著者
曽根 誠一
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

主要伝本のコピーに、書き入れ等の朱・青筆の区別を記入する作業を完了し、それを踏まえて、蘆庵本の特徴を判断する基礎データを24家集について収集した。その結果、伝本には臨模本と校訂本の2系統があることと、伝本間の親疎関係を解明した。また、入江昌喜所蔵家集が全て蘆庵本になった訳ではないことを、『俊頼集』を事例して証明した。
著者
中村 信次
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚刺激による自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元的布置の効果を心理実験を用いて検討し、(1)視覚刺激の奥行き知覚に変動がない条件においても、視野中心部に呈示された視覚刺激は、同一の面積をもつ周辺刺激と同等の強度を持つベクションを誘導可能であること、(2)静止背景によるベクション抑制には視野の周辺部が、静止前面によるベクション促進には視野の中心部がより大きな影響を持つこと、などを明らかとした。
著者
山本 利和
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

視覚に障害を持つ幼児であっても移動経験が増すことによって空間理解力や移動能力が高まると予想される。つまり、移動に伴う衝突などの危険性をなくし、子ども自身が移動は不愉快なものではないことを解るようになれば、視覚障害児の移動は一層増加し、視覚障害児の定位能力や移動能力が高まると考えられる。そこで、本研究では以上の促進効果をもたらすものとして白杖を使用したい移動訓練を2名の視覚障害児に実施し、移動姿勢や環境情報の捉え方の変化についての事例研究を実施した。被験者1の記録は3歳1ヶ月から5歳0ヶ月までのものであり、被験者2の記録は2歳5ヶ月から3歳8ヶ月までのものであった。なお2名の白杖歩行技術としては幼児を対象としていることからタッチテクニックは用いず、白杖をバンパー代わりに身体の前方に出し床を滑らせる方法(対角線テクニック)を訓練しようとした。また、被験者2にはPusherタイプのプリケーンの使用もさせた。事例から視覚障害児への白杖導入についてのいくつかの示唆を得ることができた。まずプリケーンであるが、被験者2は3歳0ヶ月で白杖を利用できなかった。ところが、同じ日にプリケーンを利用した歩行を容易に行っているため、プリケーンを幼児に積極的に導入する価値は十分にあると思われる。白杖の導入については2名の被験者の結果より3歳を越えないと導入が難しいことがわかった。さらに、白杖を常に体の前方に突き出して歩く対角線テクニックを利用できるのはおよそ4歳半以降であった。階段での白杖使用は4歳台で可能であるが、白杖による階段の終点発見は5歳0ヶ月でも無理であった。
著者
明石 真言 蜂谷 みさを 朴 相姫 高井 大策 安藤 興一 平間 敏靖
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

放射線による血液中アミラーゼレベルの上昇の機序を明らかにするために、唾液アミラーゼの産生、分ヨ泌機構の変化の2つ分けて検討を進めた。マウス、ラット放射線によりマウス、ラット血液中のアミラーゼ活性は増加し、唾液中では減少した。ヒト唾液腺由来の細胞株では、放射線により活性の上昇が観察されなかった為、マウス耳下腺細胞の初代培養を行った。初代培養細胞内のアミラーゼのレベルを免疫染色法、Western法で調べた。照射により分泌顆粒の数は減少し、細胞のアミラーゼレベルは線量に依存して減少した。一方培養液中には上昇が観察された。この細胞は放射線によりapoptosisは誘導されなかった。マウス、ラットの導管を機械的に結紮したところ、血液中のアミラーゼが上昇した。これらのことより、唾液腺で産生されたアミラーゼが何らかの機序で血液中に逸脱している可能性を示した。ヒトアミラーゼを導管より投与し血液中のアミラーゼ活性を非変性ゲルで泳動、染色したところ、照射マウスでヒトアミラーゼが増加していた。光顕像で照射されたラットの耳下腺を非照射と比べると間質腔が広がり浮腫像を呈し分泌顆粒の減少(縮小化)、また一部の腺房細胞に空胞がみられた。さらに、ラットの静脈よりマーカーを投与し、電子顕微鏡で耳下腺の腺房細胞を観察した。マーカーの分子量に係らず、照射ラットでは細胞間隙を通って腺腔にマーカーが観察されたが非照射ラットでは観察されなかった。また唾液腺導管よりマーカーを投与すると、、照射ラットでは細胞内にも観察された。唾液腺細胞は細胞分裂をあまり行わず、放射線抵抗性であると考えられていることから、放射線による血液中のアミラーゼ活性の上昇は、apoptosisや細胞での産生増加によるのではなく細胞間のtight junction機構が破綻し、細胞間隙に漏出したアミラーゼが血液中に逸脱する可能性が示唆された。
著者
小場瀬 令二 斎尾 直子 吉田 友彦 吉田 友彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

筑波研究学園都市はTXの開発により、中心地区は再び活性化したが、開発当初のニュータウンの環境的ストックを食いつぶす超高層大規模マンションが乱立する結果となった。他方駅勢圏から遠い超郊外住宅地においてTX効果はない。今後、持続性を保持していくには、住環境の維持を手がける組織の立ち上げが必要であり、そうでないとすでに衰退の段階に突入しており、現状のままであれば持続性はない
著者
小松 啓子 岡村 真理子
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、保育所が果たすべき社会的役割が変化するなか、今後保育所(園)は家庭の役割を受け継ぎ、深め、発展させていく必要が求められているという前提にたち、伝統的な食文化を取り入れた保育所(園)給食のあり方について検討した。福岡県の京築地区、筑豊地区、福岡地区、筑後地区で開所している522園の保育者を対象にアンケート調査を実施した。調査内容としては、保育活動のなかで取り組んでいる歳時記行事と園児の関わり、給食のなかに取り入れられている行事食の内容、給食のなかに取り入れられている伝統的な郷土食の内容と園児の関わり、保育活動のなかで菜園活動と園児の関わり、地域のお祭りと保育活動とした。同時に、京築地区および筑豊地区の保育所(園)に通っている6563名のを対象に、伝統的な食文化を子ども達に伝承していくための基礎資料を得るために、基本的生活習慣および食生活習慣の実態調査も実施した。我が国においては、伝統的な食文化は家庭において「おふくろの味」を通して子ども達に伝承されてきたが、これからは、そのような機能を家庭だけにとどまらずに、保育所(園)に持たせることが重要と考えられる。伝統的な郷土食を給食に取り入れることにより、これまで軽視されがちだった地城性や季節感を子ども達が体得できるようになることが期待できる。今回の調査から、保育活動のなかに給食を位置づかせ、子ども達が季節感豊かな伝統的な郷土食に関わる環境作りが、健全な心と身体を培うことに直接的につながっていくことが示唆された。なお、地城の伝統的な食文化は、人が生きてきた長い歴史のなかで、地域の食材活用、季節、行事などを背景に、人と人との関わりを通して心豊かな人間の形成に大きく寄与してきたことを考えると、伝統的な食文化を重視した保育活動は子ども達の「心の教育」に必須と言えよう。
著者
森脇 健夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

子どもの学習の物語論的分析は、子どもが授業での経験をどのように意味づけ、自らの文脈に位置づけるか(自らの世界に取り込むか)、という関心にもとづく。本研究では、これまでのさまざまな分野におけるNarrativeに関連する研究を概観すると同時に、子どものNarrativeを分析する際の枠組みを構造主義やstoryの社会学から導き出した。実践分析としては、奈良女子大学附属小学校の小幡肇教諭の一連の実践(「阪神大震災・大研究」)を分析対象とした。「『気になる木』の『はっぱ』をふやそう」という独特のシステムを持つ小幡氏の授業の特質を分析すると同時に、そこで子どもたちが授業体験をどのように意味づけしているか、その意味づけの特徴を分析した。その結果、授業の構造の分析、すなわち共時的な分析によって、多様な物語(個性的な意味づけ)が生まれる条件としての「装置」が必要であること、また、通時的な子どもの「物語」の分析によって、さまざまな事象へのアプローチがその子ども独特のストラテジーにもとづいて行われていること、またそのストラテジーが授業での経験の意味づけに大きな影響を与えていることを明らかにした。こうした分析結果を踏まえて授業技術形成を行っていく必要があるが、これまでの技術とは異なった技術(たとえば「装置」を築いていくこと)を形成していくことの重要性を指摘することにとどめた。教師の力量形成としてこうした技術をどのように身体化していくのか、は次の課題としたい。
著者
竹田 仰
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年,映画館やテーマパークでのVRシアターにおいて,映像や音響の効果に合わせて風や水滴などを提示して触覚情報を与える演出が多くなっている.例えば,乗り物に乗っているときには風を吹き付けたり,波しぶきに合わせて水滴を吹き付けたりする.このようにVRシアターにおいて触覚のおける役割は欠かせないものなりつつあるがまだ普及には至っていない.なぜなら触覚ディスプレイは大掛かりな上に一つの装置で表現できる演出も限られている現状にある.そこで,本研究では風圧を制御し,顔面の任意の場所に空気をあてることで触覚を伝える風圧型顔面触覚ディスプレイの提案を行う.本研究では空気砲の原理に着目し,渦輪と呼ばれる空気の塊(渦輪)を適格な風圧で顔面にあてることで,空気を利用した自由な触覚表現が可能なシステムの実現を目的とする.そこで,精密な実験を重ねて空気砲を設計し,コンピュータ制御が可能な風圧型顔面触覚ディスプレイを製作した.製作した風圧型顔面触覚ディスプレイで渦輪の特徴的な印象や演出の幅広さを評価し,印象指標を作成した.そして,移動式の大型スクリーンと組み合わせて使用できるように小型化し,観客に平等な触覚刺激を与える制御システムを製作し,評価した.
著者
内田 篤呉 秋山 光文 荒木 史 有賀 祥隆 今井 康弘 大川 昭典 大下 浩司 奥村 公規 河合 正朝 木村 法光 宍倉 佐敏 下山 進 ジャンジャック ドロネー 城野 誠治 鈴田 滋人 玉蟲 敏子 中井 泉 中野 嘉之 馬場 秀雄 早川 泰弘 林 温 藤本 孝一 増田 勝彦 室瀬 和美 森口 邦彦 柳橋 眞 矢萩 春恵 河野 泰典 矢代 勝也 尾西 勇 柴田 伸雄 中本 久美子 米井 善明
出版者
(財)エム・オー・エー美術・文化財団(学芸部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

科学調査は、東京理科大学・中井泉教授、吉備国際大学・下山進教授らが中心に担当し、型の技法は重要無形文化財保持者・森口邦彦氏、鈴田滋人氏、室瀬和美氏が伝統工芸技術から技法解明を実施した。科学調査の結果は、金地は金泥でなく、金箔とする第1次調査の結果を覆すものであった。有機色料は、波の部分に藍の存在は認められず、青墨の可能性が指摘された。伝統工芸の技法の調査は、金地と流水の境界の輪郭線は、縁蓋(型地紙)を用いた可能性が高いが、流水は型では表現できず、防染剤で描いたものと考えられる。文化財の研究は自然科学のみの調査に頼るのではなく、歴史と伝統の中で蓄積された技術や経験を踏まえることが極めて重要であった。
著者
丹生 健一 志水 賢一郎 大津 雅秀 石田 春彦 菅澤 正 石橋 敏夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

目的:甲状腺疾患は食生活や人種により発生頻度や病態が異なることは良く知られているにも関わらず、日本人のret/PTC遺伝子発現に関する報告は、これまでのところ、ほとんどない。本研究では、日本人の各種甲状腺疾患におけるret/PTCの有無を調べ、病理組織・臨床的事項との相関を検討し、本邦の甲状腺疾患におけるret/PTCの意義を研究した。対象と方法:東京大学附属病院耳鼻咽喉科および神戸大学附属病院耳鼻咽喉科において治療が行われた日本人の各種甲状腺疾患の手術標本を用いて免疫組織染色手法によりret/PTC遺伝子の有無およびp53遺伝子の過剰発現を調べ、得られた結果を、病理組織像ならびに臨床的事項と比較検討した。結果:対象となった症例は濾胞腺腫19例、濾胞腺癌2例、分化型乳頭癌40例、低分化型乳頭癌6例・未分化癌4例、髄様癌2例であった。Ret/PTC遺伝子は、分化型乳頭癌40例中14例に認められたが、他の組織型には全く認められなかった。一方、p53遺伝子の過剰発現は、分化型乳頭癌の中では1例にしか認められなかったが、低分化型乳頭癌6例中2例、未分化癌4例中4例に認められた。臨床的事項との関係を検討したところ、ret/PTC遺伝子は40歳以上34例中12例に認められたが、40歳未満の6例には一例も認められなかった。病期分類との関係では、T分類、N分類、いずれとも相関は認められなかった。一方、慢性甲状腺炎を合併した症例では9例中4例(44%)、慢性甲状腺炎を合併しなかった症例では31例中8例(26%)にret/PTC遺伝子が認められた。考察:ret/PTC遺伝子は日本人の甲状腺乳頭癌においても35%に認められた。低分化型や未分化型には全く認められないことから、分化度の低い乳頭癌では発生機序が異なると考えられた。
著者
小助川 元太
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、室町時代後期から安土桃山時代にかけての、いわゆる乱世における政治や文化を支えた知の問題を、その時代に制作された百科全書的テキスト群の生成と享受という視点から解明するべく、いくつかの作品を取り上げて、基礎的調査を行った。具体的な成果としては、以下の4点が挙げられる。(1)江戸初期成立の、狩野一渓編の画学全書『後素集』が、中国の百科全書『事文類聚』を和訳した、伝一条兼良編の漢故事説話集『語園』を利用している可能性が高いことを明らかにした。(2)戦国期成立の百科全書的編纂物『月庵酔醒記』が、政道に必要な教訓や知識と諸芸に関する雑学的な知識とを同一の地平線上にあるものと捉え、戦国武将に必要な知識の集積として編まれた可能性が高いことを明らかにした。(3)『〓嚢鈔』の編者行誉の著述活動(自伝・『八幡愚童訓』の書写)に注目し、中世を代表する百科事典が生まれた背景を明らかにすべく調査を進めた。(4)同時代に成立したと思われる、百科全書的特徴を持つ『源平盛衰記』が、いかなる論理のもとに、既成の平家物語を再編していったのかという問題を、いくつかの場面を分析しながら明らかにしてきた。
著者
中島 道男
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

[第1章]魅力的な社会批判のあり方を探るために、日本の知識人をめぐる言説を検討し、ロマンチックな観念性/普通の日常生活という対立への批判、観念的な自己還帰に終わるラディカリズム批判、“九〇度の転向"論などに注目した。さらに、近代化と知識人をめぐる問題、とりわけいわゆる近代主義をめぐる議論を検討することによって、魅力的な社会批判といえるためには、知識人が論じるその対象が「その内部に自己をふくんだ集団」であることが必要、という論点が得られた。魅力的な社会批判にかんする以上の議論を内在的社会批判の立場として整理した。[第2章]戦後日本の知識人を幾人かとりあげ、彼らがムラ共同体をいかなるスタンスから取り扱ってきたのかという問題を検討した。そこで確認されたのは、「没批判の現状肯定」か外在的社会批判かという二者択一は誤れる選択だということである。換言すれば、きだ・みのるの知識人としての仕事の意義をもっとも明確なかたちで取り出せるのは、戦後の進歩的な知識人に往々みられた、自己を、日本の外部、西欧型の近代市民社会におくという「自己特権化という欺瞞」への対抗という脈絡においてである、という論点にほかならない。そして、こうした立場がなぜ「没批判の現状肯定」ではないのかということを明らかにすることの可能な枠組みづくりをめざした。[第3章]前2章の、知識人・きだみのるの位置を確定するするための枠組みづくり作業を踏まえて、きだ・みのるの評論活動を、彼の著作・論文・エッセイを読み込みながら検討・考察し、彼の社会批判のスタイルが、外在的社会批判に対比される内在的社会批判の立場にほかならないことを指摘した。そのさい、検討の中心においたのは、きだ・みのるがいわゆる“東京の知識人"にたいしていかなるスタンスをとっているかという点である。[資料]「きだ・みのる著作一覧」(論文やエッセイも含む)
著者
株丹 洋一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ESD(持続可能な発展のための教育)理論に基づいて設計されたドイツのリューネブルク大学で実施されている環境教育プログラムを日本の教育体制に合わせて圧縮したプログラムを、国際的な環境規格ISO14001の規定上、毎年すべての構成員に対して実施することが義務付けられている「一般教育訓練」として、学生を対象にして実施することで、高い教育効果を挙げることができる。
著者
中村 哲子
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

1801年にアイルランドは政治的にイギリスの傘下に入り、以降、アイルランドの作家はアイルランド性を色濃く打ち出した小説を広くイギリス読者に向けて発表していく。プロテスタントの作家だけでなく、1820年代以降はカトリック出身の作家の活躍も顕著となる。こうした中で、イギリスからの旅行者がアイルランドの実態を語る旅行記を数多く発表するようになる。小説と旅行記を読み解くことから、イギリスとアイルランドの双方の視点から見るアイルランド性の諸相を浮彫にした。
著者
安田 英典 鈴木 和男 山本 健二
出版者
城西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

新型インフルエンザH1N1の学童間の流行伝播パラメータを2009年夏はじめの小集団の流行ケースから求め,仮想中央線モデルによる流行伝播シミュレーションを実施した.シミュレーションに基づいて学校閉鎖,家庭隔離などの対策の評価を行った.新型インフルエンザでは,感染した学童の成人対する割合が季節性インフルエンザとは大きく異なっていた.流行終焉後,公開された実データとシミュレーションによってポストアナリシスを行い,季節性インフルエンザとH1N1の流行伝播の差異について検討した.
著者
西村 篤
出版者
沖縄工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究はサウンドスケープデザインにおける住民の参加と主体性の意義について示すことを目的とし、関連する3つの国内事例、すなわち「平野の音博物館」(大阪市)、「瀧廉太郎記念館庭園デザイン」(大分県竹田市)、「長崎サウンドデザイン塾」(長崎市)に対する現地調査が行われた。調査結果の分析から、これらの事例には、形式的な違いはあれども、住民による参加と主体性が不可欠であったことが明らかになった。
著者
北島 滋
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本調査報告書は,調査対象とした非成長型中小都市を東北・北海道地区に限定している。北海道深川市,ニセコ町は,典型的非成長型の小都市であり,岩手県北上市は中枢・中核都市の臨接地域でないにもかかわらず,極めて例外的な成長型の小都市である。この3つの小都市の変動を構造分析の方法で分析し,それらを「街づくり」の視点から比較的に考察してみた。それらの分析結果については本文を参照していただきたいが,ニセコ町は,現在全国の街づくりで最も注目されているそれである。本報告書では,ニセコ町のまちづくり条例,情報公開条例に至る経緯を分析し,結論的には,町民の知恵が行政を変え,行政のリーダーばかりでなく,市民サイドのリーダーをも生み出したということである。言い換えれば,市民サイドのリーダーの輩出及びそのリーダーシップの在り方が行政に先行したということである。これに対して,深川市は従来見られてきた典型的な行政主導型の街づくりである。しかしこれとても,駅前再開発までであり,これからの街づくりは市民の創意でという方向に行政のスタンスが変化してきている。但し,創意を引き出す仕掛けづくりが必ずしも双方から提起されていないというのが現状である。深川市の街づくりはまさに転換期にある。北上市は,中枢・中核都市以外の中都市でありながら成長型に属する稀有な事例である。但し,工業化それ自体が街づくり(=職の確保)というその域から未だ脱することができていない。したがって,NPOを含む市民参加,行政との協働の街づくりが現在進行形で模索されている。この意味でも市民参加への転換期にある。
著者
鹿島 央 橋本 慎吾
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、以下の2点である。(1)リズムの契機は、日本語話者と日本語学習者ではどのように異なるか。そのときの呼気圧、呼気流量はどのようであるか。(2)持続時間が特徴的な学習者の発音は、日本語話者とは呼気圧、呼気流量にどのような違いがあるか。実験1では、リズム契機とユニット長の関係を調べるため、日本語母語話者と日本語学習者(中国語)を対象とし特殊拍を含む音節を組み合わせた6語(たーたん、たーだん、たんたん、たんだん、たったん、さったん)を分析した。発話はメトロノームにあわせ1語につき10回収録し、呼気圧、呼気流量について分析した。結果は、全体長では日本語話者の方が長く、語中の破裂音の外破からメトロノームまでの時間は学習者の方が長いという特徴がみられた。特に呼気圧がより強いことが観察されたが、語頭の破裂音にはそのような傾向はなかった。このことは、呼気圧の影響がリズム契機を形成する違いに何らかの役割を果たしていることを示唆する。実験2では、リズム配置の異なる18語を選定し、単独発話と「これは...です」というフレームに入れたものを発話資料とし、呼気圧、呼気流量の側面から分析した。発話者は中国語(北京語)話者2名、スペイン語話者1名、日本語話者2名で、KAY社製の「エアロホン」を用いて収録した。この研究の特徴は、生理的な要因である呼気流量と呼気圧のピーク値が学習者では各語の特徴的な持続時間の開始点とどのような関係であるか、また日本語話者とどのように異なるかを分析する点にある。分析の結果、中国語話者では呼気圧のピーク時点が第3ユニットにきていること、流量は調音法によっても異なることが判明した。しかしながら、これまでの結果では、特に呼気圧、呼気流量の違いが持続時間の違いとなるという結論には至っていない。ただ、破裂音の閉鎖時間や発声の違いに影響を与えていることを示す結果となっている。
著者
大鋸 順
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、Jリーグのクラブチームの一つである川崎フロンターレと川崎市商店街を例にし、協働の可能性、協働による効果について究明し、豊かで潤いのある地域形成の実現可能性を検証するものである。研究結果の概要は、次の通りである。1.フロンターレの設置が地域の人々に与えた影響は少なく、また、商店街の人々のフロンターレに対する関心・愛着についても高いものではなかった。このことはフロンターレが地域の文化セクターとして機能しているとは思えないことを示している。2.フロンターレに対する応援状況では、「個人としての応援」「商店としての応援」「商店街としての応援」のいずれも高いものではなかった。また、応援を得るためのフロンターレの条件としては、「チームが強くなる」「テレビなどのメディア露出が増加する」「地元を大切にするチームになる」等があげられていた。幸い、フロンターレは2005年度からJ1に昇格し、メディア露出も期待される。この意味で、2005年シーズンは、フロンターレにとって重要なシーズンである。3.人々のフロンターレに対する地域文化セクターとしての期待は大きく、「町への愛着が増える」「子供達が誇りをもつようになる」「人々が町を誇りに思う」「楽しみが増え生活に潤いがでる」「若い人が集まる町になる」「商店街に活気がでる」などの項目に現れていた。4.千葉ロッテマリーンズ、東京ヴェルディなどのプロスポーツチームのフランチャイズの川崎市から他都市への移転については、多くに人々が残念に思っていることが現れていた。以上、今回の調査時点において、フロンターレが地域文化セクターとして機能しているとは言い難い状況である。しかし、人々のフロンターレに対する期待は大きく、地域文化セクターとして十分機能すると考えられる。そのためには、フロンターレ自らの努力は必要であるが、フロンターレだけにそれを求めるべきではない。「自分たちの街をどのようにするか」という理念のもとに、フロンターレと商店街との協働、フロンターレと行政との協働、あるいは他の地域セクターとの協働等地域のあらゆるセクターが協働し、地域全体で育てていくことが必要である。
著者
原 正幸
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本人の音感覚、特にある種の自然音(例えば、風の音、虫や鳥の鳴き声等々)に対する感覚には季節との繋がりを感じ取るというような独自性が見られることがしばしば指摘されて来た。その原因として既に四半世紀以上も前のことになるが、大脳生理学者角田忠信によって大脳機構説、即ち西洋人の場合そのような自然音は雑音として大脳の非言語半球において処理されるのに対して日本人の場合は有意味な音として大脳の言語半球において処理されるという特異性の存することが科学的に実証されることが主張され、この解釈は世間にも広まることになった。しかしながら、この大脳機構説は当時小学生であった彼の子供には当て嵌まらなかったという彼自身の証言がヒントとなって、本研究代表者はある種の自然音に対する日本人の嗜好は大脳の機構の特異性によるものではなくて、文芸的伝統によって培われ間主観的に形成されて来た文芸的美意識によるものであると考えるに至った。本研究ではこの考え方を古典的文芸作品に基づいて実証すべく、「万葉集」、「古今集」を始めとする和歌集、「源氏物語」全五十四帖および「平家物語」、松尾芭蕉全発句および紀行文「奥の細道」等々のような日本の代表的な古典的文芸作品における音感覚を精査・分析することを通じて、日本人の音感覚の独自性は文芸的な美意識の伝統と、家屋の構造および生活形態(旅、隠居、男女の離別等)によって育まれてきたものであることを解明した。