著者
西本 右子
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.木材から発生する揮発性有機化合物(VOC)及び有機酸の迅速測定法の開発これまでに建材メーカーや施工業者が適切な建材を簡易かつ迅速に選定するための測定法を確立しGCとTGにより2時間程度で建材中のVOC評価が行えることを報告してきた。本研究では測定法のさらなる精度向上を目指した。その結果、木材1gを20mLバイアルに密閉し、110℃1時間保持後の気体を直接GC測定することで、木材から発生する揮発性有機化合物の測定が行えることがわかった。ICを用いた有機酸の迅速評価法についても純水に浸漬し超音波処理後遠心分離・ろ過によって可能であることがわかった。さらに現在各種機能水の適用を検討中である。2.木材の種類、産地、部位を考慮し、温度・湿度を中心とした使用環境の影響の検討木材の種類、産地、部位によってVOC成分・発生量及び水抽出分は異なり、輸入木材ではVOC発生量が多く、水抽出分が酸性であることが明らかとなった。一般にセルロース含有量が多い木材はGC測定においてTVOC値が高いこともわかった。木材の前処理として塩の水溶液や各種機能水の蒸気と接触させた場合、揮発性有機化合に対する吸着特性の制御の可能性が得られた。3.木材(廃材)を原料とする木炭等のVOCに対する吸着剤としての利用通常室内の存在する、VOC12種及び木材・木炭・木質系エコマテリアルであるウッドセラミックス(WC)について検討した。吸着後試料のTG測定結果と合わせ、これまでの測定法が木材、木炭等の悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性評価として有効であることがわかった。また木炭及びWCでは悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性が原料である木材に依存することが明らかとなった。また木材同様木炭、WCにおいても前処理として塩の水溶液や各種機能水の蒸気と接触させた場合、揮発性有機化合に対する吸着特性を制御できる可能性が示唆された。
著者
鈴木 剛
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

震災などの災害発生後に,被災状況の把握に必要な情報を収集する無線センサネットワークを移動ロボットにより展開するための,センサノードの運搬・配置機構の開発を行った.特に本課題では,障害物等により進入不可能な隔離空間に,遠隔操作型レスキュー移動ロボットにより無線センサノードを投擲配置するための投擲機構,および,有線のセンサノードを用いた投擲距離調整機構を開発し,実験により評価した.
著者
甲斐 教行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中部イタリアのシエナを中心に活躍した画家アレッサンドロ・フランキ(1838-1914年)と委嘱主の諸修道会との関連を検討し、画家の一連の宗教画に貧者への扶助等の慈善活動を促す意味内容を読み取った。またジェノヴァのサンティッシマ・アヌンツィアータ教区聖堂の壁画《無原罪受胎の教義》、シエナのサンタ・テレーサ女子寄宿学校礼拝堂装飾、そしてオルヴィエート、ボローニャ、プラートの各聖堂に所蔵される三点の《聖家族》の銘文と図像の典拠を特定し、各作品の意味内容を読解した。
著者
塚本 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

江戸時代に寺社参詣道沿いの村々が、旅人たちといかなる関係を持ち、それは地域社会の成り立ちにどのような影響を与えたのかを検討した。基礎作業として、熊野街道を対象に、諸国の旅人が著した道中日記260点、善根宿に納められた旅人の納札5000点余、地域社会に遺された算用帳中の旅人救済記録約7000点をデータ化した。その上で道中日記の世界と対比しつつ、地域社会の救済を受けながら旅を続ける貧しき旅人の世界を抽出した。
著者
涌井 佐和子 志手 典之 新開谷 央
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、寒冷地における児童の身体活動推進を目的とした行動科学的介入方法の開発を目的とした。研究の概要は下記の通りである。1)先行研究を検討した。欧米における児童の身体活動推進に関しては、教科体育、教科外での運動実践、栄養教育、家族サポート、などを含む複合型が多かった。また、児童の身体活動の評価は、簡便な質問票に加速度計での測定を併用したものが多かった。様々な行動変容の理論体系の中で重視される心理環境要因の検討も行われていた。2)42名の児童を対象としてスズケン社製ライフコーダEXを用いた予備調査を行なった。児童の身体活動量は休日と平日で異なっており、少なくとも7日間の平均値を用いることが好ましいことが明らかとなった。3)保護者に対して健康づくり環境についての調査を行なった。子どもの健康づくりに関する学校に対する要望として、教科外の取り組みに対するものが多く、学校施設の開放を求める声も見られた。地域に対する要望は、今日問題となっている安全対策に関するものが多かった。4)64名の児童を対象とした調査を行なった。冬になると児童の身体活動量は特に平日に減少し、また身体活動に関わる環境も変化していた。身体活動度の高い児童と低い児童との間では、社会的支援や心理的要因が異なっていた。5)330名の児童を対象とした調査を行なった。冬になると運動・スポーツを実施するための環境は大きく変化している可能性が示唆された。6)教員を対象として無記名自由記述調査を行なった。児童が活発である学校の特徴として、地域要因(スポーツ少年団の種類が多く活発、校区が狭く車による送り迎えが少ない、地域にさかんなスポーツがある、等)、学校要因(遊具や施設、教職員の連携や統一感、学校行事)、家庭要因(家族が活動的、家族支援)の3つが挙げられた。7)研究1〜6の結果をふまえ、推進のための現実的な試案を作成した。
著者
葉柳 和則 中村 靖子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

戦後スイスは、ヨーロッパの中央部に位置しながら、第二次世界大戦に関与しなかった「無垢」の国として自らのナショナル・アイデンティティを規定しようとしてきた。このことは、スイスの人口比で約70%を占めるドイツ語圏スイスにおいては、まさにその言語ゆえに重要であった。本研究では、戦後スイスを代表する作家であるマックス・ブリッシュの言説の軌跡を、メディアと知識人の作り出す言説の共同体との関連において跡づけることによって、スイスの国民統合の言説戦略と知識人との間の共生と抗争の諸相を明らかにした。
著者
島内 景二
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

北村季吟の偉大さは、古典研究の成果が「平和な国家の樹立」のために活用できると信じ、幕府の最高権力者の柳沢吉保と連携した点にある。最高の文化人と幕府の最高権力者が協力して開花させた元禄文化の真実を、『源氏物語』と『古今和歌集』の現代化という観点から文化史的に大胆に捉え直し、六義園という建物、数々の文学作品を、平安時代からの伝統の中に位置づける本研究は、江戸時代における古典文化復興の成功例を抽出したと言える。それによって、21世紀における新たなルネッサンスの開始の可能性を模索した
著者
師尾 晶子
出版者
千葉商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、2004年~2006年度の科研費補助金による研究課題「古代ギリシアのポリスにおける碑文慣習文化に関する研究」(課題番号16520450)の継続研究である。前研究においては、碑文文化がどのように成立してきたか、どのように展開されたかについて焦点を当ててきたが、本研究ではポリスの中心聖域に建立された大部分の碑文が外交に関わる碑文であることに注目し、とくにデロス同盟関連の碑文について決議年代の再考を含めて再検討し、それを碑文文化の展開というより大きな枠組みの中に位置づけることを試みた。古代ギリシアの碑文文化をめぐっては1980年代末ころより研究が活発になってきており、今日まで続いている。史料の時代的な偏在、場所的な偏在から、その議論の中心は古典期のアテナイにあるが、そのうち前5世紀については、20世紀前半にはその歴史像が固められたデロス同盟研究に多くを負っている。一方、デロス同盟関連の個別碑文については,いくつかの重要な碑文の決議年代について再考を迫る研究成果が多く出されている。にもかかわらず、デロス同盟史の記述には反映されず、結果として碑文文化の研究にも反映されてこなかった。本研究では、新しい研究成果を取り入れた上で、また自身もその新しい研究動向に貢献する中で、アテナイにおいて決議碑文を建立する文化がどのような歴史的経緯の中で成立したのか、またそれがアテナイにおける外交のあり方をどのように反映したものであるのかを考察した。安易にアテナイ民主政と関連づけられてきた碑文文化をめぐる議論に警鐘を唱えるとともに、アクロポリスの変遷の歴史をふまえて決議碑文建立の文化の成立について考える必要のあることを示し、アクロポリス再建事業の一つの結果として外交に関わる決議碑文をアクロポリスに建立するという文化が成立したことを明らかにした。
著者
直江 眞一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

13世紀イングランドで作成された裁判実務書の分析を通して、国王裁判所の訴訟手続と教会裁判所の訴訟手続の比較検討をおこなった。具体的には、『訴訟および法廷の書』(1写本のみ伝来)と「聖俗の法廷における訴訟手続』(3写本が伝来)を詳細に比較分折することによって、在地レベルにおいて聖俗両裁判手続の間で一定の関連性が認められること、また裁判実務書は作成者それぞれの関心に応じて内容が一様ではないことを明らかにした。
著者
辻 英子
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1.平成23年度に行ったボドリアン図書館所蔵の絵巻2点の資料について: 1)『長恨歌絵巻』二巻(平成22年度資料購入済、翻刻済)2)『やしま』二巻(平成23年度資料購入済、翻刻完了)2.ケンブリッジ大学中央図書館蔵『末ひろかり』二巻 翻刻・解題 『三田国文』第五十四号掲載済。3.聖徳大学所蔵絵巻に関する平成23年度の調査資料の研究進捗状況:1)『七夕』三巻 解題・翻刻およびベルリン国立アジア美術館所蔵『天稚彦草紙絵巻』(詞 後花園天皇宸筆/絵 土佐弾正藤原廣周筆。本絵巻はフェノロサより1年はやい明治10(1877)年3月に来日したドイツ人医師ギールケHans Paul Bernard Gierke、1847 - 86 プレスラウ大学准教授の蒐集による世界で最も美しい絵巻、下巻のみ)は、『三田国文』第五十三号に全容を掲載済。『扇面 平家物語』についてはヨーゼフ・クライナー特別教授主催の招待講演で発表(次掲学会発表の項参照)した。2)論題「『伊勢物語』絵巻 について」『三田国文』第五十五号に入稿済、平成24年6月刊行予定。詞書は近衛基熈筆 絵は土佐光起筆の署名どおり真跡で、証明にあたり3)の自筆作品と対照した。3)宮内庁書陵部所蔵『武家百人一首』および『禁裏御會始和歌懐紙』(翻刻済・掲載許可取得済)4)『不老ふし』(翻刻済)鶴の草子・酒呑童子・浦島太郎(翻刻済)、竹取物語・敦盛(翻刻済)4.ウィーン国立民族学博物館所蔵『百人一首』(平成23年9月調査、翻刻済、掲載許可申請中)「3の3)」の2作品および「4.」を点検証左した結果、江戸時代前期後水尾院文化圏の公卿約100名の真跡を確定でき、当該先行研究榊原悟氏による34名認定説を推進し、新出真跡資料を加え得た。5.オーストリア国立工芸美術館(MAK)所蔵『源氏物語画帖』の調査済(平成23年9月6日)。6.バイエルン州立図書館蔵『源氏物語』五十四帖第一巻の本文調査済。公開発表予定。7.ケンブリッジ大学エマニュエルカレッジProf.Dr.John Coetes(数学)所蔵「源氏画帖」の招待調査。
著者
近森 秀高 永井 明博
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年の気候変動に伴う降雨パターンの経年変化を日本全国で観測された長期の日雨量, 時間雨量, 10分間雨量を統計解析することにより調べ, 確率雨量が主に太平洋側で経年的に増加すること, 降雨は時間的に集中する傾向にあること, 少雨の頻度が全国的に増加する傾向にあることを示した。また, 長期の気象データを用いて長期流出解析を行い, 全国的に渇水時の流量が減少する傾向にあることを示した。
著者
笠井 亮秀 小路 淳 小路 淳
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

フィールド調査の結果、ミズクラゲ重量と底層の溶存酸素濃度の間に負の相関が認められた。またミズクラゲの分布域と、魚卵稚仔や動物プランクトンの分布域は、一致していなかった。安定同位体比分析より、ミズクラゲは魚卵稚仔を含む動物プランクトンを主な餌とする雑食性であると推定された。ミズクラゲは強い貧酸素耐性を有しており、沿岸域の 貧酸素化にともない、ミズクラゲへの栄養フローが増大していると推定される。
著者
安井 幸則 橋本 義武 大田 武志 阪口 真 阪口 真
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年の超弦理論の発展は高次元のEinstein方程式を解析する大きな動機づけを与えた. このような流れの中で高次元ブラックホールに存在する隠れた対称性を発見した.この結果をさらに発展させ「高次元ブラックホール解の一意性定理」を証明した. また,高次元ブラックホール解をコンパクト化することにより得られる佐々木Einstein計量を使ってゲージ・重力理論対応の検証を行った
著者
安積 徹 佐々木 陽一 喜多村 昇 山内 清語
出版者
国際教養大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

以前安積は、モリブデンの六角クラスターの三重項状態からの燐光の温度変化を解析し、燐光は、三重項状態がスピン軌道相互作用によって分裂した3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせによるものと解釈した。その後、モリブデンクラスターと同じ電子数で同じ対称性のレニウムクラスターについてGreyらによって報告されたが、彼らは、スピン副準位を考えず、温度変化の原因を振動励起状態からの発光の寄与と結論した。一方、北海道大学の喜多村らは、スピン副準位の寄与を考えたが、安積のモリブデンクラスターと異なり、4つのスピン副準位が関与していると結論した。電子数も対称性も同じである2種類のクラスターでどうして発光機構がそれほど異なるのかを解明するために、本研究では、モリブデンクラスターとレニウムクラスターを総合的に理論、実験の両面から再検討を行った。実験は、モリブデンクラスターについては、カウンターイオンの異なる2種類のクラスターを、また、レニウムクラスターについては、配位子の異なる2種類のクラスターを、結晶状態およびPMMAポリマー溶液状態で燐光の温度変化を詳細に観測した。その結果、すべてのモリブデンおよびレニウムクラスターについて、燐光は主として3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせであることが明らかになった。更に、測定温度を極低温の3Kまで拡張した測定により、2番目のスピン副準位についてJahn-Teller効果による対称性の低下が起こり、それに伴ったエネルギーレベルの分裂が観測された。理論面では、従来のd電子のみを考慮する二重群論に基づく理論が、この種のクラスターに広く適用できることが明らかとなった。
著者
野崎 浩 川出 洋 林 謙一郎
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高等植物では,ジテルペノイドは植物ホルモン,抗菌物質や摂食忌避物質など,様々な生理活性を示す2次代謝物として生産される.下等な陸上植物である蘚苔類やシダ類においては,それらジテルペンの生合成経路は不明であった.そこで,陸上植物におけるテルペノイド生合成系の進化を世界に先駆けて明らかにすることを目的として,下等植物である蘚類と苔類からのジテルペン合成酵素のクローニングと機能解析に加えて,シダ植物イヌカタヒバからも,ジテルペン合成酵素遺伝子のクローニングと機能解析に着手した.その結果,苔類ツツソロイゴケと蘚類ヒメツリガネゴケのカウレン合成酵素の遺伝子クローニング,機能解析および酵素触媒機構の解析に成功した.また,イヌカタヒバからは,4種類のジテルペン合成酵素遺伝子をクローニングし,その酵素機能に成功した.興味深いことに,シダ類は,より下等な蘚苔類とは異なるタイプのジテルペン合成酵素遺伝子を保持しており,被子植物のジテルペン合成へと進化する途上の酵素遺伝子群と考えられた.
著者
和泉 志津恵 中地 敬 藤井 良宜 古川 恭治 中地 敬 藤井 良宜 古川 恭二
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

分子疫学的因子や生活環境因子が, がん等の疾病リスクにどのような影響を与えるかを調べるために, 生活環境における曝露の寄与率を取り入れた因果推論モデルを構築し, 寄与率の推定値のばらつきを考慮した手法を開発した。提案手法は, m水準のカテゴリカルな曝露変数に対して, 曝露群の症例を曝露由来のものとそうでないものに確率的に分類し, 寄与率に基づくオッズ比により因果関係を推測する。実データに即した数値実験の結果, 曝露由来でないとして分類された曝露群の症例によって, 従来の方法において推測された因果関係の強さが過小評価されている可能性を示唆した。
著者
大賀 水田生 中畑 和之 谷脇 一弘 海田 辰将
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は, 無線機能付きMEMS加速度センサを橋梁等の構造物の構成要素に添付し, そこから得られる振動波形のモニタリング情報から部材の大まかな損傷位置・程度を推定する技術を開発することである。本研究は, 振動時刻歴応答解析シミュレーション技術の構築, 無線機能付きMEMS加速度センサの製作, 及び本システムの検証から成っている。
著者
水田 敏郎 藤澤 清 吉田 和則 保野 孝弘 大森 慈子 宮地 弘一郎 権藤 恭之 堅田 明義
出版者
仁愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,知的障害を有する高齢者を対象に認知機能の検討をおこなった.S1-S2パラダイムに基づき,S1を顔刺激としS2で提示される複数の顔刺激からS1を検出するものとし,ボタン押し反応や視行動,ならびに心拍反応から検討を行った.その結果,若年成人群ではS1-S2間隔における心拍反応において,第1減速-加速-第2減速の三相からなる一過性の変動が出現し予期的減速反応を反映したものと考えた.また,後半S2提示直後の刺激探索に関する方略の獲得にあわせて,反応時間の短縮が認められた.他方,高齢者群では正答率,平均反応所要時間などの指標はいずれも若年成人に比べると成績が劣っていた.心拍反応については個人差が大きかったが全体的に若年群に比べて変化が小さく,加齢による心拍変動の減少によると思われた.次に,知的障害高齢者を対象とした同様の心理機能の検討を試みた.その結果,知的障害を有する事例はS2として提示した複数の刺激のなかからターゲット刺激を検出するのが困難であった.そのうち1事例の反応所要時間は顕著に延長しサッケード潜時は比較的短かった.この事例の心拍反応には,わずかに予期的反応を反映した減速反応がみられた.また別の事例では,反応所要時間は比較的短くサッケード潜時は延長していた.本事例の心拍反応はS1提示直後から減速し,S1に対する低位的性格をもつ反応と位置づけた.また同事例では予期的反応がほとんど惹起されず,このことが原因となってサッケードの生起が遅れたと考えられた.以上より本パラダイムで心拍指標を用いて検討すると,刺激の分析を含めた認知過程ならびに予期的反応の生起過程を捉えることが可能になるといえる.また心拍に反映された2つの心理過程は,行動指標の結果にも合致し,知的障害高齢者の認知機能の評価に有効であることが指摘できた.
著者
渡辺 公三 高村 学人 真島 一郎 高島 淳 関 一敏 昼間 賢 溝口 大助 佐久間 寛
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス人類学の定礎者マルセル・モース(1872-1950)はデュルケームの甥であり、フランス穏健社会主義の指導者ジョレスの盟友であり、ロシア共産主義の厳しい批判者であった。その人類学分野以外での活動もふくめて思考の変遷を、同時代の動向、学問の動向、学派(デュルケム学派社会学)の進展との関係を視野に入れて明らかにし、現代思想としての人類学の可能性を検討する。そのうえでモースの主要業績を明晰判明な日本語に翻訳する。
著者
上原 秀幸
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

圃場で観測した土壌水分データの空間相関特性に基づき、センサノードをクラスタリングし、ノード間の協調制御で低消費電力を図るセンサネットワークプロトコルを開発した。具体的には、(1) 観測データの空間相関分布特性に基づくクラスタリング・アルゴリズム、(2) ノード間協調によるON-OFFスケジューリング制御、(3) 環境の変化に対応してクラスタを再構築するアルゴリズム、(4) 省電力化に加え転送遅延とスケーラビリティを改善する疑似同期MACプロトコルを開発した。