著者
石神 優紀子 山﨑 薫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 食用花の有する機能性に着目し、本研究では食用花抽出物が抗菌作用を有しているか、品種や同じ品種間でも花色により抗菌作用に違いが認められるか検討を行った. <b>方法</b> ペーパーディスク法にて、供試菌株に<i>Staphylococcus</i> <i>aureus</i> NCTC10788(以下、<i>S</i>. <i>aureus</i>)、<i>Echerichia</i> <i>coli</i> NCTC12923を用いた.供試菌株は滅菌生理食塩水でMcFarland No.0.5相当(1.5&times;10<sup>8</sup>cfu/mL、透過度74.3%)に調整し、使用した.試料20種は採取後、洗浄し、花弁のみにした後、乳鉢で磨砕し、ろ紙No.2を用いてろ過し、搾汁液を得た.搾汁液は無菌化にてフィルター(孔径5&mu;m)滅菌処理した.滅菌済みペーパーディスク(直径8mm)に、各弁搾汁液を添加・吸収させ、調製菌液を塗抹した培地中央部に置き、一晩(約18時間)35℃下で培養後、ハロー形成(阻止円)を確認した.<b>結果</b> 阻止円が認められた試料中、ベゴニア(<i>Begonia</i> <i>semperflorens</i>&ndash;<i>cultorum</i>)花弁色の赤では<i>S</i>. <i>aureus </i>NCTC10788において67%の確率で、ピンクでは両供試菌株において23%の確率で10mm以下の阻止円を確認した.白において阻止円は認められず、赤とピンクにおいて阻止円が確認された事から、ベゴニア含有アントシアニンが抗菌性に関与しているのではないかと考えている.
著者
湯浅 純子 大図 雅美 芳住 邦雄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.237, 2005

【目的】色彩による知覚への影響の大きいことは論を恃ない。しかし、その定量的評価はこれまで充分とは言い難い。本研究では、ビルの屋上に設けられた屋外広告物を対象とし、異なる色彩による視覚効果を検討することを目的としている。【方法】女子大学生85名を対象にプロジェクターを用いて評価景観を提示して集合調査法でアンケート調査を実施した。11の評価項目に対し7段階の選択肢で回答を求め、7点から1点までの評価得点を割り当てた。刺激として5色(赤、青、水色、ピンク、白黒)を用いた。主成分分析によりその結果を解析し、因子軸の回転にはバリマックス法を適用した。本研究ではボンド法を適用し、11項目に対する5色の相対評価の解析を行なった。【結果および考察】屋外広告物に対する意識を主成分分析を用いて解析した結果、好感性、鮮明性、ソフト感、個性的、軽快性という5つの主成分が抽出された。これらの累積寄与率は81.1%である。この5主成分と5色との関係を主成分得点を用いて検討した。その結果、第1主成分の好感性と第2主成分の鮮明性の2軸から5色の特性を捉えると、好感性、鮮明性共に高いのは青であり、好感性が高く鮮明性が低いのは水色であった。また、好感性が低く鮮明性が高いのは赤とピンクであり、好感性がやや低く鮮明性が低いものは白黒であった。さらに、主成分得点の分散が色彩によって異なることが見い出された。すなわち、中間色であるピンクと水色においては、好感性の評価で各被験者のバラツキが特に大きく、一方、赤と青においてはバラツキが小さかった。本研究では、色彩の効果は屋外物においても大きいことを認め、広告物における重要な選択要因であることを明らかにした。
著者
清宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.203-207, 1993

光学的平面石英板とシリコンゴム板の間にはさまれたアニオン活性剤水溶液の静摩擦係数を, 種種の活性剤濃度および負荷加重のもとで測定した. 摩擦係数は, 活性剤濃度増加につれ著しく低下し, 臨界ミセル濃度 (cmc) 付近では0.05になるが, これより高濃度ではわずかに増加している. 本測定法によって, 垂直負荷加重がある限界値を越えると活性剤の潤滑効果は突然失われることが認められた. この膜破断圧は活性剤濃度とともに増加し, cmcで最大値10<SUP>4</SUP>dyne/cm<SUP>2</SUP>を示しているが, それ以後は最大値の1/2にまで減少している.
著者
冨岡 典子 太田 暁子 志垣 瞳 福本 タミ子 山下 英代
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.6, 2005

[目的」日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学ー魚介類ー」調査の一環として、奈良県内における魚介類の利用状況について調査を行い、本報では、奈良県の伝統食にみる魚食文化と地域性を検討した。<br>[方法]調査地は奈良県北西部の平野部(奈良市4・生駒郡3・生駒市1・大和郡山1)、北東部の山間部(山辺郡6)、東南部の農山村部(磯城郡1・桜井市3・宇陀郡1)、西部の農山村部(葛城郡2・五条市5)、南部の山間部(吉野郡7)の34所帯(調査対象者20(1)、30(1)、40(13)、50(12)、60(5)、80(2)歳代・()は件数)を対象に2003年夏から冬にかけて聞き取り調査および質問紙調査を実施した。<br>[結果]奈良県の伝統食(祭り、行事、儀礼など)に利用された魚介類として、北東部の山間部はさけ、さば、たこの酢の物(酢作り)やさけのかす汁、ほたるいかの酢味噌あえ、にしんの煮物を葬式の時に、えいの煮物を正月に、さば、いわし、たい、かますの焼き物やとび魚を秋祭り、新嘗祭、神社行事、地鎮祭の供物に、かつおのたたきを祭りに、各種魚のすしやさけのきずしを春秋の彼岸に、あゆの塩焼きを祭り・祝い事に供し、山間部でも種々の魚介類が利用されていたが、これらの魚介類は隣接する三重県の魚食文化に類似のものであった。また、西部五条市や南部の吉野山間部ではさばやさけの柿の葉ずしを夏祭りや秋祭りに供し、和歌山県に隣接の十津川ではさんまずし(含なれずし)が祭りや正月に供されていた。県の大部分が山間部である奈良県の伝統食の魚介類利用の地域性をみると、海岸部を有する隣接県の魚食文化が大きく影響していることが明らかとなった。
著者
正保 正惠 田丸 尚美 平田 道憲 今川 真治
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.130, 2010

<B>【目的】</B>2008年度の福山市保健所3歳児健診時のアンケートより、育児不安の高低と育児リフレッシュとの関連等がみられた。本研究は,福山市において,このような育児ストレス・不安をもつ親たちのために、実験的に母親同士のコミュニケーションとリフレッシュ、母子分離体験とを同時に得ることができるオリジナルのプログラムを設計し、効果を検討することを目的とする。<BR><B>【方法】</B>(1)アンケート結果に基づき、プログラムを設計、実施。(2)その際、_丸1_毎回の振り返りをKJ法で分析。_丸2_全8回のうち第1回目に2009年度版と同様のアンケート調査を行い、最終回にもう一度同じ内容のものを実施し、その変化を見る。_丸3_最終回にインタビュー調査を実施し、内的な変化を聴きとる。<BR><B>【結果】</B>(1)全8回のうち、最初の2回はアンケート結果に基づく講義や自己紹介、参加者中心プログラムについての理解、続く5回は、短い講話のあと2人が各自自由にリフレッシュタイムを取り、残った3人の親で5人の子どもを見守り、最終回にアンケート等を実施。(2)KJ法の分類では、講話よりもリフレッシュに対する感想が多く、貴重な体験であったとの記述があった。(3)_丸1_育児不安値が2008年度の中央値よりも高い母親が多く参加していた。_丸2_プレ・ポストの結果の得られた母親8名のうち、比較的高かった4名の育児不安値が下がり、低かった4名が上がるという結果になった。_丸3_個別にみると母子分離体験がうまくいき母子ともに自信を持った親子と、逆に参加によるタイムプレッシャなどの負担増や分離場面で問題が顕在化した親子が出てきた。_丸4_インタビューでは、ほぼ全員から育児の大変さが語られ、プログラムには肯定的であったが個性に配慮した改良が必要である。
著者
望月 美也子 長谷川 昇 山田 徳広 東 善行
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.3, 2008 (Released:2008-11-10)

【目的】 アスタキサンチンは、カロテノイドの一種であり、エビやカニの殻、鮭の身などに含まれている赤橙色の色素である。既に、肥満マウスにおいて、アスタキサンチンの抗肥満作用が報告されているが、細胞レベルでのメカニズムの検討は行われていない。 そこで本研究では、3T3-L1脂肪細胞を用いて、細胞増殖の程度と脂質代謝に及ぼす影響を明らかにするために行われた。 【方法】 細胞増殖に及ぼす影響を調べる際には、3T3-L1細胞を培養し、アスタキサンチンを添加して、細胞がconfluenceに達するまでの経過を観察した。脂質代謝に及ぼす影響を調べる際には、細胞がconfluenceに達した時点で、インスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。充分に脂肪を取り込んだ細胞に、アスタキサンチンを添加し、取り込まれた脂肪がどのように変化していくかを観察した。 【結果・考察】 3T3-L1細胞を培養し、あらかじめアスタキサンチンを添加しておくと、前脂肪細胞の増殖を有意に減少させた。一方、充分に脂肪を取り込んだ成熟脂肪細胞に、アスタキサンチンを添加すると、コントロールに比べ蓄積脂肪が減少し、細胞質グリセロール量が増加する傾向がみられた。 以上のことから、アスタキサンチンは、脂肪細胞の増加を防ぎ、成熟脂肪細胞の蓄積脂肪を積極的に分解することが明らかとなった。
著者
長野 宏子 大森 正司 矢野 とし子 庄司 善哉 西浦 孝輝 荒井 基夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.389-393, 1992

植物由来の<I>Enterobacter cloacae</I> GAO と, 腸由来の<I>E.cloacae</I> IAM 12349, <I>E.coli</I> IAM 12119 との簡易判別法開発のための検討を行った.<BR>(1) <I>E.cloacae</I> GAO の生育はグルコース, アスパラギンを含むG培地にリンゴジュースを添加すると約2倍に, カザミノ酸を添加すると約3倍に促進された.<BR>(2) GAO の炭素源としてはリンゴジュース中に存在するブドウ糖とショ糖がIAM 12349に比べよく資化された.セロビオース, リボースがよく資化されており, 特にキシロースはIAM 12349ではごくわずかな資化性であるが, GAOではよく資化された.<BR>(3) GAO は, pH4から10までの広い範囲で生育が可能であり, <I>E.coli</I> はpH7以下, pH10では生育せず, またGAO はエスクリン分解陽性であったが, IAM12349, <I>E.coli</I> は陰性であり相違が明らかであった.<BR>以上の結果より簡易判別法になりうるものであった.
著者
深井 尚子 多邊田 美香 弦巻 和
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.270, 2005

【目的】現在、勤労者世帯では、共働き世帯数が専業主婦世帯数を超えており、この傾向は今後も続くと予測される。04年第56回大会では、子供を持つ共働き世帯は、帰宅後の短時間に家事を集中的に行っており、自動食器洗浄機などの省力化家電の活用、掃除・育児を中心に夫と家事分担するなどの実態を報告した。今回は、必要不可欠な家事であり時間を要する「買い物行動」について「レシートを用いた調査」を行い、共働き世帯の購入日時、購入先、購入品、金額など総括的な買い物実態を明らかにした。【方法】1)レシート調査 2004.4_から_7 首都圏在住核家族39世帯(20・30代:共働き19、専業主婦 12、40・50代:専業主婦8) 2)郵送留め置き式アンケート 2004.10 首都圏在住核家族206世帯(20・30代:共働き73、専業主婦 73、40・50代:専業主婦60)【結果】共働き世帯でも全買い物回数の約9割が妻であり、夫と分担している家庭は少なかった。購入日時および金額比率から、共働き主婦は土・日曜日にまとめ買いし、平日の夕方以降に買い足すという買い物行動が多いことがわかった。買い物先はスーパーが多いものの、食料品をドラッグストアやディスカウントストアで購入したり、生協や通販などの宅配サービスを利用するなど購入先の選択肢も豊富となっている。一方、専業主婦でも夕方あるいは夜間に買い物するケースがあり、買い物時間帯の幅が広がっていると考えられる。今後も流通の変化に伴い、若年共働き世帯では、生活パターンに合わせて購入先・ツール、時間帯など買い物行動が多様化していくものと予測される。
著者
竹沢 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.103, 2003

1960年代半ば以降の離婚率上昇と連動し離婚理由(家庭裁判所への調停申し立て動機)で「性格の不一致」が上昇、70年代半ばに首位となり現在に至る。「性格の不一致で離婚する人が増えた結果離婚率が上昇」という因果の解釈が果たして統計的に正しい根拠に基づいているのかどうか、数字の出所である『司法統計年報』を中心に再検討を行った。分析の結果、司法統計における調査対象特性・バイアスの存在が明らかとなり、司法統計の数値をもって離婚理由の時系列変化を論じることの問題を指摘した。 結果としては、第一に、司法統計では、全離婚の約1割を占める家庭裁判所の手を経た離婚(審判離婚、調停離婚、協議離婚の届け出で調停成立したものも含む)に限定され、約9割を占める協議離婚は調査対象外である。家庭裁判所に離婚を申し立てるのは、婚姻期間の長い中高年割合が高く、離婚率上昇を引導してきた婚姻期間が短く協議離婚をする若年層の離婚理由の変化が司法統計の数値に反映されない。 第二に、申し立て趣旨別((1)離婚、(2)円満調整・夫婦同居、(3)生活費・婚姻費用分担・協力扶助の3分類。以下数字で表記)でみると、(1)離婚を申し立て趣旨とする割合は夫妻ともに増加、(2)は夫で半減、妻で1/3に減少、(3)では妻で倍増していた。こうした申し立て趣旨の変化が申し立て動機で「性格の不一致」を選択させる割合を高めてきたと考えられる。また離婚を申し立て趣旨とする約7-8割のうち調停の結果離婚で終結するのは約半数に過ぎず申し立て動機の数値は、約半数が離婚には至らないものの夫婦関係のトラブルを抱え調停を申し立てた離婚リスクの高い人を調査対象としていることに注意を要する。
著者
上山 恵子 坂本 裕子 三好 正満
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.65, 2003

【目的】我が国では高齢化と共に、女性に加え男性においても骨粗鬆症が増加するといわれている。そこで、男性高齢者を対象に骨強度の2年間の変化と生活状況を調査し、骨強度の変化に影響を与える要因について検討した。【方法】1999年~2002年にN市内に在住する60歳~86歳の健常な男性68名を対象に、超音波測定による踵骨の骨強度(stiffness)および体脂肪率の測定と、身体状況、食生活・運動を含む日常生活習慣、社会活動状況などについて聞き取り調査を行った。解析には同性・同年齢健常者におけるstiffness の平均比較値であるAM値を用いて、初年度値を100とした時の2年後の変化値を求めた。変化値97~103の者を除く前期高齢者(60~74歳)26名、後期高齢者(75~86歳)22名の計48名で生活習慣等との関連について検討した。パラメトリック項目については得点を与え、t検定を行い比較した。【結果】初年度及び2年目の対象者全員のAM値および変化値の平均は、それぞれ94.8±11.0、96.4±18.0および101.7±7.7であった。また、前期及び後期高齢者の各変化率はそれぞれ101.4±6.9、102.1±8.8で両者に有意な差はみられなかったが、体脂肪率、牛乳量および乳・乳製品や卵の摂取頻度などの食事に関する項目で後期高齢者が、一方、速足歩行時間や趣味活動量などの活動量に関する項目で前期高齢者が有意に高かった。また、前・後期高齢者をそれぞれ上・下位群にわけ、生活習慣の差異を比較した結果、後期では両群に明確な違いが得られなかったが、前期では牛乳量および乳製品摂取頻度などの食事に関する項目や、地域活動・友人交際時間および趣味代謝量で上位群の得点が高い傾向にあり、適切な生活習慣による骨強度の維持が示唆された。
著者
中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.215, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】生活習慣病の予防において、適度な習慣的運動の重要性が注目されているが、食事摂取とのバランスや相互作用については不明な部分が多く、分子レベルでの作用機構の解明は十分ではない。我々は、赤ワインに含まれるポリフェノール、レスベラトロールが生活習慣病の薬剤標的である核内受容体PPARを活性化すること、レスベラトロールを摂取したマウスで運動持久力が改善することを見出している。本研究では、レスベラトロール摂取によるPPARαを介した運動持久力改善効果の作用機構を検討するとともに、習慣的運動の効果についての検討を行った。【方法】PPARα欠損型(KO)および対照野生型(WT)雄性マウス(129系)に、レスベラトロール(0,0.4%)添加した普通食または高脂肪食を4週間摂取させた。期間中、週5日の運動を負荷する群としない群に分けて飼育を行った。飼育開始時と4週目に、トレッドミルを用いて運動持久力を測定した。飼育終了後には肝臓と筋肉を採取し、各種遺伝子の相対的発現量の変化を解析した。【結果】普通食群のWTでは、レスベラトロール摂取により肝臓でのPPARα依存的な遺伝子の発現誘導が認められた。習慣的な運動負荷を併用したWTでは、筋肉でのPPAR応答遺伝子群や持久力に関わる遺伝子の発現誘導が見られ、運動持久力の向上効果が認められた。しかしながら、KOあるいは高脂肪食を負荷したWTでは、この変化が消失した。以上より、レスベラトロールによる運動持久力改善効果にはPPARα活性化が寄与すること、筋肉におけるPPAR応答遺伝子の発現誘導には、レスベラトロールの摂取に加えて習慣的な運動負荷が必要で、その結果が運動持久力の向上につながること、運動持久力の改善には肝臓と筋肉の相互作用が関与する可能性があることが明らかとなった。
著者
藤田 昌子 松岡 依里子 若月 温美 中山 節子 中野 葉子 冨田 道子 坪内 恭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.4, 2011

【目的】構造改革による貧困と格差の拡大、2008年の金融破綻による経済危機は、高校生の修学・進学・就職にも深刻な影響を与えている。近年、若年者の労働や生活の実態は徐々に明らかにされているが、高校生に焦点をあてた調査は少なく、彼らの自立支援のための基礎資料は十分でない。本研究では、労働(アルバイト)、生活時間、生活不安に着目し、高校生の生活と労働の実態を明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2010年7~10月である。<BR>【結果】4割の高校生がアルバイトを行い(アルバイト禁止校を除く)、その理由は「小遣い」「貯金」「家計補助」「学費」等であった。就労状況は、平日は週3~4日、4時間以上が最も多く、深夜時間帯や休日の8時間以上の就労といった労働基準法に抵触しているケースも少なくなかった。厳しい家庭の経済状況のもと、生活費や学費を稼ぐために長時間働かざるを得ない実態や高校生の雇用環境が明らかになった。こうした実態は、睡眠時間・学校以外での勉強時間に影響を及ぼし、「ストレス」「体調不良」「勉強時間がとれない」といった心身と学業面の問題を引き起こしていた。また、高校生は将来の生活に対して、進学や就職、就職後の経済生活、結婚や子育て、介護に至るまで不安を感じていた。このように貧困・格差は、学費や家計費を補うためにアルバイトを余儀なくされている高校生を生み出し、ワーク・ライフ・バランスに問題を生じさせるだけでなく、彼らの進学・就職、その後の将来に対する不安も助長していた。
著者
孫 珠煕
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.27-36, 2018 (Released:2018-02-23)
参考文献数
29

Factor analysis was used to examine the structures of “dressing behavior when wearing yukata (casual kimono) ” and “yukata preferences.” For this purpose, 309 female students were asked to answer 35 questions about their yukata dressing behavior and preference among 18 different yukata. The analysis extracted five factors for the “behavior” and seven for “preference.”  Next, a positioning map was used to visualize women's yukata two-dimensionally: “modern vs. classic” and “colorful vs. quiet color combinations.”  For a more comprehensive perspective, women were classified into five clusters based on their “preference” factor scores and the characteristics of each group's “behavior” were examined. The results indicated that women who preferred modern image yukata (64.4%) were affirmative and had high factor scores for “uplifting feeling” and “freely selectable yukata” under “behavior,” while women who preferred yukata with classic, subdued-color image (35.6%) had five low factor scores under “behavior.”
著者
岡崎 貴世
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.75, 2011

【目的】パソコンは日常生活の様々な場面で利用され、現代の情報社会において欠かせないものとなっている。仕事や趣味で1日に何時間もパソコンを使用している人も少なくない。最近では食事をしながらパソコンのキーボードやマウスを操作する人も多く見られるようになり、衛生的に問題はないかと考えられた。そこで共同使用のパソコンキーボードの細菌汚染状況と、汚れたキーボードの操作による手指の再汚染について調査した。<BR>【方法】キーボードと手指の汚染度は、細菌検査とATPふき取り検査によって測定した。細菌数は、検査面を綿棒でふき取り標準寒天平板に塗布して35℃、24時間培養して形成されたコロニー数から算出した。ATPふきとり検査はルミテスターPD‐20(キッコーマン食品株式会社)を用いた。汚染キーボードはキーボードカバーに試験者の手洗い水を塗布して作成した。一定時間キーボードを操作した後、手指のATP検査を行い、汚染度を評価した。<BR>【結果・考察】複数の学生が使用する共同使用パソコンのキーボードとマウスの細菌汚染を調査した結果、月変動は見られず季節よりもパソコンの使用頻度の影響を受けると考えられた。キーボードはカバーを装着している方が装着していないものより汚染度が高く、また汚染キーボードを操作することにより手指が再汚染されることが確認された。キーボードにはタンパク汚れや油脂汚れだけでなく生きた細菌が付着していることもあるため、パソコンを使用しながらの飲食はできるかぎり控えるべきであると考えられた。特に共同使用のパソコンは常に清潔な状態で使用するように心掛ける必要があると考えられた。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 滝山 桂子 坂下 春奈 栗原 未希
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.771-780, 2007 (Released:2010-07-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1

This study of female students, who have worn Western clothes since their childhood, attempts to answer two questions: how conscious are female students about their own ethnic costumes, and how do those who often wear ethnic costumes behave? In July and August 2006, a written survey questionnaire as well as a verbal survey of Japanese and Thai female students aged 18 to 24 years old (η=203) were conducted. The students of both countries indicated that their own ethnic costumes are difficult to move in. However, they highly valued them for being “conspicuous,” “pretty,” and “well-matched for themselves.” Japanese female students think that their ethnic costumes have a “peculiar feeling” and cause them to feel “tense when they wear them.” Such feelings are presumably caused by the difficulty of putting them on and the fact that they are mainly worn on occasions of rites of passage. Meanwhile, Thai female students have no special feeling towards their own costumes like in Japanese, though they hold them in high regard. The personal character of Japanese female students who frequently wear ethnic costumes are those who enjoy “going to the sea or mountains,” are “sensitive to fashion,” etc. They have active lifestyles. In Thailand, those who enjoy wearing their national costumes are “fond of reading,” are “leading a well-regulated life,” and are “helping their parents.” The female students of both countries are proud of their own traditional culture and wish for it to be preserved.
著者
武藤 祐子 道祖尾 伶
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2015

<b>目的</b> 近年、メディアでは&ldquo;ハーフ&rdquo;という言葉が溢れ、モデルやタレントなどのハーフが活躍している。これは、日本人の中でハーフに憧れをもつ人が存在し、その影響によるハーフ顔になるためのメイクアップ術の増大の助長となっているといえる。本研究では、化粧史の調査を基に&ldquo;ハーフ顔の魅力&ldquo;を探求し、また、ハーフメイク顔になるためのメイクアップ術の提案を行った。<br><b>方法</b> メイクアップの前提として、日本と西洋の化粧史や平面と立体構成について調査した結果から、本件では西洋人と日本人のハーフを&ldquo;ハーフ&rdquo;、その&ldquo;ハーフ&rdquo;に近づけたメイク顔を&ldquo;ハーフメイク顔&rdquo;と定義した。その後、ハーフメイク顔のオリジナルメイクアップ術を日本人モデル2人に施した。この際、日本人顔としての平面メイクと西洋人顔としての立体メイクを実施し、ハーフメイク顔との関係性を探ると共に、なぜハーフ顔を目指し、ハーフメイクをするのかについても検証・考察した。<br><b>結果</b> ハーフメイクを施した結果、立体メイク程凹凸感はないが、平面メイクよりはっきりとした顔の印象になった。このことから、ハーフメイク顔には小顔効果があり、全体の顔のパーツのバランスが良いことがわかった。本研究でハーフ顔の魅力とは、適度な立体感、小顔効果、顔のパーツがはっきりしている顔で日本人が好む可愛らしい印象であると考えられる。そのため、ハーフ顔に憧れを持つ人も多く、現在、高い需要があるということが示唆された。
著者
束原 史華 影山 志保 太田 実 諸岡 信久
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<br><br>目的 甘酒はアミノ酸などが豊富に含まれ、飲む点滴という異名を持つ日本特有の甘味飲料である。現代の日本では冬に温かくして飲まれることが多いが、江戸時代には夏バテ防止に飲む冷やし甘酒が多かった。しかし甘酒には独特の風味があり甘酒が苦手という人も多くいる。そこで甘酒が苦手な人でも飲めるように甘酒と様々な三次機能を持つ牛乳を混合し飲みやすくした飲料を検討した。この飲料は夏の暑い時期、栄養補給ができるバランスの良い栄養飲料として位置付けることをねらった。 <br><br>&nbsp;<br><br>方法 福島県の太田酢店の甘酒と酪王乳業の普通牛乳を使用し、糖度計(ASONE APAL-1)、pH測定器(HORIBA SENSOR)、K⁺測定器(HORIBA B-731)、Na⁺測定器(HORIBA B-722)、Ca⁺&sup2;測定器(HORIBA B-751)、塩分測定器(HORIBA C-121)を用いた成分検査と官能検査の結果から配合を検討した。また、配合が定まった飲料の添加物についての検討を行った。<br><br>&nbsp;<br><br>結果 甘酒と牛乳の混合比率に関する官能検査では甘酒40%、牛乳60%の比率が最も高評価であった。次にこの比率をもとに試料を水で希釈した所、甘酒20%、牛乳30%、水50%の試料が官能検査では最も高評価であった。この試料の成分分析結果は、Brix 13.8%、pH6.3、Na⁺150 mg/kg、K⁺570 mg/kg、Ca⁺&sup2;110 mg/kg、NaCl 0.02 g/mlだった。次にこの試料にNaClを添加したが、味がくどくなったためCaCl₂に変更し、試料に添加した。その結果CaCl₂添加の試料はNaCl添加の試料よりも後味がさわやかになった。CaCl₂添加試料の成分分析の結果はBrix 11.1%、pH5.5、Na⁺210 mg/kg、K⁺750 mg/kg、Ca⁺&sup2;350 mg/kg、NaClとして0.02 mg/100mlであった。
著者
難波 めぐみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.40, 2006

目的 奈良時代から平安時代、和歌や物語など多くの文学を通し様々な色彩表現等を見ることが出来る。今までは、自然の景物を通しての「見立て」の技法や直接的に現れる色についての言及がなされてきたように考えられる。しかし、古典文学、取り分け『勅撰和歌集』といった和歌の性質上、表面的な露出だけで色表現をしていたとは考え辛い。ここでは、文学を中心に作者の心象表現だけではなく、当時の植物、染料を中心に色表現についての考察を行う。従来先学者がいわれている色の捉え方が、当時の人々が考えていた色とは違った一面もあったのではないか。そこで、文学を忠実に捉え、当時の人々の色を明らかにすることを目的とする。〈BR〉方法 文献研究を中心とする。参考文献、資料は、『万葉集』、『古今和歌集』、『後撰和歌集』、『拾遺和歌集』、『後拾遺和歌集』、『金葉和歌集』、『詞花和歌集』、『千載和歌集』、『新古今和歌集』(新編国歌大観、新日本古典文学大系に拠る)〈BR〉結果 『万葉集』中、梅を詠んだ歌は120首と多く読まれていた。それは、梅が中国原産ということもあり、当時の人々にとって舶来の憧れがあったのであろうが、その印象的な白が圧倒的に多く次に、紅梅を詠むんでいる物であった。平安初期、花と言えば梅であり、香りから花の色を歌に読むといった心象表現が多くされていた。しかし、『古今和歌集』の時になると、桜を歌った詠が34首と多くなる。また、時代が下るに従って、白、赤という単純な色だけでなく、「うすきこきのべのみどりのわかくさにあとまでみゆるゆきのむらぎえ」『新古今集』「もみぢばのいろをやどしてはてはまたさそひていづるやまがはのみづ」のように様々な植物、また自然の中からの表層に現れない色彩表現が見られ『万葉集』から『新古今和歌集』の時代までに、当時の人々の植物、染料、自然に対する変化が見られた事によることが考察できる。本研究を通し、当時の植物、自然から見る色や隠された色を明らかにした。
著者
石川 亜沙美 角田 由美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.293, 2009

<B>目的</B> デザイン性を重視した婦人靴が多く流通している。ヒールの高い靴やミュールなど様々なデザインの靴を履いて街を歩く女性の中には、膝が曲がったまま歩行をしたり、前傾姿勢になっている姿が多くみられる。靴のデザインが歩行動作にどのような影響を及ぼすか、各種のデザインの靴を用いて歩行分析実験を行い、検討した結果を報告する。<BR><B>方法</B> 試験靴は、ヒールの形状が同じでヒール高5cmと9cmのパンプス、ヒールの高さが同じでヒールの太さが細いタイプと太いタイプのパンプスを用いた。さらに、ヒール高5cmのミュールと、ストラップ付きのサンダルを比較した。被験者は20歳前後の健康な成人女子9名とし、ニッタ社製のゲイトスキャンを用いて歩行速度・歩幅を計測した。また、各種試験靴で平地歩行する際の状態を、1/120(秒)の高速度設定にしたビデオカメラで側面から撮影した後、上半身の傾斜角度と膝の屈曲角度を、デジモ社製のPTV二次元移動計測ソフトを用いて解析した。さらに、普段履きなれている靴および実験に用いた靴の歩行中の姿勢と着用感について、5段階評価による官能評価を行った。<BR><B>結果</B> (1)ヒールの高さによる違いでは、ヒールの高い靴は不安定になりやすいため、歩幅は狭く、両足接地時間が長く、ゆっくりと歩行していた。さらに、前傾姿勢になり、膝を曲げて歩行していることが明らかになった。(2)ヒールの太さによる違いでは、細いヒールは接地面積が小さく、不安定なため、歩幅が狭く、ゆっくりと前傾姿勢で歩行することが明らかになった。(3)ミュールは、踵が靴から離れやすいデザインのため、慎重に歩行することで視線が下がり、前傾姿勢になる傾向が認められた。
著者
永田 麻里子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.245, 2006

【目的】実業之日本社から明治39年に創刊され28年の歴史をもつ『婦人世界』と、明治41年に創刊され48年の歴史をもつ『少女の友』は、かねてから読者の一貫化を目的に編集された姉妹誌として位置付けられている。『婦人世界』は家庭婦人向けの実用記事と大衆読物でその後の婦人雑誌の原型を築き、『少女の友』は"抒情"と呼ばれる小説や絵画によって女学生を中心とする1つの少女文化を築いた。本研究では、両誌における服飾表現について比較・検討する。<BR>【方法】発行期間を共にする昭和初期までを中心に、表紙絵に描かれた人物の服飾における流行と洋装の受容形態を考察する。<BR>【結果】大正末期は、両誌において和装から洋装への転換期であった。『少女の友』は明治期より運動に関わる場面や用具と共にわずかながら洋装を描いており、『婦人世界』に比べて積極的に洋装を取り入れる傾向が見られた。又、頭頂に幅広リボンや着物にエプロン、ワンピースや耳隠し、断髪に帽子など、各誌が読者層に見合った流行を取り入れていく過程より、社会の一員としての意識が見てとれた。時に『婦人世界』は割烹着姿や花嫁姿を描いており、家庭内を活動の場とした上で外部の情報を取捨選択している様子が推察された。