著者
PERRY 史子 榊原 和彦 福井 義員
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

豊かな都市生活環境を創り出す一つの大きな要因である、誰でもがアクセスできる都心公共空間、アーバン・インテリアを対象とし、その空間計画やデザインの方向性を見出す事を目的として、具体的な研究対象地を設定して実態調査を実施した。その実態把握・分析に基づき、都市空間の中でのアーバン・インテリアの位置付け、空間形態の類型、空間的特徴を導き出した。さらに、空間の重なりも含めてアーバン・インテリア空間の実態を総合的に、簡単に把握できるように、GISを応用した視覚的表示システムを構築した。
著者
石原 陽子 中島 徹 富田 幸子 荻原 啓実
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.気管内投与したナノ粒子の体内動態について検討したところ、投与3日目では肺胞腔沈着と肺胞マクロファージによる貪食が、7日目ではI型肺胞上皮細胞や基底膜への沈着や血管腔への移行が認められた。10日目では、I型肺胞上皮細胞、血管腔、肝臓クッパー細胞、嗅球で検出され、沈着部位が広範であることが示唆された。2.ナノ粒子としてディーゼル排ガス暴露実験を行ない、生体影響評価の際の指標を検討した。生理的指標として心拍数、不整脈数、HRV,体温等が、分子生物学的指標としては炎症関連サイトカイン類、ANP,BNP等が選択された。しかしながら、これらの指標と心不全との関連性は、明確ではなかった。3.ディーゼル粒子とその表面を有機溶剤で処理した粒子の炎症性サイトカイン遺伝子発現を指標とした検討では、単位重量当たりの効果は無洗浄粒子に比較して洗浄粒子の影響が強かった。洗浄粒子は無洗浄粒子と比較して単位重量当たりの粒子数が多いことから、この結果には粒子の物理的特性が関与していることが考えられた。4.ディーゼル粒子表面の有機成分の心肺機能と炎症作用について検討したが、心拍数、自律神経、血圧、体温には著しい影響は認めず、気管内投与直後に炎症細胞の軽度な浸潤を認めたが、その影響は速やかに回復した。5.ナノ粒子のリスク評価では、最初の吸入・沈着部位としての肺局所のみならず心臓、神経、脳等への全身影響について、粒子の化学的・物理的特性も充分に考慮して評価する必要があることが示唆された。
著者
山田 啓一
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

周辺車両ドライバの状態に応じた運転支援システムのコンセプトを提案し,そのようなシステムが周辺車両ドライバの状態に適応的ではない従来型のシステムと比べ,より効果的に運転支援が行えることを明らかにした。そして,そのようなシステムを実現するための要素技術として,後続車両の車両挙動からその車両を運転するドライバの反応時間や不注意運転傾向の度合いを推定する手法などを提案した。
著者
中辻 隆
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

冬期路面における渋滞時交通特性に関し、1)凍結路面での追従特性を実走行試験データに基づき、反応時間、潜在衝突性などの追従挙動特性、あるいは衝撃波特性について夏期路面との相違を定量的に明らかにした。2)市販の交通シミュレーターのAPI機能を用いてUnscentedカルマンフィルターを用いて交通需要や交通状態を逆推定する手法の開発を行い、3)上の成果を用いてフィードバック手法に基づく旅行時間予測モデルの開発を行った。
著者
川崎 謙一郎 衛藤 和文 河上 哲
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本科学研究費助成により,ネーター局所環AのイデアルIが1次元のイデアルであるならば,余有限加群からなる圏M (A, I) cofはアーベル圏であることを証明することができた.
著者
樋口 咲子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の研究成果は以下の4点である。一点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる、書字動作に注目した資料集を作成したことである。二点目は、行書の書き方の課題解決法がわかる動画教材を作成したことである。三点目は、書字動作を理解しやすい行書規準文字(いわゆる手本)を提案したことである。4点目は、書字動作に注目した、行書の授業展開法を提案したことである。以上の研究成果により、課題解決学習の充実を目指した。
著者
小阪 美津子 水野 伸彦
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

幼弱期のマウス網膜組織内に、光受容体細胞(視細胞)の形質を獲得しているにもかかわらず、取り出して培養すると増殖を開始して他の網膜神経細胞へ分化転換するという細胞を発見した。その細胞は組織傷害時などに細胞分裂を開始し他の神経を生み出す幹細胞として機能しうる可能性が器官培養系の結果から得られ、全く新規の網膜幹細胞であることが示唆された。またその細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、網膜の発生・分化・疾患に関わる遺伝子候補を多数同定した。
著者
川手 圭一
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、国境変更後にポーランド国内に居住することになったドイツ人住民を主体・客体として展開した「国境を超える」「ホームランド・ナショナリズム」の実態を追った。そのさい、併せてドイツ国内のポーランド人住民、とりわけドイツ本土から「ポーランド回廊」によって切り離された東プロイセンのポーランド人を取り巻くナショナリズムの問題にも注目することで、「ホームランド・ナショナリズム」の客体として翻弄される国境地域の住民の社会的問題を明らかにした。
著者
竹下 享典 沼口 靖 新谷 理 柴田 怜 室原 豊明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

血管新生は既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象であり、その制御は、虚血をきたした組織の血流の改善、あるいはがん細胞増殖の抑制のために重要な治療ポイントである。本研究では、受精卵から成体になる過程で重要な役割を果たすことで知られるNotchシグナルが、成体の虚血組織の血管新生においても重要であることを、細胞内シグナル解析および遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。
著者
小林 聡 宮川 眞一 清水 明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌細胞に特異的に結合するペプチドが同定できれば、そのペプチドで抗癌剤を修飾し、癌組織により高濃度に、また非癌部組織により低濃度に抗癌剤を分布させ、効果を高めつつ副作用の低減を図ることが可能となる。当研究では、ファージライブラリーを用いたバイオパンニング法という方法で、肝細胞癌に特異的に結合するペプチドを同定した。同ペプチドを提示したファージ、ならびにビオチン修飾した同合成ペプチドを用いて、各種悪性腫瘍由来細胞株ならびに肝細胞癌手術切除標本において、その肝細胞癌結合性を確認した。
著者
松永 達雄 幸池 浩子 務台 英樹
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した日本人の原因不明の両側性感音難聴患者(先天性難聴100家系および後天性難聴120家系)において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu (UUR)、tRNA Ser (UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser (AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。この結果、難聴者のみで同定される遺伝子変異が、12SrRNA遺伝子を含む2遺伝子に同定された。本研究成果は日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の重要性を示すものである。
著者
張本 鉄雄
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は二ビーム励起およびアイドラ光の最適化制御による光パラメトリックチャープパルス増幅の超広帯域化と安定化の新しい方式を考案し、ペタワット(1PW=10^<15>W)・サイクル(数フェムト秒)パルスレーザー光の発生を目的とした。研究成果として、スペクトルバンド幅400nmを超えるレーザーパルスの増幅を実現した。また、光パラメトリックチャープパルス増幅に関する簡易な光学設計法を開発した。
著者
橋本 修 高橋 英則 本田 敏志 田口 光 衣笠 健三
出版者
群馬県立ぐんま天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

恒星進化末期の漸近巨星枝(AGB)にある炭素星の形成とその進化シナリオを検討するため、炭素星の可視高分散分光観測を行い、炭素の同位体比^<12>C/^<13>Cを測定する。ぐんま天文台のGAOES分光器を用いることによって、高い波長分解能でありながら、かつ広い波長領域を網羅した高精度の可視分光データを大量のサンプルに対して取得した。この様な大型サンプルに対する高精度の炭素同位体比の測定はこれまでに類をみないものである。
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は1966年から1976年にかけておこなわれた中国文化大革命の歴史的推移を少数民族の一つ、モンゴル族の視点から現地調査を実施し、文化大革命という政治運動の「民族問題的な側面と性質」を明らかにしようとするものである。中国の少数民族自治地域である内モンゴル自治区の場合、文化大革命運動の深化にともない、少数民族の自治権が剥奪された。また、内モンゴル自治区の固有の領土も約半分が漢族の省に分割され、その上、厳しい軍事管制制度が導入された。1966年から1970年の間、34万人が逮捕され、2万7000人以上ものモンゴル人たちが虐殺され、12万人に障害が残った。当時、モンゴル族の人口はわずか140万人だったことから、全モンゴル族を巻きこんだこの政治的な災禍をモンゴル人たちはジェノサイドだと理解している。本研究は、この隠蔽されつづけているジェノサイドこそ、文化大革命時における少数民族問題の本質だと位置づけている。
著者
木宮 正史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米韓両国政府外交文書などに依拠して、カーター政権の在韓米地上軍撤退が決定されることで米韓同盟関係が動揺し、朴正熙政権が核開発を試みるなど、自主国防政策に踏み切る過程を明らかにした。また、1975年ベトナム共産化統一、翌76年「ポプラの木」事件など、南北の緊張激化が、米国の対朝鮮半島政策を結局は転換させ、在韓米軍の撤退が撤回されることになる緊張緩和の逆流過程も合わせて明らかにした。最後に、韓国朴正熙政権は、1973年6・23平和統一外交に関する大統領特別声明にしたがって、対共産圏外交を積極的に進め、後の「北方外交」の原型とも言える外交が既に行われていたことを明らかにした。
著者
番場 俊
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は以下のようにまとめられる。(1)同時代の法的・宗教的言説を背景にドストエフスキーのテクストを分析することで、文学的言語行為としての「告白」の不安定さを浮き彫りにした。(2) 19世紀に引き起こされた視覚の再構成が文学に与えたインパクトを考察した。(3)精神分析と小説の関係の理論的再検討を通して、ドストエフスキーの小説における「突然と」「あとから」の時間構造の重要性を明らかにした。
著者
菅野 正嗣
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

自律分散的な制御手法によるセンサネットワークは、集中制御によるものよりも、データ損失やネットワーク障害に対するロバスト性が高い。それは、制御情報に対する依存性の強さに拠るものであることを示した。また、自律分散的な方法で、ノード間の時刻の同期や逆相同期を行なう手法を提案し、その特性を明らかにした。さらに、メッシュ構造を持つ実システムを対象として、省電力化のための適応的な制御方式を提案した。
著者
長田 浩彰
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究において研究代表者は、ナチの言うドイツ人とユダヤ人の「人種混淆」に対する住民意識が、それを禁止したニュルンベルク法(1935)以前と以後では、どう変化していったのかを、当時の小説や映画、ナチ党関係の雑誌類、現実の裁判事例などを分析対象として研究した。ナチ体制下では、性犯罪者的ユダヤ人イメージとえせ科学的劣等人種イメージが並存する中、禁止立法を経ても、「混血」を罪悪とするイメージが一般化するまでに至らなかったことが、最終的な本研究の結論となる。
著者
岩崎 徹也
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度中における原油価格急騰は、OPEC(石油輸出国機構)の減産による需給の逼迫、国際石油資本を含む石油企業の在庫抑制政策、石油先物市場における投機的売買が背景となっている。OPECの減算継続は、原油価格低下で産油国経済が疲弊、青年層の失業問題が深刻化してイスラム原理主義を含む反体制勢力が台頭した。原理主義国家イランでは、保守派主導の政治に不満を持つ青年層が改革派を支持し、原理主義の台頭を危惧するサウジアラビアは、イランのハタミ政権による現実主義外交を評価してOPEC二大産油国の協調が強まり、OPECの団結強化を一層促進した。原油価格低下は石油産業の世界的再編をも促進した。メガ・マージャー進展は、コスト削減・資本効率の向上を目的としており、その背景には、世界的資本過剰による金融肥大化・カジノ経済が大きく影響していると考えられる。平成12年末の原油価格下落は、主として米国の株式市況低下・消費減退等の景気の息切れによると考えられるが、米国景気の失速はアジアや欧州にも悪影響を与えており、石油需要は減速する可能性が強まった。価格騰貴に増産で応えていたOPECも,一転減算による価格防衛の姿勢を強めた。産油国としては、長期の石油価格低迷期に経済不振を続け、人口増加による雇用問題の深刻化から、イスラム原理主義などの反体制勢力も台頭しており、大幅な価格下落は受入れがたく、OPEC加盟国の団結は、価格低下への恐怖と主産油国であるサウジアラビア、イランの協調により強まったといえる。平成13年9月の米国同時多発テロは、真相は不明ながら、イスラム原理主義過激派の世界的ネットワークが米国をテロの標的としていたことは事実であり、アラブ・イスラム世界に台頭する原理主義勢力が、穏健派を含め、反米的であることも事実である。反米意識の背景の一つには、米国及び米系多国籍企業の主導するグローバリゼーションへの反発がある。中東・イスラム諸国は、東アジア諸国のように多国籍企業に依存した輸出指向型の開発が困難であり、若年層を中心とした雇用問題が深刻化しているなか、米国が支配する(と考えられている)IMF等の主導する構造調整は、市場経済化を進展させ、社会格差を拡大しているとの反発もあり、これらが反米意識の高まり、ひいては,過激派の暴走を是認する一因となっているといえる。こうした社会経済的問題の解決なくしては、個別テロ組織を壊滅しても中東地域の安定はもたらされず、中長期的な石油供給の安定化にもつながらないといえる。
著者
松本 佐保 廣部 泉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究補助金の成果として、研究代表者は、英国における国際関係史学会で、18年度にThe Yellow Peril and the Russo-Japanese war-The Racial question and Anglo-Japanese relations-, 19年度にJapanese Pan-Asianism and the West, 1894-1919, 20年度にAustralian defense policy and White Australian policy, 1901-1921という題目で三回学会発表、また日本では日本オーストラリア学界で20年6月に「オーストラリア移民規制問題と大英帝国の問題、1894-1924年」という課題で白豪主義と日系移民の問題について成果発表を行った。本発表はインドという英国にとって重要な植民地からの白人自治領への移民問題がインド・ナショナリズムを生み、これが後にインドがアジア主義運動に関わるきっかけになったなど、次なる研究への発展にもつながった。なお、The Yellow Peril and the Russo-Japanese war-The Racial question and Anglo-Japanese relations-は『中京大学紀要』(2007年)、Japanese Pan-Asianism and the West,1894-1919は『東北学院大学紀要』(2008年)に論文として、オーストラリア学会での報告は『西洋史学』(2008年)の学会発表報告という形で掲載された。またこれら成果の集大成として、英国の高水準の学術書出版社と知られるオックフォード大学出版会から共著、The Diplomats' World, a cultural history of diplomacy, 1851-1914として2008年の12月に出版された。以上の経緯から本研究は人種問題を国際関係などの政治・外交研究において位置付け、外交文化史研究という新しい研究分野を切り開き、学会への多大なる貢献となった。