著者
矢持 秀起 御崎 洋二 藤原 秀紀 森田 靖 大塚 晃弘 前里 光彦 中野 義明 白旗 崇
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

π電子共役系の電子機能性を引出すため、共役系の形状や大きさ、組込むヘテロ原子の種類と位置、更には共役系外の置換基を自在に設計し、実際に多様な電子状態を持つ物質を合成した。環境変化や外部刺激に対する応答を検討し、パルス光照射に超高速に応答する分子性導体の電子状態と結晶構造の変化過程を0.1ピコ秒単位で計測するなど、基礎科学の新展開を促進する成果が得られた。さらに、実用電子材料の動作原理を与える成果も得られた。
著者
上田 和夫 堀田 貴嗣 榊原 俊郎 三宅 和正 播磨 尚朝 横谷 尚睦 籐 秀樹 石田 憲二
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008-11-13

新学術領域研究「重い電子系の形成と秩序化」(平成20年度から平成24年度)の最終年度の研究成果について、公表された論文リストおよび国内学会あるいは国際学会等における発表について取りまとめを行った。これらの基礎データに加え、研究活動報告、特許出願状況などを加え、冊子体の成果報告書をまとめ印刷した。この成果報告書は当新学術領域研究の計画研究代表者、研究分担者、公募研究代表者に配布したほか、関連研究分野の有識者にも見ていただけるよう送付した。この冊子体については正式の成果報告書として6月に文科省に提出する予定である。当新学術領域研究のホームページhttp://www.heavy-electrons.jpに関しては、上記の論文リスト、学会発表等のデータを含むよう更新した。重い電子系に関する研究は今後もさらに発展していくことが期待される。それに資することが出来るように、研究期間終了後もホームページを閲覧できる状態にして研究成果の公開を継続する体制を整えた。当新学術領域研究の研究テーマと密接に関連する強相関電子系国際会議は平成25年8月5日から9日まで東京大学伊藤国際研究センターにおいて開催された。この会議の参加者は809名に上った。4つの基調報告を含む46件の招待講演、52件の口頭発表が伊藤謝恩ホールを主会場とし経済学部赤門総合研究棟の大講義室を第二会場として、パラレルセッションで講演が行われた。口頭発表のほか、639件のポスター発表が行われた。当新学術領域研究での研究成果が多数報告された。
著者
宇山 智彦 秋田 茂 山室 信一 川島 真 守川 知子 池田 嘉郎 古矢 旬 菅 英輝 粟屋 利江 秋葉 淳
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

近代ユーラシアの諸帝国を比較し、帝国権力と現地社会の非対称な相互作用、帝国間競争における小国や越境集団の役割、周縁・植民地の近代化、そして20 世紀の帝国崩壊と脱植民地化の多様な展開を論じた。現在の地域大国は半帝国・半国民国家的な性格を持ち、かつての帝国の遺産と記憶に大きな影響を受けている。情報の不完全性のもとでの権力と少数者集団の駆け引きを論じる帝国論の方法は、現在の大国・小国関係の分析にも役立つ。
著者
上垣 彰 田畑 伸一郎 丸川 知雄 亀山 康子 堀井 伸浩 佐藤 隆広
出版者
西南学院大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

ロシア・中国・インドの3つの地域大国の比較経済研究を通じて、次のことを明らかにした。第1に3国の経済改革を促した条件には共通性があること、第2にその後の改革の過程は区々であったこと、第3に現在3国が直面する課題には共通性があること。現在直面する課題とは、国内産業の生産性向上と社会的格差の縮小である。
著者
筒井 裕之 蒔田 直昌 絹川 真太郎 松井 裕 石森 直樹 畠山 鎮次
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、種々の疾病の発症、さらには老化にも関与することがあきらかにされ、疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全が注目されている。本研究では、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子およびミトコンドリア酸化ストレスの役割をあきらかにした。
著者
浅尾 直樹
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

報告者は、前年度にナノポーラス金の作成法を検討し、有機シラン化合物の酸化反応においてこの金属材料が優れた触媒として機能することを明らかにした。そこで今年度は、本申請研究の目的であるフロー合成に本金属材料触媒を適用するべく検討を行った。まずフロー合成に適する反応としてアルコールの酸素酸化反応に注目し、この反応における本金属材料の触媒活性を調べた。その結果、酸素風船による酸素雰囲気下メタノール溶媒を用いると、様々な2級アルコールが温和な条件下で酸化され、対応するケトン体が高収率で得られることを見出した。他の金の固体触媒としては、金微粒子による酸素酸化反応が既に広く研究されているが、一般に過剰量の塩基を添加する必要がある。これに対し本触媒反応は、そのような添加剤を何も加えなくても反応が進行するため、操作が極めて容易である。またこのことから、ナノポーラス金によるアルコール酸化は、金微粒子触媒の場合と異なる反応機構を経由していることがわかる。続いて本反応をフロー合成に適用した。まず内径2mm、長さ15cmのステンレス鋼製のチューブに粉末状のナノポーラス金を詰めて触媒カラムを作成した。二本のシリンジにそれぞれアルコール溶液と酸素ガスを詰めて、マイクロリアクターで混合した後、触媒カラムを通過するようにフローシステムを作成した。その結果、シリンジポンプを用いてアルコールと酸素を押し出し、触媒カラムから出てきた生成物を解析したところ、収率よく生成物が得られることを見出し、しかもフラスコを用いたバッチシステムよりも、反応時間を大幅に短縮することができた。以上の結果は、ナノポーラス金触媒を用いたアルコールの酸素酸化が、気相-液相-固相の三相系によるフロー合成に適していることを示しており、本申請研究の目的を達成することができた。
著者
千野 拓政
出版者
早稲田大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

2010年度は特別研究期間に当たり、一年間上海に在住した。その環境を利用して、資料の収集を進めるとともに、研究計画に沿って、上海、北京、台北、香港、シンガポールで、大学生を対象に、村上春樹の受容、マンガ・アニメ、ライトノベルの受容、同人活動(二次創作、コスプレなど)への参加などに関するアンケート調査を実施し、あわせて、ライトノベル作家、漫画家、同人の書き手、同人活動の企画者・参加者などにインタビューを行った。調査期間は、上海(6月~2月)、北京(11月~2月)、台北(1月~2月)、香港(1月~2月)、シンガポール(1月~2月)。それら調査の結果をまとめ、この時点までの分析の結果を発表することを目的に、3月15日、16日の二日間にわたり、早稲田大学で国際シンポジウムを開催した。千野の基調報告、各都市の調査結果報告、各領域の専門家による報告、および討論がその内容である。発表者として、作家で『萌芽』雑誌編集長の趙長天氏、作家の落落さん、復旦大学教授顧錚氏、写真家の曽翰、楊長虹氏、華東師範大学教授の雷啓立氏、上海comicup主催者の馮凝華さん、各都市の調査報告者として、姚瑶さん(復旦大学大学院)、趙楠さん(北京大学)、陳柏青君(台湾大学大学院)、黄微子(香港嶺南大学)、陳宇〓(シンガポール聯合早報)を招聘した。しかし、東日本大震災の影響などで、雷啓立、落落、趙楠、陳柏青、陳宇〓の各氏以外は来日がかなわず、一日に短縮してシンポジウムを終了した。同シンポジウムは、繰り越して2011年度に再度開催することとした。(新たな内容を加え、2012年3月23日24日に開催した。)成果の公表としては、雑誌・新聞に論考を発表したほか、学会発表とともに、中国社会科学院、復旦大学、南京大学、華東師範大学その他で、研究テーマに関わる招待講演を計12回行った。また、新聞《中国経営報》《姑芳晩報》、雑誌《品味・経典》《上海壹周/小文学》《鳳凰周刊》にインタビューが掲載された。
著者
石田 憲二 松田 祐司 佐藤 憲昭 神戸 振作 井澤 公一 古川 はづき 西田 信彦
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究班では、主に、強相関電子系超伝導体における超伝導対状態、発現機構解明を目指して研究を行った。また重い電子系における量子臨界現象も研究した。主な成果を以下に挙げる。(1)人工超格子による二次元重い電子状態の創製と、人工超格子の手法による量子臨界の制御とそこでの強結合超伝導(2)強磁性超伝導UCoGeにおける(1)強磁性と超伝導の共存、(2)自己誘導渦糸状態の発見、(3)イジング型の異方性を持つ強磁性ゆらぎにより引き起こされる超伝導(3)熱伝送率の角度回転によるUPt3の超伝導ギャップ構造の決定(4)Uru_2Si_2の「隠れた秩序」における対称性の低下(5)準結晶Au-Al-Ybに見られる量子臨界現象(6)磁気励起の解析から明らかになったUsn_3における磁気異常の起源(7)二次元構造を持つ重い電子系Ce(Ru_<1-x>Fe_x)POにおける強磁性量子臨界現象
著者
金子 耕士
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

スクッテルダイトを代表とするカゴ状化合物において現れる大振幅振動について、詳細な描像及びその物性との関連を中性子散乱により明らかにすることを目的として、研究を進めた。今年度は新たな系として、同じカゴ状構造をもつI型クラスレート化合物Ba_8Ga_<16>Sn_<30>について実験を行った。マキシマムエントロピー法を用いた解析の結果、Ba_8Ga_<16>Sn_<30>では、スクッテルダイト化合物とは対照的に、Baイオンは、オフセンターを安定位置とする巨大振幅の非調和振動を行っている事を明らかにした。温度変化から物性との関連を明らかにする事を目指し、解析に取り組んでいる。さらに、β-パイロクロア化合物についても実験に着手した。CsOs_2O_6について、国内の単結晶中性子回折実験としては最小の1mm角以下の単結晶で測定を行い、構造解析が行える100反射以上の強度データの測定に成功した。マキシマムエントロピー法を用いたβ-パイロクロアにおけるラットリング振動の可視化に向けて、解析を進めている。スクッテルダイトに加え、新たな系の結果が得られた事で、非調和大振幅振動の発現条件及び物性との関連について、より普遍的な理解が得られる事が期待される。さらなる展開に向けて、巨大振幅振動により誘起される動的な応答の探索及び、より微小単結晶での測定実現を目指し、J-PARC/MLFにおいて単結晶構造解析装置の建設を進めた。特に今年度、装置の鍵となる、低温で駆動可能なピエゾモーターを使用したゴニオメーターを製作し、実現可能である事を確認した。これまで不可能だった1mm角以下の結晶での構造解析や、逆空間での高効率な信号探索にむけて、礎となる重要な進展が得られた。
著者
岡本 仁
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

我々は、ゼブラフィッシュの背側手綱核が、更に外側と内側の亜核に分かれており、外側亜核は脚間核の背側半分に、内側亜核は脚間核の腹側半分に選択的に投射すること、左側の手綱核では外側亜核が内側亜核よりも有意に大きく、右側の手綱核ではその反対であることを発見した(Aizawa et al., Current Biology,2005 ; Devel.Cell,2007)。平成21年度には、マウスの外側手綱核が、縫線核に投射する事に基づき、ゼブラフィッシュ脳の縫線核に色素を注入し、逆行性に細胞体を染める事によって、手綱核の腹側の部分の神経細胞が染色されたことから、ゼブラフィッシュの腹側手綱核が、マウスの外側手綱核に相当する事を確認した(Amo et al., J.Neurosci.2010)。平成22年度には、腹側手綱核特異的に、神経活動の操作を行うために、手綱核特異的遺伝子のスクリーニングを行い、2つの遺伝子が、腹側手綱核特異的に発現する事を発見した。このうちのdiamine oxydase(dao)については、この遺伝子を含むBACクローンを単離し、大腸菌内での遺伝子組換えを使って、コーディング領域を、Cre recombinaseと交換した組換え体を作成し、これを用いて、トランスジェニック系統を作成した。本系統と、vglut2-loxP-dsRed-loxP-GFPを持つ別系統とをかけ合わせることによって、腹側手綱核のみで、GFPを活性化できることを明らかにした。今後、GFPの代りに破傷風毒素や、Channelrhodopsin等を、腹側特異的に発現させる事によって、腹側手綱核の神経細胞からの、神経伝達の活性を人為的に調整し、ゼブラフィッシュの行動が、どのように影響されるかを観察する予定である。
著者
権田 幸祐
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

がん転移は脈管(リンパ管、血管)を通して起こるが、リンパ行性転移は、血行性転移よりも病初期段階において進行が観測されるために、がん転移早期診断の格好の指標となる。本研究では、(1)独自担がんマウスを使ったリンパ節転移機構の解析、(2)異なるイメージングモダリティを利用した転移リンパ節検出法の開発、(3)手術で摘出したがん組織(原発巣や転移リンパ節)の高精度病理診断法の開発、以上の研究を主に行い、がんリンパ行性転移メカニズムの解明とその概念に基づく新たながん転移診断法の開発を目指した。
著者
神田 大輔 嶋田 睦 真柳 浩太 斉藤 貴士 井倉 真由美
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

大きな運動性を残した相互作用をしている複合体から原子レベルの構造情報や動的情報を得るためには,解離会合平衡を適切な方法で会合側へシフトすることが必要である.平衡をシフトする技術として,共有結合を分子間に導入する方法(テザー係留技術)とリガンド内に共有結合を導入する方法(分子内架橋係留技術)の2つを開発した.また,結晶コンタクトがない空間をタンパク質を結晶格子内に創りだし,そこにタンパク質の一部分やリガンドを意図的に配置して動的情報を得るための新しい結晶解析方法の開発を行った.ミトコンドリアプレ配列受容体Tom20-プレ配列複合体とオリゴ糖転移酵素-基質ペプチド複合体の2つの系に適用した.
著者
湯浅 将英
出版者
東京電機大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

人と擬人化エージェントとの円滑な発話交替の設計には,(1)人の観察からの発話志向態度である「話したい/聞きたい」ときの顔表情と仕草のモデル化,(2)エージェントの「話したい/聞きたい」の非言語表現の作成と主観的評価,(3)エージェントの「話したい/聞きたい」の非言語表現時の人の脳活動計測,(4)評価結果,脳計測結果からのモデルの再作成が必要である.本研究は,(2)主観的評価に加えて,(3)脳計測を用いることにより,非言語表現モデルを評価するものである.さらに(4)主観的評価と脳計測による評価を繰り返すことで,より詳細な表現モデルの構築する.22年度では,擬人化エージェントによる発話志向態度である「話したい/聞きたい」を示す顔表現を探った.複数のさまざまな「話したい/聞きたい」を示す顔表現を持つエージェントキャラクタを作成した.アンケートによる主観的評価により,複数の顔表現の特徴を考察し「発話志向態度」を示す顔の表現モデルを構築した.作成した抽象的な発話志向態度のモデルと表現は,今後,機械による人の発話志向態度の認識,およびロボットや擬人化エージェントの表現などに幅広く応用可能である.さらに発話志向態度モデルの明示性/非明示性に着目し,語用論の観点から考察を行った.考察に基づき,脳計測実験のための実験デザインを作成した.今後,擬人化エージェントによる「話したい/聞きたい」の表現について脳計測データを収集し考察する.
著者
大槻 純也
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

局在性の強い4f電子が主な物性を担う希土類化合物を近藤格子模型に基づき調べた。動的平均場理論と連続時間量子モンテカルロ法を用いた数値計算により、重い電子の形成に重要な局所相関を正しく取り込んだ計算を行った。それにより、以下の結果を得た。(1)coherent potential approximation (CPA)と呼ばれる近似を動的平均場理論に適用することにより、Ce化合物の重い電子状態におけるフェルミ面に対するLa置換効果を調べた。その結果、フェルミ面に対する置換効果が、外部磁場の大きさによって、定性的に異なることを明らかにした。通常、フェルミ面の測定は磁場下で行われるが、この結果は、置換実験によって重い電子状態を調べる際の指針となる結果である。(2)サイトあたり局在スピンが2つあるf2近藤格子模型を調べた。この模型では、局在スピンの局所的な一重項状態はf2電子配置の結晶場一重項状態を表していると考える。数値計算の結果、特定の伝導電子数において、結晶場一重項と近藤一重項が空間的に交互に配置した基底状態が実現することを見出した。この秩序状態の起源は近藤一重項と結晶場一重項を形成することによるエネルギー利得であり、多くの希土類化合物のようなRKKY相互作用が起源ではない点が新しい。この秩序状態がPrFe4P12で観測されている秩序状態を定性的に説明することを明らかにした。
著者
前島 正義
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

気孔開閉調節に関わるタンパク質PCaP1およびCO_2透過性アクアポリンPIP1に焦点を当て、生理機能の作動機構を明らかにし、高濃度CO_2下での両分子のCO_2供給システムにおける役割とそれに関わる量的・機能的調節を解明する。新規のCa結合タンパク質であるPCaP1は細胞膜に局在し、情報伝達にかかわるカルモジュリンとホスファチジルイノシトールリン酸(PtdInsPs)と結合する。PCaP1は孔辺細胞にも発現し、その遺伝子欠失株の葉では気孔の閉口ができないという表現型を観察してきた。本年度、PCaP1が孔辺細胞に発現していることを確認し、PCaP1のタンパク質化学的な特性として、CDスペクトル解析により、Ca結合による構造変化、ITC法によるCa結合のキネティクスを明らかにすることができた。なお、気孔以外での役割の一つとして、PCaP1は病理応答にも関わっていることを明らかにすることができた。さらに、PCaP1のT-DNA挿入遺伝子破壊株では、暗所での気孔閉口が不完全となること、野生株と比べて、暗所下および高濃度CO_2条件での生育が良いことを見出した。これらの結果は、生育環境が悪いときPCaP1は生育を抑制するブレーキ役を果たしている可能性を示唆している。多様なアクアポリン分子種の中でも細胞膜局在性のPIP1は複数の植物でCO_2透過性が認められており、申請者らはPIP1の量の減少がCO_2固定能の低下をもたらすことを見出した。高濃度CO_2に対するPIP1の応答を解析し、組織内CO_2供給システムの解明とモデルの提案を目指し、CO_2濃度の影響が高温環境で変化するか否かも解析の準備を進めた
著者
白谷 正治 寺嶋 和夫 白藤 立 佐々木 浩一 伊藤 昌文 杤久保 文嘉 斧 高一 後藤 元信 永津 雅章 小松 正二郎 内田 諭 太田 貴之 古閑 一憲
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本取り纏め研究では、プラズマとナノ界面の相互作用ゆらぎに関する学術的成果を統合・発展させて、より汎用性のある学術大系に結びつけることを目的としている。計画研究代表者を研究分担者として、各計画研究における研究成果を取り纏めるとともに、領域内連携により表れた3つの研究項目に共通する基本原理を統合して体系化する。基本原理の体系化に際しては、すべての研究に関する議論を一度に行うと議論が発散する可能性があるため、ゆらぎ・多相界面・バイオというテーマを設定した個別の研究会を開催し研究分担者が成果を統合した後、シンポジウム等で領域全体での成果統合を行った。平成26年度に取りまとめた、平成21-25年度に新学術領域で得られた成果の概要は以下の様に要約される。これらの成果を成果報告書およびホームページで公開した。ゆらぎに関しては、超高精度トップダウンプロセスの確立(ゆらぎの制御)について、エッチングプラズマに関する実験とシミュレーションの研究グループが連携して、エッチング表面形状揺らぎの機構を解明した。ここでは、揺らぎ抑制法について、従来の物理量を一定にする方法から、物理量に制御した揺らぎを与えて抑制する方法へのパラダイムシフトを起こす事に成功した。また、高精度ボトムアッププロセスの確立(ゆらぎの利用)では、超臨界プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により、超臨界プラズマにおける密度ゆらぎ機構を解明し、従来法では得る事ができない高次ダイアモンドイドの合成に成功した。予想以上の顕著な成果として、気液プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により気液界面プラズマにおいてナノ界面が存在することを発見した(多相界面プラズマ)。また、高いインパクトを持つ成果として、バイオ応用プラズマ関連の研究グループの連携により、大気圧プラズマ反応系の世界標準を確立することに成功した。
著者
飯高 敏晃 池田 隆司 土屋 旬 星 健夫 宮崎 剛
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

原子分子の視点に基づいたシミュレーションにより、含水鉱物の新高圧相の予測、高温高圧下の水の水素結合状態、氷高圧相のプロトン伝導の解明、水素ハイドレートの高圧相転移、水素化物の高温超伝導、多結晶ダイアモンドの破壊シミュレーションなど、いままで知られていなかった高圧下での水(水素)の振る舞いの一端を明らかにした。今後の中性子散乱実験との協業により一層の解明が進むことが期待される。
著者
浦辺 徹郎 沖野 郷子 砂村 倫成 石橋 純一郎 高井 研 鈴木 勝彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008-11-13

地下・海底下に存在する大量の水は、流域の岩石との反応により、海洋を含む地球表層環境や生命活動に大きな影響を与えると考えられてきた。本研究では、海底下の水の流れを地質学的背景から4種類に分類し(4つの大河仮説)、鉱床形成を含めた物質循環システムと微生物生態系システムが4つの大河に対応して制御されていることを、期間中に実施した33の研究航海と物理・化学・生物・地質の分野横断的手法を通じて明らかにした。
著者
笹尾 登 中野 逸夫 吉村 太彦 川口 建太郎 旭 耕一郎 酒見 泰寛 杉山 和彦 藪﨑 努 福山 武志 田中 実 志田 忠正 梶田 雅稔
出版者
岡山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、新学術領域全体「原子が切り開く極限量子の世界」の目標達成を促進するため以下の活動を行った。総括班会議を定期的に開催し(総計21回開催)各計画研究の進行状況を監督、必要に応じて評価・助言活動を行った。また理論・技術面から領域全体の方向づけを行った。総括班の監督のもとに国際会議「Fundamental Physics using Atoms」を毎年開催し (第4から第7回)、そのプロシーディングスを発刊した。異分野の共同協力を更に推し進めるため、研究者ネットワークの発展拡大を図った。全ての成果をウエッブや紙・電子媒体を活用して、広く国内外へ発信した。