著者
伊藤 セツ 姉歯 暁
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.725-730, 1995

1993年に, フィレンツェで開催された第49回国際統計学会において, ジェンダー統計に関するセッションが設けられた.そこでは, 家計・消費統計の分野でのジェンダー統計あるいは, ジェンダー明示的統計の作成とその重要性と可能性が議論された.<BR>本論文は, まずはじめに, ジェンダー統計あるいはジェンダー明示的統計とは何かを, 国際統計学会の文献をもとに考察した.<BR>次に, 家計・消費面でのジェンダー明示的統計の日本における現状を日本の総務庁統計局の「1989年全国消費実態調査」を用いて検討した.<BR>その結果, 収入に関しては, 不十分ながらジェンダー統計は得られるが, 消費に関しては単身男女の場合しか得られないことが明らかになった.<BR>最後に, ジェンダー明示的家計・消費統計作成のための, 総務庁に提言すべき最も容易で明白な改善点を示した.
著者
藤平 眞紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.250, 2009

【目的】1961年にわが国初のニュータウンとして開発が始まった千里ニュータウンでは、1962年より入居が始まった。近年、居住者の高齢化が急速に進み、戸建て住宅の空き家化が進行してきている。本報では、ニュータウン周辺の集合住宅居住者を対象として、ニュータウン内の戸建て住宅への住み替えの可能性を探った。【方法】千里ニュータウン周辺の阪急宝塚線豊中駅、石橋駅から徒歩15分圏内の3LDK程度の家族向け集合住宅の居住者を対象として、住み替えに対する意識や考えについてアンケート調査を行った。有効回答数は79であった。【結果】回答者の平均年齢は50歳であり、住宅の平均延床面積は80m<SUP>2</SUP>であり、間取りは3LDKが多い。所有形態は分譲が75%、賃貸が20%であり、居住年数は平均7年であった。現在の住まいについて、通勤や通学、買い物などの利便性や手頃な広さや落ち着いた環境を評価している。住み替えへの関心は高くなく、近い将来住み替えを考えている世帯は3割程度であり、乳幼児や小学生の子どものいる世帯であった。住み替え先として現在と同じ生活圏で、床面積がやや広い分譲戸建て住宅への希望が高い。千里ニュータウンは巨大な、古い昔の住宅街と捉えられていて、あまり良いイメージを持たれていない。定期借家制度による戸建て住宅の期限付き賃借について利用希望は低く、子育て期の世帯でのみその可能性がみられた。しかし、ニュータウン内の戸建て住宅へというよりも庭付き戸建て住宅への住み替えという意識が強いことがわかった。ニュータウンへの魅力が低下している現在、若い世帯がニュータウン内の戸建て住宅へ住み替えるためには、子育て支援の充実や家賃面での検討が求められる。
著者
奥山 純子 青木 恵美 中山 徹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.275, 2008

【目的】多くの高齢者は介護が必要になっても、住み慣れた地域で暮らし続けることを望んでいる。そのためには、高齢者が居住する地域に、地域生活を可能とする介護サービス等の居住環境整備が必要である。しかし介護保険制度では、民間事業者の自由参入によりサービスの整備が進められてきたため、すべての地域に必要なサービスが整備されているとは限らない。住民の望むサービスを地域に整備するためには、行政の計画を民間主導で実現させるのではなく、地域住民の参加のもと整備を進める必要がある。しかし、これまでにそのような事例は数少ない。そこで本研究では、高齢者の地域生活を支える高齢者福祉施設を"住民参加"により計画・開設した事例に着目し、施設の開設過程や開設後の運営状況を把握することで、"住民参加"による高齢者福祉施設の"開設後の利点"や"開設過程での課題"について明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】"住民参加"により計画・開設された高齢者福祉施設の代表者に聞き取り調査を実施した。調査対象は、介護保険給付の対象とされるサービスである7事業者と、地域の高齢者の介護予防・生活支援を目的として設置されたサービスである6事業者、調査時期は2007年2月から10月である。<BR>【結果】"住民参加"による施設開設の利点は、空白地に施設を設置できること、地域住民が施設計画に関わることで施設に対する意識が向上すること、介護保険の対象外である高齢者が利用できる施設を設置できること、介護保険以外にも多様なサービスを導入し利用者の要望に対応できること等が挙げられた。一方、施設開設の過程における問題点は、資金調達、用地・物件の確保、行政との協議の段階で多くみられた。
著者
孫 珠煕 中嶋 史央里
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<br><br><b>目的</b> 温泉浴衣はTPOでみると、温泉宿で着る館内着であり、集団で着る制服でもある。晴れの場で着る浴衣に関する研究は多数あるが、温泉浴衣に関する研究は殆ど見当たらない。2020年は東京オリンピックが開かれ、温泉浴衣は若者や外国人に気軽に和文化体験できる機会となるのではないか。本研究では、好みの温泉浴衣の類型化にみる装い行動を明らかにする。<br><br><b>方法 </b>温泉宿で貸し出しサービスをしている温泉浴衣30種類を対象に、好きな浴衣を複数回答で選んでもらった。次に「好きな浴衣」の因子分析を行い、その因子得点を基にCluster分析を行った。「装い行動」測定尺度(38項目、6件法)は因子分析を行い、各Clusterにみる装い行動を可視化した。対象者は温泉宿利用客515名・若者375名の合計890名である。<br><br><b>結果 </b>女子好みの女性・男性浴衣、男子好みの男性・女性浴衣をポジショニングマップにより「現代的なー伝統的な」「はなやかな配色ー渋い配色」で可視化した。また、「好みの浴衣」は7因子、「浴衣の行動」は5因子が得られた。女子の「好きな浴衣」を基に5クラスターに類型化した。現代的なイメージを好む女子群(64.4%)は装い行動の「高揚感」「選べる浴衣」に因子得点が高く、肯定的であった。一方、伝統的で渋いイメージの浴衣を好む女子群(35.6%)は因子得点が低く、否定的な傾向が示唆された。(JSPS KAKENHI JP15K00749)
著者
西村 公雄 宮本 有香 樋笠 隆彦
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.605-615, 2004

75℃ で真空調理加熱した鶏ささ身は, 100℃で加熱したものより有意に収縮が弱くかつ, やわらかく仕上がった.両試料のヒドロキシプロリン量に, 有意な差はなく, 走査電子顕微鏡観察においても微細構造間に顕著な差は観られなかった.ミオシンを両温度で加熱後その凝集状態を透過電子顕微鏡で観察したが, 状態に差は認められなかった.しかしながら, 接触しているタンパク質同士を結合する試薬 1-ethyl-3-carbodiimide を用いて得られたミオシン凝集体の電気泳動パターンは, 明らかに 100℃ 加熱した方が75℃加熱したミオシンより重合化が進んでいることを示していた. このことは, 100℃ 加熱で形成されたミオシン凝集体がよりコンパクトな構造を持っていることを示している.
著者
大石 美佳 山下 美紀 正保 正惠 竹田 美知
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 教育期から労働期への移行段階における若年女性の自立と家族資本との関連を明らかにすることを目的として、女子大学生を対象に質問紙調査を実施した。本報告では、女子大学生のキャリアデザインの実態を把握し、家族資本との関連を検討する。 <br><b>方法</b> 2012年11月~12月、女子大学の大学生を対象に「大学生の生活環境と将来設計についての調査」を実施した。配布数1209票、有効回答数は1097票である(回収率90.7%)。家族資本を経済的サポート(家計のゆとり)と情緒的サポート(家族からの理解)の二側面から、キャリアデザインを自立度、理想のライフコース、将来設計、就職先条件からとらえ、関連を検討した。<br><b>結果</b> 女子大学生の家族資本は経済的サポート、情緒的サポートともに高く、経済的サポートと情緒的サポートには高い相関がみられた。女子大学生の自立度は低く、約8割が経済的に自立していない、約6割が精神的に自立していないと自己評価した。理想のライフコースは「結婚出産で中断、再就職」、理想の夫婦の役割分担は「夫婦で仕事も家事育児も」がもっとも多かった。将来に向けて就職活動に25.8%、結婚活動(婚活)に8.4%、資格・技能の習得に51.3%が力をいれていると答えた。就職先として重視する条件は「福利厚生」「能力個性発揮」「給料」(上位3つ)であった。家族資本とキャリアデザインとの関連については、経済的サポート、情緒的サポートともに、理想のライフコース、将来設計、就職先条件とのあいだに関連がみられた。
著者
村上 陽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.177, 2018-07-28

<b>【目的】</b> 豆類は,米と並ぶ五穀の一つである。我が国においては,豆の種類や用途に応じた伝統的な調理操作があり,郷土料理や和菓子など多岐にわたって利用されている。豆類は,大豆,落花生,雑豆類の3つに大別されるが,大豆以外の豆類は摂取量が低く,年々減少しているのが現状である。また,近年では、食の洋風化に伴う和食の喫食頻度の減少,および、中食・外食の発展による家庭での調理機会の減少が報告されている。そのため,家庭における調理技術は衰退の一途を辿っており,食文化継承において危惧すべき状況にあると考えられる。そこで,本研究では大学生を対象として豆類の認知度と食嗜好性について調査を行った。加えて,小豆あんに着目し,嗜好性を検討した。<br><b>【方法】</b> 大学生における豆類の認知度や学習経験,小豆あんの嗜好性を把握するためにアンケート調査を行った。対象は静岡大学教育学部学生309人とした。学校における学習状況については,小中高等学校の家庭科の教科書分析を行った。<br><b>【結果】</b> 20種類の豆類の認知度を検討した結果,小豆や大豆やいんげんなどの6種類の豆類は,名前の認知度や実物を見た経験,および,喫食経験が非常に高かった。一方,調理経験についてはいずれの豆類も著しく低く,喫食経験に比べて有意に低かった。小豆あんの嗜好性は高く,特にこしあんは粒あんよりも嗜好性が高かった。また,和菓子の種類によって,好まれるあんの種類に相違が見られた。
著者
峯木 真知子 棚橋 伸子 渡邊 康一
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.74, 2003

<b>「目的」</b>生クリームと卵黄を用いた「なめらか」・「とろける」プリンが高級化嗜好に伴い、好まれている。市販品6種のテクスチャーおよび組織構造の一部については、既に報告した<sup>1,2)</sup>。そこで、生クリームを用いたプリンを調製し、プリンにおける組織観察および物性測定を行い、生クリームの影響を検討する。<b>「方法」</b>プリンは、鶏卵および割卵して取り出した卵黄と、牛乳(全農協、成分無調整牛乳)・動物生クリーム(スジャータ純乳40)・植物生クリーム(スジャータホイップ、脂肪分45%)、上白糖で調製した。卵・卵黄1、乳・クリーム3、上白糖は0.6(全体の15%)の割合で混合し、オーブンで150℃、30分加熱した。組織試料は、室温に冷却後、プリン中央部から7?角を採取し、10%ホルマリン・カルシウム固定を行った。アラビアゴム・シュークロース液に置換後、コンパウンド液に入れ、ドライアイス・アセトンで凍結し、クリオスタット切片(10μ)にした。タンパク質・脂肪二重染色を行い、水溶性封入剤で封入後鏡検した。同時にパラフィン切片によるPAS染色も行った。破断試験測定は、1日冷蔵庫保存後、レオナーRE3305((株)山電)でプランジャーP-22型を用い、ロードセル2kgの条件で行った。赤外線水分計によるプリンの水分測定も行った。<b>「結果」</b>牛乳,動物および植物クリームによるプリンでは、オイルレッドOに赤く染まった脂肪滴の大小、分散状態に明瞭な違いがあった。植物クリームの脂肪滴は動物クリームよりもやや大きく,全卵を用いたプリンの基質には分散しにくい傾向にあった。クリームで調製したプリンの破断応力は、牛乳を用いたものより軟らかく、植物クリームより動物クリーム使用プリンが軟らかかった。卵黄を用いたプリンは全卵よりいずれも硬かった。
著者
木村 光雄 中嶋 哲生 清水 慶昭
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.1009-1014, 1996

木材パルプを有機溶剤に溶解し, 溶剤紡糸して作られたテンセルは木綿や再生繊維であるレーヨン類とは異なる物理化学的性質を有している.この研究では直接染料に対する染色性を調べ, 木綿やレーヨン類のそれと比較検討した.<BR>40℃, 50℃および60℃における3種のセルロース繊維に対するCongoRed (GR) の初期吸着速度は次の順に大であった : ビスコースレーヨン>テンセル (未処理) >木綿.各繊維中におけるCRの拡散係数の大きい順は40℃で, テンセル>ビスコースレーヨン>木綿で, 50℃ではテンセル>ビスコースレーヨン>木綿, 60℃ではビスコースレーヨン>木綿>テンセルであった.<BR>テンセル (酵素処理) に対するCRの吸着等温線はFreundlich型であり, 70~90℃において特定遊離染料濃度における平衡吸着量はいずれもテンセル>キュプラ>木綿の川頁に大であった.
著者
加藤 彩 井上 容子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269, 2006

【目的】今日の視環境計画は視覚の日変化や季節変化を考慮していない。特に、視認能力は一日を通じて一定であると仮定して取り扱っている。しかし、より良い視環境を提供するためには、視認能力の日変化への配慮が求められる。本研究では、視認性の日変化を視環境計画へ取り入れることの可否を検討するために、高齢者と若齢者の視認能力の日変化を比較検討し、その特徴ならびに作業負荷との関係を把握する。【方法】被験者は終日指定された生活パターン(視作業負荷の場合と負荷無の場合)で過ごし、生理量4項目、視認能力5項目、主観的疲労感の合計10項目の測定を行う。測定時間は前日の晩と当日の朝・昼・夕・晩とし、被験者の普段の生活パターン(起床・就寝・食事の時間等)を大きく変えないことに留意している。被験者は高齢者6名、若齢者5名である。【結果】視作業負荷の場合は、年齢層に依らず夕〜晩に最低能力を示す割合が高い。負荷無の場合は高齢者では昼以降、若齢者では朝に最低能力を示す割合が高い。また高齢者では、負荷有の場合の方が負荷無の場合よりも、生理量の変化や作業を伴う視認能力の低下が大きい。若齢者では、作業を伴う視認能力は負荷有の場合の方が低下が大きく、判断を伴う視認能力は負荷無の場合の方が低下が大きい。また年齢層や視作業負荷の有無に依らず、主観的疲労感と生理量や視認能力との相関は見られない。生理量への影響や視認能力の低下をもたらす疲労は、被験者が自覚する疲労とは必ずしも同一ではないと考えられる。特に高齢者は、若齢者よりも主観的疲労感への影響が小さい。しかし、若齢者よりも生理量や視認能力への影響が大きい場合もあることから、日変化への配慮が必要であると考えられる。
著者
井上 智章 築地原 里樹 ガルシア リカルデス グスタボ アルフォンソ 丁 明 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.245, 2018-07-28

目的 移動ロボットを用いた生活の見える化、生活時間の獲得を目指す。生活中の行動の中で、会話やテレビ視聴、スマホ、新聞、雑誌を見るなど、見ている対象を推定することでわかる行動の判別を、ロボットやコンピュータ技術を利用してどれくらい認識できるかを検討する。<br><br>方法 画像の解像度の関係から、正確な視線方向をロボットのカメラから推定することは難しいので、顔向きと視線の向きが一致すると仮定した。深層学習ベースの物体認識YOLOを用いた人・物体認識や、OpenFaceを用いた顔向き推定に基づき、見ている対象を推定する。推定精度が向上するように、ロボットの移動戦略を実装する<br><br>結果 正面を向いた人が見た物体の推定精度が最も高く、8割以上推定に成功した。ただし、向きが正面から大きく離れると精度が悪化することが確認された。そこで、できるだけ顔の正面になるようにロボットを移動させることによって、様々な場合で8割以上の推定を維持することに成功した。
著者
上野 茂昭 菊地 愛未 島田 玲子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.508-512, 2016 (Released:2016-09-17)
参考文献数
10

Cottage cheese like milk aggregated products can be made at home from milk and acidic compounds such as vinegar and lemon juice. However, the recipe used with acidulants (vinegar and beverages) with different pH values and material contents remained unclear. We investigated in this study the volume of an acidulant with a pH value of 4.6 for making cottage cheese like milk aggregated products. The volume of an acidulant with lower pH value required for aggregation was smaller than that for a higher pH acidulant, excepting Chinkou Kouzu vinegar, blueberry black vinegar and pomegranate black vinegar. These three acidulants contained salt and other components which would have affected the aggregation process. The color difference value between the acidulant and cottage cheese like milk aggregated products made from blueberry black vinegar, Balsamic vinegar or Chinkou Kouzu was small, while that made from cereal vinegar, rice vinegar or white wine vinegar was larger.
著者
千田 眞喜子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.127, 2018-07-28

<b>目的</b> 生活習慣病は健康長寿の最大の阻害要因となる。これは個人が日常生活の中での適度な運動、バランスの取れた食生活、禁煙を実践することによって予防することができる。本研究では、生活習慣病予防における減塩に着目し、若いときから減塩習慣を身に付けるために、大学生を対象として、塩分摂取状況の現状把握・分析をした。<br><b>方法</b> 土橋作成の「塩分チェックシート」を参考に、塩分摂取状況をアンケート調査(<i>n</i>=39、留め置き法)した。質問事項に対して、0~3点に対応してあてはまるものに〇をつけ、合計点で4つのグループに分類し集計した。また、合計点や質問事項相互の関係を調べるため、主成分分析と相関係数マトリクス分析を行った。<br><b>結果</b> 塩分多めの学生は、約4割であった。主成分分析の結果、第一主成分の正の方向は「塩分摂取が少ない」、第二主成分の正の方向は「手軽な食事」、負の方向は「保存食」と解釈された。相関係数マトリクス分析によると、合計点と高い正の相関関係がみられたのは、「ちくわ、かまぼこなどの練り製品を食べる頻度」(<i>r</i>=0.702)と「ハム、ソーセージを食べる頻度」(<i>r</i>=0.602)であった。練り製品、ハム、ソーセージなどの加工食品に塩分が多いことを知らない学生がいた。
著者
ロジナ ナターリャ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 62回大会(2010年)
巻号頁・発行日
pp.163, 2010 (Released:2010-10-15)

未婚者の意識調査結果によると、およそ9割が「いずれ結婚するつもり」だと答えている。結婚願望があるにもかかわらず、結婚できないでいる人が少なくない。自分の家庭を持つことができない人が多数いるということである。 本研究では結婚については 人間の親密圏、ゲマインシャフト的な存在、その必要不可欠だと考え、人が家族を持つべきだという価値前提に立つ。 生まれ育った家族は非選択性の特性があり、自分が築く家庭の際は選択を伴う。親密になる相手を選ぶ余地が生まれる。 配偶者選択の枠組みで未婚者の結婚活動に焦点を当てる。結婚活動の時代における未婚男性の実態を聞きとり調査を通して考察する。 結婚願望を有し、実際に結婚活動を行っている男性の行動や意識を明らかにする。未婚男性の結婚願望(年齢やタイムプレッシャーなど)、本人をとりまく環境について(職場や地域、家族や友人関係など)や婚活を始めた動機ときっかけ、婚活の手ごたえや過程における課題、婚活者の共通点と特徴を探る。生まれ育った家族は非選択性の特性があり、自分が築く家庭の際は選択を伴う。親密になる相手を選ぶ余地が生まれる。交際経験の無いもしくは少ない人が外部で結婚活動しても、魅力の格差(モテ層と非モテ層が確立)が働いているため、成果がみられないままで終わる可能性が高いと考えられる。婚活者の未婚男性の実情と課題を見ていくこととする。
著者
束原 史華 影山 志保 太田 実 諸岡 信久
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.92, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 甘酒はアミノ酸などが豊富に含まれ、飲む点滴という異名を持つ日本特有の甘味飲料である。現代の日本では冬に温かくして飲まれることが多いが、江戸時代には夏バテ防止に飲む冷やし甘酒が多かった。しかし甘酒には独特の風味があり甘酒が苦手という人も多くいる。そこで甘酒が苦手な人でも飲めるように甘酒と様々な三次機能を持つ牛乳を混合し飲みやすくした飲料を検討した。この飲料は夏の暑い時期、栄養補給ができるバランスの良い栄養飲料として位置付けることをねらった。  方法 福島県の太田酢店の甘酒と酪王乳業の普通牛乳を使用し、糖度計(ASONE APAL-1)、pH測定器(HORIBA SENSOR)、K⁺測定器(HORIBA B-731)、Na⁺測定器(HORIBA B-722)、Ca⁺²測定器(HORIBA B-751)、塩分測定器(HORIBA C-121)を用いた成分検査と官能検査の結果から配合を検討した。また、配合が定まった飲料の添加物についての検討を行った。 結果 甘酒と牛乳の混合比率に関する官能検査では甘酒40%、牛乳60%の比率が最も高評価であった。次にこの比率をもとに試料を水で希釈した所、甘酒20%、牛乳30%、水50%の試料が官能検査では最も高評価であった。この試料の成分分析結果は、Brix 13.8%、pH6.3、Na⁺150 mg/kg、K⁺570 mg/kg、Ca⁺²110 mg/kg、NaCl 0.02 g/mlだった。次にこの試料にNaClを添加したが、味がくどくなったためCaCl₂に変更し、試料に添加した。その結果CaCl₂添加の試料はNaCl添加の試料よりも後味がさわやかになった。CaCl₂添加試料の成分分析の結果はBrix 11.1%、pH5.5、Na⁺210 mg/kg、K⁺750 mg/kg、Ca⁺²350 mg/kg、NaClとして0.02 mg/100mlであった。
著者
知野 愛
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

目的 福島県では東日本大震災後の原発事故の影響があり、人口減や世帯の分離が進み家族の形に変化が見られる。そこで、未婚の学生達の結婚・出産・子育てに関する考え方を調査し、今後の子育て支援を考えるための一助とすることを目的とする。&nbsp;<br>方法 調査票(内閣府平成26年度調査を基に作成)によるアンケート調査を実施。調査対象は郡山女子大短大幼児教育学科2年生、回答数101名(有効回答率99.0%)。調査内容は、結婚観、出産、育児に関する意識調査、震災後の家族の変化について。調査結果を集計分析し、同内閣府調査結果の全国20代未婚女性の数値(全国)と比較した。 <br>結果 &nbsp;1,結婚生活で不安に思うことは、「配偶者の親族との付き合い」(75.2%)、「配偶者の家事分担」(32.7%)、2,結婚と仕事との調和のために必要なことは、「夫が家事・育児に協力する」(92.1%)、3,ライフコースは、「結婚あるいは出産の機会に一旦退職し子育て後に再び仕事に復帰」(71.3%)が最も多く、4,結婚生活での夫婦間の家計は、「どちらも同じ位」(34.7%)が比較的多い。5,子育てで不安に思うことは、「仕事をしながら子育てすることが難しそう」(86.3%)、「経済的にやっていけるか」(73.5%)であった。配偶者に自分の仕事を理解してほしいと望む割合が高いが「出産後は一旦仕事を中断する」という割合が高く、背景には子育てと仕事の両立が難しいという思いがある。今後は、未婚者も対象に入れた「結婚出産子育てと仕事の両立」に関する講座等で、多様な選択肢の可能性を示すことが重要なのではないかと思われる。
著者
荒木 裕子 山本 直子 石垣 貴志 関川 歩美 丸井 正樹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.170, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】ネームとはタイの発酵ソーセージである。ネームは乳酸発酵により、微生物の繁殖を抑制しており、生で食べることが出来るのが大きな特徴である。我が国でのネームに関する研究は少なく、ネームの安全性についての研究もなされていない。本研究ではより安全で品質の安定したネームを調製することを目的として、条件の異なるネームを調製し調製条件の違いによる安全性および品質を検討した。【方法】試験試料として4種類のネームを調製した。基本的な材料である豚肉、豚耳、ニンニク、トウガラシ、米飯を調製する自然発酵区、また基本材料に発酵を促進する助剤であるヨーグルト、グルコン酸、肉用乳酸菌を添加したネームを調製した。35℃で4日間発酵させ、一般生菌数、大腸菌群、乳酸菌数およびpHを経時的に測定し、調製条件の違いによる安全性および品質を比較検討した。【結果】自然発酵区ではpHの低下は見られたが、大腸菌群が十分に抑制されなかった。ヨーグルト添加区、乳酸菌添加区では乳酸菌が生成する乳酸によってpHが低下し、大腸菌群が抑制された。グルコン酸添加区では4%添加のものは即時にpHが低下し、大腸菌群は強く抑制されたが、酸によるタンパク質変性が見られた。上述の通り、自然発酵区では十分に抑制されなかった大腸菌群がヨーグルト添加区、グルコン酸添加区、乳酸菌添加区において抑制されていることから、ネームの安全性を高めることを目的としたヨーグルト、グルコン酸、乳酸菌の添加は有効な手段であると示唆された。
著者
佐藤 真理子 王 佳琪 青木 識子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.220, 2018 (Released:2018-07-28)

【目的】近年,多様性社会への取り組みが進む中,性的少数者(LGBT)への理解は深まりつつあるが,制服における画一的な男女差等,衣服分野でLGBTの人々に十分対応できていない現状がある.本研究では,男性用体型補正インナーに着目し,男性同性愛者の体型に関する意識,体型補正インナーに求める要素等を明らかにすると共に,市場の体型補正インナーの快適性・機能性を検討し,LGBTの人々の衣環境における質向上への寄与を目指した.【方法】男性同性愛者26名(26±6才)と異性愛者26名(21±3才)を対象に,体型意識,インナーに求める要素等の調査を行った.また,市販されている体型補正インナーの着用効果と着用快適性を検討するため,三次元計測と官能評価を行った.【結果】アンケート調査の結果,男性同性愛者の体型意識において,自身については異性愛者と差はなかったが,恋愛対象に求める体型は筋肉体型が8割近くを占めた.体型補正インナーの認知度,着用希望共に,同性愛者で高い割合を示した.三次元計測の結果,体型補正インナーは一般インナーに比べ,肩先点下5cmで約105%,チェストラインで約110%周径が増大し,三角筋,大胸筋を模擬した状態が実現できており,官能評価においても,体格がより良く見えるとの申告が得られた.しかし,肌触り,筋肉パッドの擦れ等の評価が低く,着用快適性の改善が今後の課題と考えられる.
著者
増田 智恵 村上 かおり 平林 由果 永野 光朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.134, 2005

【目的】これまで女子大生を対象に,3次元ファッション・ファクトリ・ブティックシステムを構想し,消費者と販売間のコミュニケ_-_ションを支援する研究を行ってきた.本報では,学生を除いた成人女子の婦人服購入について,まずデザインイメ_-_ジとして捉えられている"イメ_-_ジ用語"の認識度を捉え,デザイン選択支援のための感性イメ_-_ジのキ_-_ワ_-_ド抽出を試みた.<br>【研究方法】1.イメ_-_ジ用語の抽出:2001年_から_2004年発刊のファッション雑誌約100冊から服のイメ_-_ジを表わす約1000用語を抽出,予備調査により136語にまとめた.2.イメ_-_ジ用語の分類:20代_から_70代の成人女子(九州,四国,近畿,東海,関東,東北の24都道府県在住)455名に,136用語を記したカ_-_ドを5_から_15のグル_-_プに分類,意味不明等の用語はその他として別にまとめさせた.3.分析方法:同一グル_-_プ用語を「1」,その他の用語の関係を「0」として136×136の行列を作成し,被験者単位に作成した行列を455名分合算して類似度行列を作成し,Ward法によるクラスタ分析を行った.<br>【結果・考察】1.136用語の詳細なグル_-_プとして,_丸1_レディ・ドレッシー系,_丸2_フェミニン・ゴージャス系,_丸3_大人系,_丸4_シャ_-_プ系,_丸5_モダン系,_丸6_トラッド系,_丸7_エスニック系,_丸8_カジュアル系,_丸9_レトロ系,_丸10_エレガント系,_丸11_シック系の11クラスタが抽出された.2.各クラスタの特徴をまとめると_丸1__から__丸3_は女性的,_丸4__から__丸5_はメンズライクを含む個性的,_丸6__から__丸8_は着心地の良いカジュアル的,_丸9__から__丸11_はオ_-_ソドックスで正統派的などのイメ_-_ジのデザインを示す用語となり,さらに大きくは普段非着用服のイメ_-_ジのAグル_-_プ:_丸1__から__丸5_と,普段着用服のイメ_-_ジのBグル_-_プ:_丸6__から__丸11_にまとまることがわかった.<br>本研究の一部には,平成15,16年度の栢森財団の助成を受けた.<br>