著者
中村 祐司
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

スポーツ基本法の制定を含むスポーツ振興事業をめぐる諸改革が、スポーツ団体や企業スポンサー、日本体育協会、日本オリンピック委員会、地方自治体のスポーツ行政担当組織、さらには地域コミュニティのスポーツ活動環境にどのような影響を及ぼしたのかという視点から、東日本大震災後の状況の変化に注目しつつ、以下のようなテーマを設定し、日本におけるスポーツ行政のガバナンス変容に関わる諸論文を作成した。すなわち、「スポーツ行政・ガバナンス研究の分析枠組み」「東日本大震災による地域スポーツガバナンス拠点の損失」「スポーツガバナンスにおける好循環・連携・協働の分析枠組み」といったテーマで、論文作成と提言等を行った。
著者
原 晃一 岡野 栄之 伊藤 豊志雄 疋島 啓吾 井上 賢 澤本 和延 金子 奈穂子 豊田 史香 小牧 裕司 牛場 潤一 武見 充亮 塚田 秀夫 岩田 祐士
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

コモンマーモセットを用いた、開頭を必要としない低侵襲脳梗塞モデル作成法が確立された。統一した手技によって信頼度の高い確率でモデル作成が可能となった。本モデルは大脳基底核を中心とした広範囲な脳梗塞を呈し、病巣と反対側の半身運動麻痺を来たす。本モデルにおいてはこのような神経学的異常所見を客観的に評価するための行動学的解析や、MRI、PETを含めた放射線学的解析が可能であり、げっ歯類に比べ、よりヒトに近い脳梗塞モデルであると考えられる。さらに神経新生などの評価のための組織学的検討のみならず、定位的脳手術による細胞移植も可能であり、今後の脳梗塞治療研究に非常に有用なモデルであると考えられる。
著者
山本 真行
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

地球温暖化等グローバルな地球大気の理解に重要な熱圏大気の精密測定は難しい。希薄大気中では太陽紫外線等により1%未満が電離しプラズマ大気としてレーダー等で計測できる一方、99%以上を占める中性大気計測は非常に困難で熱圏の理解を阻んできた。観測ロケット放出TMA(トリメチルアルミニウム)による人工発光雲の光学的追跡から夜間の高度160 km付近までの中性風計測手法が確立されたが、昼間の観測手段は未確立であった。我々はロケット放出リチウム(Li)の太陽共鳴散乱光を用い昼間熱圏中性大気風の測定技術を確立するため日米共同ロケット実験を2013年7月に実施し20分間の発光雲観測に成功、同測定技術を得た。
著者
坂井 聰 浅香 正
出版者
(財)古代学協会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は,古代イタリアにおける都市起源の歴史的状況を,紀元前5世紀を中心に文献・考古学の両面から考察することを目的とした。研究代表者坂井は,主としてイタリア中南部のカンパニアを対象地域とし,まず前8〜5世紀における文化的状況を考古史料をもとに概観し分析を加えた。その結果を踏まえこの地域における都市の代表例として,ポンペイ遺跡をとりあげ,その都市起源に関するデータを過去の発掘報告から抽出した。とりわけ城壁建設の起源とその変遷過程に注目し,現存する城壁に先だって少なくとも2種類のより古い段階の城壁が存在することを,古代学的証拠より確認した。そのうち最も古い段階の城壁は,併存する遺物から見て前6世紀に建設されたと考えられ,先に概括したこの時期のカンパニアの全般的な政治・文化状況から,ポンペイ都市建設が,エトルスキ人の影響下に行われたとする結論を導いた。その次の段階の城壁は、従来の研究によればエトルスキ段階以降の前5世紀の建設であるといわれてきたが,ポンペイ遺跡の他の発掘データと比して,この時期に大規模な城壁建設が行われたとは考えにくく、前5世紀以降の建設である可能性を指摘した。またポンペイ都市における公共建造物の建造を中心に,都市建設後の発展に関する歴史的背景研究を行い,都市の本格的成立はヘレニズム時代以降のことであることを明らかにした。研究分担者浅香は,以上のカンパニアにおける状況と対比して,中部イタリアを対象に都市建設の歴史的背景を研究した。とりわけローマの都市起源問題を,伝承・考古史料の両面から検討し,前7〜5世紀におけるイタリア半島中南部の都市建設に関する全般的な研究見通しを立てるための,基礎的研究を行った。
著者
金子 恵美子
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

当初の予定通り、前期後期の二回にわたり、対象群、実験群の学生それぞれ20名程度の発話を、13回程度の訓練の前後で録音し、それを書き起こした後、複雑さ、流暢さ、正確さの変化を測定した。その結果、前期においては大きなタスク効果(発話を引き出すために使用された質問が、学習者の発話に影響を与えること)が出てしまい、作動記憶効率化訓練の効果はタスクによる影響を取り除いたという想定のものとにしか結論づけることができなかった。一方、後期は作動記憶効率化訓練を行った学生の発話の変化を詳細に分析した。学生の構文的複雑さや長さが向上しても、流暢さ劣化することはなかったが、間違い数が増加した。つまり、複雑さと正確さのトレードオフ現象が観察された。また流暢さの伸びと、訓練当初の流暢さには負の相関関係がみられた。このことは、訓練開始時にすでに流暢に話せる学生は、作動記憶効率化訓練を行っても流暢さが伸びるわけではないことを示す。昨年度の結果から、極端に発話スピードが遅い学生には、このような訓練が有効であることがわかった。
著者
安達 登
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

東北地方縄文人のミトコンドリアDNAの遺伝子型を明らかにすべく、東北大学所蔵の東北地方縄文人骨・計35個体を試料としてDNAを抽出し、ミトコンドリアDNA(mtDNA)解析によりこれら人骨の遺伝子型を明らかにすることを目的として研究を進めた。すべての試料について、control regionおよびcoding regionの塩基置換をダイレクトシークエンス法およびamplified product-length polymorphism(APLP)法を用いて検出した。得られた結果をもとに、現代人のデータベースを用いて東北縄文人骨のmtDNAをハプログループに分類した。検査した35個体のうち、14個体について結果が得られた。観察されたハプログループは、N9b(7個体)、M7a(6個体)、D4b(1個体)の3種類であった。前年度までの研究で「縄文的遺伝子型」の有力な候補の一つと推定されたハプログループN9bは全体の50%と高頻度に観察され、北海道縄文人の分析結果と併せ考えれば、このハプログループが「縄文的遺伝子型」の一つであることは、少なくとも北日本においてはほぼ間違いないものと考えられた。しかし、北海道縄文人と比較すると、東北縄文人ではM7aが著しく高頻度であり(北海道で6.4%に対して東北では42.9%)、北海道でみられたD1aおよびG1bが観察されず、現代日本人で主体的なハプログループであるD4bが1個体のみではあるがみられるなど、これらの縄文人集団は遺伝的に必ずしも近縁であるとはいえないと考えられた。なお、東北縄文人の分析結果は既報の関東縄文人の分析結果とも大きく異なっており、今回の結果から縄文時代には既に日本人に遺伝的地域差がみられた可能性が示唆された。
著者
宮崎 歴 大石 勝隆 勢井 宏義
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は睡眠リズムのパターンを乱すようなこれまでの断眠ストレスとは異なる新規のストレス負荷方法 (PAWWストレス: Perpetual Avoidance from Water on a Wheel)を見いだした。PAWWストレスをマウスに負荷すると睡眠覚醒の日内リズムが乱れ、入眠障害や活動期の眠気、休息期の頻繁な覚醒などを示す。このモデルマウスに対し、食品成分の投与を行い、その睡眠に対する影響評価を行った。また、睡眠障害モデルマウスのから血液を採取し、NMRによるメタボローム解析を行い、睡眠障害のバイオマーカーになるような代謝物の差異が認められるかどうかを検証した。
著者
濱野 香苗
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

介護保険の導入が高齢者の生活上でのサポートシステムに与える影響を評価することを目的に、佐賀県の離島在住の第1号被保険者及び第2号被保険者の身体的、精神的、社会的、霊的面への介護保険の影響を明らかにした。第1号被保険者には平成17年6月〜11月、半構成的質問紙を用いて面接調査を行った。性別は男性50名、女性70名、年齢は65〜97歳、平均76.3歳であった。家族構成は配偶者と2人暮らし31.7%、配偶者と子供家族と同居26.7%、子供家族と同居23.3%、独居18.3%であった。介護保険導入により高齢者センターが建築され、入浴を含むデイサービスが開始された。それに伴い、老人会はデイサービスを手伝うボランティア活動を始めた。デイサービスや送迎バスの利用は、坂道が多く活動範囲が制限されていた第1号被保険者にとって、身体的に安楽になったばかりでなく、楽しみが増え、精神的にも良い影響があった。社会的、霊的面への影響はなかった。地域を基盤とした精神的サポート、手段的サポート、日常生活での支え合い等のサポートシステムは高い割合で維持されており、介護保険の影響は見られなかった。生活への影響は、少ない年金から介護保険料を引かれることによる経済的影響、デイサービスやボランティアに行くようになったことであった。第2号被保険者には平成18年6月〜12月、半構成的質問紙を用いて面接調査を行った。性別は男性51名、女性53名、年齢は40〜64歳、平均53.1歳であった。家族構成は親と同居51.9%、配偶者と2人暮らしおよび配偶者と子供と同居20.2%、子供と同居および独居3.8%であった。第2号被保険者においては、身体的、精神的、社会的、霊的面への介護保険の影響は見られなかった。また、地域を基盤としたサポートシステムへの影響も見られなかった。生活への影響は介護保険料に対する負担感であった。
著者
山延 健
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高分子の融液からの結晶化は、材料成形プロセスおよび成形物の構造物性と密接に関係する極めて重要な過程である。従って、結晶化過程をリアルタイムで解析し、また結晶化物を平均値としてではなく、局所的に超微細構造解析し、結晶化機構を解明することは、学問的にも工業的にも重要な課題である。NMR法は結晶化過程、特にダイナミックスについてリアルタイムに観測する有用な方法である。本研究では、パルスNMR法の高感度化を行い、更に様々な応力下で測定を可能にし、溶融結晶化機構をリアルタイムで解明するともに、結晶化過程の結晶の生成、成長、厚化等を詳細に解明し、高分子材料成形の基礎的研究手法を確立することを目的とする。上記の目的のためにまず、プローブの高感度化を行った。これはプローブのフィリングファクターを改善することで達成される。そこで、試料管径を半分の5mmとしてプローブの設計を行った。その結果、プローブの感度が約20倍向上した。このプローブの性能を確認するためにポリプロピレンの重合パウダーの構造解析を行った。ポリプロピレンの重合パウダーは結晶化度が非常に低く、これは重合直後の結晶化により、通常の結晶化とは異なる機構で結晶が生成しているものと考えられる。そこで重合パウダーの熱処理による結晶化挙動を調べることにより、元の重合パウダーの構造を推定した。その結果、重合パウダーでは結晶部のサイズが非常に小さく、周りの中間相や非晶の運動開始により容易に結晶成分の構造が壊れることが明らかになった。また、上記のプローブをMXD6ナイロン、ポリカーボネートの結晶化機構の解析に応用し、結晶化の詳細な解析をすることができた。また、応力下の測定として延伸状態での測定を超高分子量ポリエチレンについて行った。その結果、この手法により絡み合い状態の解析方法を確立することができた。
著者
吉田 敬 高村 明 梅田 秀之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではr-processやνp-processなど重元素合成に関するネットワークの拡張やニュートリノ駆動風におけるこれら重元素合成の計算を行い,r-processのベータ崩壊率に対する依存性や極超新星のニュートリノ駆動風におけるνp-processについて調べた.しかしニュートリノ自己相互作用については動径方向近似での計算は可能となったが角度依存性の導入や最終的な定式化には至らなかった.そのため今後も研究を継続していきたい.超新星元素合成についてはニュートリノ元素合成で作られるフッ素の銀河化学進化や超巨大質量星を起源とする極超新星における元素合成の特徴を明らかにした.
著者
永松 敦
出版者
宮崎公立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

従来の狩猟研究は東北地方のマタギや九州地方の山間部の狩猟習俗を研究対象としてきた。総合地球環境学研究所の研究プロジェクト「日本列島における自然-自然相互関係の歴史的・文化的検討」2007~2011(研究代表者、湯本貴和氏)に参加する機会を得て、阿蘇地方を調査することができたのが、私の研究の大きな転換点であった。阿蘇と同様の視点で諏訪・富士山麓にも足を運んだ。現実的には、生物の個体数維持が大きな要因であることを理解するようになった。
著者
梅宮 典子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

気温30℃RH60%の条件に設定した人工気候室において、被験者前方2mの気流吹き出し壁床上1.5mに扇風機を顔面にむけて設置し、夏季の日中に、気候馴化が完了したと思われる時期の19名の大学生を対象に、1回の実験内において扇風機を運転⇔停止して気流条件を変更する実験をおこない、気流が変化する場合の局所発汗速度による発汗反応の変化と主観申告による熱的快適性について考察した。結果として、(1)被験者顔面近傍(前方30cm)における平均気流速度、変動係数は、運転時で0.71m/s,37.1%,停止時で0.043m/s,46.5%,(2)運転時、停止時とも、温冷感はNeutralより暑い側,発汗感は中立より「汗をかいていない」側,(3)停止時には気流が「弱すぎる」一方でその他の気流評価には左右に差がなく,運転時には「つめたい」,「さわやかな」,「涼しくなった」,「快適になった」側にある一方で「強さ」には左右に差がない,(4)室内雰囲気評価は「暑苦しい」以外で扇風機運転を経ることによって改善したが,「暑苦しい」は第二回停止時に最も評価が低くなる,(5)局所発汗速度は全実験を通じて0〜0.20(mg/cm2/分)の範囲にあったが,その経時変化特性は実験あるいは被験者によって異なる,(6)局所発汗量は、同一実験における運転時と停止時のあいだで、r=0.71〜0.96で相関が高い,(7)発汗申告は申告時の発汗速度を必ずしも反映しない,(8)温冷感申告と発汗速度とはほぼ関係がないが、発汗速度が大きい場合には、発汗速度が大きいほど暑い側の申告が得られる,(9)運転時には発汗速度が大きいほど快適側に申告する場合がある,(10)停止時には発汗速度が大きいほど不快側の申告が得られる場合がある,ことが明らかになった。一方,文献調査によって発汗申告評価の歴史的変遷を調べ,(11)温感研究の初期には発汗の主観申告が重視されていたことを確認した。
著者
金井 景子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、朗読を用いて中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラムとそれを実践し得る教員を養成するためのプログラムの作成を目的とするものである。開発したプログラムは以下の通りである。(1)中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラム(1)近現代の詩歌教育に関するプログラムの開発・実践(2)古典教育に関するプログラムの開発・実践(3)国語科発信の総合学習向けプログラムの開発(2)教員養成のためのプログラム(1)教職関連科目における朗読指導の学習プログラムの開発・実践(2)教職関連科目における「落語」を使用した学習プログラムの開発上記のプログラムはすべて、早稲田大学の教職関連科目「中等教育国語科インターンシップ」および「授業技術演習C」において実施されている。
著者
市川 定夫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

環境制御した培養液循環(NSC)栽培装置内でムラサキツユクサBNL4430株(青/ピンクのヘテロ株)の若い花序をもつ根つきshootsを大量に育て、雄蕊毛におけるピンク色体細胞突然変異誘発頻度を指標として、異なる変異原間の相互作用機構の研究を行った。これまでに調査した5種類の単一作用型のアルキル化剤、メチルメタンスルホン酸(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、エチルメタンスルホン酸(EMS)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)のうち、MNUはX線と加算効果しか示さないが、他はすべてX線と明白な相乗効果を示し、X線との相乗効果とその現れ方がこれらアルキル化剤のSwain-Scott基質係数(s)、すなわち、MMS:0.88、DMS:0.86、EMS:0.67、MNU:0.42、ENU:0.26と必ずしも一致していなかった。そこでやはり単一作用型のアルキル化剤である硫酸ジエチル(DES)とX線との相乗効果を調査したところ、明白な相乗効果が見られたものの、その現れ方は、やはりs値とは一致しなかった。また、MMSとEMSの間では明白な相乗効果が見られたのに対して、MNUとEMSは単に加算効果しか示さなかった。一方、これまでに調査した3種類のプロミュータジェン、マレイン酸ヒドラジド(MH)、o-フェニレンジアミン(PDA)、N-ニトロソジメチルアミン(DMN)のいずれもが、X線照射後処理では明白な相乗効果を示したに対して、処理後X線照射では相殺効果を示し、ペルオキシダーゼ活性が、前者では高まるのに対して、後者では抑えられ、この酵素がこれらプロミュータジェンの活性化にかかわっていることが判明していた。ただし、DMN、PDA、MH処理中X線照射は、それぞれ相乗、加算、相殺効果を示していた。今回調査したプロミュータジェンでありかつ二作用型のアルキル化剤である1,2-ジブロモエタン(EDB)処理中のX線照射は明白な相乗効果を示したが、MHとEMSは常に相殺効果を示した。従来の結果と新たに得られた結果から、アルキル化剤、X線、および体内で活性化されて変異原となるプロミュータジェンが、DNA鎖切断、染色体切断など少なくとも部分的に共通の作用機構をもつ場合に相乗効果が現れ、そうでない場合には加算効果のみとなり、プロミュータジェンの活性化が他の変異原で阻害されると相殺効果を示すものと考えられる。
著者
山口 謠司 田中 良明
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

さまざまな携帯端末が、「本」の形を大きく変えようとしている。紙に印刷された「本」は、いずれ失われる時が来るのであろう。第一次世界大戦が始まったちょうど百年前、「本」は、知識や技術を伝えるためにはなくてはならないものであった。そして、その「本」を巡って焚書が行われ、また「本」によって国の運命が左右されるということが起こったのである。第一次世界大戦は、有線、無線による通信網の発達を促し、それまでの時代と一線を画すグローバル化の契機となった。我が国は青島の攻撃を行うことでドイツ総領事に置かれた書籍を鹵獲した。そして、同時にドイツが攻撃したルヴァン大学の図書館の再興のために書籍が寄贈された。
著者
岡本 哲和 石橋 章市朗
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010年参議院選挙および2011年大阪市長選挙におけるインターネット・ユーザーを対象とした調査によって、以下のことが明らかになった。(1)投票先の決定におけるインターネットからの影響の受けやすさに対して、政治知識が及ぼす影響は非線形的であった。すなわち、投票先の決定においてインターネット上の選挙情報から影響を受けにくいのは、政治知識の程度が低い有権者およびそれが高い有権者であった。それに対して、最も影響を受けやすいのは、政治知識の程度が中程度の有権者であった。(2)投票先の決定におけるインターネットからの影響の受けやすさに対しては、年齢の及ぼす効果はきわめて限定的であった。
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

九州周辺には各地に島嶼が存在する。それらの島嶼は古来、国内外を巡る航路以上に位置し、また、歴史的に中国・朝鮮半島・沖縄(琉球)といった「異国」と接する境界領域に位置したことから、各島嶼の民俗芸能は国内外から政治的・文化的等、様々なかたちで多大なる影響を蒙ってきた。こうしたことは、これらの島嶼の多種多様な民俗芸能の理解にあたっては、それらを、文化的・歴史的・地域的に形作られてきた多様性に富む存在として、それぞれの島嶼の文脈において精確に見ていくことが必要となることを示している。
著者
平山 文俊 庵原 大輔
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

シクロデキストリン (CyD) の包接作用を利用して、溶液媒介性結晶多形転移ならびに結晶成長速度の制御を試み、以下の知見を得た。① アセトヘキサミドを 2-ヒドロキシブチル-β-CyD含有水溶液から再結晶すると、新規結晶多形 (Form VI) が得られた。新規多形 Form VIは安定であり、他の結晶多形 (Forms I~V) に比べて高い水溶性を有した。② 2,6-ジメチル-β-あるいは2-ヒドロキシブチル-β-CyD含有水溶液からアスピリンを再結晶すると晶癖は板状から針状結晶に変化した。2-ヒドロキシブチル-β-CyDは多形転移あるいは晶癖制御剤として有用であることが明らかとなった。
著者
勝俣 隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、内外の中世小説の伝本を閲覧し、書誌学的調査を行い、資料を多数入手した。また、中世小説の挿絵と本文の関係について考察した。入手した伝本の中で優れたものは、ライデン民族学博物館所蔵『貴船の本地』の翻刻と解題のような形で公にした。説話では、七夕・羽衣等と中世小説の関係を考察した。特に、日本文学で、人間と動物の結婚についての法則を論じたものは意義がある。さらに、黒田日出男氏のコード論を利用して、渋川版における「遠山」のコードを分析した。最後に、まとめとして、中世小説の伝本が、海外に所蔵される経緯について論じた。
著者
山本 いずみ
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、明治期の新文体の創造期における、翻訳文学が文章語に与えた影響について、ミステリー小説という極めて大衆的な分野から見ることにある。そのために、以下のようなことを行った。平成15年度:E.A.Poe原作"The Black Cat"の明治期の翻訳(広い意味での)を集め、原文に沿う形で切り分け、Excelの一覧表とする作業を中心に研究を進めた。用いた資料は、饗庭篁村「西洋怪談黒猫」(明治20年11月『読売新聞』)から平塚らいてう「黒猫」(明治44年12月『青鞜』)までの6作品であった。また、明治期の翻訳という観点からShakespeare原作"Hamulet"の翻訳6本を取り上げて比較検討し、「それぞれのハムレット」(名古屋工業大学紀要第55巻)としてまとめた。平成16年度:榎本破笠「蔦紅葉」(原作は"The Murders in The Rue Morgue"明治25年11〜12月『やまと新聞』)を中心に研究を進め、前年度の"The Black Cat"に関する考察を「独白する者-"I"の変遷-」としてまとめ、名古屋言語研究会で発表した。また、明治期の翻訳語という観点から「情報」という言葉の変遷を論文「情報通」(『人間社会論集IV技術社会のバックグラウンド』vol.4所収)としてまとめた。平成17年度:伝統的な和文脈「私…われ/わが…」および漢文脈「余…われ/わが…」が新しい書き言葉「私…自分/自身…」へと移り変わる様相を「日本の『黒猫』における一人称代名詞の変遷について-Edgar Allan Poe原作"The Black Cat"-」(『児童文学翻訳作品総覧アメリカ・ギリシャ・アラブ編』所収)をまとめる一方で、『現代語で読む「松陰中納言物語」付本文』(和泉書院)を著わし、和文脈の中においてどのように会話文が成立しているかについても検討した。以上より、使用された人称代名詞の変化と文体の密接な関係を利用することで、文体変化の一端を明らかにすることができた。また、研究の過程で、独白文と会話文で用いる人称代名詞が異なることに興味を惹かれた。今後は、この点を掘り下げ、会話文の独立と新しい書き言葉成立の関係を明らかにして行きたいと考えている。