著者
伊達 郁子 江後 迪子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.569-572, 1984

1) 野菜を切断後水浸することによりV.Cの損失が認められ, 組織の破壊度が大きいほど, 損失も大きかった.<BR>2) 野菜を切断後水浸することによって失われるTAA量は水浸10分間でそのほとんどが溶出した.<BR>3) だいこんを切断処理後室温に放置した場合は, 水浸したときに比べて残存率が高く, 放置した場合の空気による酸化よりも水溶液中への溶出が大きいことが認められた.<BR>4) 銅製おろし金と磁製おろし器の両者を用いて調製した, だいこんおろしのTAA量はほぼ同一であり, 今回用いた銅器具によるV.Cの損失はなかった.
著者
井上 芳恵 中山 徹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.218, 2003

【目的】近年全国的に中心市街地を始めとした各地域で大型店の撤退が相次ぎ、消費者、地域経済に大きな影響を与えている。そこで、大型店撤退による消費者の買い物行動の変化、撤退後の買物の満足度、またどのような消費者層に影響を及ぼしているかについて、現状把握、分析を行うことを目的とする。【方法】大型店倒産によって全店舗が一時休業し、その後未だ再開のめどが経たない店舗の立地する熊本県人吉市において、消費者に対してアンケート調査を行った。調査対象地は、撤退大型店立地する中心商店街周辺及び、そこから1.2kmほど離れた幹線道路沿道の郊外大型店周辺の2地区とし、留置式自記式アンケート調査を平成14年4月に実施した。配布総数732票に対して、有効回答数は458票、有効回答率62.6%であった。【結果】大型店撤退前後の買物場所の変化では、撤退大型店を利用していた人が、撤退後には食品中心スーパー、郊外大型店などに買物場所を変えている。それにともない買物理由も、商品に関する理由から利便性に関する理由に変化しており、やむを得ず利用している消費者も見られた。大型店撤退による買物の満足度は、中心商店街周辺に居住する高齢世代ほど、不便さ、不満足さを強く感じている。その背景として、それらの消費者は、従来撤退大型店の利用頻度が高く、買物には徒歩、自転車を利用する人が多かったため、近隣の大型店撤退により日常生活に多大な影響を受けている。今後の課題として、大型店の郊外出店が中心市街地からの大型店撤退と関連しており、消費者の利益を追求する際には、撤退時の消費者の影響についても検討する必要があると考えられる。
著者
稲葉 ナミ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.129-135, 1957

1. 平日は他律的な勤務時間が長いそのため、何れの分類によつても、大差はあらわれず、第1報に報告したような夫妻間の差しかあらわれない。<BR>2. 休日は内職時間の多少によつて、その他の生活時間が構造づけられるが、内職時間の多いものは、1.子供の数が3人の家庭、2.家族員数の多い家庭、3.夫の年齢が40歳代の家庭、4.妻の年齢が40歳代の家庭、5.夫の学歴が師範卒で職業は教員の家庭、6.妻の学歴が師範卒で職業は教員の家庭である。<BR>3. 生理的睡眠時間の場合の最下限を7時間として、それ以下のものは夫にはなく、妻は平日1.子供3人の家庭、2.家族員数4人の家庭、3.妻の学歴が専門卒の家庭にみられる。<BR>4. 勤務時間は大差はないが、夫妻共に年齢が多くなるほど多く、夫妻共に師範卒・教員が多い。<BR>5. 妻の生活は家事労働の負担のために、平日休日共に圧迫されているが、夫が特に無関心を示すものは、1.50歳代の夫、2.妻が専門卒の家庭の夫である。<BR>6. 社会的文化的生活時間は、1.子供の人数が多くなるほど、2.家族員数が多くなるほど、3.夫妻の年齢が多くなるほど、夫妻共に少なく、4.教員は平日休日共に少ない。<BR>休日の小学卒・大学専門卒の夫は特に多く妻をかえりみず、ひとりで生活を楽しんでいる姿が見られる。<BR>7. 夫妻共に師範卒・教員の30~40歳代で子供が多く、従つて家族員数も多い家庭は最も忙しいことになる。
著者
松本 〓子 青木 邦男
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.439-449, 1993

5, 6歳児352名 (男児183名, 女児169名) を対象に, 幼児の運動能力に影響する要困について, 運動能力測定および質問紙による調査を実施し, そのデータを数量化I類を用いて分析した.その結果, 以下のことが明らかになった.<BR>(1) 男児の運動能力に影響する要因として, 「歩行開始時期」, 「徒競走の成績・母」, 「動作性IQ」, 「遊び回数・母」, 「遊び友達の人数」, 「遊び場所」, 「出生順位」, 「身体活動状況」の8要因が抽出された.この8要因の男児の運動能力に対する重相関係数は<I>R</I>=0.5801である.<BR>(2) 男児の運動能力を促進するのは, 早く歩き始めること, 母親の徒競争 (学生時代) の成績がよいこと, 母親の子どもとの遊び回数が多いこと, 多くの遊び友達と広い場所で遊ぶことである.<BR>(3) 女児の運動能力に影響する要困として, 「テレビ視聴時間」, 「身体活動状況」, 「遊び回数・母」, 「言語性IQ」, 「歩行開始時期」, 「通園時 (往復) 徒歩時間」, 「出生順位」, 「徒競争の成績・母」の8要因が抽出された.この8要因の女児の運動能力に対する重回帰係数は<I>R</I>=0.5134である.<BR>(4) 女児の運動能力を捉進させるのは, テレビ視聴時間が短いこと, 身体活動が活発であること, 母親との遊び (静的受容的遊び) 回数が少ないこと, ある水準以上の言語性IQがあること, 歩行開始が早いことである.<BR>(5) 男女とも運動的遊びを含む身体活動量の多さが幼児の運動能力の発達を促すと結論づけられるので, 幼児の日常生活の中に身体活動量を増す機会を意識的に作る必要があろう.
著者
川口 治子 溝崎 久美子 山口 直彦
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.114, 2007 (Released:2008-02-26)

〔目的〕いわし,あじなど赤身魚は高度不飽和脂肪酸であるEPA,DHAなどを含み大変酸化を受け易いと思われる。また,その干物は乾燥工程あるいは流通過程などでは急速な酸化の進行が危惧される。そこで私達は市販干物(あじ,いわし及びししゃも)の酸化度を実態調査すると共に,酸化度が著しく高かったいわしについて試作試験を行ったので報告する。 〔方法〕1,干物は,それぞれ5点,豊橋及び岡崎市内で購入した。2,いわし(鮮魚)は岡崎市中央市場で購入した。3,いわし干物の試作は鮮魚をカテキン,トコフェロール及び味噌などの溶液に一定期間浸漬した後,乾燥した。4,酸化度は酢酸-イソオクタン法で過酸化物質(POV)を測定した。 〔結果〕1,市販干物のPOVをみると,あじでは,天日干しと表示してある1点のみ99と高い値を示したが,他4点の平均値は11.5±6.6であった。次いでいわしは5点共にPOVは50以上と高く,その平均値は111.9±58.7を示した。さらにししゃも5点の平均値は18.4±5.3であった。これらの結果からいわし干物の酸化度が著しく高いことを知った。いわしの干物の試作試験の結果,2,カテキン製剤(茶葉抽出物10%含有)0(対照区),0.1及び0.5%溶液にいわしを浸漬後,乾燥した干物を5℃,5日間保存し,そのPOVで比較すると,対照区:118,0.1%区:119及び0.5%区:69であった。3,トコフェロ-ル製剤(トコフェロール8.5%含有)についても同様に試験し,5日目のPOVで比較した結果,対照区:160,0.1%区:157及び0.5%:100であった。4,豆味噌の効力を測定した結果,7日目のPOVは対照区:217,1%区:76.6,3%区:79.0及び6%区85.6であった。5,さらに,カテキン及びトコフェロール製剤と豆味噌との併用試験などを行っている。
著者
寒河江 芳枝 柳本 亜紀
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.105, 2018

目的:筆者は、200X年2月生まれの男児Yが誕生してから6年間の成長記録を取り続けた。その中で、筆者はYが自分の要求と親との要求が異なる場面に出会ったときに生じた行動を中心に捉えた。観察から得られた結果は、Yが3歳頃になると自分の要求を通そうとするために生じた葛藤を間接的に表現することが分かった。この間接的な表現を迂回と称した。しかし、この調査は家庭の中にいる子ども一人を対象としているため本研究では幼稚園という集団生活の場で同じ現象が見られるかどうかを検討すると共に保育者が迂回行動を表した子どもに対しての対応方法について検討する。<br>方法:本研究の対象児は、2歳児P組37名である。観察は、保育室にビデオを2台設置した。なぜならば、このクラスは2クラス使用しながら保育をしている。ビデオは、子どもたちがいる方の部屋のビデオのみ使用した。撮影時間は、大半の子どもたちが登園してくる午前9時半から降園する13時半までである。観察の視点は、日常生活の中で子どもたちの要求が保育者の要求と異なった場合にどのような行動を取るかに視点を当てると共に保育者の対応方法も捉える。<br>結果と考察:観察から明らかにされたことは、迂回のレパートリーと子どもが迂回行動をした時に保育者が直接的に目を向けるのではなく間接的にかかわるという方法が、子どもの自発性を生み出すための的確な方法のように思われた。
著者
木村 安美 治部 祐里 寺本 あい 桑田 寛子 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> サワラはサバ科の回遊魚で、ばら寿司の具材に使用されるなど岡山の郷土料理に欠かせない食材である。岡山県はサワラの取扱量は全国一で、大半を県内で消費し「岡山県の魚」とも呼ばれている。本研究では岡山県におけるサワラの喫食状況の特色を明らかにするとともに、サワラを用いた郷土料理がどの程度日常食の中に溶け込んでいるのかを検討することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」-魚介類の調理-(平成15年7月~平成16年9月)で得られたデータを集計、比較分析を行った。調査地区に10年以上居住している者を対象とし、全国(3,431世帯)、中国・四国(931世帯)、岡山県(380世帯)から回答を得た。得られたデータからサワラ料理を抽出し、喫食率、調理法、郷土料理について比較検討を行った。<br><b>結果</b> サワラの喫食状況は、全国44.5%、中国・四国60.3%に比較し岡山県が156.8%(複数回答)と圧倒的に高く、調理方法では、全国、中国・四国では大半を焼き物が占めるのに対し、岡山県では生ものや煮物が多い結果となった。岡山県南部では北部に比較して生もの、煮物、飯物の割合が多く、北部では焼き物の割合が高かった。飯物の内訳では、押し寿司は全国34.8%、中国・四国61.5%、岡山県0%に対し、チラシ寿司が全国13.0%、中国・四国0%、岡山県72.5%であり、南部・北部に分類すると、南部はばら寿司、北部はサバ寿司が高い結果となった。このことから、岡山県におけるサワラを用いた料理は生もので食べる習慣が今も続き、南部では瀬戸内の新鮮なサワラを用いたばら寿司、北部ではサバ寿司を食する郷土料理の伝統が結果に顕著に表れたと考えられる。
著者
牛田 智 松尾 美恵 瀬口 和義
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.853-857, 1990

インジゴの染色は通常はアルカリ条件下で行われているが, エタノール水溶液を用いれば, 繊維にとって好ましい中性の条件で, 十分な濃色に染色できることがわかった.また, 染浴濃度が同じ場合にはエタノール濃度の低い水溶液からのほうがよく染着すること, 染着量に塩の影響はないことがわかった.また, インジゴホワイトの溶解度の高いエタノール濃度の高い水溶液から染色すれば濃い染浴が得られるのでかなり濃色に染色でき, エタノールの濃度が10%や20%という場合でも, 十分染色可能であり, アルカリ条件と比べ, アルカリや共存する還元剤の影響によって繊維の強度や風合いが損なわれる度合が小さく, 有利な染色方法であることがわかった.
著者
菊池 直子 佐々井 啓 久慈 るみ子 山岸 裕美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.299, 2018

<b>目的</b> 東日本大震災後,被災者の生活支援に関して様々な観点からの研究がなされてきたが,衣生活については十分にし尽くされているとは言い難い.そこで,今回は衣服が独自にもつ精神的機能に着目し,震災から6年以上が過ぎた今だからこそ可能な,衣服に対する「思い」を中心に据えた調査を行った.また,生活再建過程における手芸活動が果たした役割についても調査した.<br><b>方法</b> 釜石市の仮設団地内サポートセンター,および大槌町の仮設団地集会所において衣生活に関するインタビューを行った.インタビューの内容は,震災によって失われた服飾に対する思いや,衣服に対する考え方の変化などである.また,大槌町の「手作り工房おおつち」を対象に,手芸活動の契機や活動による生活の変化などについてインタビューを実施した.実施機関は2017年9月~10月である.<br><b>結果</b> 生活のすべてを流失した被災者の中には,あまりの喪失感から愛着や思いも全くないという回答があった.その一方,流失した衣服を諦められず何度も思い出すという回答もあった.震災から年数が経ち,高齢女性の服装が鮮やかな色調に変化したという回答が複数認められた.明るい気持ちになりたいという思いが服装に表れたと考えられる.また,手芸活動については,支援物資の衣服のお直しや布製の袋物が必要とされたことから始まったこと,徐々にコミュニティが形成されたこと,生きる活力につながったことなどが確認された.
著者
庄山 茂子 川口 順子 栃原 裕
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.200, 2008

<B>目的</B> 色彩嗜好は、年齢、性、民族、地域、時代などにより差がみられ、色彩の感情には、個人の生活体験に由来する色彩感情、文化的色彩感情、普遍的色彩感情の3タイプがあるといわれている。今日、国際化、情報化が進む中、日本に住むアメリカ人女性と日本人女性の色彩嗜好にどのような違いがみられるか明らかにすることを目的とした。<BR><B>方法</B> (1)調査概要 1)試料:75色カラーチャート(10色相+7ト-ン、有彩色70、無彩色5、日本色研) 2)場所:長崎県、高知県 3)対象者:日本人女子学生25名(平均年齢22.0歳 SD±0.58歳)、日本在住のアメリカ人女性25名(平均年齢23.2歳 SD±1.63歳) 4)調査方法:面接法による質問紙調査 5)調査時期:2005年、2007年8月~9月、(2)調査内容:嗜好色、嫌悪色上位3位、1位の色についてSD法による5段階尺度でイメージ評価 (3)分析方法:単純集計、χ<sup>2</sup>検定、t検定、因子分析、一元配置分散分析。<BR><B>結果</B> 嗜好色では色相、トーンに、嫌悪色では色相に2グループの人数の偏りに有意傾向がみられた。嗜好色の色相では、Red Purpleに差がみられ、日本人は Red Purpleを最も好んだ。この背景には、流行色の影響が推察された。Blueは、2グループに好まれた。嗜好色のトーンでは、日本人はlightをアメリカ人はvividトーンを最も好んだ。嫌悪色の色相では、日本人は、Red Purple、Orange、Redをアメリカ人は Yellow, Yellow Greenを嫌った。嫌悪色のトーンでは、両グループともlight grayishトーンを嫌った。日本人はやわらかく、理知的、あっさりしたイメージの色を好んだのに対し、アメリカ人は強く、動的なイメージの色を好んだ。嗜好色では色相よりトーンにグループ間の違いがみられた。
著者
川嶋 比野 数野 千恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b><br> 演者らは前報(本学会第67回大会)で、青色の色相及び彩度を変化させた絵柄皿を焼成し、料理に与える影響を調査した。その結果、基準色とした青色(マンセル近似値4.9PB3.1/9.1)が最も食欲を増進させることがわかり報告した。今回、青色以外の単色絵柄皿と比較し、食欲増進の効果及び料理との相性を検証したのでその結果を報告する。<br><b>方法</b><br> 基準色の青色絵柄皿をデジタルカメラで撮影し、画像編集ソフトを用いて、色相を赤色方向に変化させた画像、緑色方向に移動させた画像を作成した。また、絵柄のない白色の皿も含め、計4色の皿の画像を用意した。料理は前報と同じ、給食で喫食頻度の高い料理を20品用意し、撮影して木目の背景、皿と共に合成画像を作成した。女子大生および中高年男女を対象に、各料理を盛り付けた4色の皿の写真を見比べ、それぞれどの程度食欲を増したか、7点評点法及び順位法によりアンケート調査を行った。<br><b>結果</b><br>全体の傾向としては、青色と赤色の評点が高かった。赤色は特に酢豚や焼売などの中国料理と相性が良く、青色よりも評点が高い場合もあったが、キウイフルーツやトマトのくし切りなど、相性の悪い料理もあった。青色は、どの料理とも相性が良く、相性の悪い料理は特になかった。緑色は白色に次いで評点が低いことが多く、あまり食欲を増進させる色とは言えなかった。また、全体的に白色の評点は低く、特に淡い色の料理や単色の料理と相性が悪かった。
著者
平尾 和子 三星 沙織 近堂 知子 竹内 由紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2018 (Released:2018-07-28)

【目的】山形県庄内地方では、もち米を笹に包んで煮る「笹巻」と呼ばれる粽が作られている。酒田市周辺では単に湯煮するので白色であるが、鶴岡市周辺では灰汁を用いるために黄色である。本研究では、庄内地方に二種の笹巻が作られるようになった経緯、笹巻作りの現状を調査するとともに笹巻の食文化を次代に伝承する方法について検討した。【方法】文献の渉猟は鶴岡市歴史資料館等で行った。電話調査は平成28年9月~11月に、山形県、新潟県、秋田県、宮城県、福島県の計192ヵ所の市役所・町村役場を対象として行った。アンケート用紙による調査は、平成28年11月~平成29年4月に電話調査で同意が得られた対象を中心に行い、520部を配布して507件の回答を得た(回収率97.5%)。【結果】灰汁を使用した黄色の笹巻に関する記録は、天明8年(1788)の『悪作付書記』が今回確認できた最古の記録であった。電話及びアンケート調査から、庄内地方では現在でもほぼ全ての家庭で笹巻が食べられており、時期は端午の節句の時期であった。自家製造は2世代同居、3世代同居の家庭で主に行われていた。また、使用する笹や紐の種類と扱い方、笹巻の形、加熱時間など、調理法および食べ方に各家庭の特徴が存在することが確認できた。今後、この食文化を伝承する取り組みとしては、動画サイトやDVDに製造工程の画像を残す、各地区婦人部に伝承の協力を仰ぐ方法などが有効であると考えられた。
著者
小池 恵 船木 絵美子 津田 淑江
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.74, 2010

[目的]地球温暖化が進行する今日、世界規模での温室効果ガス排出量削減に対する活動が行われている。このような取り組みが行われている中で、家庭内でのCO<SUB>2</SUB>排出量削減に対する行動を起こすことも重要となってきている。そこで本研究では、湯を沸かす際のCO<SUB>2</SUB>排出量について検討した。様々な加熱方法、加熱条件、加熱器具によるCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行い、環境に配慮したカップ麺の食べ方について考察した。<BR>[方法]N社製カップ麺を試料とし、カップ麺調理時に必要な湯を沸かす際のCO<SUB>2</SUB>排出量を求めた。加熱方法はガス加熱およびIH加熱とした。やかんに17℃の水を入れ、水量・火加減の違いなど加熱時の条件を変え、沸騰(98℃)までのガス消費量および電気使用量を測定した。さらに沸騰ジャーポット、電気ケトルなどを使用して、沸騰までおよび保温時の電気使用量の測定も行い、CO<SUB>2</SUB>排出量を算出し比較した。<BR>[結果]学生26名を対象に、カップ麺1人前を作る際の水量および火加減を自由に設定させ、やかんでの湯沸し実験を行った。その結果、使用水量の平均値は850ml、火加減は強火で行った者が70%、中火では30%であった。またやかんの鍋底水滴の有無も確認し、水滴有りは19%であった。カップ麺に表示された1食分の使用湯量は300mlであり、蒸発量を考慮し1食分を作るには350mlの水量が必要であると考えた。以上の結果を経て、使用水量を湯沸し実験の平均値である850mlおよびカップ麺1食分作成時に必要な350mlの2種類に設定し、火加減とやかんの鍋底水滴の有無など加熱条件を変えた場合のCO<SUB>2</SUB>排出量を比較した。最もCO<SUB>2</SUB>排出量が少なかったものは、水量350mlの電気ケトルである事が明らかとなった。
著者
道本 徹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.577-583, 2001-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

前稿の航空安全報告制度GAIN (Global Aviation Information Network) でもご紹介したように世界の商用ジェット航空機による死亡事故の発生率は, ボーイング707, ダグラスDC-8等の第一世代のジェット機が導入された1960年前後に比べ, 主として安全技術の向上により, 第二世代機 (727, DC-9), 初期ワイドボディ機 (747, DC-10, A300) が導入されるとともに事故率が大幅に下がり, 1985年頃まで順調に低下してきていた.ところが, この事故率の低下がこの10数年頭打ちになってきており, 事故率がこのまま推移すると航空需要が増加するにつれ, 死亡事故件数が増加してしまうことが懸念された.このため航空界の最大手国である米国では1997年, 当時のアル・ゴア副大統領のもとに航空の安全委員会が設けられ, 向こう10年間に事故率を80%削減する目標がたてられた.最近の航空事故の分析によると約85%は何らかの意味でヒューマン・ファクターが要因となっており, 事故率を減らすためにはこのヒューマン・ファクターの問題をよく理解し, しかも重大な事故の起こる前にプロアクティブに対策をとることが有効とされている.本稿では航空の専門家ではない利用される立場の皆様に, GAINの作成した航空安全に関するハンドブックをもとに航空界におけるヒューマン・ファクターの取り組みについてご紹介すると共に, この取り組みは航空界以外の分野においても広く応用されうるものであることをお伝えするものである.
著者
松島 悦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.743-752, 2007 (Released:2010-07-29)
参考文献数
19
被引用文献数
10

本研究の目的は、母親と父親の調理に対する態度が、家族の共食の雰囲気や子どもの調理態度にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。東京圏に住む中学生を対象としたアンケート調査結果より、712人を対象として分析した。主な結果は次のようである。(1)「母親の調理態度」だけでなく「父親の調理態度」が積極的なほど、子どもは「共食の雰囲気」を楽しいと感じていた。女子は「母親の調理態度」の影響を強く受け、男子は母親と同じくらいの強さで「父親の調理態度」の影響を受けていた。しかし、親の調理態度は、共食の頻度には影響を与えなかった。(2)「母親の調理態度」とともに「父親の調理態度」の積極性も、「子どもの調理態度」にプラスの影響を与えることが明らかとなった。女子では母親の影響が強く、男子では父親の影響が強い。さらに、「共食の雰囲気」のよさは、「子どもの調理態度」を積極的にした。(3)「母親の調理頻度」が高いほど、「共食の雰囲気」にマイナスの影響があった。母親に食事作りの役割が集中し固定化することは、共食時の楽しい雰囲気を阻害する可能性がある。
著者
芥田 暁栄 伊福 靖
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.243-246, 1963

1. 各種の強化味噌汁をつくり、調理中の島およびB<SUB>2</SUB>の変化と、玉葱としじみを具に使用して、これらのビタミンの損失におよぼす影響を研究した。<BR>2. 味噌汁をつくるとき、遊離のB<SUB>1</SUB>およびB<SUB>2</SUB>を強化すると、他の強化味噌の場合に比して、煮返しによる損失が大きく、具を使用しない場合もそれぞれ20%、15%の減少率を示した。<BR>3. 前項の強化味噌汁の場合、玉葱を具に使うと、B<SUB>2</SUB>には特別の作用を示さなかったが、B<SUB>1</SUB>の煮返しによる損失を防ぎ、しじみを使用すると、アノイリナーゼの存在するため、煮沸中にB<SUB>1</SUB>の減少が大であった上、煮返しによる減少率も他区に比し大きかった。<BR>4. B<SUB>2</SUB>に対しては、しじみは意外にも煮沸までの損失も大きく、煮返しまでの損失も最大であって普通強化味噌の場合でも、その傾向が認められた。<BR>5. 仕込時強化された味噌中のビタミンは温湯中で短時間攪拌しただけでは充分水に溶出されず、煮沸によってよく溶解するに至る。仕込時に強化剤を添加した普通強化味噌は、麹菌のフラビン生産力を利用した兵庫農試式強化味噌に比し、煮返しによるB<SUB>2</SUB>の損失が大きいが、一般に両者とも味噌汁調理時に強化した方法に比し安定度高く、煮返しによる損失は具を使用しない場合B<SUB>1</SUB>では2%に達せず、B<SUB>2</SUB>については前者は15%、後者は5%程度であった。<BR>6. 玉葱を具に使用すると、前項の両強化味噌汁の場合とも、具を使用しない時と同じくB<SUB>1</SUB>の損失は少いが、しじみを使用した場合は、煮沸後は玉葱区に比し約20%対照区より10%少くなり、煮返し後の含量も他区と平行して減少した。<BR>7. B<SUB>2</SUB>については、しじみを使用した場合、両味噌汁とも煮沸後他区より15~20%減少して最少となり、兵庫農試式強化味噌汁では対照区と平行して煮返し後の減少は少なかったが、普通強化味噌を用いた味噌汁は調製時強化した味噌汁と同じ傾向で急減した。故にしじみは遊離B<SUB>2</SUB>を減少する要素を含むものと考えられ、兵庫農試式強化味噌の場合は麹菌の生産したB<SUB>2</SUB>が結合型であるため対照区、しじみ区とも減少が少ないものと考えられる。
著者
福井 典代 武本 歩未 大塚 美智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.59, 2018

<b>目的 </b>服装評価についてはSD尺度やリッカート尺度を用いて一般的に測定されているが,官能量と布の物性値との関係を明らかにした研究は見られない。本研究では,一対比較法を用いて上衣のゆるみの見え方を測定して,布の力学特性との比較を行い,それらの関係性を明らかにすることを目的とした。<br><b>方法 </b>(1)ジョーゼット,デシン,トロピカル2種類,タフタの計5種類のポリエステル平織白布を使用した。ドレープ法による剛軟度の測定を行うとともに,KESを用いて引張り剛性,せん断剛性を測定した。(2)実験衣はハイウエスト切り替えのギャザーチュニックとし,5種類の布を用いて同一デザイン・サイズのチュニックを製作して人台に着用させた。衣服の大きさ,美しさ,好みの評価について,5段階尺度により女子大生20名を対象として調査した。分析はシェッフェの一対比較法中屋変法を用いて算出した。(3)剛軟度に着目し,衣服の見え方と布の剛軟度との関係性を求めた。<br><b>結果</b> (1)衣服の大きさについて一対比較により分析した結果,タフタ,トロピカル,デシン,ジョーゼットの順に小さく見えた。美しさと好みは大きさと反対の結果になった。(2)衣服の大きさに関する官能評価と布の剛軟度との間に正の相関関係が得られた。美しさと好みに関しては,負の相関関係となった。以上の結果から,ギャザーのある本実験衣では布が柔らかいほど体型が小さく,美しく見えるということが実証された。
著者
草野 篤子 中西 央 小野瀬 裕子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.5-14, 2000

日本国憲法第3章人権条項のうち, 「男女平等」と「教育の機会の平等」を中心としたベアテ草案作成の背景を考察し, ベアテ草案の先進性と限界を見いだした.その結果を以下にまとめる.<BR>(1) ベアテ草案作成の状況<BR>ベアテは, 語学力を駆使し, 諸外国憲法を参考に引用しながら, 女性の権利, 教育の平等, 労働者の権利等, 「女性と子どもが幸せになるため」の条文を作成した.<BR>(2) ベアテの経歴と起草条項の淵源<BR>ベアテが起草した, 民主的な近代家族の生成に寄与した女性の権利保障と教育の自由が明文化された条文の淵源として, (1) 母親からの影響, (2) 10年問の在日経験, (3) 米国ミルズ大学での教育, (4) 被抑圧民族であるユダヤ人として受けた差別, (5) 被抑圧ジェンダーである女性として受けた差別の5点を見いだせた.ベアテはこの時弱冠22歳であったが, さまざまな社会や文化に対してグローバルな視野を持ち, 博識であった.<BR>(3) 憲法研究会草案との対比<BR>日本の民間草案は約12あったが, 国民に目を向けていち早く発表された憲法研究会草案は注目に値する.新たに規定されるべき国民の権利義務として, 「言論学術芸術の自由」「労働の義務」「労働に対する報酬の権利」「休息権」「老年疾病の際の生活保障」「男女平等の権利」「民族人種差別の禁止」をあげている.模範とした諸外国憲法は, 憲法研究会草案を知らないベアテが模範にした憲法と同じであった.ベアテと憲法研究会が参考にした憲法の条文を表1に示した.ベアテ草案と憲法研究会との条文の共通性を表2に示した.憲法研究会草案はGHQ上級職員から高く評価され, その意識の中には取り入れられていたと考えられた.<BR>(4) ベアテ草案の先進性および限界<BR>ベアテ草案 (GHQ第一次案) の先進的な部分と限界の双方の指摘を試みた.<BR>先進的部分として3点あげることができた.第一に, 家庭における男女の平等を規定した第18条, 長子相続の廃止を規定した第20条では, 「家」制度を廃止するだけでなく, 民主的な近代家族の実現を図るために, 家族という私的領域におよんで法的規定を行ったこと.第二に, マッカーサー草案としては最終的に削除されたが, 第19条の母性保護と非嫡出子差別の禁止, 第26条の男女同一価値労働同一賃金は, 後に法制化の課題として残ったこと.第三に, 第21条, 第24条, 第25条で「児童」の権利をとりあげ, この時代に子どもを「保護の客体」ではなく「権利の主体者」としてとらえた起草を行っていることである.<BR>次にベアテの限界として2点指摘できた.第一に, 第25条に高齢年金の保障を掲げているものの, ベアテ自身も指摘しているように, 老人社会福祉に関する条項がないこと.第二に, 住居の選択はあるものの, 居住権等の居住の権利に関する条項がないことをあげることができた.
著者
西本 由紀子 荒川 真衣 上野 勝代 梶木 典子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.256, 2009

【目的】バリアフリー新法が平成18年12月より施行され、公共交通機関におけるバリアフリー対策が進んでいる。その対象は高齢者・障害者等でありベビーカーでの子連れ(以下、ベビーカー利用者)は対象とされていない。しかしながら、実際にはベビーカー利用者は同様に行動制限を受けており、日常的な外出に支障をきたしている。事前のヒアリング調査でもベビーカー利用者の公共交通機関利用に対する消極的な意見が多く聞かれた。そこで本研究の目的はその理由を探り、今後の対策の基礎資料を作成することを目標とする。このことは同時に子育て支援対策にも意義があると考えられる。【方法】➀神戸市内の区役所で実施される4か月、1歳半健診で乳幼児保護者に対し、公共交通機関でのベビーカー利用実態についてのアンケート調査を行った。➁神戸市内の公共交通機関内において、ベビーカー利用者の観察調査、ベビーカー利用被験者による行動調査を行った。いずれも実施期間は、2008年10月~2009年2月である。【結果】ベビーカー利用者は、比較的混雑の少ない10時~16時に集中して公共交通機関を利用しており、常に周囲の視線を気にしている。電車車両内では、乗降扉付近に立ったままベビーカーを支えていることが多い。神戸市バスのノンステップバスなどでは、車イスと同様、ベビーカー設置スペースが設けられているが、そのことはあまり周知されておらず、利用したことがある例はわずかであった。
著者
藤本 純子 諸岡 晴美 渡邊 敬子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的 </b>過去の時代を代表する衣服は価値ある資料であり、その複製を制作することは非常に意義がある。本研究では、最もパターンの予測が困難な衣服の一部分を効率的に復元することを目的として、シルエット形成に及ぼすいせ分量の影響、およびシルエットと布の力学特性との関係性を明らかにした。さらに意図するシルエット形成のためのいせ分量の予測について検討した。 <b>方法</b> 厚さの異なる3種のシーチングおよびシルクタフタの計4種の布地を用いて、胸元に16.5cm丈の垂布状のケープカラーがついた身頃を制作し、ケープカラーの付け部分に10%のいせを入れた。また、薄地シーチングとシルクタフタについてはいせ分量を0%,5%,15%と展開し、計10点の試料を実験に供した。試料をボディに着せつけた状態で三次元計測装置によりスキャンし、その形状を採取した。得られたシルエットデータから形状計測ソフト(Body-Rugle)を用いて体積、断面積を特徴量として解析した。一方、布の力学特性をKESシステムにより計測した。 <b>結果</b> いせによって形成される衣服のシルエットを捉える手段として、三次元計測装置を用いることの有用性が確認できた。また、シルエットといせ分量、布の力学特性との関係について明らかにした。これらの研究成果は、歴史的に重要な衣服形状を復元するための基礎的データとなるとともに、意図した衣服のボリューム感を創出するための基礎データとなり得る。