著者
安冨 歩 深尾 葉子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、満洲・華北・黄土高原の三地域を研究対象として選定し、歴史的研究とフィールドワークによる研究を併用し、一般的な中国農村社会モデルの構築を目指した。本年度は、第一・二年度における、長距離走破調査の成果をもとに、2006年8月に黄土高原で追加的調査を行うとともに、文献調査とモデルによる考察を推進し、中国農村社会の一般モデルの提唱という目的の実現を目指した。研究成果としては以下の二点が主たる成果である。(1)安冨が兼橋正人(東京大学大学院情報学環博士課程)と協力して、満洲の人口分布を各種の人口統計を用いて解明した。さらに、1970年代から得られる人工衛星画像を利用して、満洲と山東省の集落分布の変遷を調査した。この結果、安冨(2002)が主張した県城のみが突出し、村落との間に中間的な町が見られないという構造が、1970年代には中満と北満に明瞭に見られ、それが改革開放以降、徐々に見えにくくなっていることが判明した。これに対して山東省では、1970年の時点で既に多階層の構造が見て取れる。このような構造的な違いを視覚的に確認することができた。(2)深尾と石田慎介(大阪外国語大学学部生)が共同で高西溝村の社会と環境の現代史を明らかにした。高西溝村は黄土高原のなかにありながら、唯一、まとまった森林と草原を村内に形成し、バランスのとれた高能率の農業を展開し、澄んだ水のため池を持つことで中国全土に知られている。なぜこのようなことが可能であったのかを長期の滞在型調査により明らかにした。現在のところ重要であったと考えられるのは、共産党革命の過程で、村の内部で政治的亀裂が入ることを回避しえたことであり、これによって実行不可能なノルマを主体的に拒絶し、生産性を挙げるために本当に必要なことを村という単位で考えることが可能になったことである。
著者
川崎 展 上田 陽一 酒井 昭典 森 俊陽 佐羽内 研 橋本 弘史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン (OXT)は疼痛調整に関与していることが示唆されている。本研究の目的は、OXT-単量体赤色蛍光タンパク1 (mRFP1)トランスジェニックラットを用いて、急性ならびに慢性炎症・疼痛モデルラットを作製し、視床下部・下垂体後葉・脊髄におけるOXT-mRFP1融合遺伝子の発現動態を可視化・定量化し、OXTの役割を検討した。その結果、急性および慢性疼痛・炎症モデルラット、いずれにおいても下垂体後葉系におけるOXTの産生・分泌の亢進および視床下部室傍核-脊髄経路のOXT系が活性化しており、温痛覚の感受性に関わっていることが示唆された。
著者
長田 良雄 黒田 悦史 山田 壮亮
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

炎症性疾患に抑制作用をもつ寄生虫を複数比較し、抑制効果に必須の因子を見出すことを目指した。腸管寄生線虫Heligmosomoides polygyrus (Hp) とマンソン住血吸虫(Sm)のマウス実験的1型糖尿病(T1D)抑制効果はSTAT6とIL-10二重欠損下においても観察できた。その際膵リンパ節や脾臓マクロファージが非典型的なM2様活性化を受けており、抗糖尿病効果に関与している可能性が考えられた。一方Smのコラーゲン関節炎抑制効果はSTAT6に依存していた。本成果により蠕虫の抗炎症機構の一端が解明された。将来の低病原性寄生蠕虫を用いた炎症性疾患治療法開発への貢献が期待される。
著者
曽我部 真裕 井上 武史 堀口 悟郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

曽我部は、研究全体のとりまとめを行うとともに、「基本的情報の提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」に関して、報道の任務について論じ(「任務は権力監視、独立性が生命線」Journalism328号(2017年))、また、関連して判例の検討等を行った(「2017年マスコミ関係判例回顧」新聞研究799号(2018年))。また、「補完的に民意を表明・調達する手法」として、デモ規制のあり方について検討した(「市民の表現の自由」宍戸常寿・林知更(編)『総点検 日本国憲法の70年』(岩波書店、2018年))。井上は、分担テーマである「民主政に関与するアクターの規律」について、民主政に関するフランスの憲法規定の変遷を統計的、網羅的に検討し、かつ民主政のあり方を問い直す最近の改憲議論を取り上げて、その動向を探る研究を行った(「フランス第5共和政における憲法改正:最近の改憲論議も含めて」辻村みよ子編集代表、講座政治・社会の変動と憲法:フランス憲法からの展望第Ⅱ巻『社会変動と人権の現代的保障』、信山社、2017年)。堀口は、昨年度に引き続き、分担テーマである「専門的知識を創出・供出する制度」として、学術の中心をなす機関である大学に関する検討を行った。具体的には、①高等教育の無償化が大学に与える影響(斎藤一久=安原陽平=堀口悟郎「高等教育の無償化に向けての憲法改正の是非」季刊教育法195号(2017年))、②大学運営に対する学生の参加が大学教員の学問活動に与える影響(堀口悟郎「(学会報告)学生の参加と教授の独立」比較憲法学会、2017年10月28日、同志社大学)について考察した。
著者
平野 恵美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

豊かな芸術文化の国として知られるロシアは、バレエや音楽などで常に優れた才能を輩出している。ボリショイ劇場(モスクワ)やマリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)は、その象徴であり、ロシア芸術を代表する存在だと言える。しかしこの広大な国の音楽芸術文化の諸相は実に様々で、モスクワとペテルブルクの二都市だけでも、無数の劇場やコンサートホールがあり、その運営方法も公的なものから私設のものまで幅広い。特に19世紀半ば以降、資本家が台頭し、芸術家のパトロンとなって私立のオペラ団を経営する者も現れ、その水準や革新性は、マリインスキー劇場やボリショイ劇場のような帝室劇場に匹敵するか、凌駕し、影響を与えるほどだった。またこのことは、ロシアの貴族文化の伝統とも関係があると考えられる。ヨーロッパの貴族は昔から、自分達の邸宅に小劇場を持ち、使用人を出演させたり、時に自らが出演して演劇を楽しむという習慣があった(それは自分達の楽しみだけではなく、賓客をもたらしたり、支配者たる王を讃えたり、あるいは自分達の財力を誇示し、権威を高めるために行うこともある)。ことロシアにおいては、農奴劇場というものがあり、農奴俳優や農奴音楽家の存在が知られている。一方、上流階級の貴族達も、非常に高度な音楽教育を受けていたことが明らかになりつつあり、私達が現代の常識や物差しで想像しているだけでは、その本当の姿を知ることはできない。本研究では、当時の新聞や批評など一次資料を用いて、19世紀後半のロシアにおける、音楽・劇場文化の実態を明らかにして、日本でも人気の高いロシア音楽のさらなる理解を深め、最終的には政治や経済の状態に左右されずに、日本とロシアの友好的な関係を築くことに貢献するのを将来の目的に据えている。
著者
川島 京子 鈴木 晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、日本バレエ史上最大のメルクマールと位置付けられる「東京バレエ団」(1946年結成、1950年自然消滅)の実像を明らかにするとともに、その歴史的意義を考察することを目的としている。具体的には、(1)これまで明らかになっていなかった東京バレエ団の活動実態および上演作品を、現存資料、聞き取り調査から、その実像を浮かび上がらせること、(2)東京バレエ団の活動とその後「世界有数のバレエ大国」と称されることとなる日本バレエ界の発展との因果関係の考察、(3)東京バレエ団の結成、解散の原因ともいえる日本バレエ界の特殊性を、今日的視点から捉えなおすことである。
著者
國府方 吾郎 横田 昌嗣 齊藤 由紀子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

琉球列島の沖縄群島小島嶼に分布する絶滅危惧植物の固有性解明およびに分類に関するする研究を行った。特筆成果として、伊是名島産イトスナヅルを固有種とする見解の支持、琉球列島固有種マルバハタケムシロのオセアニア産との隔離分布の支持、ヤエヤマスズコウジュの久米島での新産地発見などが挙げられる。また、同小島嶼産絶滅危惧植物42種類の自生地外系統維持への追加、360点の標本データベース化、そして、得られた成果に基づく絶滅危惧植物と生物多様性等に関する企画展等を社会発信として行った。
著者
西條 政幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により.世界で初めてウイルス学的に証明されたアシクロビル耐性HSV-1による新生児脳炎患者の報告をした.DNApol関連ACV耐性HSV-1の性状を解析し,多くの耐性株は神経病原性が低下しているものが多いものの,中には病原性が維持されているウイルスも存在する.また,DNApol関連ACV耐性HSV-1のほとんどがガンシクロビルに感受性を有し,逆にフォスカルネットには交叉耐性を示すことが明らかになった. ACV耐性HSV感染症の増加等が予想されることから,今後,病原ウイルスの薬剤感受性を調べる耐性の構築と,その結果に基づく適切な治療ができるようにする必要がある.
著者
松村 暢隆 小倉 正義 竹澤 大史 緩利 誠 石川 裕之 石隈 利紀
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

発達障害や学習困難のある児童生徒について、広義の2E教育の観点から、得意や興味等の「認知的個性」を捉えて、それを活かして苦手を補う特別支援の方策を探った。認知的個性の自己チェックリストを開発して、それが通常学級の学習で有用なこと、また発達障害や学習困難な生徒の学習・生活支援に活用できることを示した。併せて、2E教育の多様な形態や可能なカリキュラムの変革について調査、考察した。
著者
田島 美幸 佐渡 充洋 藤澤 大介 堀越 勝 大野 裕 横井 優磨 吉原 美沙紀 原 祐子 藤里 紘子 岩元 健一郎 石川 博康 岡田 佳詠
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、認知行動療法を活用した認知症の家族介護者向けの2つのプログラム(①集団CBT、②訪問看護師による個人CBT)を開発し有効性を検討した。【集団CBT】集団CBTプログラム(月1回90分、計5回)を実施したところ、75歳以下の介護者では、介護負担感、介護に対する否定的な感情において主効果が認められた(p<0.05)。【訪問看護師によるCBT】 訪問看護時に訪問看護師が実施できる個人CBTプログラム(1回30分、計11回)を開発した。また、介入の質を担保するために訪問看護師に対するCBTの教育体制(集団研修およびスーパービジョン)を整備した。現在、症例登録を継続中である。
著者
鑓水 兼貴 田中 ゆかり 三井 はるみ 竹田 晃子 林 直樹
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、首都圏における方言分布の形成過程の解明を目的とする。これまでの研究で、アンケート調査システムや、方言データベースのシステムを作成してきたが、そうした研究ツールを統合して、新しい調査・分析システムを構築する。首都圏における非標準形の分布を把握するためには、多くの言語項目、多くの回答人数による調査から分析する必要がある。過去の首都圏の方言資料と、新規の調査結果を組み合わせた分析を行うために、新しいツールの開発を行う。本研究において開発する調査・分析システムを利用して、これまでの研究で提案してきた首都圏の言語動態モデルについて検証を行う。
著者
久野 マリ子
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

共通語は東京方言を基盤とし、東京方言は関東方言を基盤としている。これまで首都圏の関東方言は共通語に近いとされ詳細な資料報告が少なかった。高年層が健在なうちに首都圏方言の基盤となった関東方言の記述と保存を行う。また、首都圏方言が公の場で用いられる共通語に対して、日常の生活語として使われる首都圏方言が、日本各地において特に若年層で、くつろいだ場で用いられる内々の共通語として受け入れられつつあることを明らかにする。方言の事象というより、「ゼーイン(全員)」のような第2拍目の撥音の音声変化が日本語音韻全体に浸透しつつある実態を明らかにしようとする。
著者
竹田 晃子 大木 一夫 作田 将三郎 鑓水 兼貴
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

伝統的方言が急速に衰退する現在、従来のような方言話者への面接調査は困難になっており、近い将来、方言研究は過去の資料を元に行われると予想されている。一方、戦後の方言研究は、明治・大正・昭和期の貴重な資料を放置してきた。方言を含む日本語の研究を発展・継続させるために、調査資料が失われないうちに、過去の調査資料を積極的に分析対象とした方言研究を始める必要がある。本研究は、旧東北帝国大学教授・小林好日による「東北方言通信調査票」約7,500冊を整理・入力・公開することで調査データを後世へ引き継ぎつつ、分析結果を論文化することで現代の面接調査では得られない言語事実や方言史を解明することを目的とする。
著者
長田 洋和
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経発達症,とりわけ,自閉スペクトラム症,あるいはまた注意欠如・多動症を有する児・者は,その病理・心理的特徴から,インターネット病的使用の傾向を持ちやすいことが示唆されてきている。インターネット病的使用には,反社会的行動の背景にあるCU特性(callous-unemotional traits)との関連があると思われることから,人生早期に行動特徴が現れる,自閉スペクトラム症あるいはまた注意欠如・多動症を有する児においてCU特性の有無とインターネット病的使用傾向があることとCU特性との関連を探索的に研究した。
著者
川部 勤 松島 充代子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

農薬の毒性は害虫に特異的ではなく、近年主流のアセチルコリン作動系農薬もヒトや生態系への影響が懸念されている。農薬が生体に及ぼす影響は多岐にわたり、神経系への毒性だけでは正確に有害性を検討することは困難である。本研究では農薬による生体防御反応の誘導能および免疫応答の攪乱作用に着目し、比較的安全とされるネオニコチノイド系農薬を含めアセチルコリン作動系農薬の影響を生体側から解明する。平成29年度は生体防御反応の誘導能を中心に解析を行った。ストレス応答系としてHO-1の発現、異物代謝系としてオートファジーの誘導(LC3-IIの誘導およびp62の発現)を評価することにより生体防御反応の誘導能の解析を行った。農薬は有機リン系農薬のダイアジノンおよびネオニコチノイド系農薬のアセタミプリドを使用した。細胞はマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞を用いた。ダイアジノンはRAW264.7細胞においてストレス応答系のHO-1および異物代謝系のオートファジーを強く誘導することが明らかとなった。一方、アセタミプリドについてはHO-1の誘導はほとんど認められなかったが、オートファジーについてはダイアジノンと比較すると非常に弱いものの、オートファジーの誘導が認められた。以上の結果より、同じアセチルコリン作動系農薬であっても生体防御反応の誘導能の程度が異なり、異なる作用機序が存在する可能性が示唆された。
著者
斉藤 日出治 佐藤 正人 金 静美
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

民間団体「海南島近現代史研究会」の一員として3年間で5回海南島を訪問し、侵略犯罪の犠牲となった方々から、日本政府・日本軍・日本企業によって被った被害の状況について話を伺った。この聞き取りを通して、殺害された方々の氏名、人数を確認すると同時に、住民虐殺、食料・資源・土地・家財・家畜・諸資源などの略奪、諸産業の支配、性暴力、強制労働などの実態を記録した。さらに、このような日本国家の侵略犯罪が敗戦後70年にわたって明らかにされてこなかったことが戦後日本社会のありかたにどのようなかたちで投影されているのかを検討し、日本の近代社会を植民地主義の視座から再考した。
著者
私市 正年
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究計画に沿って以下のことを行った。1.ケドゥーリー、ゲルナー、アンダーソン、スミスらの著作を読み、独立運動と密接に関わるナショナリズムの理論の整理を行った。2.Zawiya al-Hamilの教育プログラムを調べ、イスラーム教育における政治的イデオロギーの要素を抜き出した。特にテキストとして使われたKhalil b.Ishaq:Mukhtasar al-Alama Khalilのjihadの章を読み。そこで記述されたジハードの内容を小ジハードと大ジハードに分けて分析した。分析から得られた事実は、武装闘争を是認する小ジハードに関する教育は生徒たちに一定のイデオロギー的影響を与えた、との暫定的結論を出した。4.Zawiya al-Hamilの19世紀末の生徒名簿を分析した。171人の名簿の出身地を調べると、ブーサーダ地区を中心にしたアルジェリア中部が最大多数であるが、ほぼアルジェリア全域に広がっていることがわかる。さらに、モロッコのフェスやマラケシュ地方の出身者もみられる。このことから、ザーウィヤのイスラーム教育がアルジェリアの全域に及び、教育と独立運動との間にイデオロギー的関係があったと判断される。ただし、他のザーウィヤにおける教育内容の分析をしないと一般化することができるのか、断定は難しい。5.1930年代から1950年代の植民地期におけるコーラン学校の数と生徒数については、Kamel Katebの論文(Insaniyat, vols.25-26, 2004)を読み、1932年から1951年の間に、生徒数は、学校数は2.4倍、生徒数は2.85倍に増加していることがわかった。
著者
私市 正年
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

従来のアルジェリア・ナショナリズム運動の研究では、ザーウィヤなど民衆的イスラーム組織は否定的、ないしは植民地支配に協力的であった、と説明されてきた。しかし、al-Ruh紙の分析によって、民衆的イスラーム施設ザーウィヤの青年たちがFLNよりも先に、行動主義的主張をし、独立運動を担うイデオロギーを構築したことが明らかになった。この事実は、従来のナショナリズム運動と独立運動の研究に根本的な修正を求めるものである。本資料の重要性に鑑み、テキスト全文と資料解題をつけてal-Ruh-Journal des jeunes Kacimiという書名で2017年出版(Dar al Khlil社)をした。
著者
中村 達 古川 誠一
出版者
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

寄生蜂が様々な方法で寄主の免疫作用に対抗し、寄生に成功するのが知られているのに対して、同じ捕食寄生性昆虫である寄生バエについてはほとんど研究されていない。本研究では、ヤドリバエがどのように寄主免疫作用をくぐり抜けて寄生成功するのか明らかにするため、寄主体内での幼虫周辺や寄主の変化について経時的に調査した。寄主に侵入後、ハエ幼虫はバリア構造物と名付けた寄主組織からなる構造物に包囲されることがわかった。このバリア構造物は内側が寄主の血球由来、外側が脂肪体細胞由来で、ハエ幼虫はこの構造により、寄主によるメラニン化などの免疫反応から逃れていると考えられた。