著者
大貫 徹
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、ハーン作『耳なし芳一』とそれをアルトーが翻案した『哀れな楽師の驚異の冒険』との比較検討を行うことを通じて、アルトーが、その晩年に、ゴッホの中にもうひとりの「芳一」を見出す経緯を明らかにした。原話の『臥遊奇談』からハーンへと引き継がれてきた「亡霊に取り憑かれてしまった琵琶法師芳一の悲劇」という物語は、アルトーにおいて大きく変貌し、アルトーは芳一の盲目性さえ否定する。しかしだからこそ、アルトーは、その晩年、琵琶法師とか音楽家とはまったく無縁な、画家ゴッホの中にもうひとりの芳一を見出し、そのことによって、ハーン文学の精髄である「異界との接触」というテーマを継承することができた。
著者
石田 依子
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

かつて船員業は男子絵の領域と考えられてきたが、女性も海に出たことが記録されている。女性が最初に士官候補生として雇用されたのは1960年代後半になってからであり、その後、海運業が船員として男性を雇用することに深刻な困難を経験し始めた1990年代後半になって女性船員は再び登場することになった。これらの女性たちは機会を与えられれば女性ができることを示している。
著者
山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、高大連携の期待と現実のズレに注目し、日本における高大連携の事例を収集し、質的および数量的分析を行った。成功事例の特徴、実施体制やプログラム内容の実態などの分析結果から、「高大連携」を促進する要因と阻外する要因を明確にすることができた。日本の高大連携活動の大半は、高校と大学が対等に共通の問題の解決に取り組む「共働」ではなく、それぞれの必要に基づく「協力」関係であることが明らかになった。高大連携活動についての組織間関係論的な視点からの考察は、今後の日本の高大連携を有効に機能させるための組織・運営や環境条件など明らかにするために重要であることが示唆された。
著者
徳井 淑子 小山 直子 西浦 麻美子 新實 五穂
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男女の性が服装によって明確に二分化されたのは、洋の東西を問わず近代社会においてである。日本では、それが国家および知識階級の要請によって行われ、政治的な意味をもったが、一方でヨーロッパでは資本主義社会への転換のなかでブルジョア倫理として要請され、社会・経済的な意味を帯びている。近代社会では男女の服装の乖離が顕著であるのに対し、中・近世社会では服装による男女の分化は必ずしも鮮明ではない。現代社会では同化、接近、越境はさまざまなレヴェルで絶え間なく行われ、それによってファッションの多様化が進み、二元論的な性では捉えられない複雑な性のあり方を示している。男女の服装の同化・接近・越境は新たな感性により新たな性の表象として現出するが、同時にジェンダー表象としてつくられた新たな服飾が、新たなジェンダー感性を育んでいくことも確かである。
著者
重本 直利 細川 孝 望月 太郎 碓井 敏正 細井 克彦 植田 健男 碓井 敏正 細井 克彦 小山 由美 植田 健男 中村 征樹
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

研究成果は以下の5点である。(1)ステークホルダー間調整視点から「評価-機能モデル」を仮説的一般理論としてまとめた。(2)「評価-機能」の相互関係性の検討を行う上での基本用語の整理を行った。(3)韓国およびドイツ等での「大学内ステークホルダー間調整」視点からの調査において、教員、研究員(職員)、学生(院生)における「評価-機能」の相互関係性をまとめた。(4)日本の大学および認証機関における「PDCAサイクル」での評価の取り組みを「評価-機能モデル」から検討し、結論としてコミュニケーション型モデル・了解志向型モデルを提案した。(5)『研究報告書(研究記録を含む)』としてまとめた(2010年3月19日)。また、重本直利は『大学経営学序説』(晃洋書房、2009年)において成果の一部の公表を行った。
著者
松塚 ゆかり BAILEY Thomas R
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米国での詳細なフィールド調査を通し、大学におけるナレッジマネージメントの概念と機能のメカニズム、活用の範囲とその効果、実践過程で生じた問題点や課題を明らかにするとともに、日本の大学におけるナレッジマネージメントの実践モデルを設計し、これを教育研究の分野で実践した。その結果を国内外の学会や研究会などで発表するとともに、報告書として「IR からKM へ-教育調査研究から『知』の共有への可能性-」にまとめた。
著者
上山 隆大
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、伝統的に「公的な」知識生産の拠点であった大学が、市場化の流れによって急速に「私的な」性格を強めている現状を歴史的に概観すると共に、失われつつある「アカデミックコモンズ」の再構築の必要性を実証的に論じることにある。本研究は、おもに1970年代から2000年ごろまでのアメリカの大学の変遷を、「知識経済」に政策の基盤をおこうとするアメリカ政府の産業政策との関わりから検証することを目指した。
著者
姉崎 洋一 木村 純 光本 滋 千葉 悦子 浅野 かおる 長澤 成次 町井 輝久 町井 輝久 石山 貴士
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、世紀の時代転換期において、大学が迫られている知識基21盤型社会への主体的対応、さらには研究・教育・社会貢献のありようについての比較調査研究である。とくに、日中韓の東アジアにおいて大学のガバナンス、マネジメントにおいて、どのようなリーダーシップとパートナーシップがとられようとしているかについて、実証的動態分析を行った。今後の方略についての貴重な実践的知見が得られたといえる。
著者
北坂 真一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主な結論は次の通り。第1に、日本の大学のデータを検討し、当局による大学行政を産業組織論の観点から再検討することが有益であることを指摘した。第2に、国立大学81校や私立大学107校のパネルデータを使いトランスログ費用関数をそのコストシェア方程式とともに同時推定することによって、規模や範囲の経済性が存在することを示した。第3に、国立大学のパネルデータを使い確率的フロンティアモデルを推定することにより、その非効率性の存在を明らかにした。第4に、国立大学の集計された時系列データを使い生産関数を推定し、大学教育の技術進歩率が年率0.4%~0.8%程度と低いことを明らかにした。
著者
加地 大介
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、時間生成を重要な実在的様相のひとつと考える立場から、時間生成にまつわる存在論的推論を適切な形で処理できる時間論理の形式体系を構成すること、そしてその形式体系を前提として、時間生成をその中心的位置に組み込んだ包括的存在論を構築することを目的として行われた。前者に関しては、(命題)時間部分論理PS4.3を構成した。PS4.3は、ディオドロス様相論理として知られているS4.3という体系によって単純部分論理SPLを時間化した体系である。S4.3はそれを特徴づけるクリプキ・フレームが稠密順序列となるので、そこにおける可能命題は、稠密直線時間上の現在または未来の少なくとも一つの時点において真であることを主張する命題として解釈することができるのである。PS4.3の構文論と意味論を規定したうえで、タブローによるその証明論を構成し、健全性・完全性・決定可能性が成立することを示した。後者に関しては、単純部分命題論理にもとづいて時制主義的な存在論を構築する方法を提示した。また、いくつかの式を公理として追加することにより、PS4.3に基づいて実体主義的な時間様相の形式存在論を構成できることを示した。さらに、タイムトラベルの可能性と時間生成の実在性という、時間に関する二つの具体的な存在論的問題についても考察した。前者については、実体の歴史に即した形で実在する過去と実在しない未来という区別を行い、少なくともパラドクスを引き起し得るような過去へのタイムトラベルは不可能であることを示した。後者については、できごとの生起自体のなかに可能性から必然性への変化・非実在性から実在性への変化という時間的方向性が含まれていることを示し、そこに時間生成の実在性を見出すべきであることを主張した。
著者
別所 遊子 長谷川 美香 細谷 たき子 出口 洋二 安井 裕子 吉田 幸代
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

目的 在宅痴呆症高齢者の,基礎調査後10年間の死亡率,死因および死亡の場所を調査し,また存命者とその介護者に対して生活の状況の調査を行い,痴呆症高齢者に対する地域看護援助のための基礎データを得る。対象と方法 1992年に福井県K市において,在宅高齢者全員を対象に実施した生活基礎調査,および二次調査により,精神科医が痴呆症と診断した201名について,死亡の状況を人口動態調査死亡標等により調査した。また,存命者とその介護者に面接し,ADL等の状態を調査した。結果 (1)痴呆症コホート201人のうち,10年後の死亡者は170人,転出者は3人であった。(2)痴呆症コホートの実死亡数は,K市の同年齢層の高齢者について算出した期待死亡数(年齢補正)の,1.42倍であった。(3)Kaplan-Meier生存曲線による平均生存時間は4.32年で,死亡関連要因として,男性,後期高齢者,鑑別不能型,中等症・重症,寝たきり,歩行障害,食事障害,等が,またCox比例ハザードモデルによる分析では,性別,年齢階級,寝たきり,歩行障害が抽出された。(4)痴呆症高齢者は脳血管疾患で死亡する割合が高く,脳血管性痴呆では全死因の約半数であった。(5)在宅者は入所者よりもADLの自立度が高かった。(6)在宅継続の要因として,痴呆症高齢者のADLが高く,寝たきり度が低い,介護代行者がいる,介護者に被介護者に対する愛情があり,介護継続意思が強い,などがあげられた。考察 本研究の対象者は,一市における全数調査において医師により診断された集団であり、死亡状況を人口動態調査票から把握したので,データの信頼性が高いといえる。本研究の結果から,痴呆症の発症および予後のために脳血管疾患の予防が重要であり,痴呆症高齢者の生活の質と生命予後のためには,歩行能力の維持,寝たきり予防が重要であるといえる。
著者
小川 尚 羽山 富雄 長谷川 佳代子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ラットの味覚野では機械受容ニューロンが機能円柱を形成していることはWang and Ogawa (2002)が先に報告したが、本研究では味覚ニューロンの円柱構造を研究することを目的とした。ラットの大脳皮質味覚野は眼窩と岩様骨の間で、嗅状溝の背側部の島皮質前部にあり、電極を皮質表面に垂直に刺入するために。既成のマニピュレータを組み合わせることにより首振り可能な3次元マニピュレータを作成した。ラットの大脳皮質味覚野にいろんな角度で記録電極を刺入したラットの大脳皮質味覚野に種々の角度で記録電極を刺入し、表面近くより50-100μmステップで四基本味+グルタミン酸ソーダの全口腔刺激に反応するマルチユニット神経活動を記録し、パソコン上で自家製ソフトによりユニットを分離して味覚ニューロン活動を同定し、四基本味+グルタミン酸ソーダに対する応答プロフィールおよび口腔内受容野を調べた。味覚ニューロンは多くの場合1-2個が連続的に記録されるに過ぎなかったが、数例で5-6個が連続的に記録できた。四基本味+グルタミン酸ソーダ中最も大きい応答を生じる刺激をベスト刺激とすると、ベスト刺激は殆ど1個毎変化したが、偶に最大で4〜5個連続して同じベスト刺激を共有するニューロンが見い出され受容野の位置が変化することがあった。それに反しベスト刺激が変化するにも関わらず同じ箇所に受容野は連続して見い出されることもあった。特に、複数の味刺激に同じように大きい応答を生じるニューロンが連続して記録される場合に口腔全体に受容野を持つ例があった。同じ円柱内ではベスト刺激や受容野を共有すると仮定すると、受容野を共有する円柱サイズは約20ミクロン、ベスト刺激のみを共通とする円柱は約30ミクロンと推定された。これは機械受容性受容野をもつ持たないに関わらず、この所見は当てはまった。円柱のサイズを確認するために、最初の電極刺入点近くで、やや角度を変えて第二の電極を刺入して、味覚ニューロンを調べた。円柱サイズが小さいためか、サイズを調べる有効な手段とはならなかった。本研究の1部は2004年7月の国際嗅覚味覚シンポジウム(京都)で発表した
著者
筒石 賢昭
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、1994年に発表された『全米芸術教育標準』の目的、内容、及び実践への示唆を明らかにすることを課題とした。研究の目的は2点に大別され、第一点は、理論的研究として、『標準』の成立過程を歴史的側面より明らかにした。特に『標準』のスコープとシークエンスを平成10年12月に発表された我が国の学習指導要領と関連させながら分析した。第二点は、実践的研究として、この『標準』が実際に現場の芸術教育または音楽教育にどのような影響を及ぼしているか、イリノイ大学やミシガン大学の関係者のインタビューを含んだフィールド調査をすることによって明らかにした。以上の結果、『標準』の事例は、discipline-basedと呼ばれる芸術本来の持つ原理、機能を明らかにしつつも他教科、他分野との学際的なカリキュラムでもあることが分かった。この『標準』の意義はつぎのようなものである。(1)音楽における知識・技能を多様な角度から理解・獲得できるよう、「学際的・総合的な学習」を指向している。(2)「美的一般教育」としての芸術統合教育の発展上にある。(3)コンテクストとの関わりで音楽にアプローチする、「多文化音楽教育」に対応する内容を提示している。(4)芸術教科だけでなく、他教科との関わりを強調することで、音楽の学習を学校教育における他教科との学習に有機的に結び付けている.また教師教育という観点からも、「全米音楽教育者会議」MENCは大学の教員養成カリキュラムの実施にも積極的に支援した。
著者
鈴木 廣一 西尾 元 田村 明敬 宮崎 時子
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究の契機はABO式血液型(以下ABOと略)遺伝子座でde novoの組換え例を発見したことである。各対立遺伝子の配列からみて、親子のいろいろな型の組み合わせのなかで、de novoの組み換えによって子の表現型に矛盾が生じるというのは特定の組み合わせに限られ、非常に稀なことと考えられる。このことは逆に表現型の矛盾として現れない組換えがかなりの頻度で存在している可能性を示している。このような推察から、一般集団をスクリーニングした結果、組換え体ががなりの頻度(1〜2%)存在していることを明らかにした。これらの組換え体をまとめると、12種類の可能な組み合わせのうち、A1-O1、B-A1、B-O1、B-O1v、O1-O1v、O1v-A1、O1v-Bという7種類の配列構成(例えばA1-O1というのは、遺伝子の5側がA1遺伝子の、3側がO1遺伝子の配列であることを示す)であった。O1v-Aには配列の変換領域が異なるものがあったので、あわせて7種類8個となる。これらはいずれも、エクソン2から7までの間に配列の変換領域をひとつもっていたが、イントロンVとエクソン7の2ケ所に変換領域のあるO1v-B-O1vという配列構成をもった組換え体も見いだした。この組換え体の成因としては交叉よりも遺伝子変換が考えやすい。以上のように、わずか300人足らずの集団調査で、予想される組換え配列12とおりのうち7つを見いだしたことは、ABO遺伝子領域では、新規の組換えを繰り返してきていることを示している。近傍に相同の配列をもった遺伝子などが報告されていないことから、相同遺伝子がタンデムに配列している領域に起こりやすい交叉よりも、遺伝子変換のような機構が関わっている可能性が高く、高等生物における遺伝子変換機構を研究するモデル領域になると考えられる。
著者
金山 萬里子 金山 弥平
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近世哲学の発展に多大の影響を与えたセクストス・エンペイリコス(紀元200年頃)の著作に認められるピュロン派懐疑哲学は、それまでの懐疑主義的議論、なかんずく前3世紀に懐疑主義に転換したアカデメイア派の諸議論を取り入れつつ、ギリシア認識論を集大成し、哲学の全領域を反省的に振り返るものであった。本研究では、セクストス著作におけるピュロン派、アカデメイア派の諸議論を通して、古代懐疑主義の特徴を明らかにし、現代認識論への新たな視点を提供しよう試みた。
著者
根ヶ山 徹 尾崎 千佳
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

山口大学総合図書館・人文学部・経済学部東亜経済研究所が所蔵する和古書と漢籍について,各部局の前身校である明倫館・山口明倫館・越氏塾・山口高等商業学校・山口高等学校から継承したもの,昭和24年5月に新制大学として発足して以降,徳山毛利棲息堂・庶民史料・若月紫蘭・赤松智城・四熊宗直・浅山良輔など聚書家の寄贈により収庫に帰したもの,その他,先覚の尽力によって意欲的に蓄積されたものを全面的に調査し,『山口大学所蔵和漢古典籍分類目録』を完成させた。
著者
中村 裕之 荻野 景規 長瀬 博文 吉田 雅美
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

低レベルマイクロ波の全身暴露によってもたらされる内分泌免疫系への影響を脳内神経伝達物質との関連において解明することを目的に、マイクロ波(周波数2,450MHz、強度2mW/cm^2、90分間)暴露による脾臓細胞中ナチュラルキラー細胞活性(NKCA)、血中の諸指標と下垂体と胎盤のβ一エンドルフィン(βEP)の変化を妊娠ラットあるいは処女ラットにおいて検討した。このレベルのマイクロ波は、処女ラット、妊娠ラットでそれぞれ、0.8と0.9°Cの温度上昇をもたらしたが、血中コルチコステロンへの有意な変化は引き起こさなかった。処女ラットでは認められなかったが、妊娠ラットのマイクロ波暴露群のNKCAは非暴露群に比べ有意に減少した。オピオイド受容体拮抗剤であるnaloxoneの前処置では、妊娠期におけるマイクロ波によって低下したNKCAと、上昇したPRL、低下した視床下部medianeminenceのCRHをreverseした。一方、CRH受容体拮抗剤であるα-helicalCRHのicv投与によっても同じく、マイクロ波暴露によって上昇した血中プロラクチン(PRL)と下垂体βEPと、減少したNKCAをreverseした。これらの結果から、妊娠中のマイクロ波暴露による免疫機能低下には、マイクロ波暴露に際して視床下部CRH神経系と、視床下部あるいは下垂体のオピオイド神経系が刺激され、その結果、下垂体PRLが活性化されるという中枢性機序が考えられた。その際のマイクロ波による生体影響は、マイク口波の温熱作用と非温熱作用の両作用によると考えられた。
著者
河名 俊男
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1771 年に宮古・八重山諸島に襲来した明和津波の各島での最高遡上高は、宮古島で約10m、多良間島で約15m、石垣島で約30mと推測される。各島の津波石の年代測定から、明和津波以前の津波として、西暦1667 年、西暦1500 年、約500 年前、約1000 年前、および約2400 年前の時期が推定される。1951 年のルース台風と2007 年の台風4 号の高波による岩塊の打ち上げと移動を確認した。沖縄島周辺島の古宇利島の海岸地形から、海食崖の後退規模を推定した。
著者
浦野 茂 水川 喜文 中村 和生
出版者
三重県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、発達障害者(とりわけ広汎性発達障害の小学生高学年の児童)の療育場面の相互行為の構造を、社会生活技能訓練(SST)を事例としながら、エスノメソドロジー・会話分析の手法によって解明することである。この結果、次が明らかになった。 (1)療育場面は、 児童の積極的参加を不可欠な資源とした相互行為として構成されている。(2)療育場面の相互行為の中心的部分は、参加者の行為上の問題を積極的に可視的にする技術と、それによって可視化された問題に対して参加者が療育者とともに修復していく実践から、成り立っている。(3)療育場面は、一方で児童の積極的な参加に依拠しながらも、他方でその行為を問題の顕れと修復の実行という観点のもとで療育者によって受け止められていくという、強い制約をもつ。したがって今後の課題は、こうした制約から自由な、発達障害者への支援実践について検討することとなる。
著者
所 道彦
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、家族政策の国際比較研究におけるウェルビーイングのインデックスを設定するための基盤研究である。「チャイルドウェルビーイング」という概念に焦点を当てて国際比較研究を行うための手法に焦点を当てることとし、文献研究と海外におけるヒアリング調査を行った。その結果、「主観的ウェルビーイング」の尺度の用い方、各領域別のウエイトの置き方について依然として課題が残っていることが明らかになった。