著者
高橋 和雄 菅野 優子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.114, 2005

<b>[目的]</b> インターネットの検索サイトをクリックし、[布]と1文字入力するだけで布地の種類・繊維・加工名などを調べることができるサイトがあれば便利である。本研究では、布をデジカメで撮影したものをExcelで表にし、Webサイトへの展開を試みた。<br><b>[方法] </b><u>1) 布検索システムの調査</u> 文化学園の布を実物で検索するシステムでは、複合検索により実物のサンプル地を直接見て触ることができる。しかし、そこまで出向かなくてはならなく、また、Webサイト上で概要は表示されるがアクセスできない欠点がある。<br> 一方、Webサイト上で同様な検索をすると主にインターネットショッピングにつながり、ここで繊維や加工名などを調べることはできるが、布の詳細までは調べられない。たとえば、検索サイトのYahoo! Japan、infoseekやmsnで検索した場合、思わず目を引く布が表示されるが、雑貨などと一緒に掲載されている。しかし、布の質感についての記載は少なく、また、布の特性がほとんど示されていない。<br> <u>2) 布情報のWebサイトへの展開</u> 桐生市にある(株)小林当織物で提供された約50枚をデジカメで撮影し、Excelでデータベース化した。ついで、Yahoo! Japan内のジオシティーズを利用し、Webサイトを作成した。<br><b>[結果と考察]</b> 得られた布画像のデータファイル(not shown)を元に、http://geocities.yahoo.co.jp/を使用してhtmlファイル(not shown)を作成した。得られたWebサイトでは、布地名称・繊維・織り・染色などを1つのサイト内から調べることができるようにできた。今後は、topページをはじめ使いやすく、布情報を増やすなどの改良を予定している。また、被服材料学全般についてもWebサイトで学べるシステム構築を考えている。<br>
著者
上野 勝代 張 潤欣
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.81, 2003

<b>目的</b> 2001年10月、「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)が施行されて以来、保護命令の申し立て件数は増加し、シェルター(緊急一時保護施設)における一時保護件数も増加している。ところが、わが国においては、シェルターはその数は公・民ともに不足し、同時に公的シェルターの空間基準は売春防止法に基づくものであるため質的にも多くの問題を抱えている。シェルターはDV被害女性の安全を確保し、心の傷を癒し、自立のための出発点ともなる場であるから、その空間的環境が与える影響は大きい。そこで、本研究では、DV被害者のためのシェルターとして先進しているアメリカ・マサチューセッツ州における事例を取り上げ、空間的要件とその特徴を検討することによって、今後のわが国におけるDV被害者のためのシェルター計画に生かしていくことを目的としている。<b>方法</b> 調査法は訪問ヒアリングならびに観察調査。調査対象は、アメリカ、マサチューセッツ州の5施設である。調査時期は2002年8月~9月である。<b>結果</b> (1)シェルターはソフト・ハードともに安全面での配慮がされている。(2)個人のプライバシーには配慮されており、日本の公的シェルターの多くのところでみられるような相部屋はよほどでない限りはみられない。(3)子どもへのケアが整っている。
著者
横山 友貴 名倉 秀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.283, 2009

【目的】行事食は,毎年同じ時期に同じように繰り返される行事に準備され,稲作・農作物などの収穫と深く関わる料理,供物が多い.近年は核家族世帯が6割を占め,先祖を祭る行事(彼岸・盆)は希薄化する傾向がある.彼岸行事の実施率は,1979年から約30年間で80%から25%と減少し,都市部と地方の地域差もあるといわれている.そこで,会津地方の彼岸の行事を3世代家族の家庭から聞き書き調査し,その行事食の実態を把握することを目的とした.【方法】調査地は福島県会津地方の喜多方市(旧耶麻郡熱塩加納村),調査時期は2008年秋彼岸,翌年春彼岸の各1週間とした.調査家庭は,農業(兼業)を営み,3世代6人家族である.主に80代女性(1948年に嫁ぐ)に聞き書き,行事食の写真撮影も行った.【結果】彼岸の行事は仏壇へ仏膳を供え,家族が共食し,墓参りを行っていた.彼岸期間の仏膳は,朝・夕の2回を原則とし,中日(秋分の日)では朝・昼・夕の3回,お帰り(彼岸明け)は夕の時刻を早め朝・昼の2回であった.仏膳は精進料理を中心とし,おはぎ・団子が供えられていた.団子は,中日とお帰りの日のみ供えられ,異なる大きさであった.彼岸期間の家族の食事は,普段と同様に3回喫食され,食事内容では,日常食と同様で精進料理ではなかった.このように家族の食卓と仏膳は異なっていたが,1950年頃は家族の料理内容と仏膳が同じであったことが聞き書き調査によって分かった.団子・おはぎは喫食されていた.お帰りの日は墓参りをし,菓子を供えていた.同様に春彼岸についても検討を行った.
著者
武井 玲子 芦澤 昌子 伊藤 陽子 蒲池 香津代 斎藤 祥子 田岡 洋子 橘 喬子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.47, 2008

<B>【目的】</B>公共トイレに対する意識と行動実態に関するアンケート調査結果及び全国各地の公共トイレ写真を分析・評価し、一般用公共トイレに対するユニバーサルデザイン(UD)要件を抽出し、今後の検討に資する。<BR><B>【方法】</B>アンケート調査時期・手法は第3報と同様である。クラスター分析、主成分分析等による解析結果や公共トイレに対する要望(自由記述)及び全国各地165箇所の公共トイレを視認性、使用性の視点から撮影した写真とともに分析、評価を行った。<BR><B>【結果】</B>従来4Kと言われていた公共トイレは、快適性、衛生・安全面等全体的にレベルアップされてきていることが今回の調査で示唆された。但し、UD視点の評価からみると、公園と新しい多目的ビル等公共トイレの設置場所や設置時期(新旧)の違いによるUDレベルには大きな差が認められた。(1)トイレ表示やピクトグラムは、形、色、サイズなど種々様々であったが、視認性、可読性、誘目性等の視点から改善の余地があるトイレも認められた。(2)「トイレに入るまで」~「トイレ内」の環境・設備についてみると、階段や段差の存在、荷物置場・フック不足、設備の使用方法のわかりにくさ、等の問題点や課題が抽出された。(3)トイレ個室様式は、衛生的、慣れ等の理由で「洋式」53.6%、「和式」18.1%、「どちらともいえない」28.3%の割合で選択されていたが、入口ドアへの様式表示の要望が多く認められた。(4)トイレの使用目的は排泄以外に「手洗い」59.8%、「化粧」25.0%、「着替え・着装チェック」22.0%、その他歯磨きや乳幼児の世話等多様であり、排泄だけを目的とした空間から脱却し、化粧ブース、休憩ブースなどを併設することが示唆された。(5)UD視点においてレベルの高い多機能・多目的トイレに、一般用公共トイレのレベルがより近づくことが今後の課題と考える。
著者
栗山 恵都子 田中 辰明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.250, 2005

<b>目的:</b>本研究は、素材や表面性状が異なる内装材の汚れ付着の特性について検討を行うことを目的とした。まず、コルクシート、たたみ(イグサ)、カーペット、布クロス(凹凸あり)(平滑)、紙クロス(凹凸あり)(平滑)、塩ビクロス(凹凸あり)(平滑)、じゅらく、珪藻土の11種の壁床材に対し、居室内部の湿度の変化による吸湿性の違いを調べた。次いで、空気中に浮遊する粉塵等の汚れが内装材へ付着することを想定して、タバコ煙による汚れの付着実験を行った。これは、内装材の素材や表面の性状の違い、また素材が持つ吸湿性の違いにみられる汚れ付着の特徴を確認することが目的である。<br><b>方法:</b>内装材の吸湿性能比較の実験は、低湿度内に長時間置いた試験片を高湿度に移し、その際の質量変化から吸湿性の違いを計測した。汚れ付着実験は、ビーカー内に試験片を置き、一定条件に従ってタバコの副流煙によって気体曝露させ、汚れの付着の仕方、付着量は顕微鏡による観察を行うと同時に、表面付着汚れ簡易評価法によって比較した。本評価法は、視覚的な色差の濃淡と量をヒストグラムで示し、色差の変化によって汚れ付着や汚れの除去の評価を容易に行うことができるものである。<br><b>結果:</b>本実験で使用した内装材がもつ吸湿性は、一般的に言われているとおり、布素材、紙素材、たたみ(イグサ)が高く、塩ビ素材は低い結果であった。本内装材を使用した気体曝露汚れの付着は、素材別にみると珪藻土、たたみ(イグサ)は他の素材と比較して汚れが多く付着し、続いて、紙素材、布素材の内装材は曝露汚れが付着しやすい傾向がみられ、素材が持つ吸湿性能との関係があることが示唆された。また、表面性状の細粗の違いによる特徴的な差は見られなかった。
著者
柴田 優子 布施谷 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.591-598, 2013 (Released:2014-10-02)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Considerations specific to the elderly for wearing pants, related problems, and features desired by wearers were elucidated through a questionnaire survey. Responses were obtained from 1184 men and 2422 women aged 60 and over. The main findings were as follows.   Among elderly women, few wore skirts, and pants were indispensable as everyday clothing items and as fashionable clothing items that could be worn irrespective of the season. Pants with an elastic waistband that sits at the waist, as is the common style of women’s stretch pants, were not regarded as being fashionable. However, this style of pants was more commonly worn by elderly women. The length tended to be shorter for older wearers. The number of layers and length of underwear worn under the pants increased with the age of the wearer. Desired features at the time of purchase were the stretchiness of the fabric, crotch depth and circumference at the hips and waist.   Among elderly men, most, including those aged 75 and over, wore pants with a front zipper, and a very high percentage of subjects wore a belt. Regarding features sought at the time of purchase, “nothing in particular” was the most common response. Most subjects also indicated experiencing “no inconveniences” when wearing pants.
著者
片山 佳子 若尾 弥美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<br><br><b>目的</b> マキベリー(<i>Aristoteliachilensis</i>)は、チリのパタゴニアと呼ばれる寒冷地帯が原産地であり、ポルトノキ科の植物でブルーベリーによく似ている。果実は、直径約6mmの球形でつやのある黒紫色、収穫時期は1~3月である。マキベリーが最も注目されているのは、ポリフェノールと抗酸化力で、その他にもビタミンC、鉄、カリウムなどの含有量も高いと言われている。そこで本研究では、ビタミンC、鉄分およびポリフェノールの定量を行うとともに抗酸化活性について測定することを目的とした。<br><br><b>方法</b> ビタミンCの測定は、インドフェノール・キシレン法により、鉄分の測定は、1,10-フェナントロリン法により行った。ポリフェノール含有量測定は、Folin-Ciocalteu法を用いて測定し、没食子酸相当量として算出した。抗酸化活性測定は、ラジカル消去能をDPPH法により行い、またDPPHラジカル消去活性はTrolox相当量として算出した。<br><br><b>結果</b> ビタミンCそして鉄分量はブルーベリーより高く、ポリフェノール量はアサイーやアセロラよりも高い結果となった。抗酸化活性は、アサイーやココアパウダーと比較すると高い抗酸化活性を示した。また、ポリフェノール量と抗酸化活性がともに高い値を示したことからマキベリーの抗酸化活性の主体はポリフェノールであることが考えられた。このことから、マキベリーはビタミンCと鉄分はブルーベリーより高く、ポリフェノールを多く含有し、高い抗酸化活性が期待できる食品であることが明らかとなった。
著者
御船 美智子 竹沢 純子 李 秀真
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.95, 2004

本研究は、お茶の水女子大学21世紀COE「ジェンダー研究のフロンティア」が2003年度から5年次にわたり実施予定の「家族・仕事・家計に関する国際比較研究-韓国パネル調査-」の初年度データから、家計と家計管理に関する実態と意識のジェンダー差を明らかにすると同時に日本のデータ(家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」等)との比較を行う。なお、日本のデータは女性のみであるのに対し、韓国では男女双方に調査している点が特徴である。結果の概要としては、第一に、夫婦資産総額に占める自分名義資産の割合は夫「9割以上」(45.4%)、妻「なし」(46.1%)であり、韓国では妻の半数が資産を持っていないことが明らかとなった。第二に、収入の所有意識については、両国ともに「夫婦共通のもの」と思う割合が一番高いが、「夫の収入を自分のもの」だと思う妻の比率は、韓国よりも日本のほうが高い傾向がみられた。第三に、「家庭生活への貢献分」は、両国の女性はほぼ同じくらい(5割強)であったが、韓国の男女比較の結果では、男性が女性より自分の貢献分を多いと思う傾向が見られた。第四に、家計管理タイプをみると、専業主婦世帯においては、韓国では男女ともに「手当型(夫が収入の一部のみを妻に渡す)」が2割程度であったのに対し、日本では1割程度であり、韓国のほうが夫によるコントロールが強力であることがうかがわれた。共働き世帯の場合、韓国では「夫の収入も妻の収入もいったん共通の財布にいれ、そこから小遣いを配分する」という一体タイプが男女ともに60%以上であるのに対し、日本では約25%であり、両国で大幅な違いを見せている。
著者
青山 敏明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.375-380, 2010-06-15 (Released:2013-02-27)
参考文献数
4
著者
山下 エリ子 重久 麻衣 本岡 聖子 安達 町子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.76, 2003

<b>[目的]</b> だしは料理の味の基本となるものであり、わが国では昔から昆布、かつお節、煮干しなどを使ってだしをとり、そのだしで料理のおいしさを引き出してきた。だしをとるということは少々手間のかかることであり最近では、便利な旨味調味料、風味調味料の流通や、女性の社会進出も伴って、家庭でだしをとることが少なくなっているように思われる。そこで、長崎県の主婦を対象に、現在、料理によってどのようなだしのとり方をしているのかを調べ、現代の食文化の推移の一端を考察した。<b>[調査方法]</b> 長崎県の主婦783名に自記式質問紙調査法によりアンケートに答えてもらった。(1)味噌汁、吸い物、煮物、麺類、雑煮、スープのだしのとり方と、各料理に使用する具体的な天然だし素材について(2)旨味調味料・風味調味料の使用理由について(3)天然だし素材の使用理由について質問し、結果を年代別、仕事の有無別、地域別に比較した。<b>[結果]</b> 料理によって天然のだしの使用率は異なり、味噌汁や吸い物のように、だしが主役となる料理では、煮物や麺類よりも高い比率で天然のだしが使用されており、行事食の雑煮ではさらに使用率が高く、抽出に時間のかかるス-プではあまり天然のだしが使用されていない事がわかった。年代別だしのとり方を比較したところ、年代が高いほど天然のだしを多く使用しており、若い年代ほど旨味調味料や風味調味料を多く使用していることが明らかになった。地域別にだしのとり方を比較すると、市街地で天然のだしの使用率が低く、旨味調味料や風味調味料の使用率が高いことがわかった。また仕事の有無とだしのとり方に関連性は見られなかった。
著者
島村 綾 徳田 愛華 小関 陽子 小泉 昌子 峯木 眞知子 佐藤 吉朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

(目的)コーヒーの焙煎法の違いには、直火型、半熱風型、熱風型の焙煎機があり、この風味の違いは明らかではない。そこで、直火焙煎、熱風焙煎による短時間加熱、長時間加熱で調製したコーヒー液を用い、そのにおいを時系列評価によるTDS法を用いて検討した。<br>(方法)同じコーヒー豆による焙煎方法の異なるコーヒー液を株式会社ドトールに依頼した。試料の濃度はbrix&times;1.5を用い、温度による違いを避けるために室温で用いた。メディア・アイ製J-SEMS TI・TDSシステムを用い、パネルは本学女子学生10-11名で、試料15mLを用い、60秒間測定した。においの感覚属性は5属性を用いた。採点法による嗜好型官能評価も行った。コーヒーのにおいは、GC-MSを用いて計測した。<br>(結果) 直火焙煎試料のにおいでは、短時間加熱試料は飲む前よりアーモンド・ナッツの香りを有意に感じ、その後酸っぱい香り、焦げた匂い、カラメル、甘い香りの順に感じた。長時間試料では、始めに甘い香りを有意に感じ、その後にアーモンド・ナッツの香り、焦げた匂いを感じている。熱風長時間加熱試料では、始めに酸っぱい香りが有意に感じられ、後味に焦げたにおいを感じている。どの焙煎においても、酸っぱいにおいは有意に感じられていた。GC-MS分析の結果、熱風焙煎・短時間加熱試料は熱風焙煎・長時間加熱試料に比べチョコレート様の香りである2-メチルフランが多く検出された。<br>
著者
瀬下 卓弥 武川 直樹 湯浅 将英 笠松 千夏 立山 和美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 60回大会(2008年)
巻号頁・発行日
pp.233, 2008 (Released:2008-11-10)

目的近年,個食の増加が人の様々な面に影響する問題として指摘されている.解決策として共食を推奨するが,その根拠を検証する必要がある.人の食事行動を映像分析し,共食の効果を検証することを目的とする.方法会話分析,行動分析の手法を援用し,共食中の人の行動を撮影して映像分析する.分析材料として,二人が横並びになってラーメンを食べながら会話する設定を用いる.食事中のコミュニケーションを,視線の方向(だれが何を見ているか),食行動の状態(スタンバイ:手が食器から離れている/レディー:手に箸や容器をもっている,麺をつかんでいる/ゴー:口に入れた,咀嚼中)によって分類し分析する.分析は,食状態,発話を時間にそって記述し,定量的な分析をするとともに,人の食べたい,話したいなどの気持ちを読み取る.結果2名3組の共食シーンを収録し,約3分間の行動を書き起こし,発話,食行動,視線量の頻度などを測定した.その結果,実験協力者Aはスタンバイ状態の表出が90秒以上に対し,Bが10秒ほど,Aはレディー状態からゴー状態へ遷移するとき相手へ視線を送る回数が4回に対し,Bは1回以下であった.また,Aの発言量は73秒に対し,Bは26秒であった.これらの数値からこの3分間のコミュニケーションにおいて,Aは会話に対する意欲がBよりも高く,Bは食べる行動の意欲が高いといえる.このような分析は,食行動におけるルールや個性,癖など,人の食事中のコミュニケーションの仕組みを明らかにし,味の評価だけでなく,コミュニケーション満足度の評価指標の確立にも寄与すると考える.今後,分析対象データを増やし,視線配分量や食行動配分量などの行動と共食の満足度との関係を明らかにする.
著者
木村 友子 佐々木 弘子 菅原 龍幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.933-943, 2004

新食感の商蒻(a)と従来の商蒻(b)を用い, 加熱法に超音波照射有無の煮物を調製し, その煮物の物性や食味特性に及ぼす調味液や加熱処理の影響を検討した.<BR>(1) 商蒻の中心温度が75℃で1分間以上に達し安全と性状の両面からみて, 煮物の加熱時間は20分間必要であった.<BR>(2) 新蒟蒻の煮物は従来の商蒻煮物に比べ, 物理的特性は軟らかいが, 蒟蒻特有の弾力としなやかさをもち, 調味液の浸透も優れ, 官能評価でも好評を得たので新蒟蒻製品としての利用が期待できた.<BR>(3) 調味液が蒟蒻煮物に与える影響は2%食塩水と鰹調味液は物理的測定値が硬化し, 10%蔗糖液は変化なく, 酢酸緩衝液は著しく軟化した.<BR>(4) 超音波照射加熱は非照射加熱に比べ, 煮物の物理的性状の改良や調味液の浸透促進に有効であった.
著者
小林 酉子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.96, 2005

<目的> 英国ルネサンス期の演劇で、俳優はどのような姿で舞台に登場していたのか、その復元、視覚化を目的とする。発掘後、当時のままに再建されたロンドンのグローブ座からも明らかなように、劇場は、劇が演じられる舞台の上のみに屋根がかかり、一般観客席は屋根がない青天井であった。それは、俳優着用の高価な衣裳を雨から守るためであったとも言われているが、実際の衣裳の素材、デザインはどのようなものであったかを検証する。<方法> 1600年前後、ロンドンでは二大劇団が覇を競っていたが、その一方の海軍大臣一座の劇場主、フィリップ・ヘンズロウと、女婿にして名優でもあったエドワード・アレンは、劇団所有の衣装類をリストにして書き残した。『ヘンズロウの日記』として知られる劇場運営に関する財務簿の中に、これらのリストも含まれている。衣裳リストは主役級用と道化役用に大別され、その一点一点について、色やデザイン、生地の材質が細かに記されている。このリストを基に、主役級用衣裳を色別、素材別、デザイン別に分類した。<結果> 上記の分析によると、主役級用に用いられた生地はベルベットが最も多く、全体の約40_%_を占め、それに次ぐ素材がサテン、金糸入り、銀糸入り、絹(特定されず)で、各々約10_%_を占める。その他、刺繍、ビューグル(黒の筒型ビーズ)、スパングルの装飾が施された上衣、ズボンの例も見られ、高価、高級な素材が用いられていたことが分かる。色は赤、黒が各々30_%_で最も多く、他に青、紫の使用例が目立つ。ここで、道化役には使用されない色が紫であること、道化役に多い黄色、オレンジ色は主役級には用いられていないことも判明した。
著者
森田 すみ 弓達 崎子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.34-38, 1962

1. ナフタリン、樟脳、パラ系の昇華はこの順に多くなり、パラ系はナフタリンの約10倍、樟脳の約4倍昇華する。<BR>2. 各系列の防虫剤は商品名が違っても、昇華量には大差ない。なお各系列の防虫剤の効果には、一般にいわれるほど大きな差は認められなかった。しいて言えばパラ系防虫剤の効果が大きい。<BR>3. パラ系防虫剤を粉末にして密閉状態の木箱で使うと27mg/<I>l</I>で9月~10月(22.9℃~28.2℃)ではヒメマルカツオブシムシの食害を防ぐことができる。10月末以降は18mg/<I>l</I>でも食害を受けない。但し後者はヒメカツオブシムシの食害を防ぐことができない。<BR>4. 普通の整理タンスの抽き出し(39.2<I>l</I>)1コに、パラ系A防虫剤を錠剤で使うときは約7.42g必要で、袋入りで使うときは錠剤の10倍近く必要と考えられる。袋から出した錠剤を密閉しておくと夏季で約70日保つから、長くしまっておくものは途中で1~2回補充を要する。<BR>5. 一般の家庭では冬の衣類はタンス類、洋服箱、行李罐、茶箱にしまい、前三者に納めるものが多数である。<BR>6. タンス類には1抽き出しに防虫剤4錠前後入れるものが多数で、防虫剤の種類としてはナフタリンと樟脳の併用が多い。
著者
安田 みどり 久壽米木 綾子 斎木 まど香 児島 百合子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<br><br>【目的】キクイモ(学名:<i>Helianthus tuberosus</i>)は、他のイモ類と異なり、デンプンをほとんど含まず、水溶性の多糖類であるイヌリンを多量に含有している。イヌリンは、難消化性でカロリーが低く、腸内細菌叢の改善、血糖値の上昇抑制等の機能性が明らかにされている。しかし、イヌリンは多糖類であるために分析が難しく、報告例も少ない。そこで、本研究では、佐賀県内で栽培されたキクイモに含まれるイヌリンの含有量を調べることを目的として、イヌリンの分析を試みた。<br><br>【方法】試料として、佐賀県で栽培されたキクイモ(10、12月採取)を凍結乾燥したものを用いた。イヌリンは、フルクタン測定キット(日本バイオコン株式会社)を用いて測定した。すなわち、フルクタン以外の糖質を酵素にて単糖に分解して糖アルコールとして除去し、残ったフルクタンをフルクタナーゼにて分解し、フルクトース量として測定した。<br><br>【結果】キクイモ中のイヌリンは、35~50 g/100g乾燥物(8~17 g/100g生)で、実と皮にあまり違いはみられなかった。赤色と白色の品種の違いについても有意差はみられなかった。しかし、同じ場所で10月と12月のキクイモと比較すると12月に採取した方が少なかった。土の中で貯蔵中にイヌリンから単糖や少糖へ分解が起こっていることも考えられることから、それらの分析結果についても合わせて報告する。
著者
倉元 綾子 正保 正惠 山下 いづみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

【目的】 2011年の東日本大震災と福島原発事故を契機に,日本社会においては家族やコミュニティに対する関心が高まっている。一方,女性に対する暴力,子ども虐待,無縁死など,多様で複雑な個人・家族・コミュニティをめぐる問題が山積している。本報告では,日本における家政学を基礎とする家族生活支援の仕組みづくりへの示唆を得るために,台湾・新北市の家庭教育センターにおける家族生活教育教材『幸福家庭』を分析する。<br>【方法】 2009年9月,台湾・新北市家庭教育センター等を訪問し,実地調査を行い,関連する資料などを収集,分析をおこなった。<br>【結果】 (1)台湾においては,家族生活教育の「幸福家庭123」のもとに,「1.親が毎日,2.20分間,3.子どもと一緒に3つの活動 ①読書,②共同活動,③スポーツ・遊び」の活動をすることが提唱されている。(2)『幸福家庭123 親子ハンドブック』は趣旨,意義,子どもの学習の特徴,幼稚園段階における方法,小学校低学年における方法,小学校中学年における方法,小学校高学年における方法,留意点から成っている。(3)『幸福家庭Easy Go』は,結婚前教育編,結婚生活経営編,親としての教育編,医療保健編,家庭資源編,家庭法律編から成っている。(4)「幸福家庭123」を通じて,親密な家族関係・親子関係を育成することが重視されている。また,読書活動は,学習型家庭を建設する基礎と考えられている。