著者
田中 健次 稲葉 緑
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,生活用製品業界における事故回避のために,企業,市民,行政の三者間における事故情報活用システムのモデルを構築した.企業内での設計・運用間でのトラブル情報の共有化構造に,社会全体での事故情報システムを統合したものである.特に市民ユーザの安全意識を高め事故情報やリコール情報を効果的に活用するために,Web利用を含めた事故情報活用システムのプロトタイプを作成,評価した.
著者
樽井 武
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本語の影響(干渉)を受けた英語のスピーチリズムの確認と著者が開発したPC用自習プログラムを活用し、日本語的な英語のリズムを英語的なリズムに変化させる過程を解明する。たいていの日本人は、日本語の影響を受けたリズムで英語を話すが、学習者が強勢のある音節と強勢の無い音声の重要さに気づき、PC用の自主学習プログラムを活用して内容語と機能語の音声特徴および機能語の強形と弱形そして他の音声特徴等に気づいた上で音節の強勢の有無をコントロールできるまで学ぶことで、そのような日本語的な音声特徴も次第に減少していくことが示された。
著者
細矢 良雄 伊藤 知恵子 伊藤 知恵子
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

電波伝搬の研究は, 無線通信回線設計の基本である. 信頼性がありかつ経済的な無線通信回線を設計するには, 事前に当該地域の気候などを考慮して伝搬特性を推定する必要がある. 本研究では, 特に降雨時の伝搬特性につき, 全世界的に入手可能な地域気候パラメータを用い世界的に適用できる精度良い推定法の作成を目指し, 熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載降雨レーダデータを用いた解析を行い, 全世界的に入手可能な雷雨率が, 降雨時伝搬特性推定法に用いる有望なパラメータであることを明確にした.
著者
宇山 智彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

中央アジアに関してはこれまで国単位の研究とコミュニティ・レベルの研究が主流であったが、本研究ではその中間である州レベルの史料を集め、分析した。中でも特色ある地域としてタジキスタン東部のパミールとカザフスタン西部の旧ボケイ・オルダに注目し、両地域における諸文化の交流や共存の様相を明らかにした。また、タジキスタン内戦やクルグズスタン革命において地方意識が持った多面的な意味を分析した。
著者
八木 秀司 謝 敏カク 佐藤 真
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中枢神経系の発生において神経細胞の移動と増殖に関与すると考えられたFilip分子とFilip相同分子の機能解析を通じ、神経発生における新たな調節系を明らかにすることを目的として本研究を行った。その結果、細胞骨格関連分子がFilip分子とFilip相同分子に結合することを見いだした。この結合を通じてFilip分子が結合分子の機能を調節していることを見いだし、神経細胞におけるFilip分子の新たな機能を同定した。
著者
岩橋 恵子
出版者
志學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

今日フランスの社会教育施設は、民衆教育アソシエーションが担ってきた歴史的土壌の中で、公・私セクターの協働のための制度的整備がなされてきている。そしてそれは、普遍的理念モデルを実施する活動の場ではなく、広く住民に開かれた地域プロジェクトの企画・遂行機関としての性格を担いつつある。そのため、地域の課題と実情に応じての、公・セクターの多様な活動主体が参画するネットワークによる、豊かな公共圏創造が志向・追求されている。
著者
杉浦 藤虎 伊藤 和晃
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ロボカップサッカー競技ロボットの作製と開発を段階的かつ継続的な負荷と捉え,より高い課題を学生に課すことで創造性育成教育を行い,その効果をアンケート調査により検証した。その結果,ロボカップ参加学生の問題解決能力や思考方法などの顕著な向上を確認した。一方,世界大会に参加する上で必要な英語運用能力は学生自身が十分でないことを認識した結果となった。今後も学生の興味を引きつける教材・課題を通して,創造性や英語コミュニケーション能力の向上が期待される継続的な機会と環境を学生に提示することが有効であることが示された。
著者
大橋 一正
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度に引き続き、標準SAT計を作成し八王子地区における気象観測を続行した。また、高層気象台における気象観測データも入手し、それぞれの特性と相関について分析を進め、これまでに得られた特性に対する相違点などの知見を得た。次に、この推定式の実用性をより広い地域で検証するため、東京都八王子市(工学院大学八王子校舎)と岩手県の沿岸部(下閉伊郡山田町)において短〜中期間の実測を行い推定式の精度を明らかにし、自然エネルギー利用のための大気放射量マップを作成した。結果として、日本における大気放射量の傾向は南方ほどその値は大きくなり、さらに海抜の影響を受けている可能性が示された。さらに平成15年度は、これまで提案してきた大気放射量,夜間放射量推定式の実用上の有効性を検討することを目的として、新たな自然エネルギー利用として注目されている屋上緑化による環境改善効果の検証にこれらの推定式を用いた。この検証では、特定の建物の屋上表面における放射収支量を実測値と推定値から算定し、両者を比較することで推定式の精度検証と実用上の問題を抽出した。また、空気調和の熱負荷計算における大気放射量や夜間放射量の影響について、実測値とシミュレーションによる値を比較することで空調負荷からの分析を行い、屋上緑化による屋上放射環境の改善効果と室内環境の改善効果について検証を行った。これらの結果は大気放射量,夜間放射量の推定が自然エネルギー利用システムの検討に対して有効であるということを示すものであり、特定建物の表面における放射熱収支のみならず地表面においても適用できる推定式であるということをシミュレーションによらず実測によって明らかにしたという点において貴重な知見であるといえる。
著者
吉田 直希
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、ジョン・クレランドの『ファニー・ヒル』を生み出した18世紀イギリスにおける階級・人種・ジェンダーの問題意識を明らかにし、ポルノグラフィーに関するポスト・ジェンダー/セクシュアリティ論を構築することであった。17年度の研究では、近年のジェンダー研究におけるオリジナル/コピーの関係性についての議論を出発点とし、裏世界の深奥に潜むイギリス帝国、植民地の存在を明らかにすることを目指した。成果としては、ジョン・ゲイの犯罪文学における野蛮/洗練の対比を精査し、作品の表面に表れない、グローバルシステム内の人種問題をあぶりだした。また18世紀のトランスナショナルなジェンダー・階級・国家表象をサミュエル・ジョンソンの作品解釈によって確認した。18年度の研究では、ウィリアム・ホガースの『娼婦一代記』と『ファニー・ヒル』の比較から、信頼できない語り手=ファニーのオリジナリティを明らかにした。ファニーの幸福な結婚で終わる性の遍歴の裏に確認できる近代的主体の転倒した「階級・人種・ジェンダー」意識を新歴史主義的に検討する必要性を主張した。19年度の研究では、現代のアニメーション研究の成果を視野に入れ、エロティック・アートのグローバルな普及・発展の過程を検証した。江戸時代の春画、あるいはアニメにおける「少女=戦士」の表象に関わる作品も併せて検証した。日常的現実に媒介される「虚構」それ自体にリアリティを見いだす精神性は、現代アニメにおける「おたく」的生産/消費と密接に関連しているが、虚構それ自体を欲望することの意味をホガース版画の歴史性という観点から多面的に検討した。
著者
中村 隆 原 英一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ウッド夫人とメアリー・ブラッドンの長編小説に関して、なお考察が不十分と考えられる3つの視点を提示した。(1)不倫小説としてのセンセーション・ノヴェル(2)探偵小説としてのセンセーション・ノヴェル(3)ウッド夫人、ブラッドン、ディケンズの小説の相互関連。(1)について:センセーション・ノヴェルの中枢に「反逆する娘」(subversive daughter)と「反逆する妻」(subversive wife)がいることを指摘し、彼女たちが「不倫小説」を生み出す原動力となっていることを解明した。(2)について:ドイルの前に位置するセンセーション・ノヴェルの「細部」を重視する探偵たちは、19世紀末葉に興隆する犯罪科学(犯罪人類学、顔写真、指紋、毒物学)を先取りしていることを指摘した。(3)について:ディケンズ、ウッド夫人、ブラッドンの小説との比較検討を通じて、そこに、夫への不信を抱く妻、不倫願望を持つ妻、不倫妻の秘密を暴き出す男の探偵というパタン化された構図があることを解明した。
著者
石井 仁 荒木 弘安 東郷 敬一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

超音波断続負荷型疲労試験機を製作して様々な強度レベル材料についてのギガ(10^9)サイクル域までのS-N曲線を取得し,その結果を回転曲げ,引張-圧縮といった一般的な試験機で得られた疲労特性との差異を検討することで,この試験法が疲労強度の迅速決定に威力を発揮することを確認した.超音波を連続ではなく断続的に負荷させる理由は,超音波域といった高周波数で変形を繰返した際の内部摩擦による材料の発熱を防止するためであり,試験片の温度上昇を生じさせない負荷-休止時間の組み合わせであれば10^7回以上の高サイクル域の疲労特性には影響が無いことを確認し,負荷と停止時間をそれぞれ30ms,70msとすることで以下の様々な試験を実施した.焼入れ後に高温焼戻しを施したS35CおよびSNCM439につきギガサイクルまでのP-S-N線図を求めた.応力レベルを10種類とし,1応力あたり15本,計150本の試験片を用いて得られた結果は,日本材料学会あるいは金属材料技術研究所から出版されている10^7サイクルまでの疲労強度データ集の結果と極めて良い一致が得られた.また,耐久限が存在せず10^7サイクル以上でも疲労強度が低下する高強度材の一例として,マルエージング鋼についての10^9サイクルまでのS-N曲線を求めた.10^7サイクルまでは表面を破壊の起点としたが,それ以上の繰返し数では内部の介在物を起点とするものに移行する.材料製造工程の改善を通して介在物の寸法を微細化すると長寿命域の疲労強度改善が得られるなど,通常の試験機では数年が必要である実験結果が短時間に求まり,材料開発へ応用すると極めて有効な手法になることが確認された.また,軸受け鋼SUJ2や浸炭処理を施した肌焼き鋼SCr220,SNCM420についても,また,切欠き試験片でも適用可能であることを確認し,超音波断続負荷法が超高サイクル域の疲労強度迅決定法として極めて有用であることを明らかにした.
著者
佐々木 成人 岡 美恵子
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ネコをパネルに向かって立たせ、パネル中央に投射した光点を注視させた状態から、光点を視野周辺に向かってステップ状、ramp-hold状に移動させ追跡させた。移動刺激に対して、ネコはまず頭を60-150msの潜時でゆっくり動かす。この時眼球はVORで逆方向に動き、視線は空間内で固定される。次にサッケードとそれに続く速い頭の運動が起こり、視線はターゲットを捕らえる。移動刺激からステップ刺激に変えると指向運動の潜時の著明な延長と頭の運動速度の低下が起こることから、両者により誘発される指向運動は異なり、前者を位置誘導型指向運動、後者を速度誘導型指向運動と呼ぶことにした。各々は更に2つのサブタイプに分かれた。速度誘導型指向運動は光点の移動速度からその到達位置を予測して、光点が移動中に動き始め、視線と光点がほぼ同時にターゲットに到達する予測指向運動と、光点の速度と位置情報の両者を手がかりにして光点がターゲットに到達してから指向する速度・位置誘導型指向運動に分かれた。ネコの姿勢を強制的に変えることにより、サブタイプ間の相互の移行は可能であることが分かった。ステップ刺激では予測指向運動を行っていたネコは短潜時または長潜時の位置誘発型に移行したが、速度・位置誘導型指向運動からは長潜時の位置誘導型指向運動に移行した。短潜時の位置誘発型指向運動は上丘、長潜時の指向運動は大脳皮質を介していると考えた。光点をゆっくりと動かすと、ネコはこれを滑らかな軌跡を描いて追跡する(head pursuit)。これは速度誘導型指向運動の経路を用いて発現していることが強く示唆された。
著者
平川 奈緒美 森本 正敏 垣内 好信 笹栗 智子 石川 亜佐子 杳川 嘉彦 鳥飼 亜利寿 十時 忠秀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者における交感神経機能の関与特にα2アドレナリン受容体の関与について
著者
田中 恵子 辻 省次
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

腫瘍隨伴性神経症候群のなかで、抗Hu・抗Yo抗体などの特異な抗体を有する群は、臨床像・拝啓腫瘍に一定の特徴を有し、自己抗体が患者の腫瘍と病変神経組織を共通に認識するなどの特徴から、抗体による神経組織障害機序が考えられている.我々はこれまで、これらの自己抗体を用いて様々な方法で動物モデルの作製を試みたが、抗体による組織障害は惹起できなかった.そこで細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell:CTL)が関与する病態機序の可能性を考え、抗Hu抗体を有する患者の抹梢血を用いてCTL活性を検討した.標的細胞を患者自身から得た線維芽細胞とし、線維芽細胞のclass 1分子を利用し、HuDのrecombinant蛋白をmicroinjectionにより線維芽細胞の細胞質に注入することによりHu抗原分子断片を呈示させ、CTLの標的とした.同一患者から採取しIL-2下で培養した抹梢血リンパ球と共培養した結果、80%の線維芽細胞が消失した.この結果は、本症の組織障害にCTLが関与している可能性が推定された.一方、抗原分子のペプチド構造を明らかにするため、患者のHLA型を解析し、多くの例で共通であったA11分子をaffinity chromatographyにより精製し、HPLCで分取した後そのアミノ酸配列を決定した.今後この中から使用頻度の高いペプチドモチーフを調べ、Hu蛋白のアミノ酸配列との比較により、リンパ球の抗原決定基を推定する.
著者
前田 知己 後藤 一也 古城 昌展 前田 知己
出版者
大分医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

正期産児35人を対象としたポリグラフ記録において、第一静睡眠期と第2静睡眠期の持続時間に有意差は認めなかった。RR間隔は第2静睡眠で497.2±59.5msecで、第1静睡眠478.2±49.0secに比し有意に長かった。RR間隔時系列について自己回帰モデルを用いスペクトル解析を行い、低周波成分(LF)、高周波成分(HF),パワー,LF/HF比を求め検討した。LHパワーLH/HFは有意差を認めなかったが、HFは第1静睡眠4-1±0.8msec2,第2静睡眠4.5±1.0msec2で第2静睡眠が有意に大きく、第2静睡眠における副交感神経緊張が不された。29人の正期産児を対象として驚愕反射の出現頻度の検討を行った。静睡眠期におけるミオクローヌスの分布、啼泣の有無によって驚愕反応の強度を3区分した。驚愕反応出現前後1分のRR間隔時系列についてスペクトル解析を行い、驚愕反応出現前後の交感・副交感神経緊張の変動を検討した。平均驚樗反応出現頻度は0.18/分であった。驚愕反応出現に伴いLFパワー、HFパワー、LF/HF比はいずれも増加したが、驚愕反応強度によってパラメーター前後値はいずれも差異を認めず、個人差が大きかった。自律神経機能から乳幼児突然死症候群に関連する事象をとらえられるか検討したが、個人差が大きく、また、乳幼児突然死症候群の症例は無く、正常対象の症例数も多くないので、明らかな結論は得られなかった。今回の検討を基礎データーにして、乳幼児突然死症候群危険因子の有無による違い、体位による違いなどを検討を続ける予定である。
著者
村上 弦 秦 史壯 佐藤 利夫 田口 圭介
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1 腹腔神経叢周辺のリンパ管(平成12〜13年度)通常ホルマリン固定人体標本を用いて,1)腹腔神経叢と腸リンパ本幹の位置関係,および2)膵頭後部リンパ節(No.13)及び総肝動脈リンパ節(No.8)から大動脈リンパ節(No.16)へ注ぐリンパ管の経路,について検討を行った。また,新鮮胎児の胸腹部内臓の準連続切片を作成し,腹腔神経叢周囲のリンパ管及びリンパ節の局在を検討した。これらの結果から,膵頭十二指腸を外科的に左腹側へ授動する手技(コッヘル授動術)の視野において,腹腔神経叢より浅いこの領域の所属リンパ系の大部分を郭清できる可能性が示唆された。しかし,主流ではないものの腹腔神経叢と横隔膜脚の間を通るリンパ経路は存在しており,その経路の中継点であるNo.16a2の術中生検には大きな意義があると考えられた。2 子宮基靱帯内部を通る自律神経(平成14年度)15体の女性人体骨盤標本(65〜86歳)を用いて,子宮基靱帯内部を通る自律神経の走行を検討した。その結果,1)基靱帯は骨盤内臓神経を含んでいないこと,2)基靱帯の底部及び背側縁には明瞭な靱帯構造が存在すること,3)骨盤神経叢は基靱帯の血管成分からは分離していること,が明らかになった。この結果から,自律神経温存広汎子宮全摘出術において子宮傍組織の拡大切除を施行しうる可能性が示唆された。
著者
板倉 敦夫 水谷 栄彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

死産児、新生児死亡の病理解剖組織標本を神経病理学的、あるいは組織免疫学的に調べ、その児の臨床経過と対比させて、虚血-再還流による脳細胞障害の部位と程度について検討した。フリーラジカルによって産生される代表的な脂質過酸化物である4-hydroxy-2-noneal-protein(HNE)は、細胞内蛋白と結合し蛋白機能を障害することが明らかにされている。そこで死産児、新生児死亡の抗HNE-proteinおよびによる免疫組織染色を行い、発現を検討したところ、小脳、橋、海馬の神経細胞に発現が認められ、さらに脳虚血時に認められるpontosubicular neuron necrosisに陥っている細胞にその発現が強く認められた。またこの作用を生化学的に検討するために、胎児の血管内皮細胞を低酸素培養し、低酸素性脳障害の原因となりうる物質の変化を検討したところ、Angiotensin conuerting enzymeが、低酸素培養によって、血管内皮での産生が亢進していることが判明した。今後低酸素状態における血流調節におけるレニン-アンギオテンシン系の関与を検討する予定である。
著者
金折 賢二
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

核酸アプタマーとは、特異な高次構造をもつRNAやDNAオリゴマーのことであり、様々な機能を持つことが知られている。この核酸アプタマーの代表的な構造モチーフにテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖構造がある。そのテロメアDNAオリゴマーが形成する四重鎖は、グアノシン(G)またはシチジン(C)残基に富んでおり、それぞれ、Gカルテット、i-motifと呼ばれる。本研究の目的は、このGカルテットやi-motifの構造と安定性を評価し、四重鎖を構造モチーフとする核酸アプタマーの分子設計指針を確立することであった。当該研究期間に得られた知見は以下の通りである。まず、核酸アプタマーへホスホロチオエート基を導入する研究をおこなった。HIVウィルスの増殖を抑制することが知られているCの連続した配列が形成するi-motif構造へホスホロチオエート基を導入し、その構造と安定性を円二色性分光法によって評価し、ホスホロチオエート基の立体異性によってi-motifの融解温度は変化することを見いだした。核磁気共鳴法で構造解析した結果、i-motifを形成するC残基の糖のコンフォメーションがall-Sp体の糖のコンフォメーションがC3'-endoから変化していることを見出し、Cアプタマーの構造と安定性の相関が得られた。また、テロメアーゼの標的配列であり、核酸アプタマーのリード配列であるd(TTTTGGGG)nを合成・精製し、相補鎖を含めたGカルテットの構造と安定性について核磁気共鳴分光法を用いて研究を進めた。その精密な構造について多次元NMR法を用いて解析した結果、従来のトポロジーとは異なるGカルテット構造が形成することを見出し、テロメアの構造と機能に関する重要な知見が得られた。
著者
足立 明 山本 太郎 内山田 康 加藤 剛 井上 昭洋 清水 和裕
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、非西欧世界における「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容を、保健医療に関わる開発現象を中心に検討することであった。そのため、これまでの公衆衛生の社会史、文化史の成果を整理し、また各研究者の蓄積してきた諸社会の民族誌的・歴史的経験をもとにして、保健医療の導入と「清潔さ」「衛生」「健康」「身体」概念の変容に関する分析枠組みの検討・整理を行おうとしたのである。平成11年度は、西欧世界を中心とした保健医療の導入とその社会文化的影響に関する既存の文献を収集し、それらを分担して検討した。その主な内容は、上下水道の導入に関する社会文化的影響、保健医療の制度化と宗教の世俗化、保健医療の導入と疾病傾向の変容、キリスト教宣教師と「清潔」「衛生」概念であった。これにたいして、平成12年度は、各自の蓄積してきた諸社会の資料を整理した。その結果分かってきたことの一つは、20世紀初頭の植民地下で西欧の健康概念と西欧的核家族概念が結びつき、社会変容に寄与する可能性である。また、このようなテーマで研究する上で、新しい研究視角の議論も行い、人、モノ、言葉のネットワークをいかに把握するかという方法論的検討も行った。もっとも、現地調査を前提としていないこの研究では、資料的に限界があり、その意味で、本研究は今後の海外学術調査の予備的な作業という性格が強いものとなった。今後は、さらなる研究に向けた体制の立て直しを計る予定である。
著者
吉田 伊津美 杉原 隆 森 司朗
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、幼稚園における幼児の運動経験の内容およびその実態を明らかにし、運動指導の内容を運動能力との関連で検討することであった。43園を対象とした質問紙調査からは以下のことが明らかとなった。1.多くの幼稚園で子どもの健康・体力に対する意識を高くもっていた。2.約6割の園に体育専門の指導者がおり、保育者は運動を特別なものとして捉えその活動を専門の指導者にまかせる傾向がみられた。3.運動指導の内容は、体操やサッカーなどのスポーツなど特定の活動が中心であり、これらの活動は好きな遊びの時間などでは活発に行われておらず、指導時間限定の活動であることが示唆された。4.運動会は、半数の園は普段の遊びの延長として行なわれ、残りの半数の園では特別な出し物を披露する行事として行われており、保育時間にそのための練習が行われていた。一方、4園を対象に行なった保育場面の観察により以下のことが明らかとなった。1.一斉保育を中心としている園では、全体的に子どもの活動に対する選択の自由度が低く、動きのバリエーションも少ないという保育形態の違いによる子どもの運動経験の違いが示唆された。このことが運動能力の低いことと関連しているものと思われる。2.一斉活動における保育者の運動指導はどの子にも画一的に一様の指導が行われていた。3.運動能力の高低によらず幼児の活動の中には高い運動強度のものはほとんどみられなかった。このことから幼児期には高い運動強度の活動は必要なく、からだを多様に動かすことが運動発達に影響していることが示唆された。保育者は遊びの重要性を意識し、遊びを通しての教育を実践していく必要がある。また、活動を中心とするのではなく、子どもの経験を重視した保育内容を計画していくことが大切である。