造的特徴が見えると考えたからである。具体的にはテレビ番組「世界名作劇場」から、「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」を取り上げた。児童文学の名作古典とされる原作とアニメーション番組を比較研究することで放送形態によって物語がどの様な変容を遂げたか、どのように再生産されて「見る物語」として子どもの物語理解、自己認識に反映するのかを考察した。また、今日の子どものメディア環境を明らかにするため、小学生(4〜6年生)338名、中学生(1〜3年生)439名、比較の対象として大学生(1〜4年生、2校)519名のアンケート調査を行った。実施した「メディア環境アンケート」は多義に渡るもので、本報告では、<個人情報><メディア環境>(1情報を得るメディア2大切なメディア8どこでアニメを見るか9マンガを読むメディアは何か)<読んでいる雑誌・本>(17アニメを見て原作を読んだか18原作を読んでアニメを見たか)<テレビ視聴>(19誰と好きな番組を見るか21テレビの視聴時間23録画24ビデオやDVD)<ゲーム>(27PCゲームをするか35ゲームをする時間)の各項目と記述による「物語を想像して読む」のみの集計となっている。
著者
西澤 泰彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、愛知県に拠点を置いた建築家の活動概要を明らかにし、その評価をおこなったものである。その結果、次のことが判明した。1点目は、組織について、愛知県や名古屋市の建築組織が民間の建築組織に比べて巨大で、活動量も多く、大きな影響力を持っていたこと、2点目は、「民」において個人の建築事務所が成立する素地は1920年代になって確立されたこと、3点目は、「官」「民」ともに人材を輩出・供給する教育機関として1906年開校の名古屋高等工業学校に設けられた建築科が果たした役割が大きかったこと、4点目は、「官」の建築組織よって設計された公共性の高い建築が都市の近代化に貢献したこと、5点目は、そのような建築家の活動が全国的には報じられることが稀有であったことである。
著者
山崎 優子 石崎 千景
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、市民の死刑に対する態度(賛成、反対)を形成する心的メカニズムを明らかにすることである。本研究の主要な成果は下記のとおりである。質問紙およびディスカッションによるデータ収集を行い、死刑賛否の理由17項目を抽出した(研究1)。また、質問紙調査を行い、個人の特性に由来する内的要因(たとえば、権威主義傾向)と社会的要因(たとえば体感治安)を考慮した死刑賛否に至るモデルを構築した(研究2)。さらに、死刑制度に関する正しい知識を与えた前後で、死刑賛否に関するモデルが異なること(研究3)、死刑賛否に影響する要因と裁判員裁判の死刑判決に影響する要因が必ずしも一致しないこと(研究4)を示した。
著者
國分 俊宏
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、20世紀前半のフランス文学において、言語実験的作品を書いた作家たちのうち何人かを取り上げて、その背景、特質、射程を検討することであった。具体的にはレーモン・ルーセル、ゲラシム・ルカ、ジョルジュ・ペレックの三人を取り上げた。初年度においては、秋に一度、フランスへの研究出張を行い、資料収集に努めた。特にゲラシム・ルカに関連して、ルーマニア・シュルレアリスム関係の古雑誌などのコピーを手に入れた。またその際、特異な文体で知られる現代フランスの作家フランソワ・ボン氏と面会し、インタビューを行った。ジョルジュ・ペレックの資料が所蔵されるアルスナル図書館を紹介していただいたのもボン氏である。第2年度は、ルーセル、ゲラシム・ルカに関する論文をそれぞれ一本ずっ執筆した。この2本の論考は、1年遅れで翌年せりか書房より『ドゥルーズ千の文学』(宇野邦一・堀千品・芳川泰久編著、2011年1月発行)の中の分担執筆分として刊行された。また夏に一度、フランスへの研究出張を行った。その際、フランスにおける若手のペレック研究の第一人者であるソルボンヌ大学教授のクリステル・レッジアー二氏と面会し、関連文献をコピーさせていただくなどした。最終年度には、「レーモン・ルーセル:言葉と物」のタイトルで学会ワークショップを開催したほか、シュルレアリスムの詩人ポール・エリュアールやレーモン・ラディゲらの翻訳をした日本のモダニズム詩人北園克衛を軸に、日仏の言語実験詩人の比較研究にも手をつけた。
著者
村松 俊夫
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

子どもたちが、教科書上の知識として別々にとらえている内容(動き・カタチ・重力)を、授業者が体験的に授業を行うことで、実践を通して理解させることができる遊具の開発をおこなった。これは、科学性と芸術性双方のうえに成り立っているデザインの考え方を、児童・生徒たちの中に芽生えさせるものとしてたいへん有意義であった。この研究により、「物理・数学・美術の一部内容は密接に関係している」ことに気づかせる教育遊具への展開が確認できた。
著者
大河内 信夫 藤澤 英昭 鈴木 隆司 大河内 信夫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は伝統技能を教育学的な検証を経て学校教育の現場で活用できる題材として開発し、実践によって評価しようとしたものである。具体的には3つの代表的な取り組みを行った。第1に、伝統の刃物づくりの調査とそれを題材としたDVDの製作、第2に銅鏡の製造過程の調査と製作マニュアルとしてのCD製作、第3に伝統的な養蚕の実践とできた繭から絹糸を取り出し小型のランプシェードをつくる題材の開発と実践をおこなった。DVDとCDは千葉県下の市教育委員会へ配布し、その教育的評価を調査した。実践的な検証の取り組みでは、附属小学校において、銅鏡づくりは鋳型づくりと研磨を主に体験して製作し、ものをつくるにはいろいろな道具と時間がかかることを体得した感想が多かった。教員養成学部の授業実践として銅鏡づくりと行灯づくりに取り組み、教員資質にとってものづくりが重要であることを実証した。技能に裏付けられたものを作る能力を定着させる方法論が次の課題である。