著者
早川 清雄 高岡 晃教 亀山 武志
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、毎日、多くの食事を摂取している。食事には、ビタミン・ミネラル・タンパク質をはじめとした必須な栄養素が豊富に含まれており、それらが身体や健康の維持に重要であることが明らかにされている。しかしながら、食品に含まれる核酸による機能性は、ほとんど明らかにされていない。そこで、食品に含まれる核酸に注目し自然免疫応答に対する効果について検討を行った。免疫応答をつかさどるマクロファージ細胞に対して数種類の食品から抽出した核酸と口腔内に存在するペプチドを混合し処理を行うと、細胞質のセンサー分子を介して自然免疫応答が活性化されることがわかってきた。食品由来の核酸は、健康の一端を担っている可能性がある。
著者
江藤 望 篠原 久枝 河原 聡 菅沼 ひろ子
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

有用な母乳哺育を阻害する要因の一つとして乳腺炎が挙げられる。このうち、乳のうっ滞に起因する乳腺炎は、スクロースを摂食することで炎症が重篤化する事を見いだした。これは、我々の知りうる限り食品成分が乳腺炎発症あるいは重篤化と関連ある事を実験的に確認した最初の例である。
著者
杉山 智江
出版者
埼玉医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

「レイキ=霊気」は、臼井甕男(1865-1926)が開発し、海外に渡りReikiとして世界に広められたエネルギー療法の一つである。「レイキ」のがん患者への活用に関する国内外の文献検討を行った。国内(1996-2016)で「レイキ」のキーワードがあったのは36件であり、医療での活用や効果に関する記述は10件であった。国外(1961-2018)では「Reiki」「Cancer」をキーワードとし、がん患者に関する20件をレビューした。文献検討4件、RCT6件、アメリカ他3か国で研究されていた。医療機関をフィールドとした研究は12件であったが、Reikiの効果は明らかにされていなかった。
著者
河野 裕美 依田 憲
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

観察が難しい環境下における野生動物の採餌行動や社会的相互作用を記録するため、小型の映像記録装置の開発と海鳥への適用を行った。カツオドリの幼鳥にビデオカメラを装着することによって、社会的な情報を用いて採餌をおこなっていることが明らかになった。また、小型GPS を併用することにより、行動圏の拡大や採餌技術の発達に伴って、他個体との社会的接触が変化することが示された。
著者
小秋元 段 黄 正夏 李 載貞 李 章姫
出版者
法政大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近世初頭に日本で始まった活字印刷(古活字版)の起源は、朝鮮活字版にあるとする説と、キリシタン版にあるとする説が対立している。近年ではキリシタン版起源説が有力になりつつあるが、その根拠には疑問とすべき点が多々ある。本研究では、韓国の活字版研究の最新の成果を踏まえ、朝鮮活字版から日本の古活字版への連続性を究明し、日本の古活字版の起源が朝鮮活字版にあることを明らかにした。
著者
原田 優美 馬渡 一諭 下畑 隆明 中橋 睦美
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では近年明らかとなった、酸化傷害によるカンピロバクターの病原性(運動性、侵入性)抑制機構を参考に、UVA照射による酸化傷害も、菌の病原性を抑制し、食肉への拡散・侵入防止に役立つと考えその有用性について検討した。(1)カンピロバクターはUVA紫外線に強い感受性を示し、強い殺菌効果を示すことが明らかとなった。(2) またUVA紫外線照射により酸化傷害が引き起こされており、さらに(3)菌の宿主細胞への侵入性が低下することも明らかとなった。以上の結果からUVA紫外線照射は、その殺菌効果に留まらず、酸化傷害を介した病原性低下も引き起こすため、食中毒予防の新しいシステムとして有効性が示された。
著者
宮崎 敦子 野内 類 市来 真彦
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

すでに発症した認知症であっても、身体運動により認知機能の改善効果があった報告が数多い。低活動が問題となる長期滞在型の施設で、重度の認知症患者であっても維持されているリズム応答機能を利用し、認知症やその他の衰弱性疾患の人々が参加できる新しいプログラムを開発した。集団でドラムを使ったコミュニケーション演奏を行なうプログラムを30分間週3回3ヶ月間のランダム化比較試験介入実験を行なった。その結果、3ヶ月間のドラム演奏は可能で且つ上達することがわかった。認知機能のスコアが改善し、運動機能も関節可動域で有意に改善していた。従って、集団ドラム演奏は運動効果や認知機能改善効果があることがわかった。
著者
金沢 創 山口 真美 和田 有史
出版者
日本女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、高砂香料と食品総合研究所の協力の下、乳児の視覚と嗅覚の連合学習について検討した。嗅覚刺激は日本でなじみの少ない香辛料のスターアニスを用い、嗅覚(オモチャのにおい)と視覚(オモチャの外形)の学習過程を検討した。被験者は5-8ヶ月の乳児であった。その結果、女児のみアニスのニオイとオモチャの連合が成立する結果が得られた。さらにこの視覚と嗅覚の連合学習を検討する目的で、1歳前後の乳児を対象に、同じオモチャを用いて、リーチング行動を指標にした実験を計画した。また、食物の選好を決定する過程に対して視覚が果たす役割も検討した。これらの結果を学会発表を経て論文化し、現在投稿中である。
著者
橋本 貴美子 森本 繁雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

フランスとポーランドで起こったTricholoma equestreによる中毒事故は、致死的な横紋筋融解症を引き起こした。この原因物質を研究するために、材料となるキノコの入手が可能かどうかを調べた。日本ではT. equestreはキシメジ(T. flavovirens)と同一とされるが、キシメジと食菌シモコシ(T. auratum)の区別が曖昧であり、他にも類似した菌が分布しているため、同定は混乱を極めている。調査の結果、キシメジ、シモコシ、カラキシメジ(T. aestuans)の3種をきちんと同定することが重要であり、宿主植物、発生時期、味等で分別可能であることがわかった。
著者
松原 康介
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、シリア内戦によって多大な戦災を受けた歴史都市アレッポを対象に、その戦災状況を把握し、これまでの日本の都市計画協力の実績を踏まえて、戦後の復興計画のための実践的な策定体制を構築し、大型案件への接続を目指したものである。戦災状況は、中東都市多層ベースマップシステムを活用し、現地からの情報提供に基づき明らかにした。また、アレッポ及びベイルートやハマー等の復興計画史から保全と近代化のバランスのとれた計画論の必要性を明らかにした。更に、JICAダマスカスプロジェクトの経験、日本の復興計画の実態調査、シリア人大学院生の教育活動、各支援者・団体との意見交換等を通じて復興計画原案の策定体制を整えた。
著者
宮下 英明
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,昨年度に新たに発見した産地の1つ(産地Y)から,地権者の許可を得て「天狗の麦飯」を採取し,これまで研究に用いてきた産地Kのサンプルと,1)光学顕微鏡による微生物の形態多様性と主たる微生物の形態の比較,および2)真正細菌の16S rRNA遺伝子を標的としたクローンライブラリ法によって得られる真正細菌群集構造の比較を行うことにより,両サンプルに共通する特徴を調べ,主要な微生物の代謝情報から形成・維持機構について考察した。その結果,どちらの産地のサンプルにも,カプセル状の莢膜をもつ細菌が,微生物塊を構造的に維持する細菌として観察された。細菌群集構造解析では,両産地のライブラリのそれぞれ87.0%,74.7%が4つの系統群(Ktedonobacteria綱Ktedonobacterales目,γ-proteobacteria綱Ellin307/WD2124, α-proteobacteria綱Beijerinckiaceae/Methylocystaceae, Acidobacteria門subdiv.1)の生物で占められていた。この群集構造は,産地周囲の土壌にみられたものと全く異なっていたことから,「天狗の麦飯」の共通の特徴と考えられた。さらに,両産地に共通して検出されたKtedonobacteriaとγ-proteobacteriaの総計が,各ライブラリの43.0%,27.3%を占めた。このことから,この両生物群が主たる微生物である可能性が高くなった。これまで「天狗の麦飯」は独立栄養的生育をしている細菌を中心に増殖する微生物塊であると考えられてきが,本研究によって検出された真正細菌はほぼすべて従属栄養生育するものと考えられた。今後,「天狗の麦飯」に供給される物質の情報や,下層を含めた周囲の微生物群集構造の特徴について精査しすることによって形成・維持機構の解明がはかれるものと期待できる。
著者
高島 明子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経不順、卵巣の多嚢胞化、男性化の症状または血清中の男性ホルモンの増加などが認められる症候群である。近年になりPCOSにインスリン抵抗性が深く関わっているとの報告がなされて来ている。また、食酢には、インスリン抵抗性を改善効果が認められるとの報告がなされて来ている。そこで7人の患者を対象に600㎎酢酸含有りんご酢飲料の内服を一日一回3か月間行った。HOMA-Rは全例改善し、LH/FSH比も5人に改善が認められ、4人に月経周期の回復が認められた。現在、脂質マーカーなどの変化を調査中である。
著者
宮沢 孝幸
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

レトロウイルスはゲノムに組み込まれるという性質をもっており、ほ乳類のゲノムには意味のある遺伝子の何倍もの分量の「レトロウイルス」が生まれながらにして組み込まれている。この宿主のゲノムに入り込み宿主と同化したウイルスのことを内在性レトロウイルスと呼ぶ。ほ乳類のゲノムでは、遺伝子の占める割合がわずか2%程度である一方で、内在性レトロウイルスの配列が占める割合は約10%と非常に高い。最近の研究により、内在性レトロウイルスが、胎盤の形成や病原性ウイルスの防御に関わっていることが明らかになってきた。このことは、ほ乳類は生理学的機能の進化のためにレトロウイルスを積極的に取り込み(内在化)、利用してきたことを意味する。ところがコアラレトロウイルス(KoRV)は内在性レトロウイルスでありながら、病原性を保持しており、白血病や免疫不全などを引き起こしている。本研究では、KoRVを遺伝学的ならびに生物学的に解析し、病原性をもつ型(サブタイプ)を明らかにするとともに、KoRVの増殖を抑える抗ウイルス薬の探索を行うことを目的とした。本年度はこれまでの研究結果をもとに性質の異なるKoRVの感染性遺伝子クローンを作出した。それぞれの型に特異的なプライマーを設計し、忠実度の高いPCR用ポリメラーゼを用いてKoRV全長のcDNAを得た。得られたcDNAの塩基配列を決定しPCRによるエラーがないことを確認した後、ゲノムの両側にLTRをもつ感染性遺伝子クローンの形に組み直した。感染性遺伝子クローンのプラスミドをKoRVに感受性の細胞にトランスフェクトし、逆転写酵素活性、LacZマーカーレスキューアッセイ、イムノブロット法にて感染性を確認したところ、野生株と同様の感染性が確認できた。興味深いことにクローニングした感染性クローン由来のウイルスは、HEK293細胞では増殖したが、TE671細胞では増殖しなかった。
著者
高橋 原 鈴木 岩弓 木村 敏明 堀江 宗正 相澤 出 谷山 洋三 小川 有閑
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

東日本大震災の被災地において、大量死に直面し悲嘆を抱える人々は様々な形で死者の霊の表象と向き合っており、それが「心霊体験」として表現されたときに、宗教者は地域文化や各宗派の伝統を参照しながら臨機応変に対応していることが明らかになった。本研究ではその対応の特徴として、 (1)受容と傾聴、(2)儀礼の提供、(3) 倫理的教育、(4)自己解決(自然治癒)の了解、という諸点を指摘したが、これは、さまざまな支援者が存在する中で、宗教者が担い得る「心のケア」の特質を考える時に貴重な示唆を与えるものである。
著者
高橋 英之 三船 恒裕 守田 知代 森口 佑介
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

文化や社会に応じて超自然的存在の感じ方には大きな個人差が存在している一方,文化普遍的に何らかの形でそのような存在に関する伝説や神話が存在していることは,子どもの心の中に元型となるメカニズムが存在するからと考えられる,本研究では,子どもが超自然的存在を感じるようになるメカニズムを明らかにするため,fMRIで実行可能なリズム同期とパレイドリア錯覚を組み合わせた課題をオリジナルな開発,大人と子どもを対象として行動・fMRI実験を実施した.結果,リズムが同期すると錯覚が生じやすくなるという現象を大人と子供両方で発見した.この現象をベースに,子どもが超自然的存在を知覚するメカニズムについて考察を行った.
著者
乾 敏郎 得丸 定子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

催眠の認知神経科学的研究をレビューし、催眠研究において暗示の効果が脳活動のどのような側面に現れるのかを整理検討した。さらに、最近の瞑想の認知神経科学的研究をレビューし、瞑想初心者vs.熟練者との比較を通し、静止vs.瞑想状態におけるデフォールトモードネットワーク(DMN)内の機能的結合度、脳各領域における活性化/非活性化、共振性、結合度などを検討した。これらをふまえて、自由エネルギー原理に基づくそれらの脳内メカニズムに関する統一理論を提案した。
著者
内藤 方夫 迫田 將仁
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

Fe(Se,Te)の超伝導は、2008年の鉄砒化物超伝導体の発見直後に報告された。当初、Fe(Se,Te)のTcは高々15Kと考えられていたが、2012年に、SrTiO3基板上に成長した単原子層膜で、Tcが77Kに達するという報告がなされた。一方、ごく最近、イオン液体電気二重層トランジスタ(EDLT)を用いてキャリア注入したFeSe超薄膜の超伝導化(Tc~40K)が報告された。このため、FeSe薄膜EDLTの研究を並行して行った。結果、EDLTエッチング法により、Al2O3基板上の数原子層薄膜がTc~50 K示すことを見出し、高Tc化にはSrTiO3基板が必須とする説を覆した。
著者
北本 朝展 筆保 弘徳
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

台風は気象学的にも社会的にも重要な現象であるが、その勢力や構造に関する分析はこれまで専門家の人手による方法に頼ってきた。そこで本研究は、台風に関する大規模衛星画像データセットに機械学習(特に深層学習)を適用することで、ビッグデータという視点から台風を分析する新しい手法を提案する。取り組んだテーマは「台風階級の分類」「台風中心気圧の回帰」「台風から温帯低気圧の遷移」「時系列モデルへの拡張」の4つである。特に「台風から温帯低気圧への遷移」に関しては、深層学習ベースの新指標「温低遷移指数」を提案して気象庁ベストトラックと比較したところ、気象庁のタイミングが平均して半日ほど遅いとの結果を得た。
著者
徐 淑子 池田 光穂 近藤 千春 PETERS Gjalt-Jorn
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

ハームリダクションという薬物使用者支援アプローチがある。日本では、公式的な実践例はないが、近年、海外の実践例などに関心がもたれるようになった。本研究で、ハームリダクションに関する精度の高いモノグラフを作成した。そして、ハームリダクションの早期採用国であるオランダと、日本との間の比較調査を行い、ハームリダクションあるいはハームリダクション的実践についての言説の幅について検討した。
著者
森勢 将雅 能勢 隆
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

VOCALOIDを代表とする歌声合成ソフトウェアが広く一般に普及するにつれ,計算機による「人間的」な歌唱を目指す数多くの取り組みがなされてきた.一方,Auto-Tuneなどのソフトウェアを用いた「非人間的」な歌唱もコンテンツとして利用されている.ここでは,コンテンツとしての自然さと非人間性を両立する歌声が存在するか確認するため,人間性を制御する加工法について研究に取り組んだ.実験の結果,提案法により,人間の歌声が有する揺らぎ成分を除去するという従来のアプローチだけではなく,誇張させた場合でも一定の自然さを保ちつつ非人間的な歌声を生成できることを確認した.