著者
野口 康彦 青木 聡 小田切 紀子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

質問紙及びインタビューによる調査等から,子どもが別居親と交流を持つことは,子どもの親への信頼感において,重要な要因となることが確認された。また,別居親と子どもが満足するような面会交流がされている方がそうでない場合よりも,自己肯定感や環境への適応が高いことも明らかになった。また、ノルウェー視察の結果については、関連の学会だけでなく、家庭裁判所の調査官や臨床心理市などの専門家への研修においても、報告をすることができた。日本における離婚後の子どもの権利擁護のあり方について、一定の示唆を行うことができた。
著者
永澤 健 白石 聖
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

食後の短時間のストレッチングが血糖値を降下させるかどうか調べるとともに,血管拡張と動脈弾性指標(CAVI)に及ぼすストレッチングの急性効果を検討した.その結果,短時間のストレッチング,は血糖値を降下させる急性の作用があることが示唆され,さらに,吐き気と疲労感を伴うことなく,酸化ストレスの上昇もなく実施できたことから,食後の血糖値管理のための有効な運動療法になり得るものと考えられた.一過性のストレッチングは伸長した体肢の血管拡張を引き起こす作用があることが示された一方,動脈弾性指標の改善は認められなかった.
著者
澤田 秀之 Thanh Vo Nhu
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

申請者らがこれまでに研究を進めてきた、人間と同等の発声器官を全て機械的に構成した発話ロボットを再設計し、より柔軟に発話動作を獲得できる機構を実装した。聴覚フィードバック学習によって、ロボットが聴取音声を基に自律的に発話動作を獲得し、任意の音声を生成することができる学習機構を実装するため、人間の脳機能を再現した学習モデルを構築した。更にFPGAによって、音声獲得の高速オンライン学習を実現した。これら発話器官を再現した機械モデルと、脳の音声学習機能に着目したオンライン学習モデルを統合した新しい発話ロボットを構築し、脳内モデルの学習過程、獲得される発話動作および、ロボットの生成音声の解析を行った。
著者
佐伯 宏樹 原 彰彦 清水 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

イクラやタラコの喫食によって起きる魚卵アレルギーは、日本の食習慣と密接に関わる食物アレルギーである。本研究では、魚卵中のアレルゲンタンパク質の同定と構造決定、魚卵間のアレルゲン交差性の調査を試みた。得られた成果は次の通りである。(1)11魚種(シロザケ、イトウ、ニジマス、アメマス、オショロコマ、スケトウダラ、アサバカレイ、ババカレイ、ホッケ、シシャモ、カペリン)の卵黄タンパク質とイクラ・アレルギー患者血清との反応を調べたところ、いずれの卵黄中にもシロザケβ'-c抗体と反応するタンパク質が含まれており,アレルギー患者血清中の特異IgEはこの成分と反応していた(サケ科魚類では100%、スケトウダラ38%、アサバカレイ69%、ババカレイ77%、ホッケ85%、シシャモ38%、カペリン23%の患者血清で反応が観察された)。(2)また、リポビテリン軽鎖についてもIgE反応の交差性が見られた。(3)サケ科魚種間とタラコ中の主要アレルゲンは,いずれもβ'-c(および類似構造成分)であった。(4)サケ科魚卵間、およびイクラとタラコ間には、いずれもβ'-cを介したアレルゲン交差性が見いだされた。(5)ニジマス・ビテロジェニンのアミノ酸配列を鋳型として、シロザケβ'-c(2成分のうち16K Da成分)とタラコのβ'-c(3成分のうち17K Da成分)の一次構解析をおこなった。また,シロザケ肝臓からmRNAを抽出し、ニジマス・ビテロジェニンの塩基配列を基にプライマーを作製してPCRを行ない,シロザケ・β'-cをコードするcDNAを得た。これらの結果両β'-cアミノ酸配列の60-70%を決定した。以上の学術的知見は、「魚卵アレルギー」の理解と食事指導における有益な情報である。
著者
嶋本 薫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、非常災害への対応として、キャリアにHF帯(短波)を用い、マルチホップ無線ネットワークを適用した「広域マルチホップネットワーク」を提案しその可能性を評価した。HFは低電力で簡易かつ低コストのシステムで長距離の伝搬が可能であり、マルチホップ無線ネットワークは、通信の際にインフラを必要とせず、ノードを持ち寄れば即座にネットワークを構築できる特性がある。本研究において近隣にある局間の通信に、インフラを必要としないマルチホップ無線ネットワークを用い、長距離端末間の通信は、HF帯の電離層反射波を用いてネットワークを構築する新たな通信システムを検討した。実現性を高めるため、受信電力レベルに応じてパケットの送信タイミングを変化させるタイミング選択式アクセス方式の提案や、HFの特性であるスキップゾーンへの対応として新たなスキップゾーン解消方式、更には打ち上げ仰角を制御可能な位相差を用いたアレイアンテナを構築し、スキップゾーンの解消や到達距離の制御などを行いその効果を評価した。研究の成果によりHFを用いたマルチホップネットワークが実現可能であり、その有効利用を行うための各種制御方式が確立できた。
著者
朴 培根
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

大韓民国政府は日本による韓国併合の法的効力を認めず、大韓帝国と大韓民国との間では法的断絶のない継続性があるという見解を持っている。「大韓民国が締結した多数国間条約の効力確認」に関する韓国外務部の説明資料によれば、大韓民国は大韓帝国と同一の国際法主体として、同じ国家の内部で国体、政体および国号が変更した場合であるという。また、韓国の制憲憲法はその前文において大韓民国が1919年に樹立したという。韓国政府のこのような見解は、1919年以来韓国には国家の要素としての実効的政府が存在したことを前提にしているように思われる。その「政府」とは、中国上海でできた「臨時政府」にほかならない。しかし、臨時政府の成立の経緯、統治の実体、国際社会からの承認及び外交関係の実績等の点に照らしてみれば、それが国家の要素たる実効的政府であったかに関しては疑問が残る。その論理的帰結は、大韓帝国は国家として消滅し、旧大韓帝国の領土は日本の領土になり、その国民は日本国民になったこと、そして大韓民国は日本から独立した新生国ということになるだろう。にもかかわらず、韓国は大韓帝国と大韓民国とは法的に同一であるという態度を堅持しているし、国際社会においても条約の承継と関連して両者を法的には同一のものとして扱う事例も見られる。近年のバルト3国の例でみるように、50年以上も他国の一部として併合されたと思われてきた国家も、国際社会によっていわゆる「復活した国家」として認められる場合もある。大韓帝国と大韓民国の国家的同一性を認めることが、国際社会の法的安定性を著しく害することなく、韓国の民族的・国民的名誉と自尊心を回復させ、外国による支配がもたらした不当な結果を是正する道と認められる場合には、韓国にも「復活した国家」としての地位が与えられる余地はあると思われる。
著者
蔡 毅
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本の明治期と中国の清代末期の日中漢詩交流に関しては、もう一つの大きな課題が未解決のまま残っている。それは明治の「文明開化新詩」が清末の「詩界革命」に与えた影響である。「詩界革命」とは、西洋文明がもたらした新しい事相や言葉を伝統的な漢詩ジャンルに取り入れようとする清末の文学運動で、中国では画期的な文学革新であるため、重要な研究テーマとされてきた。ところが、その起源について、今までの研究はほとんど中国国内における西洋文明の影響のみに着目しており、中国より先に西洋文明の新しい機運を積極的に漢詩に取り入れた明治期の「文明開化新詩」との関係についての展望は皆無と言える。筆者の調査によれば、明治の「文明開化新詩」が清末の「詩界革命」に直接的または間接的に与えた影響に関しては、未だ多くの資料が埋もれており、それを用いて、さらに事実を解明し得る可能性を秘めているのみならず、明治期における日中文化交流の歴史を大いに書き直すことも見込まれる。また、明治期漢文学の研究視野は今まで日本国内に限られるが、その外延が彼方の中国まで伸びるという事実を確認することによって、明治期漢文学自身の再評価に繋がることも考えられる。
著者
永井 晋 野口 実 鈴木 哲雄 高梨 真行 角田 朋彦 野村 朋弘 橋本 素子 実松 幸男 佐々木 清匡 北爪 寛之
出版者
神奈川県立金沢文庫
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中世に下総国下河辺庄という広域荘園が形成された地域にについて、各分野の研究者や自治体の文化財担当者と意見交換を行い、現地での確認調査・聞き取り調査を行った結果、鎌倉時代に地頭として下河辺庄を治めた金沢氏が河辺・新方・野方と三地域に分割した経営形態が地域の実情に即した適切な統治の形態であったことを確認することができた。すなわち、下河辺庄は荒川・利根川・大井川(太日川)の三本の河川が集まる水上交通の要衝という物資輸送の利便性を持つが、それは同時に、肥沃な土壌が継続的な供給される生産性の高い水田地帯という経済的優位性と水害に弱い洪水常習地帯という豊凶の落差の激しい中下流部の低地帯(新方・河辺)と、鎌倉街道中道の通る猿島台地・下総台地上の耕地帯に大きく分かれていることが明らかになった。金沢氏は、一律の基準で支配できない広域荘園に対し、本家が直轄する所領と一族や被官を郷村の地頭代(給主)に補任して治める所領に細分化し、それらを公文所が統合することで全体の管理を行っていた。本科研では、下河辺庄の成立過程を探るために、摂津源氏の東国進出と秀郷流藤原氏下河辺氏の成立に始まり、江戸時代に語られていた下河辺庄の記憶で調査年代を終えることにした。成立期の下河辺庄は秀郷流の本家小山氏との関係を重視したので野方の大野郷に拠点があったと推定される。下河辺庄の地頭が下河辺氏から金沢氏に交代すると、金沢氏は鎌倉の館に置かれた公文所が直轄して管理する体制をつくったので、下河辺庄は鎌倉の都市経済に組み込まれた。この時期に、下河辺庄赤岩郷は鎌倉に物資を輸送する集積地として発展を始めたと考えられる。南北朝時代になると、下河辺庄赤岩郷は金沢家の菩提寺称名寺の所領として残されたので、称名寺が任命した代官や現地側の担当者と称名寺がやりとりする書状や書類が多く残されるようになった。また、称名寺のリスク管理の中で年貢代銭納が行われ、上赤岩には年貢として納入するために保管されていた出土銭が発掘されている。享徳の乱によって古河公方が成立すると、下河辺庄は古河公方側の勢力圏の最前線となり、簗田氏や戸張氏といった公方側の武家が庄域を管理し、扇谷上杉側の岩槻大田氏と境界を接するようになる。この時期に、称名寺と赤岩郷の関係が確認されなくなる。江戸時代になると、下河辺庄新方は武蔵国に編入され、新方領とよばれるようになる。この地域は『新編武蔵国風土記稿』や『武蔵国郡村誌』といった詳細な地誌が残るので、地域で語られていた下河辺庄の記憶を知ることができる。本科研は、歴史学を中心とした地域総合研究として、荘園史の枠組みを超えた地域研究を行おうとしている。調査の編目は、後述する報告書掲載論文から明らかになるし、調査の詳細は報告書の本文をご覧いただきたい。
著者
向後 恵里子
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、日本の近代を中心に、美術作品および複製メディアといった視覚文化における〈黒人〉の人種表象を実証的に調査・考察するものである。日本の〈黒人〉表象においては、現実の接触の少なさから、「膚の色」という視覚的な情報による身体の差異化が重視される。それはおうおうにして、誇張やステレオタイプと結びつく、虚構にしか存在しない〈黒人〉像を作る。各時期における〈黒人〉表象の様相は、日本近代において人々が肌の色の違いにこめた人種観・文明観・世界観の変容をものがたり、共有された他者へのまなざしを示す。
著者
蓑島 栄紀 三上 喜孝 田中 史生 笹生 衛 北原 次郎太 瀬川 拓郎 井上 雅孝 原 京子 奈良 智法 鈴木 和子 藤原 弘明
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、古代日本(とくに東北地方)の文化と、同時代の北海道文化・アイヌ文化との関係について、宗教や儀礼の側面から、具体的な比較検討をおこなった。特に、宗教・儀礼にかかわる金属製品や木製品などの分布や形態、機能について検討した。それにより、アイヌ文化における宗教・儀礼の道具の源流が、擦文時代やそれ以前に遡る可能性が指摘できた。また、古代北海道やその隣接地域における宗教・儀礼の痕跡が、交易や交流において重要な場所に多くみられる傾向を指摘することができた。
著者
高宮 正之
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

屋久島のミヤマノコギリシダ複合体(ミヤマノコギリシダ、ホソバノコギリシダ、オオバミヤマノコギリシダ、ヒロハミヤマノコギリシダの4種とそれらの推定雑種)集団について、外部形態、体細胞染色体数、減数分裂の挙動、胞子稔性、核と葉緑体遺伝子を用いた分子遺伝学的分析を行い、雑種形成と種分化について解析した。屋久島では、これら4種間で複雑な雑種形成や戻し交雑が繰り返されていることがわかった。これらの結果、シダ植物における初めての例となる倍数体複合体の浸透性交雑を実証し、複雑なミヤマノコギリシダ複合体の形態変異の一因を明らかにした。
著者
藤原 成芳 高井 憲治
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

認知症は神経変性に伴う記憶や判断の欠落に加え個の尊厳も欠落させる。治療をサポートする側にも多大な負担となり、既に大きな社会問題となっている。現在対症療法しかないため根治的な治療法の開発が望まれているため、私は神経細胞移植による再生医療が認知症の根治的治療法となると考え研究を進めてきた。最初にヒトiPS(hiPS)細胞から神経細胞を分化誘導し、この細胞を認知症モデルマウスに移植する系を確立した。移植の結果、認知機能の改善が見られた。さらにマウス脳サンプルの解析の結果、移植神経細胞が欠落した神経系の再構築を促進し、認知機能改善に寄与している可能性が示唆された。
著者
松井 輝昭
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

厳島神社の社殿が建つところは、オオナムチ・スクナヒコナの神の故地と伝えられる。熊野修験の支援でこの地に熊野本宮の写しが創られ、新たな来世往生の霊場が生まれることになった。中世前期の厳島大明神は、来世往生の願いを叶える神として信仰を集めた。ところが、厳島大明神は室町時代後期頃には、新たに現世利益の神へとしての神格を持つようになっていた。さらに、戦国時代初頭には、福徳の願いを叶える弁財天の評判を得ていた。しかし、厳島神社の神仏習合観が大きく変容しても、その基底には海の神龍神への信仰が伏流していたことが知られる。海上社殿にちなむ厳島神社信仰の本質は、神仏習合観が大きく変容しても変わるものではなかった。
著者
森谷 公俊 鈴木 革
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

紀元前329年から326年までのアレクサンドロス大王遠征路の実地調査を行った。ウズベキスタン(古代ソグディアナ)では、アムダリヤ川の渡河点および正妃ロクサネの故郷とされるクズルテパ遺跡を調査した。最大の課題は地元住民が立てこもった3つの岩砦の特定であったが、現地の状況により登山は不可能で、完全な実証には至らなかった。パキスタン(古代インド)では北西辺境州において、スワート地方の住民が立てこもったピールサル(古代アオルノス)へ2度の日帰り登山を行い、現場を精査して戦闘状況を復元できた。またインダス川下りの行程を可能な限りたどった。大王の遠征地域がいかに豊かな多様性を持っていたかが認識できた。
著者
長田 典子 井口 征士 藤澤 隆史
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「音を聴くと,色が見える」という現象は「色聴(colored hearing)」と呼ばれており,心理学の分野で共感覚(synesthesia)の1つ,すなわち1つの感覚が本来独立であるはずの別の感覚を喚起する興味深い現象として知られている.本研究では,色聴現象の中でも音楽の調性に対して色を感じる現象に注目し,脳機能イメージングを行った.音楽聴取時の色聴保持者において,色知覚部位であるV4連合領域(V4/V8/V4R)および右下頭頂小葉・補足運動野・小脳の3つの部位から色聴保持者特有の賦活を確認した.これに基づき色聴のメカニズムを提案した.
著者
下妻 光夫 伊達 広行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ルチル型TiO_2薄膜は、TiO_2/セラミクス構造の界面相互作用により放射線感知が可能で検出器材料として有力であると報告されている。TiO_2薄膜が放射線センサー材料として十分な特性を持っているなら、現在使われている電離箱型やシンチレータ(固体・液体など)更にGM管のような放射線検出センサーの体積を大幅に縮小でき、また使用電圧の低電圧化等が行える事になると考えられる。特に、医療の分野における生体内埋め込み放射線センサーとして使用が可能なら放射線治療などの同時被爆線量管理に威力を発揮するものと考えられる。そこで申請者らは、TiO_2生成材料としてTiCl_4とO_2を考え、トライオード型プラズマCVD法によりTiO_2膜生成を試み、ルチル型膜生成が出来るかについて実験的に明らかにし、そのTiO_2膜を石英板、セラミック(アルミナ、ジルコニア)、Si基板面に成長させ、それぞれの材料基板に対してどのような堆積条件でルチル型薄膜が生成できるかについて実験を行った。更に、TiO_2膜/絶縁物(石英板、セラミック:数mm角)構造の放射線センサーとしての特性評価を行い、臨床に使用が可能であるかと言う所まで一連の研究を行った。TiO_2薄膜とセラミクス(アルミナ、石英)構造の作成試料において、膜厚1μm程度では、X線、γ線照射による出力信号が暗流に埋もれて放射線センサーとして働かないことがわかった。従って、この構造でTiO_2膜を数百nm厚にすることで暗流を減少させることができ、放射線信号が測定されセンサーとして動作することを確認した。この放射線センサーにγ線、X線の強度を変化させ信号強度を測定することでそれらに線形関係が得られ、放射線センサーとして有望であることが判った。また、TiO_2膜より暗流が少ないSiC膜を使うことでS/N比が大きいセンサーを作成することができることを見出した。
著者
瀧井 猛将 小野嵜 菊夫
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

抗酸菌の細胞壁成分は脂質に富んでおり、自然免疫系に関与しているレセプター、toll like receptors(TLRs)のリガンドとであることがよく知られている。そのシグナル伝達様式はIL-1レセプターからのものと共有していることが知られている。病原性の異なる抗酸菌(結核菌とBCG)間で、TLRからのNF-κBの活性化を調べたところ、結核菌に強い誘導活性が認めら病原性と関係していることが示唆された。
著者
倉田 徹
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、「一国二制度」方式で統治されている香港が、中国の政治・社会の変容に対してどのような影響を与えているかを分析した。当初、香港のキリスト教団体を中心に、中国大陸および香港での調査を行い、香港の市民社会が中国の変容に対して果たしている役割について、具体的な事例研究を行うことができた。研究期間中の2014年には、中国政府が提案した民主化案に反対する学生・市民によって、香港で「雨傘運動」と呼ばれる大規模民主化運動が発生し、この運動をめぐる政治動向の分析に焦点を当て、関係者へのインタビューなどを行った。研究成果はすでに書籍や論文の形式で多数発表されている。
著者
松村 美代 戸部 隆雄 山田 晴彦 松村 美代
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

高濃度酸素負荷によりマウス網膜の視細胞が脱落し、網膜の菲薄化がみられる事がこれまでの実験により分かった。そこで我々はこの網膜視細胞の脱落がアポトーシスによるものである事を証明し、そしてどういう経路によりアポトーシスが引き起こされているのかを研究している。マウスを酸素濃度75%に調節したBOXにいれ、高濃度酸素に1週間から3週間暴露した。各時点において眼球を摘出し網膜のみを単離した。また眼球の凍結薄切切片を作成した。単離した網膜からDNAを抽出し免疫電気泳動を行うとDNAの断片化が明かとなった。また凍結薄切切片を用いてTUNEL染色を行うと高濃度酸素負荷により網膜外層にTUNEL陽性細胞が著明に増加しているのがみられた。これらのことから網膜視細胞が高濃度酸素によりアポトーシスに陥っている事が分かった。また種々のアポトーシス関連蛋白の発現をm-RNAを抽出してRT-PCRを施行し検討してみた。Caspase3のm-RNAは高濃度酸素負荷により増加し、Baxも増加を認めた。一方Bcl-2は高濃度酸素負荷1週で増加するが、2週で減少した。これら2つは拮抗する蛋白であるのでこれらが網膜視細胞のアポトーシスの制御に関わっていると考えられる。アポトーシス関連酵素のノックアウトマウスであるFas, FasLノックアウトマウスを用いて同様に高濃度酸素暴露し同様にTUNEL染色を施行した。Fas, Fas-Lのいずれのノックアウトマウスも暴露前はコントロールと同様でアポトーシスは抑制されなかったのでFas, Fas-Lはこのアポトーシスに直接関与していないことが考えられた。これらのことから視細胞のアポトーシスはcaspase dependentでBax, Bcl-2の経路が関与している事が考えられた。