著者
柴口 順一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

各自伝における関東大震災に関する記述を追うことで、それぞれの自伝を横断的に捉える試みを行なった。その結果、自伝における関東大震災のさまざまな捉えられ方や描かれ方が明らかになったと同時に、単なる出来事としての関東大震災とはまたちがった様相が浮かび上がっても来た。そのことによって、出来事としての関東大震災に関する研究にも大いに資するところがある。以後、その対象をさまざまな出来事(事件)に拡大して研究を広げていくことが可能である。
著者
松野 浩嗣 乾 秀行 呉 靱
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

2つの異なる言語の同一性判定問題は、世界言語照合の研究の主な問題に一つである。本研究では、言語名類似性と言語分類類似性の2つの尺度を用いてこの判定を行う行うアルゴリズムを提案し、実験により88%の正解率の照合結果を得ることができた。さらに、兄弟情報を考慮することで、この正解率を向上させることができた。この手法のさらなる改良、すなわち、これら2つの尺度のうち、どちらか一方が完全な照合であるときにでも不一致とする問題点を解決するため、さらに2つの基準である、言語情報と兄弟情報による類似性と言語名と分類情報による基準を定め、その効果を実験的に確認した。
著者
井田 哲雄 MARIN Mircea
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

●折紙の理論を構築し,国際雑誌Journal of Symbolic Computationで発表した.この理論では,面の集合と面同士の隣接関係と重なり関係からなる構造により,抽象折紙を定義し,抽象折紙の折り操作を抽象書換え系の書換え操作でモデル化する.さらに,コンピュータの実装に向けて,抽象折紙をラベル付きハイパーグラフで表現し,抽象書換え系をグラフ書き換え系で実現する.さらに,この理論を実装し,本研究の前年度までに構築されているEos(E-Origami System)に組み込んだ.グラフ書き換えのアルゴリズムについても,新たに開発するとともに,アルゴリズムの正当性の基礎になるいくつかの定理を証明した.グラフ書き換えによる折紙の構築過程を可視化することに成功するとともに,折紙をグラフとして見たときの構造の特徴をも明らかにした.●折紙定理のコンピュータによる自動証明の高速化のために,Eosの定理証明モジュールに様々な方法を組み込んだ.たとえば,証明で用いるグレブナ基底の計算に折紙構築履歴に依存した単項式順序を組み込むこと,折紙幾何に特化した証明ドキュメントの自動生成がある.これらの改良により,折紙定理証明の効率は著しく向上した.たとえば,Morleyの定理の自動証明には当初17時間もかかったが,10分程度で完了するようになった.●上記EOSシステムのウェブ・インタフェイスの構築研究を継続して行い,ウェブ・インタフェイスの改良をおこなった.●藤田による折紙の公理をウー・リットの方法で代数的に解釈し直し,折紙の構築の基本操作を与える藤田の公理の代数的な性質を解析した.ウー・リットの手法で用いる特性集合を調べることにより,藤田の公理が記述する幾何の縮退条件を代数的に求めることができた.
著者
葛岡 英明 加藤 浩 鈴木 栄幸 久保田 善彦 山下 淳
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度はまず、柏崎中学校において授業を実施した。生徒を、提案システムを利用した実験群と、提案システムからCG映像を削除した統制群に分け、それぞれの群にプレテストとポストテストを実施した。その結果、地球の自転の理解に関して、実験群の点数の上昇が、統制群の点数の上昇よりも有意に高い傾向があることがわかった。しかし、学習の様子を観察した結果、システムには、俯瞰視点(学習者がタンジブル地球儀を見る視点)と地上視点(地上から空を見上げた状況をCGによって合成した映像)を結びつけることが困難であるという問題点があるという知見を得た。そこで、俯瞰視点と地上視点を結びつける補助として、天球映像を提示することを考案した。これは、半球をスクリーンとして利用し、上部からプロジェクタで太陽の動きを投影する装置である。この装置の有効性を確認するために、被験者を、装置を利用した実験群と利用しない統制群の2群に分けて比較実験をおこなった。プレテストとポストテストによって評価をおこなったが、提案した装置の有効性を示すことはできなかった。被験者の感想や実験の様子を観察した結果、天球映像をあまり参照しない学習者が多いことがわかった。この問題を改善するためには、学習課題や学習のためのインストラクションを見直して、それぞれの装置の機能や目的を意識して学習できるようにする必要がある。また、学習の様子をより詳細に分析し、天文学習において何が問題となっているのかということに対する理解を深める必要がある。
著者
太郎丸 博
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

2007年に実施された郵送調査とインターネット調査のデータセットを使い、いくつかの変数に関してそれぞれの分布をより正確と思われるデータと比較した。まず年齢について2006年11月の人口推計と比較すると、郵送もインターネット調査も15~19歳のサンプルが少ない。特にインターネット調査のほうが歪みが大きい。しかし、その他の年齢に関してはむしろ、インターネット調査のほうが歪みが小さかった。また性別に関してもインターネット調査のほうが歪みが小さい。最終学歴に関しては、郵送もインターネットも、女性の高学歴サンプルが過大に含まれ、中卒男女のサンプルが過小に含まれていた。また、インターネット調査に関しては男性高学歴者も過大に含まれていた。さらに、結婚時の理想の働き方を女性に対して尋ねた質問項目のゆがみを、出生動向基本調査と比較することで検討した。その結果、郵送調査では18~24歳で就業継続希望者が過小に含まれており、25~29歳で中断希望者が過大に含まれていた。インターネット調査は、出生動向基本調査と大差ない分布であった。この理想の働き方と、本人の従業上の地位などの変数との関連の仕方を対数線形モデルやロジスティック回帰分析で比較したが、インターネット調査と郵送調査で有意な違いは見いだせなかった。このような分析結果を総合すると、インターネット調査を行う場合、年齢、性別、学歴という3変数に関しては、クォータ法を使ってあらかじめ割り当てておくことが必要である。今回の分析では、無職と非正規雇用を意図的に過大にサンプリングしたので職種がどのように歪むかはわからなかった。いずれにせよ、分布が既知の重要な変数に関してはできるだけ細かく割り当てを行うことが、インターネット調査の代表性を高める上で重要であることが分かった。また、1変数の分布だけを見れば、若干の歪みが見られるものの、変数間の関連の強さに関しては有意な違いが見られず、一定の有効性があると考えられる。
著者
舟橋 弘晃
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

ブタ精液中の膠様物の諸特性を解析評価した。膠様物は、強酸性および強アルカリ性で溶解できたが、中性周辺では比較的安定していた。また、子宮内に多く存在する多核白血球の膠様物への走化性はなく、また、極めて高い保水性が認められた。粉末膠様物を精液と混和することで、精子カプセルを作成することが出来、そのカプセル中で一定時間精子が生存でき、また徐々に精子が放出されることを確認できた。化学的な解析により、膠様物はo-グリカンを多く含むことが明らかとなり、糖鎖解析とペプチド解析から特異的な糖鎖とタンパク質を含むことが明らかとなった。これらの知見は、医療分野を含む広い領域で有効活用できる可能性を含む。
著者
尾田 正二
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

硬骨魚類では瞳孔(黒目)の大きさは変化しないとされてきたが、本研究では強い光に反応してメダカの瞳孔が小さくなる(縮瞳)対光反射があることを見出した。また、ヒトと同様に、メダカにおいても交感神経の活動が瞳孔散大筋を収縮させて散瞳を、副交感神経の活動が瞳孔括約筋を収縮させて縮瞳を引き起こすことを見出し、さらに撮影時のメダカ成魚は交感神経の活動が大きく亢進している、すなわち緊張していたことが示唆された。近年高性能化が著しいデジタルカメラとPCを活用した映像の数値化手法によってメダカの眼の大きさ変動を詳細に観察することにより、当該メダカ個体の心身状態を推察することに道が開かれた。
著者
大竹 文雄 木成 勇介
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

男女間で昇進格差が生じていることは、多くの先進国で観察される事実である。その理由として、雇用主の差別や男女間における離職率の差、ワークライフバランスに欠ける職場環境の存在など、様々な原因が考えられてきた。近年注目されている仮説は、男女間で競争に対する選好が異なることが、昇進競争への参加の男女差を生み、結果として男女間の昇進格差が発生している、というものである。米国での経済実験を用いた先行研究では、男性のほうが女性よりも、競争的報酬体系を好むことが明らかにされ、その理由は自信過剰な上に競争自体を好むという特性があるためだという結果が得られている。しかし、競争選好に関する男女差が、文化によって形成されるものなのか、それとも文化に依存せず共通のものなのかを明らかにするためには、様々な国、様々な被験者を用いた分析が必要である。本研究では、先行研究と同様のタスクを用いて、競争的報酬体系と歩合制の報酬体系との選択を日本人の被験者に行わせた。その結果、先行研究と同様、男性のほうが女性よりも競争的報酬体系を好むことを見いだした。その理由は男性のほうが女性よりも自信過剰であることによる、ということを明らかにした。本研究では、競争をするグループ内の男女比と競争選好の関係についても明らかにした。女性は女性ばかりのグループでは自信過剰になり、男性はグループ内に女性がいると自信過剰になる傾向があることを見いだした。これは、女性はもともと競争を好まないというよりも、男性との競争を好まないという文化特性である司能性が高い。それを明らかにするため被験者集団を文化系の学生に絞った場合と実験タスクを計算問題から迷路に変更した実験を追加的に行った。これらの実験結果の解析は、現在まだ行っている途中である。
著者
大西 英雄 城本 修
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

発声に関する脳機能の賦活部位は,上前頭回,上・中側頭回,内側前頭回,角回,縁上回,帯状回が確認された。これらの賦活部位が声門の動きに大きく関与しており,賦活程度の比較より前頭葉に発声中枢があると考えられた。その結果よりチューブ発声法を訓練法と採用して,チューブ発声法の訓練有無の比較は,訓練群は新たに上前頭回,中側頭回,帯状回の賦活が認められ,チューブ発声法の訓練は有効であると示唆された。また,チューブ発声法に用いるチューブ径は,チューブ径の違いで脳賦活部位に違いが生じ,脳機能画像上においてチューブ径5 mm が有効であると示唆された。
著者
岩瀬 峰代 奥本 素子
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、アートを用いた科学コミュニケーションはこれまで科学に興味がなかった潜在的関心層への伝達ツールとして注目を集めている。しかし、その効果やツールとしてのアートの特性を分析が十分になされていない。本研究では科学者とアーティストが協働して作成した2作品を用いてアートの印象効果と伝達効果を分析した。その結果、アート作品が人々に目新しさを認識させる傾向があること、アートによる大胆な翻訳表現であっても、市民に理解しやすい表現であれば伝達効果が期待できることが明らかになった。アートは高度な概念の表現だとされているが、本事例によって科学的概念の表現にも適している可能性が示された。
著者
清成 透子 高橋 泰城
出版者
青山学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

テストステロン(T)は一般に社会的支配性を促進すると考えられているが、Tと経済ゲーム実験における意思決定の関係は研究により一貫していない。本研究では、日常的に社会的地位格差のある集団(大学体育会ラグビー部)を対象に唾液中のT値と最後通牒取引ゲーム(UG)における意思決定との関係を一連の実験にて検討した。その結果、TはUGにおいて学年(社会的地位)の高い参加者の間では支配的な行動を促進することが明らかになったが、学年の低い参加者に関しては結果が安定しなかったため、今後のさらなる検討が必要である。
著者
松永 明
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

水素ガスが細胞毒性の高い活性酸素種であるヒロドキシルラジカルを選択的に消去し、虚血再灌流障害を抑制することが確認され、ラットの中大脳動脈閉塞による局所脳虚血再灌流モデルにおいては、2%の水素ガス吸入が脳梗塞の範囲を縮小し、神経学的予後を改善させることが報告されている。水素ガス吸入が心肺停止からの救命率の向上、および蘇生後脳症の発症の予防に有効かどうかを確認するために、ミニブタを用いた心肺停止モデルを作成し、水素ガス吸入が救命率向上および神経学的予後改善に寄与するかどうか検討を行った。気管挿管による全身麻酔下に心室細動による3分間の心肺停止を行い、1) 水素吸入群は除細動による蘇生開始後より100%酸素ガスに2%水素ガスを混合したガスを1時間吸入、2) 対照群は除細動による蘇生開始後より100%酸素ガスを1時間吸入した。水素吸入群と対照群において3分間の心室細動後の自己心拍回復率および蘇生後の血行動態に差を認めなかった。また、蘇生後の神経学的予後改善に水素吸入が影響を与えるかどうかは検討できなかった。幾つかの論文では水素ガス吸入による虚血再灌流後の臓器保護効果を認めているが、我々のミニブタを用いた心肺停止モデルにおいては、水素ガス吸入による救命率の向上は確認できなかった。また、水素ガス吸入による蘇生後の脳神経保護効果は検討できなかった。今後、心肺停止時間の異なるミニブタモデルを作成し、水素吸入が心肺停止からの救命率向上に貢献するか、また、蘇生後脳症を軽減させるかどうかさらに検討を重ねていきたい。
著者
中村 健二
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,磁気変調型磁気ギアとモータ/発電機を融合した,磁気ギアードモータ・ジェネレータの開発を目的として,解析および実験の両面から種々の検討を行った。まず,アキシャルギャップ型とラジアルギャップ型の比較では,磁気ギアードモータの場合には偏平構造であってもラジアルギャップ型の方が性能が良いことが明らかになった。これは本来デットスペースとなるギア内側の空間に,モータを配置することができ,空間利用率が向上したためである。次いで,ラジアルギャップ型磁気ギアードモータの試作試験を行った。その結果,試作した磁気ギアードモータのトルクは要求トルクを上回ることが実証された。
著者
全 泓奎 川本 綾
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、経済のグローバル化の進展に伴い注目されるようになった、多文化コミュニティに対する生活課題の解決への対応が求められている。本研究では、「多文化コミュニティワーク」という実践の重要性と、それにかかわる現状と課題を示すところに主眼をおきながら実施したもので、主な研究の成果は、以下の通りである。(1)東日本大震災当時の外国籍住民の現状と生活課題を明らかにしたもの。(2)大阪府下の多文化コミュニティでの生活実態を踏まえた地域資源の調査を実施し、多文化コミュニティワークとしての地域再生の実践を提案したもの。(3)台湾の例として、都市原住民コミュニティの生活実態を調べ、多文化共生の課題を探ったもの。
著者
山越 健弘 李 知炯 松村 健太
出版者
福岡工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

諸外国では飲酒運転防止装置の実用化が進み,呼気ガス式手法が一般的になってきたが,様々な問題点がある.そこで,光電容積脈波を利用し,血中成分の吸光特性から指尖部の入射光に対して散乱された光を検出する方法に着目した.しかし,アルコール固有の吸収帯域は水への吸収度が高い近赤外長波長帯域の905 nm,1185 nm,および1690 nmに存在し,人間の身体のほとんどが水分であり,検出される光が極めて微弱で,動作や外部環境に敏感でノイズが多く,これを如何に低減できるかの実験検討をまず行い,次いで人を対象とした飲酒負荷実験を行った結果,光電容積脈波にて血中アルコール濃度が予測可能であることが示唆された。
著者
的場 輝佳 真部 真里子 原 知子 坂本 宏司
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

京都の老舗料亭の料理人、管理栄養士・医師とコラボして、高齢者が好む“おいしい”嚥下食を設計し、高齢者が好む調理法(レシピ)を提言するとともに、嚥下食のおいしさの原理を以下のように明らかにした。そのポイントは、「変化を持たせる」ことで、複数の食材を同時に調理するのでなく、個々の食材ごとにその特徴を生かして“五色、五味”のバランスにも配慮して、飽きない料理に仕上げることである。
著者
永田 晋治
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の実験対象であるフタホシコオロギの共食いでは、触角を介し被捕食者の体表の脂溶性成分を認識することが分かった。実際に、体表をヘキサンで拭うと被捕食者になる。体表の脂溶性成分のGCMS分析では、主に13種の炭化水素を同定した。化学構造から推察される生合成酵素群をRNA-sequencingにより探索し、その遺伝子群をRNAiにてノックダウンすると、同種異種の認識に変化が認められる。フタホシコオロギの「共食い」行動では、フタホシコオロギで固有の体表脂質成分の変化が捕食者と被捕食者の関係性に導かれることが分かった。
著者
寺尾 知可史
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

関節リウマチの滑膜に発現するタンパクの分布が異なる可能性を考え、各関節部位の滑膜、特にDIP関節の滑膜の収集を試みたが、ヒトで検体を保持している施設はほとんど見られなかった。そこで、関節炎モデルにも用いられるカニクイザルを対象とすることとした(モデルではDIP滑膜はやはり影響を受けにくい)。新日本科学に依頼し計3匹の各関節(手足DIP,PIP,MP,手関節、肩、肘、股関節、膝、足関節)から滑膜を取得した。サル関節滑膜からのRNA抽出の条件検討を行い、最適化の上で抽出を行った。ボストンのブロード研究所でRNAシーケンスを行って転写産物の網羅的データを得た。遺伝子転写産物の解析を現在行っている。
著者
町村 敬志
出版者
一橋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、第1に、1990年代後半以降の国家政策全般を対象に、「評価国家」という視点からみた場合、そこにどのような政策形成の趨勢がみられるのか、第2に、拡張する評価現象をまえに市民活動団体や専門職集団の側がいかなる対応をとってきているのか、とりわけそれぞれの現場を生きる当事者が変化をどのようにとらえ、どのような言葉でそれを表現しようとしてきているのかを検討することを課題として進められた。具体的には、1995年以降の日本の中央省庁の主要な政策文書(781件)を対象に、広義の評価をめぐる過程がどのように拡張、展開してきたかを、とくに評価や監査、モデル化といった評価の個別手法に焦点を当てながら検討した。あわせて、市民社会と国家の共属領域に位置し、評価権力にさらされる機会の多い専門家層、市民団体リーダー層を対象に、経験としての評価、評価を通じての自己像の変容などについて、半構造化されたインタビュー調査を実施した。その結果、次の諸点が明らかになった。第1に、評価的なプロセスを軸とする統治の全体には求心的な構造が欠けている。第2に、評価の権力作用には限界がある。たとえば、評価的な社会過程を通じて、主体化や動員が促進されるとしても、実際には、その力は微弱あるいはまだらであり、あまりにも抜け穴が多い。第3に、しかし、それにもかかわらず、評価的プロセスを基盤とする統治のスタイルは、個別の政策領域を超え、確かに他へと浸透・拡張していく傾向をもつ。テクノロジーとしての評価のメカニズムには、各団体・個人を、その政治的・イデオロギー的志向性とは別に、その「能力」に基づいて序列づけていく手続きが内蔵されている。
著者
三宅 克英
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

加賀地方や能登地方の水辺林に生息するアカテガニから消化管抽出液を作製し、そのバイオマス分解能力を解析した。セルラーゼ活性やリグニン分解活性を検討したところ、非常に強いグアヤコール酸化活性、つまりリグニン分解活性を検出することができた。またこのアカテガニやヨコエビなどの甲殻類からバイオマス分解能力のあるアカテガニ消化管由来細菌群を単離同定し、そのセルラーゼ活性やリグニン分解活性も検出することができた。単離した細菌群は一つずつでは、消化管抽出液の活性には遠く及ばないが、群集として機能させることで、強い活性を再構成することが可能と考えている。