著者
楠 幹江 山田 俊亮
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.24-32, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
8

著者らは, カンボジア王国シェリムアップ州バイヨン中学校において, 女子生徒を対象に家庭科の授業実践を行っている. 本稿は, カンボジアの被服文化に即した巻きスカート型の制服の下衣の製作を中学家庭科の実習授業として行うことを目的としたものであり, グループ学習ならびにルーブリックを取り入れた授業の検証を行った. 制服を題材としたことは, 生徒達にとって, 学ぶ楽しみと友人との語らいを提供する大切な衣服であるという点を重視したことによる. この制服を自分で製作し, 清潔に扱い, 最後まで活用する方法を身につけることは, 家庭科が目的としている「生きる力」を育むことにつながると考える. 以上のような試みを, カンボジアにおける家庭科の授業の充実化ならびに生活の向上を目指し, 日本からカンボジアへの家政学を介した国際協力手法の試みとして本稿では報告する.
著者
上島 雅子 渡辺 澄子 川本 栄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.973-983, 1985

松阪市における高齢者の生活意識を調査した結果, 次のようなことが明らかになった.<BR>1) ほとんどの高齢者は, 生活満足度, 自由時間満足度, 経済満足度において満足しており, 家族も円満であり, 家族からも気づかってもらっている傾向にあった.また, 高齢者の側でも「ふだんの心がけ」や「日々の心縫え」にみられるように, 対人関係, とくに家族関係に気を配っていた.性別による差がみられたのは, 「ふだんの心がけ」と「大切なもの」であり, 主義主張をもつことを心がけている者は, 男性に多く, 女性は少なかった.健康が大切と意識している者は, 男性よりも女性に多くみられた.<BR>2) 高齢者個々人の生活意識を構成する要因は, (1) 満足・不満足要因, (2) 経済的不安要因, (3) 家族依存要因, (4) 自己中心的要因が主であった.<BR>3) 4生活意識要因をもとに高齢者を分類した結果, 「生活全般満足タイプ」, 「自立タイプ」, 「家族依存タイプ」が, それぞれ20%あり, これら3タイプを合わせると62%を占めている.その他「生活に不満のあるタイプ」, 「生活に不満のないタイプ」, 「仕事中心タイプ」が26%, いずれのタイプにも入らない者が12%あった.これらのタイプの違いは, 性別, 配偶者の有無職業の有無や経済状態, 地域社会生活とのかかわり方によって左右されていることが明らかになった.
著者
澤島 智明 ゴ ティ トゥ フェン
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>近年、ベトナムでは経済成長による生活水準の向上に合わせてエアコンの所有率・所有台数が大幅に増加している。本研究はベトナムの住宅居住者の冷房実態を把握し、冷房エネルギー増加を抑制するための知見を得ることを目的とする。<br><b>方法 </b>ベトナム・ハイフォン市に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温測定を行った。対象住戸4件中3件はペンシル住宅と呼ばれる住宅型式で、間口が狭く奥行きの深い3・4階建ての住宅である。他の1件は平屋建ての農家住宅が拡大する都市に取り込まれたものと思われる。インタビューは2014年8月に行い、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2015年7月に10分間隔で測定を行った。<br> <b>結果 </b>インタビュー調査時のエアコン所有は4件中2件であったが、翌年の室温測定時には3件に増えており、ペンシル住宅全邸でエアコンが使用されていた。いずれも昼寝に短時間と夜間就寝時に長時間使用されていた。ベトナムでは伝統的に家族が同室で寝る習慣があり、冷房室である2階主寝室などに家族が集まって就寝していた。そのため自然室温が高い4階や3階の個室はあまり使われておらず、見方によっては効率的な冷房が行われていた。また、農家住宅は植物による遮へい効果により日中の最高気温が低く抑えられていた。
著者
中澤 弥子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 発表者は、文化庁の派遣事業で平成26年度文化交流使として、ヨーロッパ7か国(フランス、ドイツ、ポーランド、ハンガリー、イタリア、スロバキア、イギリス)で約2か月間、日本の食文化を紹介する交流活動を行った。本研究の目的は、その活動参加者を対象としたアンケート調査結果から、ヨーロッパ7か国の日本食文化への関心について明らかにすることである。<br><b>方法</b> ヨーロッパ7か国での日本食文化についての講演会及び日本食のワークショップ等、文化交流活動の参加者を対象に、日本食文化への関心等について各母国語(イタリアの食科学大学の学生は英語)でアンケート調査を行い、その結果について検討した。<br><b>結果</b> ドイツ・ベルリンで行った太巻き祭り寿司のワークショップの参加者24名のアンケート結果では、全員が「今日の講演会及びワークショップを楽しめた」、「食した日本食(太巻き祭り寿司・味噌汁・日本茶)はおいしかった」、「日本食の作り方を、また、機会があれば習ってみたい」及び「日本の食文化または日本食について関心がある」と回答した。好きな日本食には、寿司、刺身、天ぷら、味噌汁、ラーメン、うどんなどが自由回答され、日本食の好きなところとして、健康的、食して美味しいのみならず目でも楽しめる、様々な味覚が楽しめる、油脂が少なく重くない等が自由回答された。その他6か国の調査結果でも同じ傾向の回答が得られ、日本食文化への関心の高い参加者が多かった。
著者
柴田 優子 布施谷 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.294, 2009

<B>目的</B>若い女性は、今も昔も大人の女性への憧れと、身長を高く脚をきれいに見せたい欲求や、衣服とのコーディネートからハイヒールを履いてきた。しかしながら、美しい歩容はなかなか見受けない。そこで、裸足歩行とハイヒール歩行とを実験によって比較し、その違いを明らかにする中で、美しい歩容を追求したいと考えた。<BR><B>方法</B>被験者は20歳代女性45名である。実験に用いた靴はヒール高8cmのピンヒールでポインテッドトゥであり、サイズはS,M,L,LLの4種類を用意した。被験者は各自が最も適合すると判断した靴を履き、反射マーカーを右体側の耳珠点、肩峰点、大転子点 膝蓋骨側面、踵点、外果点、甲の中央、つま先につけ、10m歩行を3回繰り返した。裸足歩行も同様に行った。これを2台のビデオカメラで撮影し、右足離床から着地し次の離床までを1歩として捉えた。1歩のスタート時から膝が最高点に達した時点と次の離床時までについて、左右前後上下の変化量として各マークのXYZ座標値の差を算出した。また、上体と腰、膝、足首の空間角度を捉えた。解析はヒューテック製Mpro3Dによった。<BR><B>結果</B>(1)裸足歩行では、上体の上下動が小さく、足部は外側に大きく蹴り出し、踵を高く上げているのに対して、ハイヒール歩行は上体の上下動が大きく、踵をあまり上げず、床面にほぼ平行に移動し、歩幅が小さく上体がやや後ろに引けていることがわかった。 (2)膝の上下の動きを経時変化で見ると、裸足歩行は個人差が見られるのに対して、ハイヒール歩行はパターン化した動きであった。(4)ハイヒールを履きなれた人とそうでない人を比較すると、履きなれない人は左右上下のブレが大きいことがわかった。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.133, 2018

<b>目的</b> 本研究は,伝統的発酵食品である豆味噌を中心とした6種類の味噌について理化学的特徴を検討した。<br><b>方法</b> 試料の味噌はイチビキ (I),野田(N),カクキュ(K),まるや(M)の豆味噌と野田の合わせ味噌(NM)および白味噌(NW)である。味噌の比重・塩分・糖度を測定した。色差計でL*・a*・b*値を,クリープメータ物性試験システムでテクスチャーを測定した。遊離アミノ酸分析は㈱イチビキに依頼した。統計処理は有意水準を5%で示した<i>Tukey</i>法で行った。<br><b>結果</b> 味噌の比重ではMが,塩分ではNWが,糖度ではMの値が有意(<i>p<0.05</i>)に高かった。色調では豆味噌の色調がNMとNWより有意に濃く,豆味噌の L*値に顕著な差はなかったが,a*値とb*値はN> M =I >K の順番で濃かった。テクスチャーの硬さ荷重・付着性・ガム性荷重は同じ傾向を示し,K >M >N >I >NM=NWの順番に高かった。しかし,凝集性はNMとNWで高かった。遊離アミノ酸含有量のうま味,甘味,苦味成分ではN・K・Mが高い値を示した。よって,豆味噌はNMとNWより濃い色調と硬いテクスチャーであり,遊離アミノ酸含有量が顕著に多かった。また,豆味噌のうち重石をした木桶熟成(K・M・N)味噌はタンク熟成(I)より比重,塩分および糖度の値が高く,色が濃く,硬く,遊離アミノ酸量が多かった。この要因として熟成方法の違いによる水分量の寄与が考えられた。
著者
徳山 孝子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<br><br><b>目的</b> 幕末から明治期における金モール刺繍の普及について着目した。この時期は西洋文化が導入され、軍服にもフランス、イギリス式が採用され、金モール刺繍が多く用いられた。例えば、金モール刺繍を施した肩章、襟章などがある。このように多くの用途があり、軍服にはなくてはならないものであった。<br>&nbsp; 本研究では、金モール刺繍を日本で製織するようになったきっかけ、製織技術の伝来、製織し始めた人物を明らかにすることを目的とした。 <br><b>方法</b> 研究を進めていくなかで、金モールの製造には中野要蔵が深く関わっていることがわかった。<br><b>結果</b> 東京・日本橋区呉服町で「中野屋」という名で洋織物商を営んでいた。最初は、慶応時代に輸入業を始めていたことがわかった。外国武官、外交官が来朝した際に、はじめて金モールが何であるかを知ったとされている。1872年の服装制定により、モールが肩章などに多用されることとなった。当初は輸入品で間に合わせていたが不便であったため、機械を購入して金モールを製造し始めたことがわかった。明治12年製造に着手して以来、各地で需要が高まり、東洋派遣米国海軍からの注文、特約店に命ぜられ、宮内省の御用達にもなった。
著者
竹田 美知 李 璟媛 上野 顕子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.317-328, 2011-05-15 (Released:2013-08-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The number of one-parent families has been growing in Japan. One-parent families occur for different reasons. Some people are unmarried and are raising a family on their own, or they are separated or widowed.Many of these people suffer from social prejudice. The purpose of this research was focused on what variables are affecting university students’ opinions of one-parent families and to find out what their image is of single, separated or widowed parents with children.There are a number of variables: society’s opinion of single-parents; opinions on people with children who remarry; opinions on gender roles; experience of taking classes on gender studies; one-parent families as reflected by the mass media; opinions on the students’ future with regard to marriage and having children and how these affected students’ opinions of single-parents and opinions on gender roles.There are four images of single parents with children. They are as follows: that children in one –parent families might be more independent; that the parents and children might be less dependent on each other; that there might be less communication between parents and children; that parents and children might be more co-dependent. In Japan, the most positive image is represented by the latter.
著者
神澤 佳子 片平 理子 千歳 万里 金坂 尚人 清水 きよみ 河村 美穂 上村 協子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

目的:神戸市のA児童館は、18歳未満の子どもが利用可能な地域住民に開かれた施設であり、放課後児童クラブと一体的に運営されている。ここでは平成21年度より毎年10~12月の3か月間、遊びの一つとして「どんぐり」を通貨とした買い物体験プログラム「どんぐりマーケット」を行っている。このプログラムを消費者教育の視点からとらえなおして特徴を抽出し、今後の内容の広がりの可能性を考察する。 <br>方法:「どんぐりマーケット」の見学と利用児童の観察、職員へのヒアリングを行い(2016年10~12月)、「子どものまち」等の体験型プログラムと内容を比較検討した。 <br>結果:このプログラムで子ども達は、地域でどんぐりを収集し、マーケットの商品を選択・購入する。そのマーケットで販売する商品を製作し、自ら値段をつけ、会社を組織し販売と通貨管理を行い、売上の一部と労働によって給料を得る。消費者・生産者・労働者の立場を体験しながら、主体的な価値選択と意思決定を行っている。これらは、バイマンシップだけでなく、組織の運営とルールを守りプログラムに参画するシチズンシップの要素も含む「消費者市民」教育の具体的な形といえる。さらに、住民参加による「地域社会との共生」、どんぐりを発芽させ植樹する自然循環体験の内容を持ち、日常に溶け込む継続的な消費者教育という特徴がある。今後、子ども達の企画への参加等を加えることで、一層の内容充実が期待される。
著者
重川 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.94, 2004

目的:有配偶女性の就労形態としてパート就労の割合が高いが、高度な技術や知識を必要とする職種に就労し高い収入を得る者も増加しつつある。自分自身の貨幣を持つことはパワーを獲得することになる。夫妻間の相対的な稼得力の変化は夫妻の関係を変化させるかもしれない。本研究では、まだ日本においては少数派である夫と同等あるいは夫以上に収入を得ている妻の属性、及びそのことが夫妻関係に及ぼす影響について検討を行う。<br> 方法:首都圏の核家族世帯対象に調査を実施した(財)家計経済研究所「核家族調査」(1999年)の妻回答と夫回答を用いた。調査前年1年間の収入により妻と夫の収入の関係を類型化(夫妻対等世帯、夫の方が収入階層が高い世帯、専業主婦世帯)し、家計の実態と意識、夫妻関係等について比較を行った。<br> 結果 :夫妻対等世帯の特徴は以下の通り:就業形態は、妻は公務員割合、管理・専門職割合、夫は相対的に公務員割合が高い。稼得役割、家事・育児役割について性別役割規範が相対的に弱い。家計管理の実態、収入帰属の意識面それぞれで個別化傾向がみられる。<br> 夫妻対等世帯の夫は比較的帰宅時間が早く、家事育児の実施頻度も相対的に多い。情緒面でも、夫妻対等世帯の妻は夫からサポートがあると感じ、夫も妻をサポートしていると思っている。妻の就業に対し、夫妻ともに肯定的な評価が多い。妻が夫とほぼ同等に稼得することは夫妻関係に緊張よりも、実態面、情緒面で協力関係をもたらしている。<br> 対等な夫妻共稼ぎが増加する中、個々人のレベルでは固定的な性別役割意識からの脱却、社会的には夫妻が協力的な関係を築ける働き方を保障する必要性が高まると考えられる。
著者
小伊藤 亜希子 岩崎 くみ子 塚田 由佳里
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.783-790, 2005

The purpose of this study is to clarify how children's daily life is affected by parent's late return home. A questionnaire survey was made on children going to six nursery schools in the central area of Osaka City that offer an overtime day care program. The parent's tendency of delay in arriving home significantly influences their children's home life. 1) This tendency delays both dinnertime and bedtime. 2) This also shortens home life. In other words, the time of communication between parents and children as well as the frequency of their physical contact are bound to decrease. 3) Children would eat snacks before their late dinnertime, the fact of which would deprive them of enough appetite at dinnertime. 4) The late bedtime would lead to lack of sleep, or to difficulty to get up in the morning and to eat breakfast.
著者
八巻 睦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.96, 2002

日本の治安悪化に対する認識の高まり、単身世帯の増加や地域社会の紐帯の弱化から、防犯や緊急時対応について、警察や消防という公的機関、あるいは従来型の相互扶助組織のみに頼らず「安全」な生活を送ることが求められる。そこで、日常生活における人々の防犯意識と実施している安全対策の現状について調査を実施した。結果、「危険や不安を感じるとき」で最も高値を示したのは「夜遅く帰宅するときの帰り道」である。また20&sim;30歳代の女性では自己の安全に対する不安が強いのに対し、40歳代の女性では子どもの安全に対する不安が強い。安全対策としては、「戸締りをしっかりする」「二重ロックにする」という鍵に関する回答が多い。次いで「防犯ベルを持つ」、「携帯電話を持つ」、「家族で連絡を取り合う」が続く。
著者
中川 泰代 山口 直彦 大澤 真由美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.37, 2004

[目的]近年の健康志向から緑黄色野菜を主原料としたデザート類が多く市場に出回っている。しかし、これらの食品に含まれるカロチノイド系色素は光に弱く、退色に伴う返品がしばしば発生、問題となっている。本実験では包装技術による光と酸素とを制御することによって、その商品寿命の延長を図る目的で行った。〈BR〉[方法]_丸1_野菜入りゼリー菓子、トマトを含有する乾燥モデル食品及びβーカロテンを吸着させたろ紙を調整し、光透過度(T%)及び酸素透過度の異なるフィルムで包装し、明暗所常温保存試験を行った。_丸2_着色度は日本電色工業(株)製 COLOR DIFFERENCE METER MODEL 1001DPで測定し、ハンター表示値で示した。また、劣化度は保存0日のa値に対する保存野菜ゼリーのa値の割合を求めa値の残存率として示した。〈BR〉[結果]_丸1_T%の異なるAl-蒸着フィルムで野菜入りゼリー菓子を包装し、明所常温保存の結果、2_から_5のT%であっても35日目にはa値の残存率は50%以下となり商品価値を失った。しかし、T%:0のAl -蒸着フィルムのそれは107日間の保存によっても50%以上の残存率を示した。_丸2_酸素バリア性の異なる3種の無印刷プラスチック(酸素透過度:2_から_3cc、8_から_10cc及び30_から_50cc/_m2_/24hr)を用い脱酸素剤封入包装されたゼリー菓子の袋内の酸素濃度は1日目には0%台となり、その保存期間中も0%台で推移し、55日間の明所常温保存によっても、a値の変化は殆ど認められなかった。_丸3_乾燥モデル食品に抗酸化物質を添加し明所常温保存の結果、その効果はトコフェロール>ビタミンC>カテキンの順であった。
著者
深石 圭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>研究の背景</b> 我が国経済の高度成長に伴う35年以降無秩序な宅地化の進展は「農住都市」構想へと向かう。昭和40年柿生農協では組合長鈴木新之助、農林中央金庫組合金融推進部の山名元を中心に農協建築研究会による住宅相談事業を発足し、これはその後のコーポラティブ事業、新百合ヶ丘開発に至る第一歩である。<br><b>研究の目的</b> 住宅相談事業で実現した住宅の内、林・山田・中原設計同人の中原暢子(以下中原という)が設計したものを分析し、昭和40年代の都市農家住宅についての傾向及び中原の考え方を読み取る。中原はこのプロジェクトの第1号農村住宅の設計者であり、柿生農協のパンフレットに印刷されており、設計数が多いことから、この住宅相談事業での典型的な農村住宅であると考える。<br><b>研究の方法</b> 中原暢子が林・山田・中原設計同人で設計図書を所員であった白井克典氏から本学に寄贈された原図等を保管しているが、そのうち見積提出先が柿生農協としているものを分析対象とした。<br><b>研究の結果</b> 1)すべての住宅について続き間が確保されている。2)子供室、老人室及び夫婦寝室を分離している。3)土間食堂、土間台所は農作業の規模、内容によって大きく変わる。4)食事室は必要に応じて上足用と下足用が並置される。5)浴室とサービスヤードの連結は密接である。
著者
守 康則 三谷 璋子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.587-590, 1979

L-アス=ルビン酸による発ガン物質ニトロソアミン生成阻害の立場より, L-アスコルビン酸と亜硝酸ナトリウムとの反応をとくに褐変反応を主体に検討し, 次の結果を得た.<BR>1) レアスコルビン酸と亜硝酸ナトリウムは比較的速かに反応し, また著しい褐変化を起こす.<BR>2) 亜硝酸ナトリウムは, 反応初期にL-アメコルビン酸により還元分解をうけ速かに減少消失する.<BR>3) レアスコルビン酸と亜硝酸ナトリウム系の褐変反応物はセファデヅクスG-25カラムクPtマトグラフィーにより2つのF-I, F-IIの紫外吸収性をもつ, DPI還元性成分に分離された, F-1は285nmにわずかな吸収極大, F-IIは270nmに明瞭な吸収極大をもつ.<BR>さらに還元性褐変反応物の生成はペーパークロマトグラフィーからも確認された.
著者
富士栄 登美子 島袋 麻美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.244, 2008

【研究内容】沖縄県の沖縄島を中心とした紅型,福島県の会津若松,田島,喜多方を中心とした会津型,三重県鈴鹿市の白子・寺家を中心とした伊勢型について,それぞれの色彩,文様,技法などの相違点を明らかにし,型染の美意識について比較検討し,技法,染色法,色彩,道具,型紙の面から考察した。【研究結果】(1)染型紙:伊勢型,会津型は,白地彫りと染地彫りのいづれかであるのに対して,紅型は,白地彫りと染地彫りの両方がひとつの染型に存在している場合が多い。(2)技法や道具:紅型には「糸掛け」が,伊勢型には「糸入れ」が残っている。「糸入れ」と「糸かけ」は異なる技法である。(3) 彫り台:紅型の型を彫るときの台は,「ルクジュウ」である。(4) 型屋と染屋(紺屋):(5) 色彩:伊勢型,会津型は、おおむね単色が多い。これに対して紅型は、顔料を使った多色染である。紅型は、藍と墨で染める藍型もあるが、[紅入色型染]を略して[紅型]と呼ぶように、[色差し][色配り][隈取り][二度刷り]など多色の色使いである。(6) 染色法:紅型は捺染法であり,伊勢型,会津型は浸染法である。(7) 文様:紅型は図案化,伊勢型は繊細,会津型は技巧的である。(8) 美意識:紅型の美意識は,伊勢型から生まれた江戸小紋や,中形にみられるような粋好みの美意識ともちがう。紅型の隈取りや白地彫り染地彫りがひとつの型紙に共存しているという特徴が幻想的で自由で明るい紅型の美意識を生み出しているといえる。(9) 教育の現場で:今後は地域教材とした授業を小・中・高等学校の教育の中に取り入れることで子供たちの伝統工芸に対する意識の向上の更なる変容が期待される。「紅型」を地域教材として取り上げ,現職教員で大学院生の島袋麻美の教育実践は,教育成果をあげている。 本研究は、科学研究費補助金(2005~2007年度、課題番号17500509)を受けていることを申し添えます。
著者
藤本 佳子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.253, 2003

目 的 前年度の発表に引き続き、本研究では、永住の場所としてのマンションにおいて、マンションにおける高齢期に向けての安全な住生活をすごすための方策を検討するために事例調査を行った。方 法 バリアフリータイプの大阪府にある建築後6年から8年経過した、5階建て8棟の団地を形成している各棟29戸から85戸の計480戸の事例である。居住者全員を対象とした。調査内容は、住民同士のふれあいの企画内容と参加および協力度、高齢者にとって望ましい住生活の内容、高齢期による社会的サポート等の周知状況である。各戸訪問配布回収し、不在住戸は郵送で回収した。配布数405件、回収数134件、回収率33%であり、調査時期は、2003年1月7日から24日である。結 果 住戸概要は、3LDKが66%、4LDKが27%、2LDKが5%で、住戸専有床面積は、80m<sup>2</sup>~100m<sup>2</sup>であり、平均95m<sup>2</sup>である。調査回答者は、区分所有者が95%で、男42%女54%である。40代が33%、30代が25%、50代が22%の順に多い。住民ふれあいのための企画参加の希望が多いのは、「祭り」、「ニューイヤーコンサート」であり、企画協力のできるのは「祭り」、「お年寄りの手伝い」と回答している。「「作品展」の参加希望が比較的多く見られたのは、昨年11月に開催されたことが影響していると考えられる。
著者
堀 光代 阿久澤 さゆり 下山田 真 吉田 一昭 長野 宏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.205, 2005

【目的】国内産・県内産小麦の生産量が年々増加している現状である。各地で生産から消費までの取り組みについて行われているが、今回は、製粉工程が異なる岐阜県内産小麦について製パン性を比較検討することを目的とした。【方法】2003年に岐阜県で生産された小麦「中国152号」と「タマイズミ(関東123号)」の2種類について製粉工程の違いから(細)と(粗)に分類した計4種類と、対照として外国産小麦1CW(カナダ産)を用いた。パンの材料配合は、小麦粉に対し、砂糖(6.8%)食塩(2.0%)酵母(1.12%)水(68.0%)とした。小麦粉は粒度分布と色差を測定し、ドウはファーモグラフによるガス発生量の測定を行った。ホームベーカリーにてパンを焼成後、質量・体積・色差等の測定とあわせてパンの品質評価と官能検査を行った。【結果】(1)小麦粉の粒度分布は(細)と(粗)では差が認められ、色差も感知できる程度の差が見られた。(2)ガス発生量は、県内産小麦粉は対照である1CWと異なった結果を示し、ガス保持力等に差が見られた。(3)パンの比容積は1CWが高く、県内産小麦粉両品種の(細)と(粗)ではいずれも(粗)ほうが低い比容積であった。色差の測定結果は、小麦粉の測定値より製パン時の色差に顕著な差が見られた。パンの品質評価では、(粗)が(細)より低い評価であった。両品種の(細)における比較は、品質評価では外観は1CWに劣る評価であったが、味・香りは1CWに近い評価であり、官能検査の結果もほぼ一致していた。