著者
吉村 昇 長谷川 誠一 鈴木 雅史
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

有機系絶縁材料は,電気的・機械的特性が優れているため、無機系材料に代わって配電機器材として広く使用されている.しかし有機絶縁材料は,トラッキング劣化やトリ-イング劣化などの有機系材料特有の絶縁劣化と絶縁破壊現象を起こすことが知られている.特にトラッキング劣化は,有機絶縁材料の信頼性と寿命特性を検討する上で非常に重要である.一方で,環境問題として公害の悪化,汚染物質の長距離越境輸送などによる酸性雨問題が注目され,これが屋外で使用される有機絶縁材料に及ぼす影響が懸念されている.本研究では以上の点を考慮し,有機絶縁材料の耐トラッキング性に及ぼす酸性雨の影響,劣化過程を総合的に検討し,その劣化機構を解明することを目的とした.その結果,酸性雨は有機絶縁材料の耐トラッキング性を大きく低下させることを示し,酸性雨が汚染物質としての外的要因で作用する場合と,荷電時の電解液として作用する場合の双方の影響とその劣化過程を明らかにした.また,それぞれのパラメータの経時変化を実験的見地から検討し,それぞれの劣化機構を明らかにした.
著者
竹村 和久
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、過程追跡技法などの心理学的方法論や数理計量的方法論を用いて、社会経済環境における判断と意思決定現象を解明し、社会経済現象を意思決定過程分析より明らかにすることであった。意思決定過程は、我々の社会生活や社会経済環境において容易に見出される現象であり、人々は、このような社会経済環境の中で意思決定を行っているのである。それ故、社会経済環境での意思決定過程に関する研究は、社会経済現象の理解にとって有用であると考えることができる。意思決定現象を説明する上では、効用理論が代表的な理論である。効用理論は、多くの意思決定現象を説明することに成功しているが、意思決定の記述の仕方や意思決定手順やその他の外的課題状況の影響による状況依存的意思決定を説明することには成功していない。例えば、トゥベルスキーとカーネマンが示したように、客観的には同じ意思決定問題であっても、その意思決定問題の記述が異なることによって、その心的構成が変化して、異なる意思決定の結果になるような現象が存在するのである。本研究では、まず第一に、なぜ効用理論の体系が状況依存的意思決定を説明できないのかを明らかにした。この効用理論には、ランク依存効用理論のような非線形効用理論でさえ含まれることを指摘した。第二には、社会経済環境における状況依存的意思決定を説明する新しい意思決定の定性的モデルを提案した。第三には、社会調査や面接技法や理論的分析を通じて、判断と意思決定に関する社会状況の基本的なタイプを明らかにした。第四には、いくつかの心理実験を通じて、社会経済現象における状況依存的判断と意思決定の定性的特徴と定量的特徴を明らかにした。第五には、過程追跡技法などを用いてリスク判断や意思決定の認知過程の定性的特徴を明らかにした。第六には、心理実験や社会調査の知見をもとに、ファジィ集合論を用いた心理計量モデルや社会経済環境における判断と意思決定を説明する数理モデルを作成した。これらの知見は、国際学会や国内学会で発表された。また、いくつかの知見は、学術誌において公刊されている。
著者
西田 佐知子 西田 隆義 内貴 章世 市岡 孝朗 西田 隆義 内貴 章世 市岡 孝朗
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

他生物との共進化を類推させながらも、その多様化の原因や経緯が明らかではない器官に「ダニ室」がある。本研究ではガマズミ属植物を用い、ダニ室の形態・生態的多様性の実態を明らかにするため、形態学、分子系統樹との比較、生態学の調査を行った。その結果、45の調査種で、ダニ室の有無は地域・系統などでは分かれなかった。ダニ室の多くは毛束型だった。同地域の形態が異なるダニ室、同じ形態でも違う地域のダニ室、同地域で同形態だが違う季節のダニ室では、それぞれダニの種類や数が、一部重複はするものの異なった。これらの結果から、ガマズミ属のダニ室は環境に応じて並行的に進化し、特定のダニとの強い共生関係より、緩やかで多様な関係を保つ共生器官として機能している可能性が示唆された。
著者
櫻井 治男 牟禮 仁 本澤 雅史 河野 訓 塚本 明 藤本 頼生 石原 佳樹 八幡 崇経
出版者
皇學館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、(1)神仏分離時期の行政文書(廃仏毀釈・神葬祭関係が中心)のデジタル画像化と公開、(2)寺院を中心とした廃仏毀釈状況の検証、(3)新たな葬儀形式である神葬祭の受容期における寺院と人々との関係などについて研究を進展させることを主な目的とした。それぞれの成果の概要は次の通りである。(1)については、三重県庁所蔵の関係行政文書、約5000枚のデジタル画像化を行ない、三重県史編纂室、皇學館大学、三重大学の3か所においてパーソナル・コンピューターによって閲覧することを可能とした。また、三重県神社庁所蔵の関係文書および神宮文庫において研究上重要な史料の存在を確認することができた。但し、これらの史料は膨大な量に及び、研究の推進上はその一部を活用するにとどまっており、今後の研究課題として残された。(2)寺院を中心とした廃仏毀釈状況の検証は、なお時間をかけて明らかにすべき課題である。本研究では、関係史資料(文書・絵図)の確認と一部資料の収集を試みたが、内容的な検討は必ずしもできず今後の研究展開に委ねることとなった。しかしながら、関係資料の一部を研究報告書に収録し、研究基盤の一端を公開する役割を担うことができた。(3)の神葬祭化の問題は、本研究グループが主体となり行なったシンポジウムを通して、研究の方向性や観点などを明らかにすることができたが、実生活における状況の解明や、更なる史料の収集および内容検討は今後の課題となった。
著者
石崎 俊子 佐藤 弘毅
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

携帯電話日本語学習サイトの構築と実践を通して利用実態と利用動向を明らかにした。学習環境の常設性、学習ニーズに関する即時性、学習の接続性という役割を十分果たしていると言える反面、文字の入力と問題形式に問題があったことから、日本語初級学習者にはページ移動及び日本語入力のない問題形式、つまり穴埋め問題を活用すると効果的に学習できると分析する。
著者
菅沼 雅美 葛原 隆
出版者
埼玉県立がんセンター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ピロリ菌が分泌する発がん因子Tipαの受容体としてヌクレオリンを同定した。ヌクレオリンは本来核小体に局在するタンパク質であるが、胃がん細胞では異常に細胞表面に局在したヌクレオリンがTipαの受容体・輸送体として機能し、TipαによるTNF-α遺伝子発現亢進に関与することを明らかにした。胃がんの発症過程でヌクレオリンが細胞表面に異常に局在した細胞にTipαが作用してがん化を促進すると解釈する。ヌクレオリンとTipαとの相互作用は新しい胃がん発症機構である。
著者
川崎 政人 若槻 壮市 加藤 龍一 五十嵐 教之 平木 雅彦 松垣 直宏 山田 悠介 鈴木 喜大 RAHIGHI Simin ROHAIM Ahmed
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

NF-κBは、免疫、炎症、抗アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を活性化する転写因子であり、NEMOにより活性化される。NEMOはLys63結合ユビキチン鎖と結合すると報告されていたが、意外なことにユビキチンが直列につながったタンデムユビキチン鎖により強く結合してNF-κBを活性化することが判明した。タンデムユビキチンとNEMOの複合体の結晶構造解析の結果、NEMOはコイルドコイル二量体の両面で2分子のタンデムユビキチンを対称的に結合しており、NEMOによるユビキチン鎖の選択的認識機構が明らかになった。
著者
門倉 正美 岡本 能里子 奥泉 香
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

国際語用論大会(2009)および社会言語科学会大会(2010)での発表、「リテラシーとメディア・リテラシー」シンポジウム(2010)の開催等によって、言語教育における「見て理解するviewing(ビューイング)」要素の重要性を強調することができた。特に、視覚表現(例えば絵や写真など)と文字表現が複合した意味表現の理解のあり方、つまり「視解+読解」という意味での「視読解」の探究の端緒を切り開くことができた。
著者
植木 昭紀 磯 博行 佐藤 典子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アルツハイマー型認知症における神経病理学的変化がプレパルスインヒビションを制御する神経回路に影響すると考えられ、プレパルスインヒビションの測定がアルツハイマー型認知症の前駆段階と考えられる健忘型軽度認知障害、軽度アルツハイマー型認知症、正常加齢を判別するための簡便な非侵襲的検査として応用できる可能性がある。
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。
著者
二宮 啓子 丸山 浩枝 宮内 環 岡崎 裕子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

生活習慣に関連した健康障害をもつ学童と親に自己管理技術を高める1年間の看護介入プログラムを実施し、学童の生活習慣に関する認識・行動・肥満度の改善への効果について検討することを目的に研究を行った。小学1〜6年生37名(男子17名、女子20名)と母親を対象に、子どもにはプログラム前後に自己効力感とソーシャルサポートの質問紙調査、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接調査を行った。一方、親にはプログラム前後に健康の定義、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接、または質問紙調査を行った。介入方法としては、面接調査時に自作のパンフレットを用いて生活改善の方法を指導した。その後、月1回放課後に2時間の生活改善プログラムを10回実施した。その結果、肥満度は介入1カ月後に有意に減少していた(t=4.09,p<0.001)が、その後上昇し、プログラム終了時には有意差は見られなかった。プログラム前後では、やせ1→0名、標準20→24名、軽度肥満9→5名、中等度肥満5→7名、高度月満2→1名に変化していた。自己効力感は、プログラム後に有意な増加は見られなかった。ソーシャルサポートは、親の得点がプログラム後に有意に増加する傾向が見られた(Z=-1.64,P=0.10)。プログラムの子どもへの効果として、「運動するようになった」「食事・おやつの量が減った」「栄養のバランスがよくなった」等の運動、食事行動の変化、「走ってもしんどくなくなった」「体重が減った」等の身体の変化、「低カロリーのおやつを選択」「体重測定をする」「自分の食べる量が分かる」「運動と食事のカロリー消費との関係を考える」等の健康の自己管理の認識の変化、「前向きになった」「決めた目標に向かって張れた」等の自己効力感の変化に加え、「親子の会話が増えた」が抽出された。本プログラムは肥満度の改善に対する短期・長期効果があると言えよう。
著者
及川 清昭 槻橋 修 藤井 明 大野 秀敏
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は日本の都市空問における特徴のひとつである建物間の隙間に焦点を当て,隙間の定量化手法を提案し,市街地における隙間の面積と分布様態の特性を明らかにすることを目的としている。建物間の隙間は,建物配置図において半径rの円が掃過できない領域として定義する。円の直径が隙間の幅に相当する。隙間の領域を抽出する方法として,建物配置図を画像化(1画素50cm角)し,画像処理技法における図形の収縮(erosion)と拡大(dilation)という操作を援用する。すなわち,半径rの円に対応するディジタル図形によって建物平面を拡大し,その後収縮するという方法を用いる。これはモルフォロジーにおけるclosingと呼ばれる操作に相当し,画像処理の結果,隙間が抽出可能となる。この計量手法を東京都23区と大阪市24区における建物配置全体に適用し,以下のような知見を得た。(1)隙間率(グロスの面積比)は東京都においては,隙間の幅1.5mの場合は0.5%,幅2.5mでは1.4%,幅3.5mでは2.4%,大阪ではそれぞれ0.6%,1.3%,2.0%と計量された。局所的には10%を超える地域も多く,隙間の面積は市街地形成上無視し得ない量となっている。(2)隙間率と建物の密度指標(棟数密度・周長率・建蔽率)の値とは高い相関を示す。(3)隙間率の高い地域は,東京都ではJR山手線外周沿いに,大阪市ではJR大阪環状線外周沿いに環状に連担する。(4)隙間率の高い地域は住宅密集地域であり,人口密度が高く,緑被率は低い。震災対策重点地域とも重なり,都市の安全上の問題を抱えている。なお,本研究は数理的考察に加えて,隙間の生成過程について歴史文化的な面からも考察することを目的としていたが,建物配置に関する法令・慣習なとの資料をもとに若干の考察を加えるに留めた。また,隙間の利用状況に関する現地調査を行い,隙間のもつ機能についても検証した。
著者
菊地 正 椎名 健 森田 ひろみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

スクロール提示とは,限られたスペースに文字を右から左(あるいは下から上)に移動させることで,文章を提示する情報伝達手段を意味する。本研究では,観察者が読みやすいと感じるスクロール提示条件を明らかにするため,以下の研究を行った。1)同時に表示可能な文字数(以後,表示文字数)を1〜15文字の間で操作し,最も読みやすいと感じるスクロール速度(以後,快適速度)に調整するよう観察者に求めた。快適速度は表示文字数に伴って増加するが,表示文字数が5文字以上ではほぼ一定となった。また,街頭に実在するスクロール提示装置の平均スクロール速度(調査対象数242)は,本実験の各表示文字数条件の快適速度と比較して,およそ2倍遅いことが確認された。2)スクロール提示条件における,表示文字数(2,5,15文字)および速度(上記実験結果に基づき,快適速度,その2倍,あるいは1/2倍の速度のいずれかに設定)が操作された。観察者は,それぞれの提示条件から受ける印象について,14項目を7件法で評定するよう求められた。実験の結果,5および15文字条件では,観察者がほぼ同様の印象を受けることが明らかにされた。また全ての表示文字条件において,2倍速条件では,より"理解しにくいと"と評価されやすく,1/2倍速条件では,より"いらいらする"と評価されやすいことが明らかにされた。3)スクロール提示枠の,中央,左端,右端のいずれかの上または下に車仮名一文字が短時間提示された。観察者の課題は,文字刺激に対する無視または弁別反応を行いながら,スクロール提示文を快適速度に調整することであった。実験の結果,文字刺激が提示枠右端に提示される場合,文字刺激に対する課題の有無に関わらず,快適速度が低下することが明らかにされた。このことは,スクロール提示文の読みの最中の有効視野が,提示枠の右側に広く分布している可能性を示している。
著者
西川 栄一
出版者
神戸商船大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

デイ-ゼル主機の排熱回収の蒸気発生器である排ガスエコノマイザの伝熱面は、排ガス中に含まれるス-トで汚され、種々の障害に悩まされる。とくに問題なのは堆積したス-トが燃焼し、ひどい場合には伝熱面がメルトダウンに至る「ス-トファイア」と呼ばれる深刻な事故が生じることである。本研究によりス-トファイアの機構を解明し、防止のための方策を提示できた。1 事故実態の調査分析・・・・ス-トファイア事故データを集めて分析し、主な関係因子は運転状態、循環条件、伝熱面の形状であることを明らかにした。2 ス-トファイアのシミュレーションモデルの構築・・・・ス-トファイアの計算機シミュレーションモデルを構築した。モデルは実際の現象をうまく再現していることが確認され、伝熱面に堆積したス-トが燃焼する諸条件、伝熱面の上昇温度などが推定可能になった。3 鉄鋼材料の酸化速度に関する分析・・・・上のシミュレーションモデルにより、堆積したス-トの燃焼熱だけでは伝熱面が溶融するまでには到らないことがわかった。そこで伝熱面フィンなど鉄鋼材料の酸化速度に関する諸条件を調べた。その結果実用されているフィンの場合、一定の条件ではメルトダウンを引き起こす熱源となり得ることが明らかになった。4 メルトダウンの機構・・・・メルトダウンに到る過程は以下のようであることが解明された。ス-ト燃焼発生→→不均等加熱のためドライアウト発生→→熱除去効果喪失のためフィン温度急上昇→→フィン材の酸化速度急上昇による酸化熱のためフィン温度さらに上昇→→メルトダウン5 水循環設計条件の分析・・・・排エコは、強制循環の並列水平管で構成され、しかも低圧なので水側がドライアウトしやすく、水循環設計条件が重要である。国内排エコの設計条件を調査した。その結果ドライアウトの可能性の高い設計がなされている排エコも存在することが明らかになった。6 本研究の結果に基づいて一連のス-トファイア防止策を提言し、海運、造船、排エコメーカなどでそれが採用され、現在ス-トファイア事故は急減することとなり、大きな成果を得た。
著者
丸毛 啓史 黒坂 大三郎 小谷野 康彦
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

再建靱帯組織由来線維芽細胞に対する低出力超音波パルス(以下LIPUSと略す)照射は、出力強度依存的にコラーゲンの量を増加させるのみならず、靱帯型の架橋パターンを変えることなく、生理的架橋の量を増加させること、さらには、コラーゲン基質の成熟速度を促進することが明らかになった。従って、LIPUS刺激は、術後療法の短縮を計るための手段の一つとして、臨床応用可能と考える。
著者
平田 武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、政治学研究上の空白となっているハプスブルク君主国とその継承諸国の政治発展をヨーロッパ全体の政治発展の中に位置づけることに寄与する目的をもって始めたものである。研究期間中には研究文献・同時代文献・史資料の収集とその分析をすすめ、その成果の一部として、ハプスブルク君主国のオーストリア側における政治発展を概観した研究(雑誌論文)、東中欧・南東欧地域における政治発展の見取り図を含む論文(近刊の共同研究論文集に所収の予定)、1920年代の当該地域におけるデモクラシーの崩壊事例の研究などをまとめた。
著者
佐伯 万騎男 上崎 善規
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨吸収性疾患の治療において破骨細胞分化を調節する小分子化合物は非常に有望な創薬候補として期待される。破骨細胞分化を調節するあらたな小分子化合物を見出すためcell-basedのスクリーニングシステムを開発し、harmineという非常に興味深い小分子化合物を発見した。harmineは破骨細胞分化に対し正負に働くシグナル(カルシニューリン-NFATおよびid2)を同時に活性化させるという興味深い性質をもつことが明らかになった。
著者
能田 均
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

生命科学の進展に果たす蛍光分析の役割は大きいが、その色素には旧来より大きな進歩はない。本研究では、生体と相互作用しにくく、丈夫で、水溶性に富み、高蛍光性の色素の開発を目的とした。開発した新規色素・糖化ローダミンは、従来にはない"生体分子と相互作用しにくい"という特性を持っている。この色素はアミノ基のラベル試薬として用いることが可能で、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等の蛍光ラベル化が可能であった。今後の色素設計のモデルとなりうる。
著者
小椋 康宏 董 晶輝
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、ベンチャー・キャピタルがベンチャー企業への投資を通して、ベンチャー企業の企業価値創造に関する投資評価基準を明らかにした。本研究に関する先行研究を整理・分析し、これまでの財務的側面での研究の不足に対し、アンケート調査を行った。この調査では、次の4つ領域に焦点をあわせ、ベンチャー・キャピタル会社の財務担当者からの回答を通して、その投資評価基準の実情および問題点を明らかにした。(1)ベンチャー企業への出資の審査基準についてでは、最も関心を持つ点は出資審査基準として「ビジネス・プラン」が第一に挙げられたことである。これは、以前の調査において「経営者資質」が最大であったものから考えると、ベンチャー・キャピタルはベンチャー企業自体の事業内容が重要であると判断している新しい流れができている。(2)出資先企業に対する評価について、最も関心を持った点は評価方法である。ベンチャー・キャピタルが「ベンチャー・キャピタル法」、「DCF法」、「マルチプル法」、「リアル・オプション法」を取り上げたことについては投資決定において新しいファイナンス理論による方法を積極的に利用しようとしていることが理解できる。(3)投資期間と出資ポートフォリオについて、最も関心を持った点は資金回収の方法である。資金回収の方法として「株式公開」をベンチャー・キャピタルが第一義的に考えていることは評価してよい。(4)出資先企業への経営関与について、最も関心を持った点は、ベンチャー・キャピタルが経営関与を行うこと、およびベンチャー・キャピタルが必要な人材を必要なときに派遣する実態が明らかになった。
著者
日高 三郎 大石 明子
出版者
福岡医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

4種類の日常的な食事献立の試験管内石灰化への影響につきpH低落法を用いて研究した。主食のごはんは石灰化を促進させたが、食パン(トースト)は抑制した。献立1~3のじゃがいもなど2~3の料理と食材、さらに洋食的な献立4のバターなど2~3の料理と食材は石灰化を促進した。しかし、促進効果は口腔内では唾液の影響で発揮されないと考えられるので、われわれの日常的食事は歯石形成に抑制的であることが示唆される。