著者
根岸 友恵 鈴木 利典 濱武 有子 藤原 大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

痛風の原因物質として知られている尿酸であるが、抗酸化物質として重要な働きをしている。尿酸がどのような酸化ストレスに対して防御作用を示すかを調べ、生物における尿酸の存在意義とその利用価値を示すことを目的とした。ショウジョウバエの尿酸欠損株はタバコ副流煙曝露に感受性が高い。副流煙曝露時の尿酸含量を測定した結果、野生株では尿酸が、尿酸欠損株では前駆体含量は増加した。このことは酸化傷害に対する防御機構として尿酸合成が亢進している可能性を示唆するものである。
著者
斎藤 純男 井上 治 孟 達来 高木 小苗
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アフガニスタンにおけるモンゴル系のモゴール語は現在絶滅した可能性の高い言語であるが、服部四郎が1961年に現地調査を行なった際の未発表の録音資料が島根県立大学の資料中に発見され、それに基づいて研究を行なった。モンゴル系語彙を含むハザーラ語の話者の協力を得ながら、録音されたモゴール語の語や文を音声・文法・意味の面から詳しく記述した。使用した録音資料からは、モゴール人はハザーラ語も話すという新しい情報も得られた。また、永久的保存のためテープによる録音資料をデジタル化するとともに、過去に発表されたモゴール語語彙を電子化してデータベースの基礎とした。
著者
関根 嘉香 武政 晃弘 太田 栞 三澤 和洋 熊井 夕貴
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

微小粒子状物質(PM2.5)に含まれる酸化還元活性物質(キノン類等)は、生体内で活性酸素の生成を促し、活性酸素による酸化ストレスが健康障害を引き起こす可能性がある。そこで本研究では、酸化チタンを担持した石英繊維フィルターを作成し、PM2.5をろ過捕集した後に紫外線(UV)を照射し、光触媒反応によるPM2.5の無害化を試みた。その結果、UV照射に伴いPM2.5の重量、有機・元素状炭素量が減少すると共に二酸化炭素の生成が認められ、光触媒反応により炭素成分を分解できることがわかった。またPM2.5の活性酸素産生能はUV照射後に有意に減少し、酸化ストレスの緩和に寄与することがわかった。
著者
赤谷 昭子 澤井 英明 鍔本 浩志
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

「背景」成熟精子表面には、雄性生殖臓器特異抗原CD52(mrtCD52)が存在し、臨床的に精子抗体が原因で起こる不妊症は、このCD52の糖鎖が責任抗原であることがあきらかにされている。本課題では、動物実験によりmrtCD52抗原の免疫が同種メスに抗体産生を誘導することができるか、またこれを避妊ワクチンに応用することができるかを検討した。「方法」マウス雄性生殖組織(輸精管)より、mrtCD52を精製した。♂および♀マウスに完全フロインドアジュバントとともに皮下投与(全身免疫)した。また粘膜免疫として、コレラトキシンBをアジュバントとして経鼻投与した。抗体の産生はELISA、western blot法、蛍光抗体法により評価した。抗体の生物作用として、精子不動化試験、in vitro受精阻害実験、交配実験を行った。「結果」♂♀マウスの全身免疫により、mrtCD52に反応する抗体が産生された。また、経鼻投与によっても血中に抗体が検出された。いずれの抗体もCD52のペプチド部分には反応せず、糖部分が免疫原性を持つことがわかった。またこれらの抗体は、補体の存在下でマウス精子を不動化した。In vitro受精および免疫♀マウスの妊娠は阻害しなかった。「結論」mrtCD52には同種あるいは自己抗体を産生する糖鎖抗原が存在することが明らかになった。これによってヒト不妊症で報告されていた精子に対する同種抗体の産生を、マウスで実証した。免疫動物の妊娠阻害には至らなかったが、抗体が不動化作用を持つことから、避妊ワクチンの開発には、雌性生殖器器官に効果的に発現する抗体、分泌型IgAの産生を高めることが今後重要と考えられる
著者
杉山 智昭 今津 節生 鳥越 俊行 赤田 昌倫
出版者
北海道博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、X線CTスキャナによる資料の非破壊三次元調査を核として、地域に遺されたアイヌ民族生活関連資料を長期にわたって安全に利活用していくための基礎情報の取得と資料内部構造に含まれる歴史情報の抽出、伝統的な工芸技術の復元・継承等を目ざした基礎的な取り組みを行った。その結果、1)アイヌ民族生活関連資料の内部構造、製作技法、製作年代、製作地、劣化状態、修復技法に関連する情報を獲得する上でX線CTスキャナを用いた調査が有効であること、2)データベース化した三次元情報を画像あるいは3Dレプリカの形で利用することにより、アイヌ民族生活関連資料の製作技術の解明・復元が可能となることが示された。
著者
Grecko Valerij
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ロシア・アヴァンギャルドの特徴のひとつは、芸術実践が科学理論と密接に関連していることである。具体的なモチーフのレベルでは、共産主義社会における「新しい人間」の創造が特に重要なものとして科学と芸術に共通して現れる。生理学・遺伝学その他の分野における科学の発展によって、アヴァンギャルド芸術においてもこのモチーフに対する関心が高まった。イデオロギーと世界観のレベルでは、ユートピア思想が科学と芸術の双方に見られる。記号論を援用してメタ・レベルで考察した場合、芸術と科学は世界を認識する方法として相互補完的であり、一方の言語/概念を他方の言語/概念に「翻訳」することが非常に生産的な成果を生むことがわかる。
著者
蛭田 明子 堀内 成子 太田 尚子 實崎 美奈 石井 慶子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は周産期に子どもを亡くした夫婦を支援するツールの作成を目的に実施した。方法は、31名の父親と母親に対するインタビューである。夫婦のあり方は様々だが、家族の外部にも自分のサポートを得ること、悲しみに伴うお互いの一般的な感情の変化を予期できること、家族の中で子どもの存在がオープンであることが、家族の再構成に重要な影響を及ぼしていることは共通した語りであった。家族の語りにもとづき、「夫婦」と「夫婦を支えたいと願う両親」を対象とした二つのリーフレットを作成した。
著者
河原 典史
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、カナダのブリティッシュコロンビア州における日系(日本人)ガーディナー(庭園・造園業)の歴史的展開を4期にわけ、民族産業としての成立とその再編について考察した。第1期は1900年代初頭にあたり、日本庭園の模索期になる。1920年代から太平洋戦争開戦にあたる第2期では、排斥によって漁業・製材業界などから締め出された日本人のなかには、庭園業で活躍する人々も少なくなかった。1947年から1960年代初頭にあたる第3期では、戦前からの経営者のもと、二世・帰加二世が雇用者として活躍した。1970年代になり、戦後の移住者を迎える第4期では、造園業の技術が日本・アメリカから導入されるうようになった。
著者
吉原 利典 内藤 久士
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、長期間の運動刺激は筋の核内に記憶されることで、微小重力環境曝露による骨格筋萎縮の抑制に寄与するという仮説について検討した。8週間の運動不足は、暗期および明期における活動量を低下させ、ヒラメ筋におけるヒストンH3のK9トリメチル化を増加させたが、トレーニングの実施はK9のトリメチル化を抑制した。また、尾部懸垂による筋萎縮を誘導する前にトレーニングを行わせることによって、筋萎縮の誘導に関連した遺伝子の発現の増加を軽減させた。これは、長期間のトレーニングにより低いレベルで維持されたリジン残基9のトリメチル化がマッスルメモリーとして筋内に記憶されたことによると考えられる。
著者
平岡 斉士 喜多 敏博 鈴木 克明 長岡 千香子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

eラーニングなどの自動採点を前提としたテストは知識の確認をするものがほとんどである。一方、実際の教育場面では知識を応用するスキルの修得が求められている。しかし知識を応用するスキルを評価するテストには複数の制約があり、教育設計の知識やスキルに乏しい教員が作成することは容易でない。本研究では、知的技能の特性を踏まえたテスト作成方法を整理・体系化し、教育設計の非専門家でも使える問題作成支援ツールを開発する。あわせて自動採点テストを作成するための諸問題(手動採点用問題からの適切な代替、誤答選択肢の質、類題の確保など)を解決する方法を確立し、問題作成支援ツールと連動させたシステムを設計・開発・評価する。
著者
粟谷 佳司
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度も昨年度から引き続き、表現文化と市民運動が交差する領域に関して、文献・資料調査と聞き取り調査により分析を行った。本年度の研究では、昨年度から継続している、鶴見俊輔の文化・芸術論と市民運動に関わる活動の表現文化への影響について、文献・資料による分析を行った。併せて、市民運動と交差した表現者たちの実践について、1960年代後半の社会状況から1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)での活動につながる表現や言説を、関連する著作や雑誌(『美術手帖』『デザイン批評』『うたうたうた フォーク・リポート』を中心とした美術、ポピュラー音楽関連雑誌)の内容分析により検証した。研究では、表現者たちの活動が、いかに1960年代後半の社会状況と交差して作品や著作に実践されたのかということを、表現文化の社会への関わりという観点から考察した。また、昨年度に行った「ベ平連」の関係者への文化実践に関する聞き取り調査の分析と並行して、本年度も片桐ユズル氏への聞き取り調査を行った。調査では、片桐氏が編集・発行していたミニコミ(『かわら版』)や著作の内容への聞き取りを中心に、市民運動という空間が著作や表現活動に与えた影響について考察した。特に、鶴見や「ベ平連」の関係者との交流が、表現活動における着想の一つとなっていたことを検証した。また、9月には片桐氏の紹介によりジェームス・ドーシーJames Dorsey氏(ダートマス大学)と京都で面会し、1960年代後半の日本のフォークソング運動と音楽文化に関して意見交換を行った。研究業績として、本年度は学会報告(日本ポピュラー音楽学会第31回大会)、公開講座での報告(朝日カルチャーセンター芦屋教室)、著書(共編著)の出版を行った。
著者
小長谷 賢一 谷口 亨
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

植物ウイルスベクターは、植物へ感染するウイルスを遺伝子の運搬体(ベクター)として用い、目的遺伝子を植物体内で発現制御できる系として、遺伝子の機能解析や形質の改変等に利用されている。本ベクターの利点は組織培養技術を必要とせず、宿主植物のゲノムを遺伝子組換えすることなく形質を改変できる点にある。本研究では、リンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)ベクターを用いて花器官形成に関与する遺伝子を制御することで、スギを効率的かつ迅速に無花粉化させる技術の確立を目指す。スギにおける遺伝子発現抑制(ノックダウン)について、RNA二次構造アルゴリズムを用いて標的遺伝子RNAのトリガーに適した領域を推定し、その領域断片をベクターへ用いることで、ALSVベクターによる遺伝子ノックダウンの効率化に成功した。また、人工気象器内で長日条件下での培養を6ヶ月、段階的に低温にした短日条件下での培養を6ヶ月行うことで無菌的に雄花を成熟させることに成功し、季節によらず稔性調査可能な培養系を確立した。一方、スギ雄花のマイクロアレイ解析と雌花のRNA-seq解析から雄花で特異的に発現し、花粉形成に関与すると推定される遺伝子を17個単離した。これらを標的とするALSVベクターを感染させたスギの獲得と雄花の着生に成功し、また、一部の標的遺伝子で雄花における遺伝子ノックダウンを確認した。得られたノックダウン系統のうち、雄花が成熟した系統について花粉形成の調査を行なった結果、2つの標的遺伝子について正常な花粉粒が観察されず、異形な細胞が蓄積する傾向が確認された。しかしながら、着花の培養条件においては多くの系統で育成中にウイルスが脱落し、花粉形成までにノックダウンを維持させることが困難であった。今後はスギにおけるALSVベクターの安定性を考慮した培養条件を検討する必要がある。
著者
井内 良仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

短寿命の昆虫種の中にあって「寿命と生殖のトレードオフ」を打ち破り, 10年以上の超長寿命と多産を可能にしたヤマトシロアリの生存戦略について,抗酸化システムに注目した解析を行った。その結果ヤマトシロアリは他種の昆虫に比べて非常に優れた抗酸化システムを有しており,特に長寿の生殖虫では抗酸化酵素そして酸化傷害修復酵素がその長寿命と高い生殖能に積極的に働いていることが示唆された。
著者
廣井 隆親
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、マウスにおける動物モデルをワクチンの予防効果ならびに治療効果に分けて確立しその奏功機序を解析した。その結果、予防効果を示すモデルマウスにおいては減感作療法を行うことによってTh1/Th2両者のサイトカインの産生量が減少していた。さらに、舌下減感作療法を行うことによって治療効果を示すモデルマウスにおいて実際の臨床症状を判定する際の鼻洗浄液中に存在する炎症細胞や顆粒球数の減少が認められた。口腔底において抗原提示細胞の解析を行った結果、F4/80抗原を有するマクロファージが中心であった。このことより、口腔底からの舌下減感作療法はこれまでにない経粘膜ワクチンであることが明らかとなった。