著者
桑木 共之 高橋 重成 森 泰生 大塚 曜一郎 柏谷 英樹 戌亥 啓一 陳 昌平 黒木 千晴 米満 亨 上村 裕一
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Transient Receptor Potential (TRP)イオンチャネルの1つであるTRPA1チャネルが環境ガス中に含まれる低酸素および有害物質のセンサーとして働き、これらを体内に取り込んでしまう前に忌避行動、覚醒や呼吸変化を引き起こす早期警告系として役立っているのではないかという仮説を検証した。仮説は実証され、しかも鼻腔内の三叉神経に存在するTRPA1が重要であることが明らかになった。
著者
平松 祐司 北村 豊 長谷川 雄一 堀米 仁志
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

「ビタミンKを含まない納豆風味食品」の開発試験を実施した。発酵納豆から粘性物質を溶出し、この水溶液に紫外線照射を加えてビタミンKの分解および納豆菌の殺滅を図った。これを粉末化したものを別途蒸煮した大豆に還元し、納豆風味の煮大豆を得た。1)納豆粘性物質中のビタミンKの分解特性の解明、2)納豆粘性物質中の納豆菌の熱死滅特性の解明、3)納豆粘性物質の乾燥特性の解明のための評価を実施し、紫外線照射や加熱操作の適用性の向上、粘性物質の保存性や加工性の向上、および高い次元での納豆風味の再現を目指した。
著者
和田 洋一郎 桂 真理 石崎 梓 秋光 信佳 ウィロックス ラルフ
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、甲状腺がんなどに見られるBRAF V600E点変異を効率的に検出する方法を開発し、放射線被ばくによる変異メカニズムを研究しようとした。デジタルPCRシステムを駆使することで、10万個に1個の変異を検出することができた。放射線照射またはアリストロキア酸添加をおこなったHCT116細胞で変異が少数検出されたが、刺激を与えない場合にも検出されるケースがあり、これらの放射線照射やアリストロキア酸がBRAF V600E変異の誘因であるとは断定できなかった。今後放射線等の影響による遺伝子変異の検出にあたっては、特定の部位をさらに高効率で検出する手法の開発を優先すべきであると考えた。
著者
渡邊 浩幸
出版者
高知県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

懸念される震災等に対する保存食を過剰に収穫された時期の野菜類を使用して、栄養成分の損出を伴うことなく、室温保存が可能な保存野菜を可能にする画期的な技術の確立を行う。これは、これまで不可能とされてきた野菜類の酵素や生理活性物質の安定化を室温で長期間可能とする。この機構を解明し、食品開発への応用展開を目指すことを目的として研究を進める。これらの応用は、過剰収穫時の野菜を緊急時の保存食として利用し、災害食として食素材から見直して、災害時栄養の重要性をより具体的に見直すきっかけとなる。さらに、これまでに利用されていなかった植物の食品への応用と伝統的な食品の保存食と機能性保存食品への応用も検討した。
著者
長木 誠司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

これまでほとんど研究対象とされてこなかった、日本の出版楽譜制作の歴史、すなわち楽譜出版の歴史ではなく、作曲者の手稿等から出版用の版下を制作する技術(music engraving)の歴史の概要が明らかとなった。高度な技術を持った職人たち、出版された楽譜に名前すら残らない職人たちによる制作の歴史は、従来まったく手が付けられなかった。明治以来、洋楽を受容した歴史はさまざまな観点から研究されているが、この楽譜制作の領域がどのような西洋の模倣から始まり、音楽出版界でどのように変容されてきたのかということを、出版譜の歴史や実際の技術者たちからの聞きとりによって追跡した。
著者
土屋 礼子
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

エフェメラ・メディアのデータベースを構築するために、2009年度に引き続き、これまで収集してきた第二次世界大戦時の対日宣伝ビラの画像を同定しながら、全部で約8600点の資料画像を入力し、これを同一のビラごとに整理して番号を振り、各ビラの複数のイメージと英文説明資料をまとめて一つの項目として引き出せるようにした。その結果、約1700種類の対日宣伝ビラの資料が存在することが確認された。このうち、約350種類が英国制作、約350種類がオーストラリア制作、約800種類が米国制作であり、残り約200種類は中国制作また制作国不明のものである。さらに各ビラの日本語の文章をテキストデータとして入力した結果、キイワードによる検索が可能になった。これによる得られる幅広い知見の一部を示せば、日本人では「陛下」(67)という語による天皇への言及が多く、「天皇」(54)には明治天皇(9)が含まれ、「東條(首相)」(56)が次いで多いこと、国では「米国」(254)が最も多く登場するが、次いで「ドイツ(獨逸など)」(233)も多いこと、地名では「東京」(246)が最も多い以外は、「ビルマ」(199)「比島(フィリピンなど)」(187)など戦闘に関係した場所が頻出すること、敵国の軍隊では、「連合軍」(404)「米軍」(398)の言及が多く、他は「英軍」(81)「濠軍」(7)と極端に少ないこと、「爆撃」(308)は頻出するが、「原子爆弾」は1件しかないこと、「戦友」(176)よりも「指揮官」(143)「司令官」(119)への言及が多く、また戦争の責任の所在は、「軍閥」(112)に求められていること、戦争に否定的な「敗戦」(78)「戦死」(76)などの語が多く登場する一方で、「平和」(197)「自由」(125)「戦後」(121)といった肯定的で希望のある語も多いことなどが明らかになった。研究計画では、制作に関する情報や資料、流通散布や受け手に関わる情報などを付加する予定であったが、今年度ではビラの画像とテキストのデータベースを完成するだけで精一杯であり、その公開と拡充は今後の課題である。
著者
関口 雄祐
出版者
千葉商科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

半球睡眠とは,一側の大脳半球のみで睡眠脳波が記録される生理的状態である.これまでに,ヒトが半球睡眠を行う脳波上の証拠は得られていない.しかしながら,ヒトが局所睡眠を生じること,また,断片的報告からヒトが半球睡眠を行いうる可能性は高いと我々は考えてきた.本研究課題では,自発的な半球睡眠---脳の活動状態の左右差(大脳の左半球と右半球の活動差)---を生じさせる代わりに,視覚入力を一側(左眼球あるいは右眼球)に制限することにより,疑似的な半球睡眠状態を構築し,その状態の疲労の蓄積・回復を分析した.
著者
竹内 京子 菊原 伸郎 松村 秋芳 西田 育弘 煙山 健仁 岡田 守彦
出版者
帝京平成大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、回旋角度測定器付き荷重動揺計を用いた立位股関節回旋角度測定法を普及させ、この装置の自動運動中に得られる股関節回旋角度および荷重動揺軌跡から姿勢制御力や身体運動能の評価システムを確立することである。この評価システムの意義は、動的荷重動揺軌跡の形状や角度変化に着目し、動作の精度や運動能の評価を容易にしたところにある。平成24~27年度にトップアスリートから一般人まで1000名近くのデータを得た。軌跡図の形状や回旋角度の変化を精査した結果、下肢動作の左右差(一側優位性)やスポーツ種目ごとの特性を見出した。動作の精度に影響を及ぼす疲労や開脚幅の広がり等の諸要因について検討を加えた。
著者
藤目 ゆき
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

連合国占領軍の事件・事故に起因する人身被害に関する研究を行い、被害者とその遺族が受けた心理的・社会的・経済的ダメージやその後の暮らし、現在の心境・考えなどを明らかにした。全国調達庁職員労働組合による被害実態調査について、1000件を超える調査票の内容をデータ入力し、地方ごとに年表およびマップを作成した。GHQと米日両政府・被害者及びその遺族・政党や労働組合などの社会団体の動向を調査し、補償請求運動と立法化の過程を解明した。また、占領軍被害補償問題を原爆や空襲の被害、「慰安婦」被害など他の補償請求問題との比較検討・関係性の考察を進めた。
著者
木之下 博
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

砂漠に生息するサンドフィッシュは、砂の中を泳ぐように移動できる.本研究では,サンドフィッシュの鱗のマイクロ構造やμNあるいはmN荷重での鱗のトライボロジー特性を調べた.鱗は人間の頭髪のようなキューティクル状の構造を有していた.また構成元素はO,C,NとSであった.水に対する接触角も大きくなく90°程度であった。μN荷重ではある条件を除いて比較材料のPTFEやPIよりも小さな値であった。mN荷重、φ1mmのSUJ2球の摩擦ではPTFEやPIでは摩耗が見られたが、サンドフィッシュの鱗では摩耗が見られなかった。
著者
伊谷 樹一
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

林の劣化が深刻なアフリカの半乾燥地域において、在来のタケを植林体系に組み込むことで環境保全と農村の生活改善を両立する可能性について検討した。タンザニア南部では、アフリカに広く分布するOxytenanthera abyssinicaという木本性のタケからウランジという酒を造り販売している。この研究では、世界的にも類い希なこの酒の製造方法を詳細に記録するとともに、そのメカニズムを解明した。また、ウランジ特有の風味を化学的に分析し、それを損なわずに再現できる方法を見つけ商品化の可能性を見いだした。さらに、この竹林がもつ環境保全の機能についても確認し、短・長期的な植生復興のあり方を構想した。
著者
平松 祐司 北村 豊 長谷川 雄一 堀米 仁志
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

「ビタミンK低含有納豆様大豆食品」の開発を実施した。従来の研究のような納豆の発酵プロセスの改質にこだわらず、納豆粘性物質水溶液を利用して納豆風味を保持し、この水溶液に紫外線を加えてビタミンKおよび納豆菌を低減した大豆食品の加工を目指した。並行してビタミンK低産生納豆菌株の同定を実施した。粘性物質を粉末化したものを蒸煮大豆に還元し、納豆風味の大豆加工食品を作成した。1)粘性物質水溶液中のビタミンKの分解特性の解明、2)粘性物質水溶液中の納豆菌の熱特性の解明、3)粘性物質の乾燥特性の解明のための評価、さらにボランティアによる摂食試験を実施した。
著者
村井 俊哉 後藤 励 野間 俊一
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

病的賭博に代表されるなんらかの行為の対する依存は「プロセス依存」と呼ばれ、物質への依存症と共通する病態機構を持つのではないかと推測されている。プロセス依存の基盤となる認知過程・脳内過程の解明を目的とし、病的賭博群に対して、報酬予測や意思決定課題を用いた機能的神経画像研究を実施した。結果、病的賭博群において報酬予測時における報酬系関連脳領域の神経活動の低下を認め、さらにその賦活の程度と罹病期間の関連が見出され、同神経活動が病的賭博の臨床指標になりうる可能性が示唆された。
著者
小柳 愛 渋谷 健司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

当研究は、Hard to reach populationであるMen who have sex with men(以下MSM)の、出来る限り代表性のあるサンプルを抽出し、HIV有病率とHIV感染に関連するリスク要因を抽出することを目的としている。平成23年度は、Feasibility調査を実施した。サンプル方法として、Venue Day Time Samplingを採用するが、そのための前調査・準備として、(1)対象地域で性的少数者の自助活動グループやMSMのHIV予防啓発活動グループ、他キーパーソンへ研究の説明をし、理解を求める事、(2)MSMの協力者を得て研究計画への助言・実行に参加してもらう事、(3)アンケート内容の吟味、(4)venueのマッピングなどを行った。当研究の必要性を理解するキーパーソンも複数現れ、二人の作業協力者を得ることができた。この協力者によって、アンケート内容の吟味と、venueのマッピングも行われた。沖縄県内に、約40軒のMSM対象の商業施設があり、大部分が那覇市に集中していることが明らかになった。これらは、今後、より多くのMSMの協力者によって吟味・検討される必要がある。本調査は、Venueの経営者に再度アプローチし、丁寧に説明を尽くすことにより実現可能であると思われる。調査は、東京大学医学部の倫理委員会の承認を得た。Palm top computerを用いるアンケート調査については検討の結果、i-Padを用いる事とし、唾液によるHIV抗体検査のためのOraQuickを輸入した。
著者
村上 敬一
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究はいわゆる「コホート系列法」によって四国や九州の若年層方言の動態を解明し,日本人の言語形成期最終盤から終了直後における,言語変化モデルの構築を目的とするものである。進学や就職などによって言語をとりまく環境が大きく変動する,この世代特有の活発な言語変化のプロセスとメカニズムを「コホート系列法」を用いた言語調査によって継続的に追究し,データによって実証された言語変化のモデル化を目指す。2017年度は,前年度に引き続き徳島県西部の吉野川市立山川中学校,美馬市立岩倉中学校,三好市立井川中学校,および徳島県立脇町高校,同池田高校の生徒を対象として,アンケートと面接,談話収録による言語調査を実施した。また、徳島県西部と類似の言語環境にあると思われる、熊本県天草下島の県立天草高校でも同様の調査を実施し,簡便な報告書を作成することができた。調査結果については、村上の担当する「日本言語演習」や、卒業論文のデータとして活用したほか,5月の「日本方言研究会(ブース発表)」,11月の「第1回実践方言研究会」,台湾(2017年5月)と韓国(2018年3月)の国際学会で研究発表することができた。「コホート系列法」調査によって,中学から高校,高校から大学といった進学などに伴う活発な言語変化が観察される,若年層の言語動態が明らかにできることが少しずつ実証できている。語彙や文法における方言使用,標準語使用および使い分けの実態や,言語生活の実態を明らかにすることで,若年層における言語変化の普遍的なモデルの構築を引き続き目指していきたい。
著者
小谷 瑛輔 田中 祐介 中野 綾子 若島 正 木村 政樹 矢口 貢大
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近代において、将棋と文学は密接に関わりあいながら展開してきた。本研究では、その様相を具体的に解き明かし、データベースや論集にまとめた。一つ目は、小説という近代的な新しい概念が将棋の比喩によって誕生し、その後も文学の概念に影響を与えてきたこと。二つ目は、新聞・雑誌メディアの発展において将棋と文学がともに重要なコンテンツであったということ。三つ目は、文壇の人的ネットワークにおいて将棋が大きな役割を果たしてきたことである。
著者
菊水 健史 茂木 一孝
出版者
麻布大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では以下の知見を得た。1)求愛歌を聞いたメスは自身の系統とは異なるオスマウスの発した求愛歌に対して高い嗜好性を示した。2)メスの求愛歌への嗜好性は、発達期の父子間の関わりが重要であることが明らかとなった。3)メスの求愛歌への嗜好性は雌性ホルモンの存在が必要であることを示した。4)求愛歌を呈するオスでは数回の出産を認めたが、求愛歌を呈さないオスマウスのペアではほとんど出産を認めることがなかった。5)メスマウスの歌嗜好性はオスフェロモンとの共提示により顕著に観察され、感覚統合された表現型であることがわかった。
著者
谷口 良一 辻本 忠 宮丸 広幸 伊藤 憲男 小嶋 崇夫
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

半減期が1000億年の超長寿命の天然ベータ崩壊核種La-138の放射線照射を行った。長寿命ベータ崩壊核種は核を励起すれば、寿命が劇的に短縮されるという可能性が指摘されており、Cs-137の除染を念頭に、短寿命化の可能性を検討した。実験ではLa試料をガンマ線とX線で数百kGy程度照射した。その結果、照射線量に対応した数%程度の減少が観測された。ただし減少が観測されたものはLa金属に限られ、酸化ランタンでは確認されていない。
著者
中島 匠一
出版者
学習院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の基本方針は、主としてアレキサンダー多項式と岩澤多項式の対比を通じて、結び目理論と代数的整数論における類似を考察することである。両者の間の具体的な対応関係を追及した結果、類似が成立する対象をいくつか特定することができた。また、結び目理論から整数論への貢献を想定して、アレキサンダー多項式の零点の数値計算を進めた。
著者
植村 哲也 近藤 憲治
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

半導体中の核スピンは量子力学的な重ね合わせ状態を長く維持することができ,量子計算機の量子ビットとして有望である.本研究では,強磁性電極から半導体への電気的スピン注入と核電気共鳴(NER)効果を併用し、電気的制御のみで核スピンをナノメートルスケールの空間分解能で選択的に制御できる素子を開発した.具体的には,高いスピン偏極率を有するCo2MnSi電極からGaAsへの高効率スピン注入と,スピン注入信号のゲート電圧による高効率制御を実証した.さらに,注入した電子スピンを用いて,GaおよびAs原子の核スピンを高効率に偏極し,ゲート電極に印加した高周波電場により核スピンに対するNER操作を実証した.