著者
七邊 信重
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の調査主題は、日本のアマチュアのゲーム制作文化の歴史と現状、規模、この文化が日本のゲーム開発に果たした役割について明らかにすることであった。アマチュアのゲーム制作者約70名、アマチュア作品の販売・流通企業、アマチュア出身のゲーム会社、アマチュア作品の商業化を手がけている企業の関係者約20名への聞き取り調査や参与観察調査などから、独創的なアマチュアのゲーム制作を支援する文化・市場が日本で形成されていること、様々な資本を蓄積したエリート開発者集団が登場していることなどを明らかにした。
著者
甲村 長利
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

アルキル基の長さの違うオリゴチオフェンを有する増感色素を合成し光電変換特性を評価した結果、アルキル基の長さを調整することで色素の酸化チタンへの吸着状態を制御することができ、光電変換効率を向上させるための最適なアルキル基の長さが存在することがわかった。アルキル側鎖に酸素原子を導入したオリゴチオフェンを有する有機色素では、色素増感太陽電池の動作機構における電子移動のメカニズムを示唆する結果が得られた。また種々のドナーを用いてオリゴチオフェン電子伝達系と相性の良いドナーの探索を行った結果、電子供与効果の比較的少ないカルバゾールが最良の光電変換特性を示した。ドナーとオリゴチオフェンの組み合わせによる色素のHOMO-LUMO準位の変化が深く関与している。
著者
岡村 寛之
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成16年度の主な成果として,確率モデルによるコンピュータウィルスの挙動解析,統計的不正検知アルゴリズムの開発,チェックポイント生成アルゴリズムの開発を行った.(1)確率モデルによるコンピュータウイルスの挙動解析確率モデルによるコンピュータウイルスの挙動解析では,連続時間マルコフ連鎖を使ったウイルス増殖のモデル化を行った.特に,ウイルス増殖における確率的事象に着目して,ウイルスの増殖能力を定量的に評価する尺度の導出を行った.また,現存するウイルス感染数のデータを用いて提案した尺度を算出し,ウイルスに関する特徴分析を行った.この結果は平成16年度に出版された学術雑誌で発表された.(2)統計的不正検知アルゴリズムの開発統計的不正検知アルゴリズムの開発では,サーバの利用状況(プロファイル)を常に監視して,DoSアタックなどの異常を検知するためのモデルを構築した.異常を検知する技術として,ベイジアンネットワークを導入することで,従来の統計的な手法よりも多くのデータを矛盾なく利用することが可能となり,検知の精度が向上した.この結果を平成16年度8月に開催された国際会議で発表した.(3)チェックポイント生成アルゴリズムの開発リアルタイム制御が必要なアプリケーションに対するチェックポイントアルゴリズムを新たに提案した.提案されたアルゴリズムは動的計画法に基づいており,従来のアルゴリズムと比較してどのような環境でも安定して解を算出することができる.この結果を平成17年度8月に開催される国際ワークショップで発表する予定である.その他にも本研究に関連するものでは,ソフトウェアシステムの信頼性を向上させるための予防保全手続きの一種であるソフトウェアレジュビネーションに関する研究と,ソフトウェア開発工程で利用されるソフトウェア信頼度成長モデルに関する研究がある.これらの成果も学術雑誌や国際会議で発表を行った.
著者
近藤 倫生
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

数理モデリングの手法と食物網のネットワーク解析を組み合わせることで、生物を特徴づける適応的行動の、食物網構造やその個体群動態への影響を研究した。主な成果は以下の通りである:(1)捕食者の適応的採餌や被食者の適応的対捕食者防御によって、食物網における複雑性-安定性の間に成立する関係が質的に変化することを理論的に示した;(2)食物連鎖長とその生態系生産性への反応は適応的採餌の結果として理解が可能であることを理論的に示した;(3)自然食物網は適応的餌選択から予測されるようなネスト構造をもつ栄養モジュールの集合として理解できることを明らかにした;(4)自然生態系における捕食者と被食者の脳サイズにはいくつかの特徴的なパターンが見られることを発見した;(5)カリブ海の食物網は複数の栄養モジュールが、そこでの生物多様性を維持するような規則に従って配置されていることを発見した。
著者
橋本 朋広
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

祭りの調査研究によって臨床心理学的象徴研究を進展させたと考えられる。具体的には,各季節の祭りにおける代表的象徴を明らかにし,各象徴を使用した代表的祭りを調査した。そして,祭りにおける人間と象徴の相互作用を考察し,祭りにおける象徴的時空間の構成過程,通過儀礼におけるリアリティ変容の心理学的構造,春の火祭における火のイメージの心理学的構造,象徴的体験を分析する枠組みとしての象徴的現実の構造解析などを行った。
著者
政岡 清計
出版者
九州共立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、江戸時代における山車が、経済的に興隆した町人の蕩尽や歓楽のためだけでなく、祭礼時の商行為によって庶民の経済や生活を支えるため、集客に必要不可欠な存在であったことを示し、地域振興としての役割があったことを明らかにすることで、山車の歴史的位置付けを再考する契機となることを目指している。今年度は、以下の通り、史料収集・研究成果の発表を行った。山口祇園会の山車「御上之山」については、昨年度に引き続き、萩毛利藩の天保改革の一環として行われた御上之山の調替(造替)に関する書状、調替決定後の地方町方からの調替差戻の願書について考察した結果、1)町人だけでなく、農民らも祭礼時の商行為により収益を得て生活の一助としていたこと、調替の結果、収益に影響して生活が困窮したこと、2)調替による祭礼時の収益減少により山口街住民の生活が困窮し、その結果、空家や破損したままの家屋が増加し、町の維持が非常に困難となったこと、3)庶民は、御上之山調替を差し戻すことで1)2)の間題の解決を図ろうとしたことが判った。以上を踏まえると、江戸時代の山車の意匠を歴史的に位置づける際は、庶民の生活や都市への影響を意識しながら、祭礼時の集客効果を狙って考案された可能性を考慮する必要があるものと考えられる。史料調査については、関連史料『流弊改正控」の調査を行い、萩毛利藩が御上之山調替の財政削減効果を試算した古記録をみつけた。詳細は日本建築学会九州支部で報告した。この他、日田祇園の山鉾の実測調査と関連史料の調査、姫路播磨総社の一つ山・三つ山祭礼については、祭礼時の商行為とその収益が判る史料の調査、八代妙見祭の笠鉾にっいては、笠鉾の造替・修覆と災害、飢饉との関連を知るための史料検索・調査、江戸天下祭りの山車については、江戸期山車祭礼の代表的事例として論文で触れることを想定して史料の検索・調査を行った。
著者
飯田 直樹
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

この研究の目的は、主として近代において、大阪周辺の在地社会で相撲興行が開催される際に、どのような集団が関係し、それぞれの集団はどのような役割を果たし、それらの集団はお互いにどのような関係を取り結んでいるのか、ということを明らかにすることである。対象とする地域の範囲は、旧摂津、河内、和泉の三ヶ国とし、特にこれらの地域におけるプロの相撲渡世集団と素人の草相撲集団との関係に注目する。最終年度の今年度は、大阪周辺で開催された相撲興行に関する資料のうち、大阪城天守閣や大阪府立中之島図書館等に所蔵されている相撲番付類、中之島図書館、関西大学図書館などに所蔵されている新聞・錦絵類、大阪相撲行司木村玉之助関係文書、力士山獅子戸兵衛関係文書などの文書類を調査した。その結果、大阪相撲と大阪市中の市場社会との密接な関係、特に仲仕と呼ばれる労働者と大阪相撲との関係性、相撲社会における部屋の構成単位としての重要性、大阪天満宮(天神祭)と大阪相撲との密接な関係などを明らかにすることができた。また、江戸時代において、摂津・河内両国において大阪相撲が相撲興行権を独占していた時期があったことや、在地の草相撲集団の組織の実態についても、対象地域の一部において部分的に解明することができた。以上の研究成果にもとついて、2004年9月18日に大阪市立大学で開催された、大阪市立大学大学院文学研究科COE/重点研究共催シンポジウム「近代大阪の都市文化」において、「大阪の都市社会と大阪相撲」と題する研究報告を行った。また、広く市民に研究成果を公開するため、研究代表者が主担となり、大阪歴史博物館において特集展示「大阪相撲の歴史」を2005年3月9日から4月4日まで開催した。また、関連行事として3月12日に同館において研究代表者が、なにわ歴博講座「大阪相撲の歴史」と題する講演を行った。
著者
石井 徹子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、未熟肺動脈平滑筋細胞を用いて、1)脱分極やイノシトール3燐酸刺激による細胞内Ca濃度変化と小胞体からのCa放出を調べ、2)小胞体においてCa制御に関わっている蛋白質(リアノジン受容体、Ca-ArPase, Calsequestrin, Phospholamban)のmRNA発現、蛋白発現を調べた。実験動物:胎生31日の胎仔家兎、生後5日の新生仔家兎、生後6-12ヵ月の成獣家兎を用いた.実験標本:肺動脈単離平滑筋細胞をもちいた.各年齢群の肺動脈で径200ミクロン以下の血管よりコラゲナーゼを用い細胞を単離した.細胞内Ca分布:共焦点蛍光顕微鏡を用い、小胞体のCa分布を調べた.細胞内のCa貯蔵器官からCaを放出させる働きをもつ、カフェインやノルアドレナリンを使用して細胞内Ca貯蔵量を変化させ、細胞内Ca貯蔵量を測定した.小胞体のCaは胎仔、新生仔で、成獣に比べおおかった。カフェインで放出されるCaの量も未熟平滑筋でおおかった。分子生物学実験:肺動脈抵抗血管平滑筋における小胞体においてCa制御に関わっている蛋白質(リアノジン受容体、Ca-ArPase, Calsequestrin, Phospholamban))のmRNA発現をin situ hybhdizationにて調べた。また定量RT-PCRを施行し、PCR産物を定量したが、リアノジン受容体、Ca-ATPase, Calsequestrin, Phospholambanともに新生仔で成獣に比べおおく発現していた。このことは、新生仔ではすでに肺動脈平滑筋小胞体Ca制御機構が完成し、活発に作動していることを示唆する。
著者
近森 高明
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、1920年代東京における地下鉄の導入過程について、テクノロジーに内在化される論理と都市の多重的リアリティとの接合という観点から考察した。(1)早川徳次の構想が高速鉄道網の策定と結びつく経緯、(2)路面電車の導入過程との比較、(3)デパートとの連携と地下鉄ストアの設立、という三点の検討をつうじて、統計的都市のリアリティに準拠する一連の知と想像力が地下鉄の構想と連接し、新たな都市的現実が生み出されてゆく動態を照らしだした。
著者
丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,人工的に盛土・切土された改変地(人工改変地形)が地震動強さやそれに伴う構造物被害に与える影響を定量的に評価することを目的としている.2007年に発生した新潟県中越沖地震で被害を受けた新潟県柏崎市を対象に,空撮画像を用いた写真測量を行い地震前後の数値表層モデルを作成するなどの検討を行った.さらに,1995年兵庫県南部地震の際に多大な被害を受けた兵庫県西宮市の上水道管被害に関しても同様の検討を行い,人工改変地形と地震被害の関係性を検討した.
著者
松井 孝典
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,組織を取り巻く様々な環境リスクにおいて,従前の生活環境リスクに加えて,今後顕在化が予測される自然環境・地球環境リスクを包括的に管理する実践活動を支援することを目的とした知識モデルとナレッジベースの開発を行い,システムの実装と広く社会への公開を実行した。
著者
浅山 信一郎
出版者
国立天文台
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、マイクロマシニング導波管を用いたTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの開発を行なっている。サイドバンド分離ミクサに必要不可欠な導波管型90度ハイブリッドカプラーは櫛歯状の構造を持ち高いアスペクト比を持つ。これまでの調査で、導波管壁の垂直度を保ちつつD-RIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いたシリコン基板のマイクロマシニングで実現することは難しいことが分かった。また別の問題点として、シリコンの微細構造上に均質な金メッキを施すことも難しいことが分かった。そこで、フォトレジストで作成した構造体に金蒸着等を用いてTHz帯導波管回路を作成した実績を持つチャールマス工科大学(スェーデン)との共同研究を開始した。具体的には研究代表者が800GHz帯において設計を行った導波管型90度ハイブリッドカプラーを、チャールマス工科大学において試作を行った。試作の結果、800GHz帯において導波管型90度ハイブリッドカプラー十分な精度で制作することが可能であることを確認した。この成果を平成20年3月に開かれた応用物理学会で口頭発表を行った。今後は研究代表者が本研究の初年度に2mm帯で既に実証したサイドバンド分離導波管回路をTHz帯でマイクロマシニングにより作成を行う。そして国立天文台で開発しているAIN接合を用いたTHz帯において広帯域特性が期待できるSIS素子と組み合わせ、高感度かつ高帯域なTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの実現を行う。
著者
小野 善生
出版者
滋賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、インタビュー調査を中心とする質的調査方法でコンテキストを重視したリーダーシップ研究を実施した。調査対象としては、エーザイ株式会社アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」探索研究チームの事例、ランプ・メーカーであるフェニックス電機株式会社の再建事例、神戸洋菓子産業の阪神淡路大震災の復興事例、複合素材の研究開発を主とする株式会社I.S.Tにおいてフィールド・ワークを実施した。株式会社I.S.Tの事例は現在データの分析中であるが、それ以外の事例では成果が出ている。エーザイの事例では、リーダーシップの役割分担という新たな概念を導きだすことができた。この事例におけるリーダーシップの役割分担というのは、専門領域の異なる研究者を統率するには、リーダーが自らの影響力の範囲を自覚し、専門領域の異なる部下に対してはその分野に精通したサブ・リーダーを選び、彼等とリーダーシップを役割分担するというものである。フェニックス電機の事例では、企業再建における再建請負人のリーダーシップで重要なのは、リーダーの意向に従うだけの受動的なフォロワーではなく、リーダーと問題意識を共有し、いつでもリーダーになれるだけの能動的なフォロワーを育成することにあるという結果が得られた。フォロワーの能動性を喚起するリーダーシップとは、リーダーが有能性を示しフォロワーからの信頼を得たのちに、組織のビジョンをフォロワーとの意見のすり合わせという一見すると遠回りに見えるような粘り強い相互作用を通じて、彼らの意識変革を促すというものである。フェニックス電機は、倒産後7年目に再上場を果たし、その後当時の経営幹部に社長のポストが継承されたことから、このリーダーシップの有効性が実証されている。
著者
山崎 文夫
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

暑熱環境下では涼しい環境下に比べて、起立時に血圧の低下が起こりやすく、起立耐性は低下する。動脈圧反射機能は起立時に動脈圧を正常な範囲内に維持するために必要不可欠な機能である。圧反射の反応性を考える際、応答量に加えて、圧受容器が刺激されてから心拍変化が起こるまでの時間など応答時間も考慮する必要がある。すなわち心拍応答が短ければ、変化した血圧を短時間で正常範囲内に回復させる能力が高いと考えられるが、心拍の圧反射応答時間に暑熱負荷がどのように影響するかは明らかでない。そこで本年度は、心拍の動脈圧反射反応時間に及ぼす暑熱ストレスの影響について検討した。被験者は健康な成人9名であり、実験の内容や危険性についての説明を受けた後、同意書に署名した。水環流スーツを用いて被験者の皮膚温を調節し、正常体温時と全身加温時に圧反射機能テストを行った。圧反射機能テストにはネックチャンバーを用い、頚部に+40mmHgあるいは-60mmHgの圧を負荷することによって、頚動脈圧受容器を刺激した。各圧負荷は2-3分間の休息を挟んでそれぞれ5回行った。頚部への圧刺激から心拍反応がピークに達するまでの時間(+40mmHg、正常体温時2.5±0.3秒、加温時3.5±0.3秒;-60mmHg、正常体温時1.2±0.2秒、加温時2.2±0.3秒)は、全身加温によって有意に増加した。全身加温によって、+40mmHgの圧刺激から血圧反応がピークに達するまでの時間(正常体温時4.3±0.5秒、加温時6.7±0.6秒)は有意に増加したが、-60mmHgの刺激に対するその反応時間(正常体温時5.1±0.5秒、加温時4.5±0.6秒)は変化しなかった。これらの結果から、心拍および血管運動の頚動脈圧反射反応は、暑熱ストレスによって遅延することが示唆された。
著者
森 善一
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,車椅子生活を送っている方々が特別なインフラのない環境でも,健常者と同等の日常生活を送れるような直立移動システムを開発することが目的である.本移動システムは(1)移動台車,(2)伸縮松葉杖,(3)下肢関節駆動機,の3装置から構成される.これらの3装置のうち,本研究に先立ち申請者は伸縮松葉杖の製作を行っており,また昨年度は,旋回機能を持つ移動台車の製作,および下肢関節駆動機の設計を行ってきた.今年度は以下の研究を行った.1.下肢関節駆動機の製作,および動作確認実験を行った.2.3装置を装着し,椅子からの起立動作を行った.この動作において伸縮松葉杖と下肢関節駆動機の協調動作が必要となり,どちらの装置を主として使用するかは,杖をつく位置や動作シーケンスによりさまざまに取ることができる,昨年までは,杖を体の後方へつき,杖の伸縮駆動力に頼った動作を行ってきたが,例えば電車における長椅子等の場合は,杖を後方へつけないという問題がある.また,動作中に杖がスリップした場合には,転倒する危険をはらんでいる.そこで,今年度は,杖を体の前方へつき,腕の力を利用して,体の重心位置が常に移動台車の上に来るように変更した.実験を通して,ほぼシミュレーション通りの起立動作が実現できることを確認した.また同様の動作手法を階段昇降へも応用し,シミュレーションを通して有効性を検証した.3.これまでは,電源装置や制御装置をシステムの外においていたが,今年度は,それらをバックパックへ収納して背負い,システムの完全自立化を実現した.システムへの通信には,他のPCを用いて無線で行った.4.当初の最終実験目標として,駅から駅への電車を利用した移動を掲げていたが,今年度は,実際の駅(京王線南大沢駅)において,改札の通り抜け動作,およびエレベータへの乗り込み,乗り出し動作を実現した.
著者
三谷 篤史
出版者
札幌市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

前年度に購入したユニバーサル顕微鏡を用いて,フィーダ表面およびマイクロパーツ表面をモデル化した。顕微鏡による撮影画像を,画像解析により断面形状を離散データ化し近似する方法を適用した。ここでは,微小物体表面に存在する凸部が半球型であると仮定してモデル化した。フィーダ表面が完全なのこぎり歯であると仮定してシミュレーションを行い,実験結果と比較した。その結果,より複雑なモデルによる近似が必要であることが分かった。また,微小物体の摩擦角を計測することにより,凝着力を検証した。ここでは,仰角を20 deg,ピッチを0.01,0.02,\…0.1mmとしたフィーダ表面を用いて,湿度を変化させた場合の摩擦角を計測した。なお,湿度は40,50,60,70%とした。さらに,湿度が輸送におよぼす影響を実験により検証し,湿度60%において最も高速な輸送が実現できた。これらの結果について,一般的な工場の湿度が作業効率の観点から55?65%に設定されていることから鑑みれば,本実験結果は妥当性の高いものである。一方,フィーダ表面を顕微鏡で観察したところ,フィーダ表面形状は非対称三角波形状をしていることが分かった。すなわち,フィーダ表面は完全なのこぎり歯形状である必要はなく,非対称形状を有していれば対称平面振動による一方向輸送が可能であると考えられる。そこで,フィーダ表面の加工法として,フェムト秒ダブルパルス加工法の適用を検討した。第1パルスによる材料の蒸散と同時に,第2パルスを照射し蒸発粒子を再加熱することで,反跳力は第2パルスの入射角方向にシフトする。これらの作用を利用して非対称表面を加工した。なお,フィーダの材料はステンレスである。ここでは,得られた加工表面を原子間力顕微鏡により計測し,Duty比35%の非対称性が確認された。また,輸送実験を行うことにより,これら加工法の適用可能性を示した。
著者
池村 真弓
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脂肪肝におけるハロペリドールの血中濃度と臓器への毒性相関を解明するために、モデルラット(FL)を用いてハロペリドールの臓器内薬物蓄積性について検討を行った。その結果、治療量投与では血中および臓器内薬物濃度はFLで有意に増加するが、中毒量投与では有意差は認められなかった。その原因としてFLでの薬物タンパク結合率の低下と、薬物投与前より門脈血流量が増加し薬物投与により変動しないことから、薬物代謝能低下が示唆された。本研究成果は臨床だけでなく法医学実務における薬物関連死の死因判断においても有用な基礎的知見である。
著者
橋本 健二
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,2足歩行ロボットの足部に着目し,砂利道や砂地などの脚接地面が変形するような路面に対する適応歩行の実現を目指し,接地面積が大きく確保でき,路面との接地圧を分散可能な足部機構を開発することを目的とする.しかし,足部機構単体だけではそのような路面すべてに対応することが困難であると考えられるので,歩行を安定化させる制御の開発も必要に応じて行う.計画の前半である平成19年度では,以下の2点について研究を推進した.(1)路面形状保持機構の考案路面の凹凸にならう際に接地面積が大きく確保でき,路面との接地圧を低減させることが可能な路面形状保持機構を考案した.これはスチールボールと永久磁石からなり,路面の凹凸にスチールボールがならい,ロック時にはそこに磁場をかけ,路面形状を保持するというものである.(2)着地衝撃緩和を目指した不整路面適応制御の構築これまでに考案してきている着地軌道修正制御は,そのアルゴリズム上の問題のため,歩行時における着地衝撃が問題となり,継続的な歩行安定性に悪影響を及ぼすという問題点があった.そこで,不整路面に適応しつつ,着地時における衝撃力を緩和する歩行安定化制御のアルゴリズムを考案した.着地時におけるならい動作および着地衝撃緩和に関しては,遊脚中にモータの位置ゲインを下げることにより脚部コンプライアンスを上げ,足底6軸力センサにて測定される力の微分値の立ち上がりにより着地を検知し,運動量保存則に従い,足先速度を0にすることで衝撃緩和を図った.この手法により,従来用いていた着地軌道修正制御においておよそ1000N程度発生していた着地時における衝撃を,およそ400N程度と,自重の30%程度にまで低減させることに成功した.
著者
鳥丸 猛
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ブナ、ハウチワカエデ、コミネカエデの稚樹(胸高直径5cm未満、樹高30cm以上の幹)の毎木調査と林冠状態の変化を比較した結果、コミネカエデが最も台風撹乱の影響を受けており、続いてハウチワカエデが中程度の影響を受けていた。一方、ブナは台風撹乱の影響をあまり受けていなかった。一方、これらのカエデ属について利用可能な7座のマイクロサテライトマーカーを選抜した。
著者
權 珍嬉
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度は,1)介入後6ヶ月間の追跡調査を行い,介入効果がその後,筋力維持,さらには筋力維持による生活機能の改善,食生活の改善,SF-36,血液検査の結果値,介護保険申請状况などを検討すること,2)介入前後,追跡調査結果の分析を行って筋肉減少症を予防することを目的とした3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムの実施による健康や栄養状態の改善維持に及ぼす影響について検討することを目的とした。「運動+栄養(29名)」「運動(27名)」,「対照群(28名)」の3群に分けて3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムを実施した後,平成19年3月22・23日に介入後の調査を行った。地域に在住する虚弱女性高齢者を対象に筋肉減少症を予防することを目的とした3ヶ月間の栄養と運動の介入プログラムの実施による健康や栄養状態に及ぼす影響について分析した。分析は,介入プログラム参加率の50%以上者を対象に行った(運動+栄養群25名,栄養群22名,対象群28名)。その結果,介入により「栄養と運動」群で食品摂取多様性が有意に高くなり,SF-36では日常役割機能(身体)体の痛み,日常役割機能(精神),心の健康が有意に改善されたことが明らかになった。血液検査ではPrealbuminが高くなり,身体機能では通常歩行速度や最大歩行速度が有意に速くなった。介入後6ヶ月間追跡し,平成19年10月8 9日に追跡調査を行い76名が参加した。調査内容は,面接聞き取り調査(健康度自己評価,転倒,食生活,SF-36など),身体計測および体力評価(体重,筋肉量,筋力(握力),バランス能力(片足立ち),歩行速度(通常・最大),採血検査である。追跡調査後,本研究の「非介入群」を対象に「運動+栄養群」に実施した栄養と運動プログラムを提供した。