著者
大倉 健宏 村上 賢 加藤 行男
出版者
麻布大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

2012年から2014年にかけて実施した国内および米国での調査結果を分析し、「ペットフレンドリーなコミュニティ」を大都市の文脈から論じた。本研究では「飼い主」と「公園」および「ペット友人」をネットワークと考える。「ペットフレンドリーなコミュニティ」が飼い犬を中心として、ペットと共生できる街を提案する意義は大きいと考える。そこでは下位文化による結合が、「相談」「親交」「実用的」のいずれにも収斂しえない、住民の「ペットフレンドリーなコミュニティにおけるシビリティ」が想定されるだろう。
著者
大野 和則
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果は,25kg程度の犬に装着し,犬の動作,移動中の軌跡,周囲の形状を計測する装置を開発した.犬の体型や動きの特性を考慮して装置を設計した.また,装置で計測したデータをベイズフィルタで処理し,歩行中の犬の位置・姿勢を推定した.推定した位置・姿勢を用いて3次元地図の復元を試みた.歩行速度の推定精度を,歩行の着地に注目して高精度化する方法を開発した.
著者
小林 哲郎 高 史明
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、ヘイトスピーチの温床となる誤った信念が検索エンジンの利用によって強化される可能性を明らかにすることを目的として、2つのオンラインフィールド実験を行った。まず、平成27年度の実験では在日コリアンに関する客観的に誤ったデマ命題を検索することによって、デマ命題を正しいと考える人の割合は有意に低下することが明らかにされた。しかし、検索行動は同時に韓国人に対する感情温度を低下させることが示された。平成28年度は検索時の動機を操作する手続きを追加して実験を行った。本研究の成果はInternational Congress of Psychologyなど複数の国際会議で発表された。
著者
石川 国広
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

小学校から高校までの体育の授業に対して、ネガティブな印象を持つ学生が2~3割程度おり、教員の教え方が「指示命令・威圧的」と捉えている者が約4~6割、「自由・放任的」が約2割~4割いて特に高校で多かった。ポジティブな印象を持つ者も、高校で約5割以上が「自由・放任的」と捉えていた。大学一般体育授業の質の向上を図るには、学生の背景の事前調査と授業実践支援ツールの開発など、教員の創意工夫と丁寧な授業作りが必要だと考えられる。
著者
保田 ひとみ 柳原 真知子 畑下 博世 西条 旨子
出版者
金沢医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

里帰り分娩は、親からの支援を受けることができる一方、夫の家事育児の減少、夫婦関係や父子関係への影響が懸念されている。そこで、妻が里帰り分娩から自宅へ戻った後1か月における、夫婦の3人の家族作りの体験を、質的記述的研究法を用いて分析した。結果、夫婦は、里帰り分娩をして良かったと捉えており、実家の支援を受けながら、里帰り中は、「頻繁な連絡により夫婦関係・父親の意識を高める」、自宅へ帰って1か月後の頃では、「夫婦が互いに気遣い、初めての子どもを育てていく」という体験をしていた。
著者
竹田 直樹 八木 健太郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

都市におけるサブカルチャーのアイコンの存在形態は、さまざまな実施主体による複合的なメディア展開を見せており、それが地域の集客力を向上させ、市民へのサブカルチャーの物語の受容を促すことにより、地域の歴史や風土・伝統に触れる機会を増幅するメディアとして文化的な役割を担い、都市空間におけるモニュメントとしての特質を獲得していることが明らかになった。フィクションとしてのサブカルチャーの物語の受容者は、現実世界をそのフィクショナルな物語に沿う形で読み替えてとらえるようになっており、さらには、フィクショナルな物語に沿う形に現実世界の方が書き換えられているという実態も明らかになった。
著者
樫田 美雄 氏家 靖浩
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

最終年度として、(1)調査としては、補充調査および補充インタビューを、X小学校調査部分に関して複数回行った。(2)学会発表としては、国際学会発表1回(2010年7月、国際社会学会atエーテボリ=スウエーデン=)と、国内学会発表1回(2010年11月、日本質的心理学会茨城大学大会at水戸市)を行った。(3)論文発表については、ミネルヴァ社発行の専門誌『発達』に、研究協力者である山本智子氏が関連特集を企画し、山本・氏家および高森明氏が原稿を掲載した(2010年7月)。また、奈良女子大学『社会学論集』第18号に、3人共著の査読論文が掲載された。さらに現在、2つの原稿(邦文1つ、欧文1つ)を投稿準備中である(2011年度前半に『質的心理学研究』および『徳島大学社会科学研究』に投稿の予定)。学問的発見としては、X小学校の教室内での(発達障害児をめぐる)「スカフォールディング」(足場づくり)が、共同的に達成されている様相が詳細にわたって解明されたこと、および、現場の秩序形成の様相が設計されたものというよりは、各小コミュニケーション領域別のモザイク的なものであることが解明されたことが大きいといえよう。総じて、「発達障害児(者)研究」の今後にむけて、「場面の秩序」研究的観点の重要性が示唆できたのではないか、と思っている。なお、データの再分析に際しては、金沢大学の竹内慶至氏(医療社会学者)、徳島大学大学院の岡田涼子氏(臨床心理士)および、オランダのマックス・プランク高等教育研究所の早野薫氏(エスノメソドロジスト)らからの助力を得ることができた。記して感謝する。これらの研究者との共同も含め、学際的研究のひとつのモデルとしての価値も、本研究にはあるといえるだろう。
著者
丹羽 康貴
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

”夜ふかし”マウスをもちいてその行動を詳細に解析し始めたところ、Dox濃度を検討するための行動異常としては時間的にもマウスリソース的にも適切でないことが分かった。そこで同様の方法で作製した別の変異マウスをもちいてDox濃度の条件検討をおこなった。その結果、その変異マウスの表現型である体重減少と睡眠時間の減少をDox添加餌にて抑制することができた。また、それぞれ餌を変えるだけで、その表現型を抑制し、誘導し、再び抑制することにも成功した。これらの結果から得られたDox濃度条件をもとに、夜ふかし行動を抑える神経基盤がいつ決まるかを今後解析していく予定である。
著者
佐藤 卓己 佐藤 八寿子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では 20 世紀日本を代表する国民的メディア・イベントの分析を通じて、青年文化の変容を検討した。《NHK・青年の主張全国コンクール》(1954 年-1989年)の優秀作品をデータベース化し、量的および質的に分析した。また、関連資料の分析から日本社会における「青年」への眼差しの変化を明らかにした。その結果は『青年の主張-幸福感のメディア史』(仮題)として河出書房から出版の予定である。
著者
長崎 正朗
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

次世代シークエンサではさまざまな転写産物を同時に見ることができるが同じ領域から出る転写産物について実際にどの転写産物がどの程度出ているかを区別することが課題である。特に機能を行っているかどうか未知であるncRNAやmicroRNAの網羅的探索においてはより正確な転写産物の推定が重要である。本研究ではこれらの特性を生かした転写量推定アルゴリズムを開発した。また、スーパーコンピュータを用いてlincRNAおよびmRNAを抽出できる環境整備を本研究成果により実現することができた。
著者
岩本 直樹
出版者
香川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究において日本古典文学の中でもっとも有名な作品の一つである平家物語を取り上げ、「扇の的」の記述について自然科学的な視点から検証を行なった。具体的には暦の変換、太陽運動のシミュレーションによる扇の的の日時の決定、江戸時代の弓の競技の記録のデータを解析することによって、扇の的までの距離について、中世に使われていた「段」という距離の単位に関して 2.7m, 11m という 2 説のうちのどちらが妥当であるかの決定、風波の影響の評価などを行った。
著者
霜田 政美
出版者
国立研究開発法人農業生物資源研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

果樹の重要害虫であるチャバネアオカメムシは「薄明薄暮性」の活動リズムパターンを示す。この薄明薄暮性が、日の出や日没時の超微弱光によってどのような支配を受けているのかを調査した。高感度アクトグラフを用いて直径4cmプラスチック容器内での微小動作を検出したところ、市民薄明よりも低照度の光で活動が励起され、特定の光受容体の吸収波長が強く支配していることが示された。
著者
森山 徹
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

オオグソクムシの飼育水槽の底にゴルフボール約500個を敷き詰め、「穴を掘れないが、ワザを用いれば、すきまを作り巣のように使える」という状況を設定した。すると、体長の1/3ほどもある大きさのボールを頭部でゆっくりと左右へ移動させ、これを継続することで、体長と同程度から10倍程度の長さの通路を形成する個体が現れた。また、ボールをゆっくりと頭上へのせ、ボール塊内を、体長の8倍程度の長さにわたり掘り進む個体も現れた。これらの通路形成屋掘り進みは、巣穴としての通路使用の動機づけを維持し、ボール移動を自律的に制御するワザを伴って実現されたと考えられる。
著者
葛西 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

無秩序に動き回る電子集団から一方向性の流れ(=電流)を生み出す電子ブラウンラチェットは、生体の仕組みをとりいれた素子であり、低エネルギーでの電子輸送を可能にする。本研究の目的は、化合物半導体の1次元構造であるナノワイヤに非対称ゲートを周期的に設けることで電子ブラウンラチェットを実現し、動作実証することである。ラチェット動作の鍵となる鋸歯状ポテンシャルを内包する構造をGaAsナノワイヤにくさび形の金属ゲートを配置した構造で実現した。本素子によりブラウンラチェット動作モードの1つであるフラッシングラチェット動作に成功した。半導体フラッシングラチェットの室温動作は世界初の成果である。
著者
岡部 大介
出版者
東京都市大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

様々な履歴を持った人々がゆるやかにつながるファン・コミュニティにおいては,コンテンツの消費だけではなく,生産活動が重視される.本研究では,日米のファン文化を対象に,どのようなコミュニケーションを通して,創造活動が促進されるのかをエスノグラフィックに記述した.具体的には,情報ネットワーク化された社会に「足場掛け」られながら促進される学習と,様々な道具や知識,情報の「密猟」を介したものづくりについてフィールドワークとインタビューを行い,質的データ分析手法を用いて分析した.結果,つくることを通したネットワーキングのありようや,インフォーマルな学習がどのように調整されるかを見ることができた.
著者
石崎 一樹
出版者
奈良大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度の活動として、John Wesley Harding氏へのインタビューを行うとともに、平成21年度に行ったOne Ring Zeroなどへの調査と合わせて研究成果を発表する準備を進めた。またUSインディーズ音楽の日本における発表元であるレコードレーベルのMoorWorksから発表されたOne Ring Zero、The Mountain Goatsなど、高い文学性が認められるアーティストの作品の解説、歌詞の対訳を行った。さらに本研究の発展的目標である文学の「翻案」に関わる研究の成果として、映画女優ジーン・セバーグの評伝(『ジーン・セバーグ』)を出版すると同時に、本研究成果発表予定の出版社との打ち合わせ、さらに音楽業界雑誌による一般読者、音楽リスナー向けの成果発表について、音楽ライター・編集者らとの交渉を進めた。本研究では"Lit Rock"なる未だ不分明な音楽ジャンルについて文学の側から定義を試みた。その結果、文学性を抱えることで知的な雰囲気を演出するインディーズ系音楽が若者の知的欲求を満たす教養主義的ツールとして機能していること、The Decemberistsなど大衆市場でも受け入れられるバンドがインディーズ系音楽から出現していること、文学の作家とコラボレートしつつ音楽作品を作成するOne Ring Zeroなどのアーティストが存在していることなどが明らかになった。いくつかの補助的調査とその集約整理を経て、平成23年度から25年度にかけて論文や図書、また一般読者向けの雑誌などを通じ成果を発表していく予定である。
著者
山本 秀一
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

長距離サイクリングにおける自転車の最適走行計画に関する2つの数学モデルを比較検討した.検討するのは,疲労度最小化走行計画モデルと,出力最小化走行計画モデルである.いずれものモデルとも,自転車の乗り手の属性,自転車の種類,道路勾配を考慮して,目的を最適化する走行計画を選択する.理論分析と数値シミュレーションによって, 2つのモデルと最適走行計画の分析を行った.
著者
窪野 高徳 秋庭 満輝 市原 優
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

スギ雄花に寄生する菌類(スギ黒点病菌; Leptosphaerulina japonica)を用いて、人為的にスギ花粉の飛散を抑える散布処理液の開発を検討した。その結果、スギ雄花の生育ステージ(生育段階)に沿って、「スギ黒点病菌糸体懸濁液に市販の大豆油を10%添加した散布処理液」を接種したところ、約35~65%の頻度で雄花を枯死させることに成功し、小規模な試験ながら、人為的に花粉の飛散を抑止させる方法を完成させた。
著者
小澤 正直
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

量子論の実在論的解釈の問題は,幾多のパラドックスを生み,量子論の基礎に関する重要な未解決問題である。本研究は,この問題に数学基礎論の方法を導入して,量子集合論というチャレンジ性のある新しいアプローチを開拓して,量子論の実在論的解釈の実現を目指した。一般の完備オーソモジュラー束上の量子集合論を展開して,量子論の様相解釈の基礎を与え,代数的量子論の枠組みでボーアの相補性原理における実在概念を明らかにした。
著者
今泉 容子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は「日本のアルツハイマー映画」に着眼し、つぎの2つの成果をあげた。まず、1973年の第1号作品(豊田四郎監督『恍惚の人』)から今日までのアルツハイマー映画において、「アルツハイマー患者と介護者の人物造形」と「彼らを取り巻く社会環境」を検証したこと。これによって、日本のアルツハイマー型認知症の「映像表象史」が構築できた。つぎに、2000年代に入って盛んに制作されている「外国」のアルツハイマー映画をパースペクティヴに入れ 、「 日本」のアルツハイマー表象と比較考察を行い、日本独自のアルツハイマー表象を浮き彫りにすることができた。