著者
野崎 久義
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

一次共生植物が単系統であると示した既存のデータの再検討による再解析並びに自由性生活の無色ミドリムシ類PeranemaのESTデータの構築と利用を実施した結果、一次共生植物が単系統と解析されている原因が遺伝子進化速度が高い細胞内寄生虫や繊毛虫等の影響である可能性が示せた。また、色素体二次共生植物のクロララクニオン藻とミドリムシ藻で、それぞれ緑藻の二次共生以前の隠された紅藻の2または3次共生が核ゲノムの解析で明らかになり、二次共生植物の概念も刷新しつつある。
著者
陣内 雄次
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、S応急仮設住宅(福島県いわき市)の集会所にて、月1回交流イベントを開催し参与観察によりデータ収集した。また、中越地震等過去被災地での現地調査を行った。26年度には子ども参画による復興コミュニティづくりのあり方を探求した。その結果、子ども参画のまちづくりには、大人のサポートが重要であることが分かった。加えて、復興まちづくり関係者が参画するシンポジウム等を開催した。今後の復興まちづくりでは被災地の経済的自立、多様な主体の交流の場の必要性が指摘された。平成27年度は、研究報告書を作成、研究成果のエッセンスをまとめたブックレット『私たちが、復興まちづくりで、できること。』も作成・印刷した。
著者
村本 健一郎 谷口 健司 笠原 禎也 久保 守 鎌田 直人
出版者
石川工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年,地球環境観測では,測定機器の数が増加し,また,各測定機器の解像度はより高くなり,また測定時間間隔は短くなり,様々な機器で測定されるデータの総量は大幅に増加した。良いデータ管理は,信頼できる結果の保証を与え,また膨大なデータセットの効率的な解析を可能にする。本研究では,地球環境データのための高い信頼性を有するデータの保存とアクセスが容易なデータベースを提案する。本データベースは地球環境データを活用する人に有益となることが期待される。
著者
小笠原 康悦 石井 智徳
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

自己免疫疾患は、遺伝的要因、環境要因、時間要因によって引き起こされると考えられる。しかし、環境要因や時間要因を含む診断方法は確立されていない。NK細胞は、自然免疫系の細胞群として知られている。NK細胞は、腫瘍、感染防御の除去の観点から、細胞表面分子と受容体が検討されてきた。したがって、今まで、NK受容体およびNK細胞は自己免疫疾患に関与しているかどうかは不明であった。本研究では、NKレセプターおよびNK細胞が自己免疫疾患に関与するというオリジナルのアイデアに基づいて実験を行った。私たちの目的は、全身性エリテマトーデス(SLE)やI型糖尿病などの自己免疫疾患に対する診断指標のための新たなバイオマーカーを探索することであった。本研究では、自己免疫疾患モデルマウスにおいて、正常組織でほとんど発現しないNKG2Dリガンドが異常発現することを見出した。また、自己反応性T細胞がNKG2D分子を異常に発現していた。したがって、これらの結果は、NKG2Dリガンドは、I型糖尿病の新しいバイオマーカーとして利用可能であることを示唆している
著者
沖 真弥
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

マウスのES細胞を浮遊培養すると、胚様体という凝集塊を形成する。その後、三胚葉を形成し、様々な組織を形成するが、極めて無秩序に分化するため、人為的に分化を制御することは難しい。そこで胚様体の性質のばらつきを調べるために、in situ hybridization法で各種分化マーカの染色をおこなった。その結果、同一シャーレ内の胚様体間だけでなく、単一胚様体内の細胞間でも性質のばらつきが非常に大きいことが明らかになった。特に中胚葉マーカは、day 8の胚様体でも約半数しか発現しておらず、さらに単一胚様体内においても発現細胞の分布はまばらであり、マウス胚のようにクラスター化されていなかった。また、原条前方マーカの発現も同様のばらつきを示したので、中胚葉の運命決定も無秩序であることが示唆された。そこで中胚葉の運命決定を均一なものにするために、FGFシグナルに着目した。マウス初期発生において、中胚葉の運命決定はFGFシグナルの濃度に依存する。したがって化学合成阻害剤でFGFシグナルのレベルを均一化できるのではないかと考えた。まず阻害剤の選別のために、マウス胚を各種FGFシグナル阻害剤で全胚培養し、FGFシグナル標的遺伝子の発現を調べたところ、PD173074という阻害剤が最も特異的かつ効果的であった。また、この阻害剤で受精後6-7日のマウス胚を培養したところ、Fgf8やその受容体Fgfr1の欠損胚と同様、沿軸中胚葉や中軸中胚葉マーカの発現異常を示した。特に沿軸中胚葉マーカの発現は阻害剤の濃度依存的に低下した。以上の結果より、胚様体のFGFシグナルをコントロールするための阻害剤として、PD173074は最も有力な候補であり、マウス胚においてはFGFシグナルのレベルを時期特異的にコントロールできることが明らかになった。
著者
塩谷 光彦
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、炭素やケイ素を鋳型とし、パーメタレーションにより金属多核クラスターを構築することを目指した。具体的には、炭素一原子を鋳型とする金属クラスター合成、およびベンゼン環をコアとする金(I)多核錯体合成を行った。その結果、N-ヘテロ環状カルベンを外部配位子とする炭素中心型金(I) 6核錯体の合成法、およびジフェニルメチルホスフィンを外部配位子とするベンゼン環の隣合う二つの炭素に金(I)イオンが結合した2核錯体の合成法を確立した。前者の合成研究において、6個の金(I)のうちいくつかが銀(I)や銅(I)イオンと交換し、ヘテロ金属クラスターを与えることを見いだした。
著者
橋本 裕行
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、温泉成分中に含まれる塩化ナトリウムに着目し、温泉と遺跡との有機的な関係性を明らかすることを目的として実施した。その結果、日本列島の内陸部に形成された縄文遺跡と温泉源との間には、有機的な関係性を有する事例があることを指摘できた。また、古代における牛馬の飼育と温泉源(化石海水)との間にも同様の事例が存在することを確認した。
著者
松田 嘉子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エジプト、スペイン、チュニジアで現地調査を行い、音楽家に聴き取り調査を実施した。アラブ古典音楽の新しい教育法についても調査した。また革命後の音楽事情を取材した。エジプト系オーストラリア人ウード奏者ジョゼフ・タワドロスを日本に招聘し、コンサートを開催した。期間全体を通じて、文献および音源の多彩な資料収集ができた。チュニジア伝統音楽研究機関「ラシディーヤ」との研究協力体制を強め、今後の展望が開けた。
著者
黒川 雅幸
出版者
福岡教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

もったいないと感じることには、価値の損失、価値あるものの未発揮、再利用・再生利用可能性の消失、投資分の未回収、無駄な出費、の 5 つの生起先行条件があることが明らかになった。また、もったいないと感じることによって、もったいないと感じないようにその後の行動の改善が動機づけられることが示唆された。最後に、価値の損失や再利用・再生利用可能性の消失によってもったいないと感じやすいことは環境配慮行動を説明した。
著者
安達 真由美 金内 優典 半田 康 多賀 昌江
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では78人の妊婦を18~22週、23~27週、28~32週、33~36週に分け、音楽に対する生理・心理的反応、気分、気質、普段の食生活、ストレス解消行動における妊婦の個人差が、音楽に対する胎児の動きとどう関連するのか、また、ヘッドフォンを通して妊婦が音楽を聴いている時と、家庭用スピーカーから普通の音量で胎児のみが音楽に接触している時の違いを探究した。 その結果、週齢および音楽の呈示方法に関わらず、2割程度の胎児が音楽に対してより動くことが明らかになった。また、妊婦がストレス軽減につながるような食生活や活動を行っている頻度が高いほど、音楽に対して胎児がより動くという傾向が明らかになった。
著者
兵藤 好美 田中 共子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、「医療事故生成プロセス防御モデル」を背景理論に、リスク認知を中心とした新たな「医療安全の心理教育」を開発することであった。2009~ 2011年度において事故生成プロセスを反映した疑似体験を工夫し、体感と具体的理解をもたらす人工空間の創作を試みた。そして、人間のヒューマンエラーに関するバイアスやヒューリスティック、環境要因の影響をシミュレーションゲーム法を適用し、医療安全教育に使用した。さらに効果の検証も行った。
著者
垂水 浩幸 林 敏浩
出版者
香川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、棋譜と局面単位のデータの組合せで構築される将棋データベースを開発して公開運用し、評価することが目的である。以下の成果を得た。(1)棋譜と局面の両方を基礎データとするデータベースとそれにアクセスするためのAPIを開発した。(2) データベースのコンテンツ収集を行い、2700万局面を超えるものになった。(3) 応用例として将棋感想戦支援システムを開発した。(4) 開発物について性能面と使いやすさの面から評価した。概ね妥当な評価が得られているが、より簡素で使いやすいものにしていくためさらに今後改善が必要である。(5) これらについて国内外で10回の発表を行った。
著者
真野 弘明
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

ランカマキリは花に類似した姿をした擬態昆虫である。これまでに我々は、ランカマキリの体色を生成する色素分子としてキサントマチンを同定した。しかし、キサントマチン自体は昆虫において広く存在する色素であり、これがどのようにして特有のピンク色を形成しているのかは不明であった。本研究の生化学的解析により、キサントマチンには実は3種類の類縁分子が存在し、その組成の違いによって異なる体色が生成されると示唆された。また、電子顕微鏡を用いた観察により、ランカマキリ体内においてはキサントマチン分子が特殊な細胞内構造を取っていることが明らかになった。これらのメカニズムによって特有の体色が生成されると考えられた。
著者
大野 秀樹 木崎 節子 櫻井 拓也 小笠原 準悦
出版者
杏林大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

マクロファージに発現する時計遺伝子のRev-erbαをマクロファージ細胞株に過剰発現させた結果、Ccl2の発現誘導が抑制され、接着能や遊走能が低下した。さらに、Rev-erbαはCcl2プロモーターの結合領域に直接作用し、転写抑制因子として機能していることを見出した。すなわち、マクロファージにおいてRev-erbαは炎症性ケモカインの1つである単球走化性因子(Ccl2)の発現調節を介して、炎症性機能を修飾することを明らかにした。
著者
橋本 啓
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

アリルイソチオシアネート(AITC)には1割程度の弱いポリフェノールオキシダーゼ(PPO)抑制活性しか認められなかったが、AITC溶液を加熱することによりPPO抑制活性が発現した。また、ナスのアントシアニン系紫色素であるナスニンのPPOによる損失を加熱処理AITCは完全に抑制し、ナス皮からのナスニンの抽出量を約2倍にした。食品加工時に生じる規格外ナス中に含まれるアントシアニンの安定的かつ効率的な回収法につながると期待された。
著者
荒瀬 尚 香山 雅子 末永 忠広 平安 恒幸
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、ミスフォールドしたMHCクラスI分子を細胞外へ輸送する分子としてMHCクラスII分子をクローニングした。そこで、他の蛋白質を解析したところ、卵白リゾチームや抗体の重鎖、さらに、リポ蛋白質の一つであるβ2GP1がMHCクラスII分子に結合することで、細胞外へ輸送され、関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群で産生される自己抗体の特異的な標的抗原になっていることが判明した。一方、ミスフォールド蛋白質輸送分子を明らかにするために、細胞表面のミスフォールド蛋白質に会合している分子の検索を行った。その結果、質量分析によって、いくつかの候補分子が同定された。
著者
岡野 寛 細川 敏弘
出版者
香川高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

グラファイトシートを用いて弱光時には化学電池として動作し光励起によりパワーアップするソーラーアシストバッテリーを開発する。空気電池正極のグラファイトシート中もしくは表面に酸化物半導体が分散した構造を有する。グラファイトシート中への酸化物半導体の分散方法としては,アルコキシドを利用した湿式法とスパッタ法による表面への形成が有効である。またスパッタ法では,可視光域にバンドギャップを有するNbOの作製に成功した。正極にアルミニウム,負極に銅を用い,正極表面に酸化チタンを形成した構造で光照射により約18%光電流が増加した。しかし,実用的な空気電池に適用したところ,増加率は1%に満たない結果となった。
著者
森下 知晃 水上 知行 田村 明弘
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ハワイ大学設置のSIMSを用いて、グラファイトの局所炭素同位体比分析の分析手法を確立した。この手法を用いて、高圧変成岩、接触変成岩、ヒスイ輝岩、グラファイトを含むかんらん岩捕獲岩の分析を行った。高圧変成岩類、接触変成岩類は、炭質物中の不純物の影響により良いデータが得られなかった。ヒスイ輝岩のデータから、ヒスイが形成される沈み込み帯初期には、マントル値と同程度の炭素同位体比を含む流体が関与していることが明らかになった。かんらん岩捕獲岩中のグラファイトからは、生物起源を示唆する軽い同位体比が得られた。マントル中でのダイヤモンドが形成との関連を示唆する。
著者
小野寺 康仁
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

これまでの研究から、糖代謝の制御はシグナル経路の制御と深く関与しており、組織構造の形成および維持に多大な影響を与えることが明らかとなった。本研究では、異なる細胞間の代謝協調が細胞-細胞間、細胞-微小環境間の相互作用を調節し、細胞の振る舞いを規定すると仮定して、そのメカニズムを明らかにするための新たな解析系の確立を試みた。第一に、異なる細胞から乳腺組織のような二層構造を得る方法の確立を試みた。第二に、特定の細胞のみに、標識したグルコース(13Cグルコースなど)を取り込ませることのできる新たなシステムを確立した。これらを用いて乳腺組織における筋上皮および管腔上皮間の代謝協調の解析を進めている。